Liner Notes

 自分の今まで書いた話に対する雑感です。
 あとがきというほど大したものではありません。久慈の主観に沿って書かれていますが、これが“答え”ではないと思います。読んで貴方が感じて下さったこと、それこそが“答え”なんです。こんなものは作者のただのマスターベーションです。それを言ったら二次創作自体がそうなんでしょうけれどね。

 公開した時期順に並んでます。
 順次追加予定。

 

家族
(1999/10/07 KanonSS 真琴 「にわか書店」さんに投稿)

 すべてはここから始まりました。久慈光樹の記念すべき二次創作小説第一弾です。
 当然のことながら今の私から見ても酷い出来です。あまりの酷さに途中一回改定が入りました。現在にわか書店さんで掲載して頂いているバージョンが初版です。HTML形式ですらありません。
 物語としての構成、文法表現、確かに全てが稚拙です。ですけれど一番純粋に「Kanonっていう作品が好きだ!」って気持ちが詰まっているかもしれません。
 何のために二次創作の小説を書くのか? 諸説あると思いますが、やっぱり元となる作品が好きでないと二次創作の意味が無いのかな、なんてことを思います。その意味から言えば、今まで書いた話の中では一番の“二次創作”かもしれません。
 初心に帰る意味合いも込めて、今でもたまに読み返したりしています。

 

家族 Another Story - 姉妹−
(1999/10/09 KanonSS 名雪 「にわか書店」さんに投稿)

 現在改定を入れるとすれば、まず一番にこの話だと思います。出来としては私が今まで書いたどの話よりも酷い。一人称と三人称の混同、心理描写の不足、強引な結末。思わず赤面してしまうような出来です。
 それでも改定も入れず放ってあるのは時間が無いと言う事もありますが、改定しようとするともうまるっきり別の話になってしまうという気がしたからです。ほとんど書き直しになってしまうでしょうね。
 1999年の10月に久慈光樹が書いた二次創作小説としてのこの話を書き直したくなかったのかもしれません。
 恥は恥でとっておこうかな、と。
 いや、それにしても酷い、名雪、ごめんな。

 

家族 Another Story - 偽り−
(1999/10/10 KanonSS 祐一 「にわか書店」さんに投稿)

 「自分はKanonという作品を通して何を受け取ったのか、それを自分でどう表現したいのか」そんなことを初めて意識して書いた話です。
 前2作が「ただ書きたいから書いていた」ことを考えると、この話が無かったら今の久慈光樹はなかったのかもしれません。
 初めての前中後編、初めてのテーマを睨んだ構成。もう酷く悩んで書いたのを覚えています。主人公である祐一くんに完全に自分を投影してしまっています。それが良いことなのか悪い事なのかは今でも何とも言えないところですが。
 そういえばこの話を書いた後に幾人かの方から初めて「感想」というものを頂いて、ひどく感激しました。本当にもう嬉しくて、一日中にやにやしていたものです。傍から見ればさぞや不気味だったことでしょう。
 現在でも続いている「家族」のシリーズですけれど、文法表現など表面的な部分はともかく、この話を超えるほどの思い入れある話を書くのが自分の中で一番の目標です。

 

家族 - 真琴のダイエット騒動−
(1999/10/12 KanonSS 真琴 「にわか書店」さんに投稿)

 前作「偽り」がちょっと重い話になってしまったため、今回はライトな話を目指そうと思い、書き始めました。
 話の筋すら満足に考えず書き始めたのが災いし、終わってみればこの時点で一番長い話になりました。
 基本は“どたばた”、間にちょっぴり“しんみり”をはさんでラストはまた“どたばた”で締める。図らずも割と綺麗な作りにする事が出来たのが印象的でした。
 私の中での真琴像が固まったのもこの話からですね。そういう意味では「水瀬真琴の本当のデビュー作」と言えるかもしれません。

 

その向こうにあるもの 電話
(1999/10/24 痕SS ALL 「学園の図書室」さんに投稿)

 初痕SS。痕も大好きな作品ですね。
 実はこのシリーズをSTEVENさんのサイトに投稿させて頂いたこと、今ではちょっぴり後悔しています。
 STEVENさんのサイト運営方針とはあまりにも離れた作風のシリーズであり、ひょっとしたら現在も迷惑なさっているかもしれません。
 初痕SSであると同時に、初HTML形式の話でもあります。タグの使い方を知って調子に乗り、これ以降のSSはタグ装飾を多用するというワナに陥ってます。正に初心者。
 話としてはプロローグ的なものです。千鶴さんを書いてみたかったんですよね。

 

その向こうにあるもの 今はまだ
(1999/10/27 痕SS 楓 「学園の図書室」さんに投稿)

 楓ちゃんです。
 ちょっぴり陰のある彼女のイメージとはだいぶ離れていますね。書いている時には気にならなかったのですけれど、いざ公開して頂いてから気になってしまい、読んでくださった方に掲示板でお伺いを立てたりしました。まぁこんな楓ちゃんもいいかなぁ、なんて今では自己満足してます。
 「失恋」はこれ以降のSSでも度々テーマとして扱っていますが、この話が全ての根幹にあるかもしれません

 

異能者 第一章 世界の破滅
(1999/10/27 ONE&KanonSS ALL 自サイト公開)

 現在でも続行中の「異能者」、第一章はこの時期に書きました。
 今でこそ自サイト公開ですが、第四章くらいまではりゅう太郎さんのサイトで公開させて頂いていました。この時点では自サイト持ってませんでしたからね。
 こんな無茶な設定の話をよくもまぁ臆面もなく投稿できたものだなぁ、と。当時は怖いもの知らずだったのだなぁ。
 異能者は構想だけで言えば家族よりも前から温めていた話です。テキストエディタに各キャラの異名と異能力を書き込んで一人悦に入っておりました。まさか陽の目を見ることになるとは夢にも思ってなかったのですけれどね。
 元ネタは言うまでもなく睦月周さんの「ジャイアントリーフ」ですが、直接書き始めたきっかけはリーフ図書館で読んだ『アルミテス』という作品に影響されたからです。リーフ図書館のONE作品は設定をある程度変えた異色作が多々あって、非常に興味深いですね。
 序章での人口比計算、だいぶ無理がありますが、その辺はまぁ読み飛ばされるところだからいいかなぁ、とか。Kanonの構成員が50人というのはあまりにも少なすぎだろうに……。ONEに至っては500人で日本支配という……。

 

KANON −IF− <赤>
(1999/10/30 KanonSS 祐一、名雪 「碧郎のHP」さんに投稿)

 いわゆる不幸物。登場人物が不幸になる話です。
 にわか書店さんで公開していただき、その後ずっと放置していたシリーズですね。
 今だから書きますが、当時にわか書店さんで公開していただいた時、中傷とも取れる感想をこの話に頂いたのです。本当にこの内容は酷かった。「もう書くな」みたいなことを言われました。
 今ではそういう類のメールは無視できるのですが、当時は非常に怒りかつショックを受け、しばらく何も手につきませんでしたね。
 そういう理由から、丸1年以上放置していた次第です。
 この度、意を決して続編を書き始めました。「徹底的に現実的に」。このスタンスを変えるつもりはありません。
 礼節をある程度守った上でのご批判はむしろ望むところです。

 

異能者 第二章 振り続く雨
(1999/11/07 ONE&KanonSS ALL 自サイト公開)

 異能者、第二章は茜VS真琴、澪VS名雪です。Kanon側絶体絶命の状況で引きました。
 プロット段階では精神的プレッシャーに堪えかね、切れた名雪が澪の首を締めるという展開だったのですけれど、そこまでする度胸はありませんでした。今なら躊躇い無くそうしたでしょうけれどね。
 戦いを忌みながらも勤めて冷徹に振舞う茜をうまく表現できませんでした。単なる冷血女ですね、これじゃ。
 この頃は戦いに何の駆け引きも無く、読んでもあまり面白くありません。まぁ今が面白いかと言われると……なのですけれどね。
 この時点では秋子さんに異能力を持たせるかどうか、決めかねていました。

 「私が出るわ」
 「え!? 水瀬指令自ら……!」

 となった時点で祐一が到着。この方がよかったかも。

 

言霊
(1999/11/08 痕SS 千鶴 「碧郎のHP」さんに投稿)

 KanonIFの中傷事件、および私生活での軋轢から、これを書いた時期は精神的に少しまいっていました。言葉というものの曖昧さ、伝わる思いの少なさ。それらに悩み、そして天恵とも言える阿倍碧郎さんからのアドバイスを受け、書き上げました。
 何とも直球勝負で、表現の妙も何もあったもんじゃない話ですが、当時そこまでの精神的余裕が無かった現われかもしれません。
 「言葉」をテーマとした話はこの後も何作か書きましたが、全ての根幹はこの話にあり、以降は言い回しが変わっただけになっています。
 今でもお付き合いのある“らすのうさん”とお知り合いになるきっかけとなった話でもありますね。

 

その向こうにあるもの 家族になるということ
(1999/12/05 痕SS 千鶴 「学園の図書室」さんに投稿)

 当時皆さんから「完結かと思った」と言われました。これで完結にしておいた方が話として綺麗だったかもしれません。
 またしても直球勝負、正直今は読むに堪えません。
 「家族」というテーマを一番端的に表した話であるにも関わらず、同テーマ中では一番嫌いな話です。あまりにも表現や展開が直接的過ぎです。
 自らの表現したい事を直接的に文中に表したのでは、エッセイとなんら変わりはありません。その点を今は気をつけるようにしています。

 

帰るべき場所
(1999/12/07 痕SS 楓 「碧郎のHP」さんに投稿)

 私が書いた数少ない痕SS中では、この話が一番気に入っています。
 前半部分は主人公を耕一であるとミスリードさせる作りになっているのですが、さて皆さん騙されてくれたでしょうか?
 この時期、色々と作風やら書き方やらに試行錯誤していました。ピエロは多芸で客を楽しませてナンボ、“久慈と言えばこんな話”というものを作りたくなくて四苦八苦していました。
 前半部分は台詞、心理描写一切なしという試みに挑戦しています。中途半端に終わってしまった事がちょっぴり心残りですが、ラストは割と気に入っています。
 手紙の部分、スピッツの“楓”を意識したのですが、あまりにも直接的過ぎて文章として支離滅裂ですね。
 小説を書く場合に擬音を文字で表現する方法、私はありだと思います。確かに安直に用いるべきではないでしょうが、効果的に用いれば間を表現する最大の武器になると思います。この話では試みましたがイマイチ効果的ではありませんでしたね。

 

家族 Another Story - 同心円−
(1999/12/09 KanonSS 名雪 「にわか書店」さんに投稿)

 −姉妹−にて名雪の心理描写があまりにもお粗末であったため、その補完として書いた話です。
 睦月周さんのエッセイ、「同心円上の隣り合わせ」を引用として拝借しました。
 その甲斐もあり、自分では満足のいく話になったと自己満足。名雪に関しては少々辛い展開ですが、彼女なりにけじめをつけてあげられたかな、と。
 これ以降、家族のシリーズ中では祐一にやきもちを焼いたり照れたりする名雪ですけれど、ああいうさっぱりとした気持ちになれたのはこの話があればこそでしょう。
 まぁ祐一のことを完全に諦めたのかは彼女のみ知るところですけれど。
 “長森先生”は今後ともレギュラーとして頑張ってもらう予定です。
 名雪と瑞佳は書き分けが難しいですね。そこら辺もだいぶ苦労しました。

 

小さな天使
(1999/12/12 ONESS 瑞佳 「Lasnow's Room」さんに投稿)

 −同心円−で登場した長森先生のお話。テーマ的には『言霊』と被っています。
 私の書く二次創作中では長森は一貫して保母さんであり、浩平と結ばれることはありません。そのうちに違う設定で書くかもしれませんが、今のところ全てそうです。
 化粧をするようになった瑞佳に、ひょっとしたら違和感を感じる方もいらっしゃるかもしれない、と危惧していたのですが、化粧の描写は割合に好評でちょっと意外でした。
 保育園児の描写も割と苦労しましたね、子供を子供らしく書くというのは存外に難しいものです。本当の保育園児はもっとませた言葉遣いをするものだと思うのですが、それだとどうしても読んで違和感があるのですよね。結果として子供子供した口調と描写になってしまいました。

 

静謐
(1999/12/20 ToHeartSS ? 「碧郎のHP」さんに投稿)

 IRC#あゆあゆでの記念すべき第一回競作(テーマ「声」)、その出展作です。自分的には結構満足のいくものに仕上がりました。
 『帰るべき場所』で中途半端に終わった試み、登場人物の台詞も心理描写もない書き方を、より徹底してみました。
 テーマが「声」でしたから、小説における「声」である台詞を一切削り、逆説的にテーマを表現してみようと。
 初めてのToHeartSSですが、キャラの固有名詞すら一切がっさいを削りました。最初に書き上げたときはこの1.5倍くらいボリュームがあったのですが、推敲時に削りに削りましたね。結果として私は良い方向に作用したと思っています。
 ただ全てが思い通り進んだかと言うとそうでもなくて、やっぱり今から見るともう少し何とかならなかったかなぁと思う部分も多々あります。主人公である男が、妻の思い出と幼馴染とのしがらみに苦悩する部分、もう少し丁寧に描写すればもっとラストの決断が生きてきたと思うのですけれど。
 思い入れという点からみれば、今まで書いた話では一番かもしれません。

 

家族
(1999/12/21 改訂 KanonSS 真琴 自サイト公開)

 俗に言う「処女作」であるところの『家族』、3ヶ月経ったこの時点でもう堪え切れずに改定を入れています。
 改定に際し、話の筋を曲げることだけはすまいと思いました。それを変えてしまったらもう違う話になってしまうような気がして。
 結局変わったのは末端の表現部分だけですが、この判断は間違っていなかったと思ってます。

 

異能者 第三章 変貌
(1999/12/24 ONE&KanonSS ALL 自サイト公開)

 クリスマスイブに一人寂しくSS書いている様が目に浮かぶようです。
 第三章は真琴VS茜に焦点を絞って書いています。この2人を書いただけで章が終わってしまったと言うのが正直なところですが。
 真琴の変貌は前半の山場とすべく、気合入れて書いたのを覚えています。獣化は真琴の設定を考えていた当初から、彼女の為にあったような設定です。後の『永遠の獣』は真琴のこの異能力のパクリですからね。
 茜が、仕留めきれなかった真琴が生きていることに安堵する場面、やっと彼女の本質を少し表現できたような気がしました。
 両者ノックアウトはやっぱり少年漫画的にはディフォでしょうねぇ。

 

家族 元旦特別編 - 4人の願いは−
(2000/01/01 KanonSS ALL 年賀SSとして寄贈)

 今年こそ時間が無くてできませんでしたが、2000年の元旦はお知り合いの方にSSをメールで送りつけるというDMまがいのことをしておりました。これはその時に書いた話です。
 書き始めたのが12月後半になってからでしたから、ろくに推敲も出来ずにお送りする羽目になってしまいました。おかげで秋子さんが振袖を着ている始末です。振袖は未婚女性が着るものだという知識は、このときの久慈にはありませんでした。恥ずかしい……。
 初めて天野さんを書いた話でもあります。ちょい役ですけれどね。
 舞と佐祐理さんの冷やかしが一部で好評だったのはちょっと意外でした。

 

ある朝のひげき
(2000/01/10 KanonSS 名雪 「Lasnow's Room」さんに投稿)

 当時らすのうさんから「らぶらぶな作品を書け」という指令を受け、私なりに善処した結果、どこをどう間違えたのか出来上がったのがこの話です。記念すべきミレニアムの最初がコレですから、なんともはや……。
 もうこれは勢いだけで書いたと言っても過言ではないでしょう。かなりの壊れっぷりです。たまにどうかするとこういう“油断した”話を書いてしまうのですよね。
 名雪がキャラ違いますね。これじゃあ七瀬です。その点は非常に反省しています。やっぱり勢いだけではダメだな。
 タグ修飾を乱発する悪い癖は未だおさまってません。

 

異能者 第四章 紅と永遠と
(2000/01/31 ONE&KanonSS ALL 自サイト公開)

 第四章は実質的に浩平くんの一人舞台ですね。彼の緊迫感の無さはああいった形で表現しましたけれど賛否両論あると思います。
 これ以降浩平くんの出番が減り、その辺不満な方もいらっしゃるようです。まぁ伝家の宝刀は抜かないからこそ価値があるのです。
 浩平くんと祐一くんの関係、この章でちらりとヒントが出てきます。まあ兄弟だったというオチはない、とだけ言っておきます。
 らすのうさんにご考案いただいた柚木詩子さん初登場です。彼女は使いどころが難しいですが、また登場してもらう予定でいます。

 

月ノ光
(2000/02/13 痕SS ALL 「Lasnow's Room」さんに投稿)

 IRC#あゆあゆ、第二回競作(テーマ「バレンタイン」)の出展作です。
 最初に書くならこの話、完全に失敗作です。ネタ自体にオリジナリティもありませんし、だらだらと無駄に長い文章ですし。とにかく締め切りに追われてしまって納得いくまで推敲できなかったSSですね。
 本来ならばそんな不完全なものを公開するべきではないのでしょうけれど、この時の競作は規模が大きくて参加者もたくさんいらっしゃいましたのでまぁいいやと出してしまいました。
 結果として#あゆあゆ常連の皆さんの素晴らしい作品に、ひどく劣等感をかき立てられる結果となってしまいました。やはり妥協すべきではなかった。
 これに懲りて第三回競作(テーマ「卒業」)は未参加とさせてもらいました。締め切りに追われるのはもうこりごりって気分になったことを今でも覚えてます。

 

その向こうにあるもの ライラック
(2000/02/21 痕SS 梓 「学園の図書室」さんに投稿)

 『月ノ光』はこの『ライラック』をベースに間に合わせで書いた話でした。内容的に被る部分が多々ありますが、オリジナルはこっちです。
 作中で用いたライラックの花言葉、「初恋の痛み」はSFC「弟切草」より。
 前世等の繋がりを無視すれば、一番耕一に近かったのは梓でしょう。ひょっとしたら一番純粋に耕一を想っていたのは梓かもしれない。そんなことを考えて書きました。
 うまくまとめきれず、長くなってしまいました。このテーマ、題材で簡潔に短編にまとめる事ができないところが、私の力量不足を如実に表しています。
 このシリーズ、この話でずっと止まってしまっていますが、ここで完結を謳ってしまってもいいかなと思っています。もとより失恋をテーマに初音を書くつもりは最初からありませんでしたから。
 欲を言えばもう一本、千鶴さんメインに締めを書ければなぁなんて考えています。

 

家族 Another Story - 三人の子供−
(2000/02/23 KanonSS 秋子 「にわか書店」さんに投稿)

 Kanon本編、真琴シナリオ終盤、最後に家を出るとき真琴が秋子さんに対して口の動きだけで何かを伝えようとする場面、私はやはり「おかあさん」と言ったのだと思っています。
 それを題材にしたのがこの話です。本来ならばもっと話を膨らませるべきだったのでしょうが、あえて言葉足らずの構成にしました。
 結果としてこれはこれでよかったと思っています。物語とは言えませんけれど、たまにはこういう構成もありかな、と。毎回こんなのばっかりでは困りますけれどね。
 自分的にタグを一番効果的に使えた話ではなかったかと思います。

 

星群れの輝き
(2000/02/27 KanonSS 祐一 「Studio Nocturne」さんに投稿)

 pineさんのオリジナルMIDI『星群の輝き』を聴いていたく感動し、即興で書き上げたSSです。曲からイメージを受けて書いたのは初めての経験でしたが、面白かったです。
 投稿させていただいた中では唯一投稿先のサイトさんに掲載していただいてないSSです。やっぱご迷惑だったかな、ははは……。
 元ネタはテレビで見た「ドラえもん のび太の結婚」だったりします。青年になったのび太が小学校の担任の先生と一緒に見上げた満天の星空。あのシーンは非常に綺麗でした。
 音とビジュアル、視覚的聴覚的にイメージ先行型の、今までにはない書き方をした話です。このSS以降、常にビジュアル的に思い浮かべやすい描写を心がけています。そういう意味では結構ターニングポイント的なお話だったのかな、なんて今にして思います。

 

異能者 第五章 誰が為に
(2000/02/28 ONE&KanonSS ALL 自サイト公開)

 初めてのインターミッション的な章であり、戦闘シーンが一切登場しない章です。前半は読者の方を引き込む意味合いも含め、展開的に突っ走ってきましたのでここで一息つきました。
 やっぱりその点に不満を持たれた方も多かったみたいです。主人公である祐一くんの思考が割と後ろ向きだったこともあり、ちょっと面白味に欠けるという感が否めません。
 さりげに冒頭に非常に重要な伏線が何気なく置かれております。8年前の描写ですね。まぁ現在では忘れられた方が大半と思いますし、正直少し早くに書き過ぎたかなという気もしていますが。
 余談ですが祐一くんに手紙を書いた夕実ちゃんという女の子、『小さな天使』にも名前が出てきていますし、『真琴のダイエット騒動』でも登場しています。オリキャラというにはあまりに端役ですが、オリキャラ嫌いの久慈にはこの程度が丁度いいのかも

 

春の風
(2000/04/10 KanonSS 真琴 「Lakeside Pensio」さんに投稿)

 メインタイトルこそ違え、『家族』の設定をそのまま流用しました。あまり親しくない方への寄贈用ということで、シリーズ付けするのも失礼かと思い、単独でもわかるように書きました。
 この話で一つ試みたのは、Kanonという原作をプレイしたことの無い方にも分かるように、そしてプレイした事のある方にも違和感無いように、そんな書き方するということです。
 結果としては失敗で、常連の方から「説明部分が気になった」というご意見をいただきました。原作を知らない方にはきっと説明不足だったかと思われますので、やはり失敗だったかもしれません。どっちつかずになってしまいました。
 ラスト、さあ夜桜見物だというところで唐突に終わってしまう点は意識してそうしました。もう少し後まで読んでみたいというくらいで終わりにするのも一興かなと。この点も随分とご指摘をいただき、あんまり意味の無い事はするまいと反省しました。

 

でもやっぱりネコが好き!
(2000/05/25 KanonSS 名雪 「碧郎のHP」さんに投稿)

 今にして思えば、よくもまぁこんなものを投稿できたものだと思いますね。
 阿倍碧郎さんとはかなり親しくさせていただいていますので、こういう暴挙も許されるかなぁと。ごめんね、碧郎さん。
 俗にいう「不条理ギャグ」に挑戦してみたのですが、あえなく敗退。やはり私にはギャグは書けないなと改めて痛感させられた話です。というか全然面白くないな。
 そのくせ割と反響というかご意見をお聞きする機会の多かった話であり、やっぱりこういう肩の力を抜いたどうでもいい話には、気軽に意見を言えるものなのかもしれないな、なんて思いました。
 ばかでかい猫の気ぐるみを着てベッドに腰掛ける名雪のイメージは、思い浮かべたときには面白かったのですけれどねぇ。

 

重力に挑戦状
(2000/05/25 KanonSS 名雪 「碧郎のHP」さんに投稿)

 これも上記のSSと同時期に書いた、不条理ギャグ挑戦後敗退のお話です。
 今思い出しましたけれど、これと上のSSは丁度次の日に仕事で山形県に納品に行かなければならなかった晩に、追い詰められて書いた話です。土壇場で不具合が発覚し、夜中私一人で半泣きになって修正していたときでした。ああ、あの時は辛かったなぁ。
 夜中4時過ぎて、もうなんか全てがどうでもよくなってしまい、「ああもうSSでも書こう」とか思いついたんです。完全に現実逃避です。結局次の日の納品は散々で、山形に一週間近く泊り込みでした。
 なんか嫌な事思い出しちゃったなぁ。
 帰ってきて、そのどうでもいいや加減のまま投稿してしまったのです。碧郎さん、重ね重ねごめんなさい。

 

“人生”と言う名の舞台
(2000/05/26 ONESS みさき 「すなふさんな本棚」さんに投稿)

 すなふさんのお誕生日ということでお送りした話です。誕生日にこんな暗い話を送るなんてほとんど嫌がらせに近いものがありますね。すなふさん、ごめんなさい。
 これもちょっと直接的過ぎて、せっかくの新しい試みをどぶに捨ててしまっています。もう少し丁寧に書けば良かったのですけれどね。
 何の資料も見ずに書いたため、舞台台本を見た事のある方からすれば間違いだらけかもしれません。
 余談ですが、『五体不満足』という障害を持った方が執筆なさった本を読んだ事があります。有名な本ですので、読まれた方もいらっしゃるかもしれません。色々なことを感じました。本当に色々な事を。諸手を挙げて賛同は正直できない部分もありました。それどころかもっと酷い事を考えたりもしました。うまい商売だな、とか。
 この話は丁度その時期で、自分の中で全然整理できていない事をむりやり文章に積め込んだのがよく表れています。

 

なんにもない日
(2000/05/29 EVASS シンジ、アスカ 「Imagnation Factry」さんに投稿)

 初めて書いたEVA小説です。完全に雰囲気優先で、山も無ければ谷も無いというまるでどこぞの新作ゲームのような文章になってしまいました。
 神風さんが自サイトで「詩的な」という好意的な紹介をして下さってましたが、相当にコメントに苦しんだ末のお言葉だったのではないかななんて思っています。これは私でもコメントに困りますから。
 EVAの二次創作小説はひょっとしたらゲームのそれよりも多く読んでいるかもしれません、今は下火になったとはいえ一時期はすごい勢いでしたからね。傑作も多かったです。
 あの魅力はやっぱり長編じゃないと表現できないかもしれないと、そうそうにドラマチックな展開は諦め、こんなお話になりました。
 いつかは気合の入った長編を書いてみたいですね。

 

異能者 第六章 現在(いま)、そして未来(あした)
(2000/06/08 ONE&KanonSS ALL 自サイト公開)

 前章から3ヶ月以上間が空いてしまいました。この時期は本当に限られた方しか読んでいらっしゃらなかったと思うのですが、それでも読んでいただいていた方から「本当に久しぶりの異能者ですね」と言われて、自分でもびっくりしたのをよく覚えています。自分ではそんなに間を空けたという認識は無かったんですよね。
 ラストに少しだけ登場する舞と佐祐理さん、そろそろ話を動かさないとまずいなと思い、顔見せ程度に出しました。
 H&C社製サブマシンガン、MP5SD6の設定を調べるだけで丸一晩かかりました。次の日会社が辛かったです。消音銃であるのはリアリティの追求などでは全然なく、ただ単にそれしか資料が見つからなかっただけです。
 序盤で浩平くんが名雪と真琴についてなにかしら秋子さんに確認しています。この辺は非常に重要な伏線の一つですね。後々タネあかしをしようと思っています。

 

剣、藁人形、そして記念日
(2000/07/02 KanonSS 舞、佐祐理 「Pleces's Homepage……」さんに投稿)

 『でもやっぱりネコが好き!』『重力に挑戦状』で「ギャグは無理だ」と思い知ったので、今度はコメディに挑戦してみました。そんな実験作をぬけぬけと投稿してしまうあたり、やっぱり暴挙です。し〜らいさん、ごめんなさい。
 この話ではあまりキャラを崩し過ぎないように注意しました。キャラを壊して書いて面白いのは、よほどコメディないしギャグを書き慣れた人だけですからね。素人が迂闊に手を出すと、ファンを怒らせて終わりです。
 佐祐理さんはこれがギリギリのラインかと思いましたが、既に手遅れの感もあり。ちょっと悪乗りし過ぎたかも。
 最大の失敗は、やっぱりオチがいまいち盛り上がらなかった点ですね。もうちょっと意外性を持たせるか、もうひと山用意するべきでした。読者の予想範囲内で終わらせるのなら、もっとパンチが効いていないとダメなんだなということを学びました。

 

かぞくがいでん みなせさんちのぴろくん −真琴ちゃんはいじっぱり−
(2000/07/20 KanonSS 真琴、ぴろ 「日だまりの季節」さんに投稿)

 一度こういう語り口に挑戦してみたかったんです。絵本口調というか、NHK教育のお姉さん風というか。
 実を言うと、真琴シナリオエンド後の話を書き始めた当初から、真琴が帰還した際の描写は絶対に書かないでおこうと決めていたのです。あまりにもベタな話になってしまいそうで。
 この話ではそのベタさを逆手にとって描写できればなと思い、あえて書いてみました。結果としては100%ではないにせよ、そこそこ成功したかななんて自己満足してます。こういう語り口調の話にはやっぱりベタな内容が一番ぴったりきますね。
 さりげに真琴がぴろと意思の疎通をしていますけれど、その辺はこういう系統の話にはお約束ということで。
 そういえば栞ちゃんがこの話にも登場してますね。密かに彼女は水瀬家一同を除けば『家族』シリーズに一番登場しているかもしれません。

 

かぞくがいでん みなせさんちのぴろくん −真琴ちゃんは大よわり−
(2000/07/20 KanonSS 真琴、ぴろ 「日だまりの季節」さんに投稿)

 これも上の話と一緒に投稿した話です。
 これらを書く際、一番気を遣ったのは漢字をどこまで平仮名に崩すかということでした。あんまり平仮名ばかりだと読み辛いし、かといってあまりに漢字が多いと雰囲気が出ないし、と四苦八苦しました。推敲の時に一番直したのはそのあたりですね。画数の多い漢字だけを平仮名にしたのではダメだとは思いもしませんでした。
 名雪ちゃんに“じごくのほうよう”を受けたあと、部屋で拗ねまくるぴろくんの描写、もう頭の中に完全にイメージが出来ていたのですが、それをうまく表現できなくて苦労しました。文章だけで絵的に表現するというのは本当に難しいのだなとつくづく思い知りました。
 今回は名雪ちゃんの話でした。機会があれば秋子さんや祐一くんも書いてみたいですね。

 

異能者 第七章 求めるは、力
(2000/08/29 ONE&KanonSS ALL 自サイト公開)

 この時期は異能者一色でしたね。このシリーズが色々な方から「読みました」という感想をいただけるようになったのもこのあたりからです。
 どうもこの章で留美に負けてから、祐一くんに負けぐせがついてしまったような気がします。本当に彼はKanon最強なのでしょうか? ここでは留美の圧倒的な力量をアピールするために彼に負けてもらったのですが、それ以前に彼をもっと活躍させておくべきだったなとちょっぴり今になって後悔しています。
 氷上シュンくん初登場です。彼はもっと漠然とした存在とする予定だったのですが、浩平くんと同じで作者の意図するように動いてくれないキャラですね。勝手に思わせぶりなことを口走るし。
 舞&佐祐理さんとの邂逅は、PS『久遠の絆』平安編の導入分を意識しています。水浴びをしているのが舞ではなく佐祐理さんであるあたり、これ以降の舞の影の薄さを象徴しているような……。

 

異能者 第八章 復讐という名の枷に
(2000/09/04 ONE&KanonSS ALL 自サイト公開)

 第八章から第十章までは元々一章分として書いていたのですが、あまりにも内容が肥大化してしまい急遽2つに分け、それでも大きくなりすぎて最終的に3つに分けました。元々は一章だったのですよね。なので第八章と第九章はサブタイトルが繋がっています。二章で一つの意味なんですよね。
 ひょっとしたら異能者では一番反響のあった章かもしれません。「佐祐理さん怖いです」というご意見を色々な方からいただきました。私もちょっと悪乗りしてしまって、彼女の一種狂気じみた描写をノリノリで書いていました。
 今という時がいつまでも続けばいいと願う舞の描写から、一転して佐祐理さんが豹変するくだり、我ながらうまくいったかなとこれまた自己満足しています。
 引きもうまく引けたと思ってます。私はどうにも引きが苦手で、次が気になってしょうがないというところでうまく終わりにできないのですよね。まああまりやりすぎると「はよ続きを書け」と急かされることになりますから、これはこれでいいのかも。

 

異能者 第九章 縛られし者
(2000/09/15 ONE&KanonSS ALL 自サイト公開)

 引き続き佐祐理さんです。
 留美VS舞の戦闘描写と佐祐理さんに追い詰められる祐一の描写を交互に挿入する形式、一度こういう静と動の描写をやってみたかったのですけれど、思った通り祐一&佐祐理さんパートのネタが先に尽きてしまい引き伸ばしに非常に苦労しました。結果としてあまり効果的に使えませんでしたね。残念。
 実はこの章で一番書きたかったのは、佐祐理さんの狂気の結末でもなければ祐一の変貌への布石でもなく、舞の喪失感だったのですよね。幸せを意識した直後だっただけに、その喪失感は大きかったでしょう。そのあたりうまく表現できたかどうか今でもあまり自信がありません。
 今回も引きはうまくいきました。やはり一章一章細切れで書くのではなくて、続けて書かないと魅力的な引きにはならないのかもしれませんね。

 

異能者 第十章 終わりと始まり
(2000/09/22 ONE&KanonSS ALL 自サイト公開)

 この章はバトル一色ですね。元々舞編はこの戦いの描写を一番初めに書いて、そこから肉付けしていくというなんともわけのわからない書き方をしました。結果としてなんとかまとまったから良いようなものの、下手をすれば空中分解でした。
 またしても冒頭で浩平くんとシュンくんがやってくれました。特に浩平くん、そんな思わせぶりなことばかり言わないでくれ……。
 永遠の獣VS舞&留美の戦い、ここは完全に頭の中で展開がビジュアルとして出来あがっており、それをいかに文章として描写するかに腐心しました。書いていてとてももどかしかったですね。
 そして舞の『五身魔創陣』(フィフスナイトメア)、やっと使うことができました。分身の術って大好きなんですよね。元ネタとなった漫画「ウィザードリィ」で、忍者であるサンザが使った「鳳龍幻影陣」、カッコ良かったなぁ。舞を出したときから使おうと決めていました。
 七瀬の台詞「切り札っていうのは、最後の最後まで取っておくものよ」も、七瀬を出したときからいつか言わせようと思っていたので満足です。

 

異能者 第十一章 姉弟
(2000/10/03 ONE&KanonSS ALL 自サイト公開)

 これはプロットも無く、本当に思いつきで書いた話です。
 丁度これを書いた時期に、ドリームキャスト版Kanonが発売になりまして。名雪の声に悪い意味でショックを受けたと同時に、佐祐理さんシナリオでの語り部分に非常にショックを受けました。
 あの語り部分だけでこのゲームに音声を付けた価値はあったと思っています。必聴ですよ、あれは。
 淡々とした口調の中にもどこか押さえつけた激情が感じられる。ああいう演技ができてこそのプロなんでしょうね。この声優さんは要チェックです。川上とも子さん、だったかな?
 とにかくあれに影響を受け、少しでもあの熱演を表現してみたくて書いた話です。どうせ書くのならと少しだけ伏線を張って、幼少の祐一くんたちを描写してみました。
 始終影の薄かった舞ですが、結局佐祐理を救ったのは舞の優しさでした。誰も悪くない。その結論は非常に無責任かもしれませんけれど、この場合は完全に正しいのではないかと思っています。誰が悪いわけでもないのにどうしようもない結果になってしまう。悲しい事ですが、そういう状況は多分にしてあります。現実世界での民族紛争なんてその主たるものかもしれません。
 この章で舞編は終わりです。終わってみれば思いもよらぬ長丁場となりました。

 

もしも翼があったなら 序章 笑顔と共に
(2000/10/13 KanonSS 祐一、名雪 「最果ての地」さんに投稿)

 作者自身が言うと非常にいかがわしい言葉の一つに、『代表作』というものがあります。私自身、きっとこういう言葉を他者の口から聞いたなら、「自分で言うか」と思うことでしょう。
 ですけどあえて言います、この話は現時点の久慈光樹の『代表作』である、と。
 書くことを決めたのが確か2000年の夏くらいだったと思います。そこからプロットの組み立て、資料収集を始め、実際に書き始めたのが秋口くらいでした。
 時間をかければいいというものでもないでしょうが、ここまで時間をかけて、こだわった話は始めてでした。逆を言えば、そこまでこだわった話を書いてみたかったんです。
 今までのSSに手を抜いていたわけでは決してないつもりですが、今の自分を全てぶつけるつもりで書きました。
 序章に関しては本当にさわりの部分です。祐一たちの近況説明。序章とはいえ、ただそれだけのために1章使ってしまったのは、今にして思えば失敗だったと思います。長編で一番大切なのは最初の入りだと思いますから。

 

もしも翼があったなら 第一章 それは、予感
(2000/10/13 KanonSS 祐一、名雪 「最果ての地」さんに投稿)

 今だからこそ言えるのかもしれませんが、このシリーズを書いている時は完全に気負いが先に立っていた気がします。「この話がダメだったら、スパッと創作はやめよう」とまで思いつめていましたから。
 結果としてそれが良い方向に働いたのか、それとも悪い方向に作用したのか。未だに自分では判断つきかねる状況です。
 第一章も静かなあまり動きの無い展開です。のっけから動きを持ってくる普段私が心掛けている事とは図らずも正反対になりました。この辺もやはり気負いから来ていたのかもしれません。
 序章、一章を読んで、「なんかあんまり面白くないな」と読むのを止めてしまった方もいるのではないかと、ちょっぴり不安だったりします。
 医師として浩平を持ってきたのは私的には必然でした。このシリーズは祐一と名雪の話であると同時に、浩平と留美の話でもあります。

 

もしも翼があったなら 第二章 ささやかすぎる奇跡
(2000/10/13 KanonSS 祐一、名雪 「最果ての地」さんに投稿)

 二次創作小説においての“死”というモノの扱い。
 決して軽軽しく扱ったつもりはありません。私なりに悩みました。事前に色々な方からご意見もいただきました。
 話の展開としての、登場人物の死。話を進める上での、道具として使ったという謗りを受けるかもしれないという不安。
 でもやはり、祐一の母は死にました。私が、この手で、殺しました。たとえ創作であっても。
 これは色々な方にいただいた感想のお返事として返した内容ですが、繰り返します「私がこの話をもう一度書くとしても、きっと同じ展開になったと思います」
 やっぱり今でも、完全に冷静にはなりきれていない証かもしれませんね。

 

幸せになろうね
(2000/10/16 KanonSS 名雪 「マウントアイランド」さんに投稿)

 例のシリーズはしばらく置いて、明るい話です。
 この辺になると投稿させていただくのもだいぶこなれてきて、ハッピーエンドまたはそれに準ずる話ばかりになってきます。体よくお茶を濁すと言えなくもありませんが。
 この話はたぶん前半の手紙部分が全て、後半は蛇足だったのでしょう。詩的な言葉の羅列で終わるのではなく、「物語」として形にしたいという私のこだわりの表れだったのかもしれません。まあ手紙部分が詩的とはとても言えないのですけれど。
 ちょうどこの時期、会社の先輩がご結婚なされ、披露宴にお呼ばれしました。せっかくの経験なのだから趣味にも生かそうと思って書いた話です。
 私自身もせめて後輩のご祝儀を払うハメになる前に、何とかしたいものです。

 

異能者 第十二章 剣なき戦い
(2000/10/23 ONE&KanonSS ALL 自サイト公開)

 舞編も終わり、例によってインターミッションです。しばらく出番の無かった名雪に頑張ってもらいました。
 どうも後から考えると、この話でやろうとした戦略謀略面での駆け引きが、今後のシリーズにおいての方向性を決めた、結構重要な章となったように思います。本当はもっと火花の散るような謀略戦を書いてみたかったのですけれど、所詮私の筆力ではこの辺が限界でした。
 名雪の口調に違和感があるというご指摘をいただき、ちょっぴり意外に感じたりもしました。私としては、この場合名雪は公式の場で公人として起っているわけですから、普段通りの口調である事こそおかしいという意識だったのですが……。どちらにせよこのようなところでこのような言い訳を書いている時点で失敗なのでしょう。精進せねば。
 やっぱり名雪は書きやすいな、と再認識。これ以降当分出番は無くなるのですけれどね。

 

もしも翼があったなら 第三章 比翼連理
(2000/11/01 KanonSS 祐一、名雪 「最果ての地」さんに投稿)

 比翼の鳥、連理の枝。いつか二次創作で使おうと前から温めていたネタです。
 これに限らず、このシリーズでは出し惜しみなしで全てのネタを注ぎ込んだという印象です。そういう面でも全力でした。
 起承転結で言えば二章に続き承にあたる章です。下手なシャレみたいですね。
 プロットを念入りに固めたこともあり、普段はとても難しくて手出しできない起承転結にも挑戦しました。ですがこれは結果から言えばお粗末な物で、結に全てが集約してしまうということになりました。本来、起承転結では転にもっとも力を入れ、結ではそのまとめを書くだけなのだそうです。これは後日本を読んで知りました。
 序章一章が起、二章三章が承、四章五章六章が転、終章が結です。

 

もしも翼があったなら 第四章 逡巡
(2000/11/01 KanonSS 祐一、名雪 「最果ての地」さんに投稿)

 この章は祐一の父を描写したくて書いたようなものです。彼について言及すれば、久慈光樹の中にある理想の父親像そのものといえるかもしれません。別に私は片親というわけではないですし、父に不満を持っているわけではありませんが。
 ONE、Kanon、Airに共通する、父性の欠如。別にそれを埋めるといったご大層な考えがあったわけではないのですが、やはり父親の描写は欠かすことの出来ぬ課題でした。
 彼に最後まで名前がなく、「祐一の父」としてしか書かれていないのも、この辺から来ているのかもしれません。
 軍事予算関連の話が浮いている印象ですが、これは表には出てきませんが実は今後の展開における重要な伏線となっている…… わけでは全然無く、単に私の趣味です。 

 

異能者 第十三章 翼もつ少女
(2000/12/01 ONE&KanonSS ALL 自サイト公開)

 出だし、シリーズ中では珍しく、ほんのちょっとコメディタッチになっています。
 これには実は裏話として、出だしがあれでしたのでどうも調子が狂い、半分くらいまで書いて結局全て削除したという苦いいきさつがあります。あのまま書いていればきっと『異能者』はコメディになっていたことでしょう。恐るべし、『熾天使』。
 栞編と銘打ちつつもあゆの描写に終始してしまうあたり、どうにも救いようがありません。でも実質あゆをきちんと書いたのは初めてでしたので、ちょっと不安な部分もありました。きちんと「あゆ」しているでしょうか?
 ラストはお馴染みのわけがわからない伏線っぽい感じ? といった終わり方です。みさおはともかく、長森は今後も台詞はほとんどないでしょう。

 

KANON −IF− <赤>
(2000/12/04 改定 KanonSS 祐一、名雪 「碧郎のHP」さんに投稿)

 この話を書いてから一年と一ヶ月、ようやく続きを書き出す気力が充電され、まずはこの話の改定を入れました。
 改定の際、一番苦労したのは人称の統一です。初期に書いた話の常、一人称と三人称が何の前触れも無く混在し、よくもまあこのような話を臆面も無く投稿できたものだと改めて呆れ返りました。
 過剰なタグ装飾もなんとかしたかったのですが、これに関しては匙を投げました。もうどうしようもないです。
 一般に「ダーク」と称されるジャンルの話は、確かに後に残るものがあります。それは後味の悪さであったり不快感であったりするのですが、読み終えた後に何も残らないような話よりは遥かにマシだと思っています。
 この話が、たとえ不快感であっても読了後に何かを残すものである事を祈るのみです。

 

KANON −IF− <儀式>
(2000/12/04 KanonSS 祐一、名雪 「碧郎のHP」さんに投稿)

 舞を書きました。
 現実として祐一と出会わなかった、または共に歩む道を選ばれなかった舞は、恐らくこのような状態なのではないかな、と想像して書きました。
 公園を去る祐一に、最後に舞が何を言いかけたのか。恐らく舞自身にもわからないのかもしれません。作者自身わかりません、最悪だ。
 サブタイトルは「疑心暗鬼」とどちらにしようか最後まで迷ったのですが、結局ぱっと見で興味を惹かれそうであるという理由で、現在のものに落ち着きました。結果としてどちらがよかったのかは微妙なところですね。
 この話以降、祐一と名雪は坂を転がり落ちるように、不幸になっていきます。

 

すきすき! 長森先輩! - 長森先輩、登校する−
(2000/12/08 ONESS 瑞佳 「すなふさんな本棚」さんに投稿)

 上記のシリーズを書いた4日後にこの話を書けるあたり、私も割と神経が太いのかもしれません。
 タイトルも内容も完全にパクリです。EVASSで「すきすき! 綾波先輩!」という作品があって、それに感化されました。
 書き上げた当初は「すきすき! 七瀬先輩!」といった内容でしたので、慌てて七瀬の描写を削ったのを覚えています。やはり七瀬だと筆が勝手に進んで困り物です。別に長森が嫌いというわけではなく、それどころかかなり好きなキャラなのですが、どうも彼女が幸せそうにしていると違和感を感じてしまいます。ひどい話だ。
 投稿させていただいたすなふさんには、みさき先輩に続き長森と、まるで彼の方の書かれる長編を愚弄したようなキャラ選択であり、申し訳ない気持ちでいっぱいなのですが、恐らく佐祐理を書く気は今後もありませんので許していただけると思います。

 

異能者 第十四章 死を司るもの
(2000/12/09 ONE&KanonSS ALL 自サイト公開)

 栞と香里が登場です。
 『美坂家』当主、美坂香里と相沢祐一の交渉場面は、またしても私の筆力の無さを曝け出す結果となってしまいました。「火花散る策謀戦」というのがコンセプトだったのですが、単に祐一くんが逆ギレしてお終いという何ともはやな結果に。
 前半のあゆ、中盤の栞と香里、そして終盤の浩平と、1話の構成としては割と上手くいっただけに、なんとも残念です。
 終盤の浩平が口にする台詞。
「殺すか」
 の本ネタが「バキ」であることはナイショです。
 彼のとぼけた風貌に潜む、意外なほどの冷酷さ。それを描写したかったのですが……。なかなかうまくいかないものです。

 

明るい家族計画!
(2000/12/15 KanonSS 名雪 自サイト公開)

 ノリ。正にノリだけだったと言っても過言ではありません。執筆時間、賞味2時間くらいですね。無論、推敲には時間をかけましたが。
 一番書きたかったのは、祐一と名雪が一つの布団の中で語らう未来への展望です……というのはまったくの偽りで、本当は風呂場で祐一の顔面にしりもちをつく名雪だったりします。全然ダメです。
 ちょっと真面目に批評すると、2人の語らいに入るタイミングがあまりに露骨すぎるのが気になるところです。これはこの話に限らず、ドタバタ系の話を書くときにいつも失敗する点ですね。今後の最大の課題といったところでしょうか。

 

披露宴にて
(2000/12/16 ONESS ALL 「陽だまりの丘」さんに投稿)

 オムニバス形式はいつか書いてみたかったジャンルです。この話にて挑戦してみました。
 まあそこそこうまくいったのではないかなと思っています。ただやっぱり1短編で全員を描写しているわけですから、どうしても一人あたりの描写は淡白になってしまいますね。そこがオムニバスの良さなのでしょうけれども。
 繭の心理描写は難しかったですね。彼女はONEでも一番何を考えているのか掴みづらいキャラだと思います。たったあれだけの短いパートであるにも関わらず、結構苦しみました。
 全員高校時代よりもちょっぴり大人になっているわけですが、その辺がうまく描写できなかったのが心残りです。

 

異能者 第十五章 命喰い
(2000/12/29 ONE&KanonSS ALL 自サイト公開)

 栞のペルソナ初登場です。しつこいくらいに「妖艶妖艶」と繰り返していますが、私自身あの栞が妖艶な雰囲気を醸し出す様はイマイチ想像できていませんでしたから、読んでくださった方も同様だったのではないかと思います。
 ペルソナの使う異能力『生命奪取』を「ライフドレイン」としようか「エナジードレイン」としようか最後まで迷いました。結果、後者を選択したわけですが、「ライフドレイン」も捨てがたかったな。
 これに限らず異能力の設定は日本語を先に考える場合と英語読み(インチキ英語ですが)を先に考える場合と2パターンあります。
 浩平の『永遠の世界』(エターナルワールド)やあゆの『天使の涙』(エンジェルズティアー)は日本語を先に考え、後から英名を付けたものですし、舞の『五身魔創陣』(フィフスナイトメア)や茜の『青き波紋』(ブルーインパルス)なんかは英名を先に考えたものです。

 

もしも翼があったなら 第五章 もしも翼があったなら
(2000/12/30 KanonSS 祐一、名雪 「最果ての地」さんに投稿)

 メインタイトルと同じサブタイトルを冠すこの章です。
 『もしも翼があったなら』という話は、メインタイトルをある意味作中で否定しているわけですが、それは最初から決めていたことでした。この章での名雪の独白、「翼があったらいいのに」はある種の逃げですからね。
 でもその逃げは誰しも一度は感じるであろう気持ちであり、乗り越えなければいけない気持ちだと思います。
 この章では祐一はまったく出てきません。完全に名雪サイドの、名雪にとっての起承転結の転にあたる話です。
 名雪サイド、祐一サイド双方に深く関わることになる浩平と留美ですが、名雪と祐一の道標役を担ってもらいました。この章では名雪に対しての留美です。ONE本編よりも遥かに大人になった彼女を、はてさてうまく描写できているでしょうか。

 

もしも翼があったなら 第六章 決意
(2000/12/30 KanonSS 祐一、名雪 「最果ての地」さんに投稿)

 名雪も出てはきますけれど基本的に祐一の章です。
 前章で名雪と留美でしたので、本章では祐一と浩平です。
 浩平が過去を語る場面、このエピソードを書くことがこの話を書き始めたきっかけの一つでした。ONE本編で永遠を求めた彼のその後を描写してみたかった。
 私的には、非常に満足のいく結果となりました。相変わらずガキっぽい浩平ですけれど、人間的に一回り大きくなりましたね。
 霧雨の中で対話する二人、この場面では二人とも雨に濡れての対話のほうがよいのでは? とのご意見を、公開前に読んでいただいた方よりいただきました。確かにビジュアル的にはそちらの方が良いと思われたのですが、現実問題としてそこまですべき理由を作中の彼らに見出せなかったため、そのままにしました。他者の意見よりも自分のこだわりを優先したわけです。果たして良いことなのか、悪いことなのか……。

 

もしも翼があったなら 終章 たとえ翼はなくとも
(2001/01/14 KanonSS 祐一、名雪 「最果ての地」さんに投稿)

 終章です。
 結果的に前中後と3話に分かれてしまったのは、作者である私と、そして投稿先の管理人さんであるカワウソさんとの討論(だったと思っています)の結果です。当時は頭に血が上ったりもしましたけれど、いまは良かったと思っています。祐一と父の対話部分はカワウソさんを納得させるために追加した部分ですが、あの場面が増えただけでも討論の価値はあったと思っています。普段は作品(あえてこう呼称する)に対する最終的なOK出しは自分ひとりですから、一度くらいはまったくの他者にそれを委ね、すり合わせを行うのもいいと思います。二度は多すぎますけれど。
 「この話がダメだったら足を洗う」とまで思い詰めて書いた今作ですが、私は今も二次創作書きを続けています。
 結果に完全に満足したわけではありませんが、色々な方から感想もいただけ、またごく少数ではありますが批評といえる感想もいただけ、苦しんだだけの甲斐はあったと思っています。
 書き上げて、未だ冷静が保てていなかった時期にいただいたその批評は当時こそショックでしたが、今は本当に感謝しています。作者である私本人ですら完全には意図していなかった終章における秋子の偽善。それを指摘された時には、はっと胸を突かれる思いでした。そこまで深く読んでくださったことに今はただ感謝するばかりです。ありがとうございました。

 

チューリップ
(2001/01/16 ONESS 浩平、留美 自サイト公開)

 競作用。長編のキャラを使った短編は、若干反則だったかもしれませんが、自己満足とはいえ久しぶりに短編で納得のいくものが書けたと思います。短編はやはり難しい、これ以降納得のいく短編が書けていないので、当面の越えるべき壁といったところでしょうか。
 『もしも翼があったなら』ではうまくいかなかった起承転結を、短編でより徹底してみました。ちょうどセクションで区切っているのが起承転結の切れ目です。やっぱり難しいもんですね。
 母からの手紙は、あえて内容を書きませんでした。それ自体は今でもよかったと思っています。ただ某所でいただいた感想にもありましたが、「風邪ひかないでね」の繰り返しは少々くどかったなと、今にして思います。

 

異能者 第十六章 すべてのものを偽って
(2001/01/28 ONE&KanonSS ALL 自サイト公開)

名雪におねつ!
(2001/02/17 KanonSS 名雪 自サイト公開)

かぞくがいでん 真琴のらぶらぶ大作戦!
(2001/02/23 KanonSS 真琴、美汐 「にゃゆき本舗」さんに投稿)

 

 

 冒頭にも少し書きましたが。
 二次創作小説。それ自体は作者のマスターベーション、自慰行為です。少なくとも私の場合はそうだと思ってます。
 自らの自慰行為を他者の目に晒すのは非常に恥ずかしいことですし、本来ならばそんな事をするのはおかしいんです。
 これは自戒です。
 二次創作小説は自慰行為であり、本来ならば他者の目に晒すようなものではない。見返りなんて期待するのはそもそも間違っている。そのための自戒です。
 私は二次創作小説、書くのも好きですし読むのも好きです。これからも続けて行きたいと思っています。だからこそ、自戒したいのです。
 私の紡ぐ自慰行為の結晶が、少しでもよりよいものであることを願って。

2001/02/25〜 久慈光樹