『家族』がいでん 

みなせさんちのぴろくん

−真琴ちゃんはいじっぱり−

2000/07/20 くじみつき


 

 

 

 みなせさんちのぴろくんは、とっても幸せなねこさんです。

 え? どうして知ってるのかって?

 本人から聞いたんですよ。 だからまちがいありません。

 

 ぴろくんは、ほこり高い“ざっしゅ”のねこさんです。

 これも本人から聞きましたから、まちがいありません。

 

「にゃー!」

 

 ほらね。

 さて、そのほこり高きぴろくんは、いつも真琴ちゃんといっしょです。

 真琴ちゃんの頭の上は、ぴろくんの“とくとうせき”なんですよ。

 

 でも、ついさいきんまで真琴ちゃんはお家にいませんでした。

 真琴ちゃんのお兄さんの祐一くんや、お姉さんの名雪ちゃん、そしてお母さんの秋子さんはすごくさびしそうでした。

 夜、こっそり泣いていたりもしました。

 

 もちろん、ぴろくんもとってもさみしかったんです。

 泣きそうになったこともあります。

 でも、ぴろくんはほこり高き“ざっしゅ”のねこさんですから、みんなに泣き虫さんだと思われるのがいやで、しばらくはお家に帰らなかったりしました。

 

 

 

 真琴ちゃんが楽しみにしていた春になって。

 ついに真琴ちゃんは帰ってきました。

 ひねくれ者の祐一くんが真琴ちゃんをだきしめて泣いているのを見て、ぴろくんはびっくりしました。

 いつもにこにこしている名雪ちゃんが泣いているのにもびっくりしました。

 でも、いちばんびっくりしたのは、あの秋子さんまでもが泣いていたことでした。

 帰ってきた真琴ちゃんは、はじめこそそんなみんなにびっくりしているみたいでしたけど、そのうちにいっしょになって泣いてしまいました。

 ぴろくんは、そんなみんなのようすを見て、「可笑しいなあ」なんて思っていましたけど、真琴ちゃんがいつもそうしてくれたように、だっこしてくれると、ついつい泣き出してしまいました。

 

「にゃー、にゃー、にゃー」

 

 うれしい時にもなみだが出るなんて、ぴろくんははじめて知りました。

 

 

 さてさて、そんなことがあってから、ぴろくんはまたみなせさんのお家に住みつくことになりました。

 ぴろくんはこのお家が大好きです。

 

 ぴろくんは祐一くんの事も大好きです。

 なにせ、真琴ちゃんも祐一くんのことが大好きですし、なにより祐一くんはぴろくんの“なずけおや”です。

 “なづけおや”っていうのは、名前をつけてくれた人のことです。

 これはぴろくんもさいきん知ったのですが、人間の世界では名前をつけてくれた人は「ごっどふぁあざぁ」とよばれて、とってもそんけいしなくてはいけないのだそうです。

 祐一くんがいつも見ている、四角いハコの中でそう言っていました。ぴろくんはべんきょうかさんですね。

 

 真琴ちゃんは、「ごっどふぁあざぁ」祐一くんとはケンカばかりしています。

 今日も、祐一くんといっしょにお出かけした時にケンカしたらしく、ぴろくんにいろいろ話してくれました。

 

「まったく、どうして祐一はすぐ女の子とお話するんだろ!」

「にゃー」

「でれでれしちゃってさ、いやらしい!」

「うにゃー」

 

 お出かけした時に、祐一くんのしりあいの女の子とばったり会ってしまったようです。

 

「そりゃたしかに、あの人の病気がなおったのは真琴もうれしいけど……」

「うにゃ?」

 

 どうやら、会ったのは美坂栞ちゃんのようですね。

 ぴろくんも彼女のことは知っています。

 公園でよく絵をかいているからです。

 この間も、ぴろくんがおさんぽしていると、絵をかいている栞ちゃんと会いました。

 

「あら、ねこさんこんにちは、最近よくお会いしますね」

「にゃー(こんにちは)」

「今日も絵をかいていたんですよ、どうですか? 今日の絵は」

「うなーー(かわいい“ちきゅうがいせいめいたい”ですね)」

「うふふ、きっとほめてくれてるんですね、ありがとうねこさん」

「うなー(いえいえ、どういたしまして)」

「今度ねこさんのこともかかせて下さいね」

「うにゃん(ぜったいにいやです)」

 

 ねこ語が分からない栞ちゃんは、それからいろいろお話を聞かせてくれました。

 

 ぴろくんが栞ちゃんの事を思い出している間も、真琴ちゃんのふまんはたまるばかりです。

 

「だいたい祐一は女の子を見るとすーぐ、でれでれしちゃってさ! ぴろ、聞いてる!」

「う、うなー」

「帰ってきたらすぐにまた一人で出かけちゃうし……」

 

 おやおや? どうやら真琴ちゃんは祐一くんにかまってもらえないのがふまんみたいです。

 ぷー、っとほっぺをふくらませて、おまんじゅうみたいですね。

 

「ただいまー」

「あ、帰ってきた! ……ふ、ふん! 真琴にはかんけいないもん」

 

 祐一くんの声を聞いて、うれしそうに立ち上がりかけた真琴ちゃんですが、すぐにいつものいじっぱりさんぶりをはっきして、すわりこんでしまいました。

 

「おーい、真琴ぉー」

 

 ほらほら真琴ちゃん、祐一くんがよんでいますよ?

 

「ふ、ふんだ!」

「にゃー」

 

 ぴろくんも「いじはっちゃダメだよ」って言ってますよ?

 

 ガチャ

 

「なんだ、いるんなら返事くらいしろよ」

「な、何よぅ」

「まったく、なーにふくれてんだよ」

「何でもないわよぅ!」

「まあいいや、ほら真琴、肉まん買ってきたからいっしょに食おうぜ」

「え? じゃあ今出かけたのって……」

「今月苦しいんだからな、あんまり世話やかせんなよ」

「う、うん、ごめん……」

 

 あらあら、真琴ちゃんたら真っ赤になっちゃって。

 大好きな肉まんを買ってきてもらったことよりも、大好きな祐一くんが自分のことを気にかけてくれたことのほうがうれしいんですよね、真琴ちゃん?

 

「にゃぁ」

 

 ぴろくんもうれしいですよね。

 だって真琴ちゃんには笑顔がいちばんよくにあいますから。

 

 それからぴろくんは、祐一くんの買ってきてくれた肉まんをもらって食べました。

 大好きな真琴ちゃんと祐一くんの笑顔を見ながらの肉まんは、ふだんよりもとってもおいしいでしょうね。

 

 

 

 

 みなせさんちのぴろくんは、とっても幸せなねこさんです。

 え? どうして知ってるのかって?

 本人から聞いたんですよ。 だからまちがいありません。

 

 

 

<おしまい>