名雪 DE にゃんこ

2003/12/26 久慈光樹


 

 

「なにこれーーっ!」

 

 冬の日、清々しい朝。

 隣の部屋から響く幼馴染の少女の絶叫に、俺は思わず飛び起きた。

 何事だいったい。

 

「名雪! おい名雪どうした!?」

 

 ドンドンと名雪の部屋のドアを叩く。その間にも「どうなってるのー!」だの「ひーん!」だのという従兄妹の情けない声が漏れ聞こえる。

 べつだん部屋に鍵がついているわけでもないため、一応「入るぞ」と断ってから名雪の部屋の扉を開いた。

 

「わっ! ちょ、ちょっと待……!」

 

 見慣れたピンクのパジャマに身を包み、ベッドの上でぺたんと尻餅をついた格好で座る名雪。

 朝にしては珍しく寝ぼけた様子もなく、入ってきた俺をやや焦ったように見つめる。

 そして――

 

 頭にはピクピクと動く猫のミミ。

 ゆらゆらとシッポが宙をかく。

 

「……貴様、それはいったいどういうつもりだ」

 

「え、えーっと」

「……」

「にゃ、にゃー…… なんちゃって」

 

 なんちゃって、じゃない。

 

 

「ち、違うんだよ! こ、これはその……」

「それは何か? 毎晩の性生活に対する俺への無言の抗議かなにかなのか?」

 

 後背位がよくないのか? そうなのか名雪?

 

「な、なにを言ってるんだよ!」

 

 顔を赤らめつつもまんざらではなさそうな名雪。このワンワン好きめ。

 

「まぁ名雪の偏向した性癖の件はひとまず置くとしてだ」

「偏向なんてしてないよ! 祐一のバカ!」

「いくら猫好きだからって、そりゃないだろ」

「バカバカ! 祐一のバカ苺!」

「というか猫好きとかそういう問題なのか?」

「祐一の変態! 偏向者!」

「いまどきネコミミとシッポはないだろ」

「……」

「だいたいから……」

「……体温計」(ぼそっ)

「誰が体温計マニアだコラァ!」

「ひっ!」

 

 

 とまあそんな感じで紆余曲折あったが、なんとか名雪から話を聞いたところによるとどうも何の前触れもなく朝起きたらネコミミとシッポが生えていたらしい。

 

「えへへ、祐一、猫さんだよ猫さん」

 

 最初こそ焦っていた名雪であるが、今はなんか嬉しそうにシッポをフリフリさせて喜んでいやがる。きっと現実逃避だろう。そう信じたい。

 

「つーかちょっと見せてみろ」

「わっ」

 

 はしゃぐ名雪の頭をわし掴みにして引き寄せる。

 ピクピクと動くネコミミを、試しに引っ張ってみた。

 

「にゃ! い、痛い痛い!」

「なんか暖かいぞ……」

 

 髪を上げてみるとちゃんと人間の耳はついている。どういう仕組みなんだこれは。

 

「うー、ヒドイよ祐一」

 

 ええい、ミミを伏せるな。

 

「……じゃあ次はシッポだ」

「う、うん」

 

 なぜだか少し恥ずかしそうに、フルフルと宙をさまようシッポを俺の手元にポンと置く。なんか早くも順応してねぇかこいつ?

 

「うわっ、なんかフサフサしてめっちゃ気持ちいい」

「んっ…… そ、そんな強く握らないで……  あぅ! 引っぱったらダメ!」

 

 ええい、悩ましげな声を挙げるな。

 

「つーかこれ、どこから生えてるんだよ」

「え? ど、どこからって、その……」

 

 ネコミミをぺたりと伏せて、もじもじと視線を逸らす名雪。やっぱそうなのか? そういうことなのか?

 

「……脱げ」

「……え?」

「脱いで見せろコラァ!」

「ひゃぁ! や、やめてよー」

 

 わたわたと逃げ出そうとする名雪、だが文字通りシッポを掴まれているために逃げることなどできないのである。観念したのか名雪はベッドにうつ伏せになり、涙目になりながらうーうー唸ってこっちを睨んでいる。

 

「ほりゃ」

 

 空いている左手でパジャマのズボンを引き下ろす。勢い余ってパンツごと太もものあたりまでずり下がってしまったが、まあよしとしよう。

 

「ほら、もうちょっと腰上げれ」

「ううー!」

 

 シッポでぺちぺちと俺の額を叩くのはやめれ。

 

「ううっ、恥ずかしいよ……」

 

 子供ができない方の穴の上あたりから、そのシッポは生えていた。つーかどういう仕組みなんだこれ……

 

「ね、ねえもういいでしょ祐一」

「もうちょっと」

「ほ、ほら、早くしないと学校遅刻しちゃうよ?」

 

 恐らくは苦し紛れであろう名雪の言葉にはっとする。そういや今日もバリバリの平日であり学校行かないとヤバイ。

 

「つーかどうすんだよ、これ」

「しょうがないよ、生えちゃったものは」

 

 解放されそそくさとパンツを上げる名雪。もうちょっと深刻になれよお前。

 

「ほら、着替えるから出てって!」

「あ、ああ……」

 

 名雪に背中を押されて部屋を出て行きながら、シッポはどうやって制服から出すのかしらなどとのん気なことを考えていたのだった。

 

 

 

「もっと速く走れ名雪、間に合わんぞ」

「うー、だってー」

 

 短い制服のスカート、その裾をいつも以上に気にする名雪である。

 

「走りにくいよー」

 

 さもあらん、今もスカートを押し上げないようにシッポは垂らして走っているものの、後ろを走る俺の目にはちらちらと白い聖域が見え隠れしているのである。それどころか生え際が生え際だけに、パンツ半ずらし状態なのである。専門用語で言うところのローレグ状態。

 

「ふむ、今日はシマシマか」

「え? きゃっ!」

 

 いてて、シッポではたくなと言うに。

 

「おはよう二人とも、今日もバカップルね」

 

 ぬっ、失礼な。と目を向けると、そこにいたのはクラスメイトの美坂香里。

 ああいやだいやだ人生なんて本当につまらないわ寄らないでちょうだいバカが伝染るから、というような顔をしてため息なんぞついている。ありていに言えばいつも通りだ。

 

「おはよう、香里」

「ええ、おはよう、なゆ……き?」

 

 パンツが見えるのも構わずぷるぷると嬉しそうにシッポを振る名雪の様子に、遅まきながら気付いたのだろう。香里の動作がまるでビデオの一時停止状態であるかのように止まる。

 

「どうしたの香……ふにゃ!」

 

 往年のフリッツ・フォン・エリックを髣髴させる豪快なアイアンクローで名雪を捉えると、そのまま片手一本で引き寄せる香里。おいおい、名雪はんビクンビクンしてはるで。

 そのまま無言でネコミミをじっと見つめ、次いでシッポをじっと見つめる。

 そしておもむろにこう吐き出した。

 

「相沢君、コスチュームプレイはほどほどにしておきなさい」

「待て」

 

 海辺のザザ虫でも眺めるかのような視線を投げる香里さん、なにやら豪快に誤解されているご様子

 ちなみに解放された名雪は両手で額を抑えてぷるぷるしながらしゃがみこんでいるためそれどころではない。

 

「なに? これで昨晩はにゃんにゃんプレイ? はっ!」

 

 おいおい、香里はん「やってらんないわ」と吐き捨てて道路に唾吐きおったで。

 仕方がない、ここは俺が事情を説明してやろう。

 

「まあお聞きなさい、そこなキャバ嬢……ぶべらっ!」

「誰がキャバ嬢よ」

「うわー、凄いよ祐一、人って空飛ぶんだねぇ」

 

 とりあえず出血が止まったのは昼休みに入ってからだった。

 

 

 

「はっはっは、ぐっもーにん諸君、清々しくていい朝じゃないか」

「おはよう相沢くん、でももう昼よ」

 

 おめーが保健室送りにしたんやろが。

 

「お、おい相沢……」

 

 悔しいから香里のヤツを頭の中で裸にひん剥いていると、北川のやつがなにやらあわ食った様子で話し掛けてきた。

 

「水瀬さんと夜通しにゃんにゃんプレイってホントか?」

 

 待てコラ。

 

「ちょ、ちょっと北川くんひどいよー、祐一はいつもワンワンプレイだよ」

 

 おまえ少しダマレ。

 『おいワンワンプレイだってよ』『マジかよ! 相沢コロス』などという声がクラスから聞こえたところを見るに、どうも話は捩れまくって伝わりまくりなご様子である。

 

「つーか名雪のこの格好を見て、誰もおかしいと思わんのか?」

「いや、相沢だしな」

 

 俺かよ。

 

『猫科動物の交尾は激しいらしいぜ』

『じゃあ水瀬さんも……』

『やべぇオレ想像しただけで……うっ』

 

 うっ、じゃねぇ。


「まあいいわ、学食行くわよ」

 

 海辺のウミウシでも見るような目を俺に向け、香里がそう言ってさっさと歩き出す。まってよーなどといいながら後に続く名雪、シッポをプルプル振るな、見えるから。

 

「うお、ローレグ……!」

「……」(ブスリ)

「ぐおわっ! 目がー、目がぁー!」

 

 見るな、あれは俺んだ。

 

 

 学食は相も変わらず混んでいる。

 

「あれ? 祐一、北川くんは?」

「ああ、なんか廊下でのたうちまわっとる」

「ふーん」

 

 ふーんの一言で片付けられてしまうあたりがいかにも北川といった感じではあるが、あいつもあれでいて一部に熱狂的なファンを持つため油断は禁物である。

 別に虐待してないよ?

 

「祐一、誰に喋ってるの?」

「黙れ妖怪猫又、Aランチばっか食ってんじゃねぇぞ」

「誰が猫又だよっ、ふんだ、祐一の偏向者」

「んだとゴルァ!」

 

 やれやれまた始まったわ付き合いきれないわねこのバカップルどもがあらこのサラダ意外に美味しいわね、といった感じで香里は黙々と飯を食っている。意外に解りやすいなこいつ。

 

「ん? 食わないのか? 名雪」

 

 カツ丼セットをもふもふと食いながら名雪を見ると、まだぜんぜん手をつけていない。

 

「えっと、熱くて」

 

 学食のセットなんてものは古今東西作り置きと相場は決まっている、そんなに熱いはずはないのだが。

 

「猫舌、ということかしら」

 

 なるほど、猫だけに。

 

「先にサラダでも食べたら?」

 

 名雪と同じAランチの香里が、なかなか美味しいわよこれ、と言葉をかける。

 うんそうするね、とサラダをつつく名雪。あっホントだ、美味しいよこれー、と笑顔で顔を上げ。

 

 そしてそのまま白目剥いてぶっ倒れた。

 

「うぉあ!」

 

 かなり怖わいぞそれ!

 

「名雪どうした! しっかりしろ!」

「ああ、そういえば、これオニオンサラダだったわね」

「しっかりしろー名雪ー!」

「猫にネギやら玉ネギ食べさせると、貧血起こすのよね」

 

 先に言えコラァ!

 

 

 

「で、結局俺が背負って帰るわけかい」

 

 あのあと名雪を保健室に連れて行ったのだが、結局早退ということになったのだ。同居人の俺が責任を持って家まで送り届けるようにとお達し付きで。

 

「まぁ早退できるのはラッキーだったけどな」

 

 背中の名雪は相変わらず目をまわしたっきりだ。たく、世話の焼ける奴。

 昼下がりの街は人通りもさほど多くなく、その点ではありがたかった。いくら名雪とはいえ、女の子を背負って歩くってのは、その、恥ずかしいからな。

 

「んぅ……ゆういち……」

「ん? 起きたか?」

「すーすー……」

 

 どうやら寝言だったらしい。

 苦笑い。どんな夢を見ているのやら。

 

 冬の終わり。街を照らす陽射しはまだまだ弱く、臆病な春が首を竦めて冬将軍が通り過ぎるのをまるで静かに待っているかのような、そんな昼下がり。

 背負った名雪の暖かさが背中に広がり、そのまま全身を包み込むようで、だけど俺は寒くは無かった。

 

 色んなことがあった、この街に来て。

 辛いことも、悲しいことも、嬉しいことも、楽しいことも。

 これからも、色んなことがあるだろう。

 楽しいことばっかりじゃないかもしれない、嫌なことだってたくさんあるに違いない。

 だけど、いつだって俺は、背中で眠るこいつといっしょに歩いていく。

 辛いことも、楽しいことも、これから過ごす日々のすべてを、俺はこいつと、名雪といっしょに歩いていく。いや、歩いていきたいと思う。

 

「ありがとう」

 

 なぜだか、だけど自然に、そんな言葉が俺の口から漏れた。

 面と向かっては恥ずかしくって言えないけれど。なぜこんなことをいまさら口にする気になったのかもわからないけれど。

 

 これまでも、そしてこれからも。

 

「ありがとう、名雪」

 

 

 

 

「んん…… ふにゃ?」

「家に着いた途端に起きやがって、舐めてんのかキサマ」

「ナメ猫?」

「昭和四十年代生まれしかわからんようなネタはヤメロ」

 

 というか聞きようによってはすげー卑猥だぞ。

 

「えっと、わたしなんでお家にいるの?」

 

 状況が把握できないのか、ハテナマークを飛ばす名雪。仕方なしに状況を説明してやる俺。

 

「そ、そっか」

 

 背負われていたのが恥ずかしいのか、はたまた玉ねぎ食ってぶっ倒れたのが恥ずかしいのか、真っ赤な顔でもじもじとシッポを振る名雪。確かにあの白目は恥ずかしかった、というか怖かった。

 

「え、えと…… わ、わたし着替えてくるね!」

「あ、おい」

 

 俺の言葉が終わらないうちに、だーっと階段を駆け上がっていく名雪。いかな猫とはいえ、四つんばいはいかがなものかと思われる。つーかパンツ見えてるって言ってんだろ。

 ちなみに秋子さんは出張でいない。ご都合主義と言われようとなんだろうといないのだから仕方がない。きっと大人の事情なのだろう、こういうときには保護者は家にいてはいけないものなのだ。

 

 しばらく居間でテレビを見ていたが、どうにも暇で耐えられなくなった。時計を見るとまだ三時前、早退してきたのですることもなく、退屈だ。

 そういえば名雪はあれっきり部屋に篭ったまま出てこない、なにをしているのか。

 

「しゃーねぇ、名雪でもからかうか」

 

 誰に言うともなく口にしながら階段を上がって名雪の部屋の前、寝てんじゃねぇだろうなまさか。

 

「はいるぞー」

『え? ゆ、ゆういち? わっ、ちょ、ちょっと待……!』

 

 ガチャリ

 

「お前いったい何して……」

 

 時が止まるというのはこういうことを言うのだろうか。

 

 着替えると言っていた割には未だ制服、ここまではいい。

 だがなぜベッドの上で四つんばいなのか? あまつさえ腰を高く上げているのはなぜなのか?

 もう今日は見慣れてしまった感のあるシマシマのパンツ、シッポがあるために上まで上げられず図らずもローレグ状態、ここまではいい。

 だがなぜそれが秘部の部分だけヌレヌレでスケスケ状態なのか? あまつさえベッドについた脚の間から指を差し込んでいるのはどういうことなのか?

 

 どこをどう解釈しても自家発電状態ですか?

 

「ひーん! ノックくらいしてよぉ!」

 

 名雪さんマジ泣き。

 

「あ、いや、さすがの俺もこういう状態は予期できなかったぞ……」

「ううー!」

 

 これ以上ないというくらい真っ赤になって、睨んでくる名雪。シッポが立っているときって怒ってるときなんだっけか?

 

「どうしたんだよ真っ昼間から」

「しょ、しょうがないじゃない! なんだかすごく我慢できないんだからっ!」

 

 開き直りなすったでこの娘はん。目尻に涙を溜めてまで睨まなくたっていいやん。

 

「あっ、ひょっとして」

 

 ふと思い当たったことを口にしてみる。

 

「それって、発情期なんじゃねぇの?」

「……」

「……」

 

 う、なんか沈黙が痛い。さすがに発情期はなかったか?

 

「……そ、そうかも」

「はい?」

 

 意外な言葉に聞き返す俺の言葉も聞こえない風で、名雪はなんだか非常に色っぽい流し目でこちらを見やる。

 

「ゆ、ゆういち」

「な、なんだ?」

「なんだか身体が火照って我慢できないの」

「そ、そうか」

「……え、えっちしよっか」

 

 な、なんですとー!

 

「ねぇ、ゆういちぃ……」

「ううっ……」

 

 まぁ俺も健全な男子高校生であるからして名雪とそういう関係になってからは何度もえっちしているわけで、いまさら照れるのもおかしなものなのであるが……

 なにせ普段は恥ずかしがって満足に見せてさえくれない名雪である、目を潤ませてまるでおねだりするかのような今の状態は、新鮮というかなんというか、男としては辛抱溜まらん状態であるわけであり……

 というか、今なら、今ならあの野望を達成することが可能だろうか。

 

「じゃ、じゃあさ名雪」

「うん?」

 

 なんだかとろんとした目で小首を傾げる名雪。ち、ちくしょうなんか悪くないぞ。

 

「と、とりあえず、その…… ま、まずは元気にして欲しいんだが、というかぶっちゃけご奉仕するニャン?」

 

 言った。

 モロ的に。

 

「う、うん、いいよ……」

 

 な、なんですと!

 

「祐一がそうしたいなら、いいよ」

 

 フオオオーーーッ!

 

「お、お口でいいかな?」

 

 イイ! お口イイ! つーか俺めっちゃカタコト。

 ベッドに腰掛けた俺の前に膝まずき、真っ赤になってかちゃかちゃとベルトを外してくれる名雪。猫万歳といった趣である。

 

「わわっ、祐一もう元気だよ」

 

 と言いつつも手を止めない名雪、潤んだ目で、まるで「どうすればいいのかな?」とでも問うように上目遣いで俺の目を見る。

 

「え、えーと、と、とりあえず舐めてくれ」

「うん……」

 

 既にして元気一杯であるところの俺のソレを、まるでアイスキャンディーを舐めるように、恐る恐る舌で触る。生暖かい未知の感触に、思わず声が漏れた。

 

「ひゃっ! な、なんかビクンって……」

「き、気にせず続けてくれ」

「う、うん」

 

 ぺろり、ぺろりと。恐る恐るではあるが、徐々に、それでも確実に、その行為に没頭し始める名雪。上気した頬と潤んだ瞳が自分も興奮していることを何よりも雄弁に物語っていた。

 

「んん…… ちゅぷ……」

「くっ、いいぞ名雪」

 

 唾液がつつーと竿を伝う。先端、裏筋、まんべんなく舐め、そして口一杯に頬張る。

 

「んむ、はぁ……」

 

 ぎこちないながらも情熱的な名雪の行為に、ヤバイくらい興奮する。

 このままだと長いこと持たないかもなー、なんて頭の隅で冷静な声が聞こえたが、意識の大半は快楽に染まって冷静な判断など下せない状態。自然、息が荒くなる、が、名雪も行為だけではなく明らかに興奮のために荒い息をついている。

 

 そして、その瞬間がやってきた。

 

 ガツン

 

「ふぉあっっ!」

「あ」

 

 歯がっ! 歯が当たった! ガツンて! ガツンて言ったぁ!

 

「え、えと、祐一、大丈夫?」

 

 なんか名雪が済まなそうに聞いてくるが、それどころではない。

 五臓六腑を貫くような激痛。あそこを押さえて前かがみになってぷるぷると震えることしかできん。

 痛ぇなんてもんじゃねぇ……

 

「えへ、えへへ、ごめんねぇ、祐一」

「ごめんで済んだら警察いらんのじゃぁ!」

「ひっ!」

「てめぇ名雪! よくもやりやがったな!」

「じ、事故だよぅ」

「ふざけんなコラァ! てめぇ俺をコロス気かフォルァ!」

「ううっ、ゴメンてばぁ」

「ゴメンで済むかぁ! そこに直れぇ!」

「ひゃぁ!」

 

 怒られて伏せられたネコミミを引っ張って、そのままベッドに押し倒す。

 うつ伏せになってわたわたとするシッポを、がっしりと掴んだ。

 

「ふにゃ!」

「お仕置きだ! 腰上げろコラァ!」

「ふにゃぁぁん!」

 

 気の抜けた声を挙げて、それでもシッポを掴まれているため素直に腰を上げるネコ名雪。

 濡れて用を為さなくなった縞のパンツを膝まで下ろし、ひくひくと震える秘所に人差し指と中指を揃えて突っ込んだ。

 

「あうっ!」

 

 くちゅくちゅ、とわざと卑猥な音を立て、やや乱暴に出し入れをする。

 

「んぁ! はぁ!」

「思い知ったか! どうだ!」

「ああんっ! いい、気持ちいいよぉ!」

 

 なんと!

 

「ふあぁ、もっと、ゆういちぃ、もっとぉ!」

 

 ぐちゃり、ぐちゃり。

 信じられないくらいベトベトになった熱い蜜壷のようなそこを指でかき回すと、ひくひくと腰を震わせて悲鳴のような声を挙げる名雪。普段の恥ずかしげな様子は微塵もなく、口の端から涎まで垂らして悶えている。

 くっ、発情期恐るべし。これじゃぜんぜんお仕置きになってねぇ。

 

 ならば……!

 

 突き入れる右手はそのままに、尻尾を掴んでいた左手を放す。

 

「こっちはどうだ!」

 

 高く上げられた腰、愛液でぐちゃぐちゃになった花びらのような秘部のその上で、まるで震えるように息づく薄茶色の皺に覆われた後ろの穴に、指を這わした。

 

「あっ! そ、そんなところ……!」

 

 ビクンと痙攣するように腰を震わせる名雪に構わず、皺を数えるようにちょっと強めに指を動かす。

 

「んん! ダメ! そんなところを触ったらダメェ!」

 

 腰を引いて逃げようとする名雪を制すように、左手の人差し指と中指を使ってで尻の割れ目を押し開き、そして愛液でびしょびしょになった右手の人差し指を第二関節まで突っ込んだ。

 

「ふにゃああんっ!」

 

 名雪は今度こそ間違いなく痙攣し、動きを止める。後ろの穴に突き入れた人差し指を尋常じゃない締めつけが襲った。

 

「くっ、さすがにキツイな」

「ふええん、祐一のヘンタイ!」

 

 涙目を通り越してマジ泣き状態の名雪に、さっき噛みつかれた恨みも少し晴れる。

 ピクンピクンと腰を震わせ、逃げることもできないようだ。

 そういや猫って尻の穴に物突っ込まれると身動き取れなくなるんだよな、ガキの頃によく木の枝とか突っ込んで遊んだもんだ。

 

「ふっふっふ、どうだ名雪、思い知ったか」

「にゃあん、な、なんかお腹が変な感じだよぉ」

 

 ぐりぐり。

 

「やぁ! 動かさないでぇ!」

 

 突き入れた人差し指を中で曲げたり、捻ったり。その度にあられもない声を挙げて、名雪はビクビクと腰を振るわせた。

 

「そろそろ許してやるか」

「ふにゃぁぁん……」

 

 指を抜いてやるとまるで力尽きたようにぺたりと腰を横に倒す名雪。はあはあと荒い息をついている。

 

「ううっ、祐一のばかぁ」

「バカモノ、さっきのお返しだ」

「ううっ……」

 

 ぺたりと伏せられたネコミミと、泣き入ったその表情にちょっとだけ罪悪感が沸いた。

 ま、まぁ噛まれた俺の大事なそこもだいぶ痛みも引いてきたし、その、普通にしてやろう。

 

「わ、悪かったな、名雪」

「ふぇえん、ばかぁ」

 

 まるで父親に縋る幼子、いや、親猫に甘える仔猫そのものであるように身体を起こして抱きついてくる名雪。

 うっ、なんつーかその、カ、カワイイと言えなくもない。

 

「ゆういち、ゆういちぃ」

「ほれ、もう泣くな」

「ばかぁ、泣かしたの誰だよぉ」

 

 うるさい口は塞いでしまおう。

 

「ん……」

 

 初めは少しびっくりしたような名雪だったが、やがて俺の顔を挟み込むように両掌を添え、少し顔を斜めにして貪るように唇を合わせてくる。口内に招き入れた舌をなぶるように転がすと、恍惚とした表情で息を荒くする。

 

「ん、ふぅ、ふあ……」

 

 腰に手を当てて抱き寄せ、向かい合って俺の腰に跨がせるようにして、ゆっくりと突き入れた。

 

「ふぁ、ああっ!」

 

 両手を俺の首に回してしっかりと抱きつきながら、堪らず唇を放してのけぞる名雪。逃さんとばかりに抱き寄せ、再び唇を合わせる。

 

「ふぅ、んっ…… ゆういち、ゆういち」

 

 必死に唇を重ね、うわごとのように俺の名を呼ぶ名雪に苦笑しながら、段々と強く、腰を突き上げていく。

 

「ふわっ、ああっ!」

「くっ……」

 

 ギシギシと軋むベッド、そして段々と高くなっていく名雪の声をBGMに、徐々に昇り詰めていく。

 

「うあ、にゃぁ、ふにゃぁ、ゆういち、ゆういち大好き……!」

「うっ、名雪、俺も、俺もだ……」

 

 頭の中が真っ白になっていくような感覚、脳髄をそのまま引き抜かれるような快感。

 

 くっ……! 出る!

 

「うあっ、あああああんっ!」

 

 

 

「えへへ、祐一」

「なんだよ」

「なんでもないよーだ」

「なんだそりゃ」

「えへへ」

 

 事を終え、名雪のベッドに裸のまま二人して潜り込んでいる。

 まだ日も高いってのにダラけてんなぁ我ながら。

 

「えへへ、ごろごろ」

「顔を首筋に擦りつけるな、くすぐってぇだろ」

 

 なんだか本当に猫化してねぇかこいつ?

 

「ふーんだ、そんな嬉しそうな顔しても説得力ないよーだ」

 

 う、うっせえ。

 

「あはは、ねぇ祐一」

「ん?」

「夜までこうやってよっか?」

 

 狭いベッド、そこに二人してくっつきあって寝ているというのもすげぇ暑苦しいぞ、いくら冬とはいえ。

 だが、「ねぇいいでしょ?」とくすくす笑いながら聞いてくる名雪に、それもいいかなんて思ってしまった時点で俺の負けだ。

 

「今日だけだぞ」

「えへへ、うん!」

「だからくすぐってぇって」

「ぺろぺろ……」

「うわっ、舐めんなって」

「にゃぁん」

 

 お返しだ。

 後ろから覆い被さるようにして、脇に手を入れてくすぐってやる。

 

「あはっ、くすぐったい、くすぐったいよ」

「ほれほれ」

「あはは、やめてやめてー」

 

 まあたまにはこういうのも、いいか。

 

 

 

 

おしまい