かわいそうなゾウ  2004年1月18日 0:22:52 ひみつ 


 沢渡真琴は想像力豊かだ。
 想像力の翼というものは、主に幼年期にこそ羽ばたくものである。彼女のそれはいつだって、大空を舞うウミネコのように力強く羽ばたいている。

「みゃーみゃー」
「あらどうしたの真琴? ぴろちゃんのまね?」

 ウミネコなのに…… 真琴は少し悲しくなった。

「ごめんなさいね、今日もまたお雑煮なの」

 済まなそうな秋子の声に、真琴はそんなことは気にしなくていいのにと思う。
 お雑煮はいい。あのキメ細やかな餅の食感など、真琴を天にも昇る心地にさせてくれる。

 お雑煮。
 ふと、思う。
 どうしてお雑煮は、お雑煮なのだろう。

 自らの哲学的な命題に、真琴は震えさえ覚える。
 これは重大な問題だ。
 どうしてお雑煮は、お雑煮なのか。

「ぞうに、ぞうに…… はっ!」

 そうだ、どうして今まで気付かなかったのか。
 雑煮は、転じて『象煮』なのではあるまいか?

「象が、象が可哀想だよ……」
「どうしたの真琴? どこか痛いの?」
「象だって、象だって生きていたかったのに……!」

 象だって、煮られてしまうとなったら精一杯暴れてでも生きようとするだろう。

 生きたいと望む象、それが故に暴れる象、暴れ象――


「祐一の象は暴れすぎだと思う」


 今日の真琴の想像力 ―― さっぱり

 

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