家族

Another Story

−三人の子供−

2000/02/23 久慈光樹


 

 

 

 

私には三人の子供がいる。

 

三人とも、とてもいい子だ。

 

 

 

「秋子さん、おはようございます」

「あら、おはよう祐一さん、今日は早いのね」

「今日は名雪のやつが日直なんですよ」

「あらあら、それは大変ね」

「あのねぼすけを起こす俺の方が大変ですよ……」

「うふふ、そうね」

 

 

今は2人だけ、あの子は今はいない

 

あの子は最後まで私や名雪に遠慮していた、でも……。

 

 

 

「おふぁよーございまふ」

「あらあら、名雪おはよう」

「お母さんおはようございまふ」

「“まふ”じゃねえぞ名雪、早くしないと日直だろ」

「くー」

「寝るな!」

 

 

おかあさん……。

 

あの子は最後にそう言った。

 

 

「名雪はいつものジャムね」

「ふぁい」

「祐一さんは?」

「あ、俺もいつものやつで」

「今日はこっちのジャムなんかどうですか?」

「……遠慮します」

「あらあら」

 

 

もう言葉も満足に話せなくて

 

感情すらも失って

 

 

 

「いちごじゃむ、おいしい」

「“おいしい”じゃねぇ! せっかく俺まで早起きしてやったってのに、お前がのんびりしててどうすんだ!」

「うふふ、大変ですね、祐一さん」

「そう思うなら、娘に何とか言ってやって下さい」

「了承」

「いや、了承されても……」

 

 

 

それでもあの子は言ったのだ

 

”おかあさん” と……

 

 

「もぐもぐ」

「いらいら」

「もぐもぐ」

「いらいら」

「もぐもぐ」

「がー!! お前は牛かぁー!」

「うにゅ?」

「あら祐一さん、良くかんで食べるのはいいことですよ」

 

 

 

 

だからあの子は私の娘

 

例え血の繋がりがなくとも、私の娘

 

 

 

 

「おら! もう行くぞ!」

「行ってらっしゃい」

「がぁー! お前も行くんだよ!」

「あらあら、祐一さん、朝から怒ると体に悪いですよ」

「しくしく…… もうこんな生活嫌だ……」

「あらあら」

 

 

 

あの時は涙を見せてしまったけれど

 

今ならきっと笑顔で言える

 

 

 

「ごちそうさま」

「しくしく……」

「さぁ、泣いてないで早く学校行こうよ、私日直なんだから」

「もう怒る気力もないよ……」

「忘れ物はありませんか?」

「はぁ…… はい、大丈夫です」

「私も大丈夫だよ」

「それじゃあ……」

 

 

 

「いってらっしゃい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私には三人の子供がいる。

 

三人とも、とてもいい子だ。

 

 

 

<FIN>