敵うはずなんてなかった 2003年9月12日 0:59:23 ひみつ
じくり、と。
膝の傷がまた痛んだ。
どうしてわたしは、あと一歩、踏み出すことができなかったのだろうか。
ゴール前、わたしはもう負けたと思った。
前を走る他校の女の子はとっても速くて、渾身のラストスパートもとても届かないと、確かにあのときわたしは諦めてしまったのだ。
だからだろうか。
わたしの足は、もつれた。最後の最後で、わたしは取り返しのつかない失態を犯してしまった。
激しい転倒、なぜか応援にきてくれたみんなの悲鳴が酷くはっきり聞こえたのを覚えている。それでもそのときは膝を激しく擦りむいたことにすら気付いてはいなかったのだ、それなりにわたしも、必死だったのだろう。
すぐに立ち上がってゴールに飛び込んだけれど、結果は7人中の5着。
わたしの高校生活最後の大会は、こうして終わった。
結果が問題なんじゃない。確かに残念だけれど、それ自体は問題ではないのだ。
「残念だったな」
応援にきてくれていた祐一に、わたしは顔を向けることもできなかった。
酷い罪悪感。わたしはこんな思いを最後にするために、この3年間頑張ってきたのだろうか。そう思うと、自然と涙が出た。悔し涙に違いはなかったけれど、きっとそれは、祐一やみんなが想像していたそれとは違った種類の涙だったのだろう。
ゴール前のあの瞬間、わたしは確かに諦めた。
そう、諦めたのだ。
7年前の、あの時のように。
そして――
あの子が、帰ってきたときのように
わたしにはきっと、戦う資格など最初からなかったのだ。
スタートしてからゴールするまで、わたしの前を走りつづけた、あの名も知らぬ他校の女の子。彼女はきっと、最初から最後まで諦めることなど無かったに違いない。自分のいままで練習してきたことを、自分自身を、信じて最後まで走りぬいたのだ。
あの子も―― そう、あの子も祐一と結ばれることをこの7年間ずっと信じて来たに違いないのだ。
わたしは端から、諦めていた。
敵うはずが無いと、わたしなんかが祐一を振り向かせることができるはずがないと、諦めていたのだ。
最初から、敵うはずなんて、なかった。
新たな涙がこぼれるのがわかった。
じくり、と。
膝の傷がまた痛んだ。