NEXT No.98 投稿者: ひみつ 02/15/03 10:39
「舞、大丈夫?」
速水がそう声をかけたのは、士魂号のドックインを終えた直後だった。
「別に私はどこも怪我などしていない」
気遣わしげな速水の声に、舞は憮然とした様子でそんな言葉を返す。事実、彼女はどこも負傷していなかった。いかに初陣とはいえ、芝村の名に連なるものがこれしきの戦闘で負傷などするはずもない。
「そっか、良かった」
「ふん」
気を遣ってくれる速水が不快なわけではない。芝村たる自分がたった2匹の幻獣しか仕留められなかったのは確かに屈辱ではあるが、それ自体は他でもない、舞自身が招いた不手際であるのだからどうしようもない。
そう、2匹しか屠ることができなかったのである。芝村の末姫たる自分のこれが初陣であったというのに。
「ごめん、もっと上手く操作できたらよかったんだけど」
済まなそうな速水の声。電子制御部を担当する自分の不手際であったにも関わらず、彼はあたかも自分に非があるかのようにそう言う。
だから、というわけでもないだろうが、少し、素直になれた。
「すまぬ、今日の私は集中力を欠いていた」
「うん、そうだね」
あえて否定されなかったのはありがたかった。自分の扱いを上手く心得られているようで、ちょっぴり面白くなかったが。
相変わらず腹部に鈍痛が留まっている。声だけしか伝えない速水への通信に悟られぬよう、舞はそっとため息をついた。
女性であれば月に一度は必ず巡ってくる苦痛、出撃がそれに重なったのは不運という他ない。
だがこれは戦争なのだ。人類と、そして幻獣とよばれる人ならざるモノの、互いの生き残りを賭けた戦争であるのだ。運が悪かったでは済まされない、済ましてはいけない。
「大丈夫、次はもっと頑張ろう」
相変わらずどこか間延びした速水の声。
そうだ、自分たちには次がある。初陣を生き残り、次を迎える資格を手に入れたのだ。
「そうだな、次は頑張るぞ」
なるべく素っ気なく聞こえるようにそう口にしたが、通信から聞こえてくるくつくつというパートナーの抑えた笑い声からは、どうもそれは成功していないようだった。