人は誰でも自分を偽って生きているんだと思う

 

誰かに嫌われないように

誰かに好きになってもらうように

 

自分の汚い部分

自分の弱い部分

 

そんなところを他人に見せないように

自分でも気付かない内に、自分自身をも偽って生きているんだと思う

 

人はそれに気付かないほうが幸せなんだろうか?

 

 

いや、本当はみんな気付いているのかもしれない

気付いていて、自分一人で抱え込んでしまっているんだ

 

でもそれはとても苦しい

 

自分がこんな人間だと他人に知られたら

もう誰も自分を好きになってくれない

みんな自分のことが嫌いになる

 

そんな強迫観念に脅えていなくちゃいけない

だから苦しい

 

でももし、そんな自分の隠している部分を分かち合える相手がいたら

自分を偽ることなく、ありのままの自分を受け入れてくれる相手が一人でもいたら……

 

 

きっとそういう人達のことを”家族”というのだろう

 

 

 

 


家族

Another Story

−偽り−

<エピローグ>

1999/10/10 久慈光樹


 

 

 

「おらぁーーーー起きろ名雪ーーーーー!!」

 

 すやすやと気持ちよさそうに眠る名雪の布団を剥ぎ取る。

 ……下掛け布団を。

 

 ごろごろ…… ごつん。

 

「うにゅ……?」

 

 わっはっはっ、ベットから転げ落ちやがった。

 

「うにゅう、なんか頭が痛いよ……」

 

 しかし恐るべきことに(?)いまだに状況が理解できていないみたいだ。

 

「ほら、朝ご飯だぞ。俺先に行くからな」

「まってよー」

 

「おはようございます、秋子さん」

「おはようございます、祐一さん。手のほうは大丈夫ですか?」

 

 俺の右手は包帯でぐるぐる巻きにされていた。

 昨日あれから秋子さんに治療してもらった。幸い縫うほどのこともなく、全治二週間くらいの傷だ。

 すげぇ痛いけど。

 

 少し傷が残るかもしれないとのことだったが、そんなことは気にしない。むしろこの傷を見るたび俺は一人じゃないんだということを思い出させてくれて、いいかもしれない。

 

「おはようございまふ」

「おい…… なんだそのぬいぐるみは」

「けろぴーはここ」

 

 名雪はいつものごとく眠そうだし。

 

「おはよう、名雪。トースト焼けてますよ」

「いや、秋子さん。この状況を見て何とも思わないんですか?」

「了承」

「いや、了承されても……」

 

 秋子さんもいつもの通りのマイペース。

 

 全てがいつも通り。

 いつも通りの水瀬家の風景。

 

 ズキン

 

 でも、右手の痛みが昨日のことは夢じゃないって教えてくれる。

 俺達が正真正銘の家族だということを教えてくれる。

 

 

 

真琴

早く帰ってこいよ

 

 

 

 もう何度心の中で繰り返したか分からない台詞。

 多分俺はずっと言いつづけるのだろう。

 真琴が俺達のところに帰ってくるまでずっと……。

 

 

 

真琴、俺な

俺もう自分を偽るのはやめにするよ

少なくとも“家族”の前では自分を偽る必要は無いって分かったから

 

辛いときは誰かにすがってもいいんだって

泣きたいときには泣いてもいいんだって

 

そう教えてくれた家族がいるから

だからお前のこと、これからもずっと待っていられそうだ

 

俺と

名雪と

秋子さんで

 

ずっとお前のこと、待っててやるから

 

 

だからきっと帰ってこいよ

 

真琴

 

 

 

 

<FIN>