「どうして祐一たちはお休みで、真琴だけお仕事なのよぅ!」

「だってお前しょうがないだろ、保育所は今日からなんだからさ」

「わたしたちはまだ夏休みだもんね」

「むー」

「ほら真琴、膨れてないで早く朝ご飯食べないと遅刻するわよ」

 

 

 

 


家族

−てのひらを太陽に−

エピローグ

2001/10/03 久慈光樹


 

 

 

 

 あれから数日が経過し、もうすっかり元気になった真琴。だが今日はすこぶるご機嫌斜めだ。

 

 真琴が見た夢について、俺たちは真琴自身の口から聞いていた。

 熱に浮かされて見たただの夢なのか、それとも真琴を心配したぴろが見せた夢なのか、それは分からない。

 だが真琴は今日も元気で、俺たちの前にいる。

 それだけで充分だった。

 

「むー、やっぱり納得できない! 祐一、今日真琴が保育所終わるころに迎えに来なさい!」

「ぶっ、何で俺が」

「もんどうむよう!」

「い・や・だ」

「なんですってーっ!」

「まぁまぁ、いいじゃない祐一、行ってあげなよ」

「そうですよ祐一さん」

「そうよそうよぅ!」

「くっ、みんなして…… 分かったよ、行きゃぁいんだろ、行きゃあ」

「よし!」

 

 まったく、嬉しそうな顔しやがってよ。

 

 

 

 

 約束通り、夕方保育所が終わりになる時間を見計らって真琴を迎えに行く。

 少し早かったらしく、真琴は園児たちといっしょに歌を歌っていた。

 オルガンを弾きながらも俺に気付いた保母の長森さんが微笑む。俺はそれに頭を下げて応えてから、しばらく待つ事にした。

 

 

 

 てのひらを たいように

 すかしてみれば

 まっかにながれる

 ぼくのちしお

 

 

 

 『手のひらを太陽に』か。懐かしいな、俺もよく小さい頃は歌ったっけ。

 その歌を聞きながら、真琴が夢の話を終えてから言っていたことを思い出していた。

 

 

『何のために生きているかなんてね、真琴にはわからない』

『でもね、みんな一緒にいたら、きっといつかわかるような気がするの』

『何のために生きているか、生きるって何か、きっといつかわかる気がするの』

 

 真琴は、そう言って笑った。

 俺や名雪や秋子さんが大好きな笑顔で。

 

「てのひらを太陽に、か」

 

 子供たちが歌う歌詞の通り、てのひらを沈みゆく太陽に透かしてみる。

 俺の中を流れる血が、赤く映え、俺が生きていることを伝えている。

 そう、俺たちは生きている、今この時を確かに生きている。

 

「いつか、答えが見つかるさ」

 

 何年後、何十年後、ひょっとしたら死ぬときかもしれない。だけど、きっと見つかる。

 俺たちが生きている意義が、きっと、見つかる。

 

「いや、ひょっとしたら……」

 

 もう俺は見つけているのかもしれない。

 俺たちが気付いていないだけで、それはもっとずっと近くにあるものなのかもしれない。

 

 子供たちと共に歌い、笑う真琴。

 その歌声を聞きながら、その笑顔を見ながら、俺はそんなことを考えていた。

 

 

 

 

 ぼくらはみんな いきている

 いきているから わらうんだ

 ぼくらはみんな いきている

 いきているから うれしいんだ

 

 

 

 

<FIN>