連作『電話』

−弟−

 

 

「はい七瀬です」

「もしもし?」

「あっ…… うん、姉ちゃんだぞ」

「あんたねぇ、男の子なんだからもっと元気よく喋りなさい」

「そうよ」

「え? そ、そう?」

「別によそ行きの声って訳じゃないよ、普通だよ? これが」

「あはは、そうかも」

「そりゃね、姉ちゃんだってもう大学生だもの」

「あははっ、うっさい」

「うん、暇よ。あんたは病院いいの?」

「そう、偉いぞ」

「で、どうしたの?」

「うん」

「……え?」

「そう! よかったじゃないの!」

「じゃあ夏休み明けから、また学校行けるね!」

「どうしたのよ、もっと嬉しそうな声出しなさいよ」

「……え?」

「……」

「……」

「……そ、そっか」

「……」

「……あ、あのさ」

「学校、行きたくないの?」

「そ、そっか、そうだよね、行きたいよね」

「……」

「……」

「……」

「えっと…… あの、ね……」

「あの…… なんて言っていいのか……」

「私は、その……」

「……」

「バ、バカ、なんであんたが謝るのよ」

「そ、そうよ、謝ることないわよ」

「……うん」

「そ、そっか、じゃあお大事にね」

「うん、おやすみ」

 

「……」

 

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