“人生”と言う名の舞台

2000/05/26 Happy Birthday!! Dear Sunaf

 久慈光樹


 

 

シーン1:舞台セット無し

 

(真っ暗なステージ)

(スポットライト)

 

 ステージに佇む一人の少女。

 

声:「どうして貴方は白い杖を持たないの?」

 

 その声をじっと俯いて聞く少女

(反応しない)

 

声:「どうして貴方は目の見えないことを隠そうとするの?」

 

(反応しない)

 

声:「どうして貴方は普通の人のように振舞おうとするの?」

 

(反応しない)

 

声:「どうして貴方は……」

少女:「うるさいっ!」

 

 どこからとも無く聞こえる声を掻き消すように叫ぶ少女。

(髪を振り乱すくらいの勢いで叫ぶ)

 

少女:「うるさい! うるさい! うるさいっ!!」

(ブラックアウト)

 

 

シーン2:校門前、朝の風景

 

(舞台ライト)

(あたかも目が見えるように歩く少女。校門前で立ち止まる。以下の会話終了まで動き無し)

(舞台端から声のみ。押さえ気味に。ひそひそ話しているように)

 

生徒の声1(女):「あっ、あの人知ってる、3年の目が見えない人だよ」

生徒の声2(女):「ええ? そうなの?」

生徒の声1(女):「知らないの? 結構有名なんだよ」

生徒の声2(女):「そうなんだ。でも目が見えないなんてかわいそうだよね」

生徒の声1(女):「ほんとほんと、かわいそうだよね」

 

(じっと俯いてその声を聞く少女)

(舞台端から一人の少女が元気よく走ってくる。俯く少女の肩を叩く)

 

雪見:「おはよっ! みさき!」

みさき:「あっ、雪ちゃんおはよう……」

雪見:「あら? 今日は元気ないじゃない」

 

(みさき、ぎこちなく笑いながら)

みさき:「そんなことないよ、朝ご飯食べる暇が無くてお腹空いたんだよ」

 

(雪見、呆れ顔で)

雪見:「はぁ? まったくもう。あなた、お腹さえいっぱいになれば幸せなタイプよね」

みさき:「ええっ? そんなこと無いよ、私だって悩みくらい……」

雪見:「ふふっ、冗談よ」

みさき:「ううっ、ヒドイよ雪ちゃん」

雪見:「はいはい、もう行かないと遅刻よ、みさき」

みさき:「うー」

雪見:「ほら、唸ってないで、行くわよ」

 

(雪見、みさきの手を引っ張る。そのまま手を引いて歩き出そうとする)

(一瞬だけ顔を歪めるみさき。だがすぐにいつもの笑顔に戻る)

(そのまま校門に入っていく二人)

 

(ブラックアウト)

 

 

シーン3:舞台セット無し

 

(真っ暗なステージ)

(スポットライト)

 ステージに佇むみさき。

 

みさき:「うるさい! うるさい! うるさい!」

 

(みさき、肩で息をする)

 

みさき:「どうして?! どうして目が見えないだけで人に哀れまれなければならないの!?」

みさき:「目が見えないってそんなにかわいそうなこと? そんなに哀れなこと?」

 

(少しの間、肩で息をするみさき)

 

みさき:「同情なんかいらない! 哀れみなんかいらない!」

 

(少しの間、肩で息をするみさき)

 

みさき:「私は普通に扱われたいの! 目が見えないってだけで特別扱いされたくないの!」

 

(長めの間、肩で息をするみさき)

 

(今までとはうって変わって、小さく消えるような声で)

みさき:「私は……」

 

(少しの間)

 

みさき:「特殊な存在じゃないの……」

 

 

(そのまま魂が抜けたように立ちつくす)

 

 

(ブラックアウト)

 

 

ブラックアウト……