異能者

<外伝>

−ソードダンサー−

2002/4/2 久慈光樹


 

 

 

 

 今を遡ること十九年前、西暦一九九九年は人類にとって災厄としか呼びようのない年であった。

 

 『大破壊』(カスタトロフィ)

 

 1999年8月に発生し、現在ではそう呼称されている災厄により、人類は世界人口の約七割を失った。

 

 SFで使い古されてきた「人類滅亡」というテーマ。

 大隕石の衝突、全世界を襲う大地震、地軸の傾き、果ては宇宙人による大攻勢まで、SFにおいてその原因は多種多様である。人の空想は留まるところを知らず、映画や文学だけでなく一個人の空想レベルで人類は何億回何十億回と滅亡させられたに違いない。

 だが実際に起きた人類の約七割が滅亡という悲劇は、どんな空想よりもバカバカしく、陳腐なものだった。

 

 消滅。

 それ以外に記しようが無い。

 

 何十年も連れ添った夫が。

 放課後に勇気の全てを振り絞って告白した恋人が。

 難産を乗り越えてやっと生まれた一人娘が。

 つまらない喧嘩を悔いて、明日こそは仲直りしようと決めた彼が。

 

 一瞬のうちに、煙のように消えてなくなった。

 

 忘我と慟哭はやがて醒める。

 なぜだ? どうしてこんなことになった? 誰がこんなことをした?

 

 そういえば隣の家の若者は挙動が不審だった。

 あの宗教集団が以前より怪しい噂が絶えなかった。

 現在の政府による陰謀ではないか。

 テロリズム国家であるあの国の仕業に違いない。

 

 報復を! 報復を! 報復を!

 

 証拠? 何をぬけぬけと。

 そんなものは事実が全て語っているではないか。

 

 なぜならお前は生き残っている!

 

 

 

 人類が神に見放された種族であることを証明するかのように。

 消滅を免れた人々は、手にバットを、ナイフを、銃を握り、隣人と、隣国と、互いに殺し合った。

 そうしてようやく人類が熱病から覚めたとき、世界人口はさらに約半数の十億人未満となっていたのである。

 

 

 時は流れ、西暦二〇一六年、人類は未だ滅びてはいない。

 そんな死と絶望が支配する世界の、かつて「日本」と呼ばれていた島国で、物語の幕は上がる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ある日、一人の少女が夜盗を襲った。

 夜盗に襲われたのではない、襲ったのだ。

 『大破壊』(カスタトロフィ)とそれに続く混乱期で、警察機構はおろか法による秩序全てが崩壊したこの時代、法治国家ではとうの昔に根絶された夜盗山賊の類が各所で暴れまわっていた。

 夜盗とは言っても、江戸時代などのように刀で切りかかるようなのんきな連中ではない。軍から流出したサブマシンガンなどの近代兵器に身を包んだ、とてつもなく剣呑な者たちだ。

 そのような集団をたった一人で襲おうというのだ。正気の沙汰ではない、ましてや未だ年端もいかぬ少女と言っていい年齢の者が、である。

 

「お前たちの食料をもらう」

 

 突然のアジトへの闖入者である少女がそう口にしたとき、二十名程度いた夜盗たちは一瞬あっけにとられ、次いで笑い出した。

 無理もない、凶悪な犯罪者集団として近辺で恐れられる者たちのアジトに、少女がたった一人で乗り込んできたのだ。少女が手に持っている抜き身の日本刀も、事態の滑稽さを物語る小道具にしか見えなかった。

 男たちが闖入者をいきなり射殺しなかったのは、少女の美しさに良からぬ下心を働かせた結果かもしれない。

 このような暴挙に出るくらいだ、どうせ美しいだけの頭の弱い娘に違いない。

 

「そんな物騒なもん置いてよお、俺たちと……」

 

 少女に手を伸ばした男は、最後まで言葉を紡ぐ事ができなかった。

 伸ばした右手の肘に、異様な冷たさを感じた瞬間。

 

「ぎゃぁぁぁぁ!」

 

 男の右腕は切り飛ばされていた。

 少女が動いた形跡はない。だがその光景を見て、少女は口の端を吊り上げて。

 

 哄った。

 

 

「てめぇ!」

 

 我に返った男たちの数人が、近くにあったサブマシンガンを少女に向ける。

 だが銃口より轟くはずの銃声は、発せられなかった。

 舞い上がる血煙。銃を手に取った男たちは叫び声すら発することなく切り捨てられた。

 

 血煙の向こうから、右手に無造作に日本刀を下げた少女がゆっくりと歩み寄ってくる。

 少女の凍りついたような美貌が舞い散る血煙に映え、まるで異界の妖姫を前にしているような異様さを醸し出す。

 それでも怯まず反撃に転じようとしたあたり、男たちは肝が座っていたと言えるかもしれない。

 

 だが、それは蛮勇の類だった。

 

 ナイフの切っ先を向けられるよりも速く、銃口をつきつけられるよりも速く。

 少女はまるで舞うように男たちの間をすり抜け、その都度男たちは血煙と共に切り殺された。

 二十人あまりいた男たちが皆殺しにされるまで、五秒とかからなかった。

 

 

 

 

 事を終え、日本刀を無造作に鞘に収める少女。

 驚いた事に、男たちを切り刻んだその刀身には一点の曇りもない。そのあまりの剣速に、一滴の血液すらも付着する間がなかったのだろう。

 床に散乱する躯にも、真っ赤に広がる血溜まりにも、眉一つ動かすことなく。

 少女は最初の言葉通り食料を奪うと、そのまま去った。

 

 

 

 

 少女――川澄舞は異能者だった。

 異能者。

 その名の通り、特異な能力を有する者たちの総称。

 『大破壊』より後に生まれた世代には、以前には考えられぬ特異な力を持った者たちが多く存在する。

 ある者は手を触れずに物を動かす事ができ、またある者はカードの裏に書かれた図形を言い当てる。大部分の人間は、その程度の力を持っているに過ぎなかったのだ。

 だが、その内ほんの一握りの人間には、他者を殺傷できるほどの力が備わっていた。

 

 異質なる能力、「異能力」

 川澄舞もまた、異能者だった。

 彼女の有する能力は強力な物だったが、異能力自体に他者を殺傷する効果はない。現に夜盗の男どもを皆殺しにしたのはすべてその手にした日本刀によってである。

 斬った刀に一滴の血液さえも付着させぬほどの使い手。

 だが二十名以上いた男たちに一発の弾丸すら撃たせなかったその速度こそが異常だった。達人とはいえ、人間に為しうる速度ではない。

 常軌を逸した高速移動。後に『神歩行』(ブリンクスルー)と呼ばれるようになる、川澄舞の異能力である。

 それ自体は単なる高速移動の異能力に過ぎない、だが舞の驚異的な剣さばきと組み合わせることによって、敵対者にとっては悪夢のような異能力となるのだ。

 

 神速を駆ってのまるで舞うように華麗な剣さばきとは裏腹に、敵対者は一人も残さず皆殺しにする冷酷さ。

 川澄舞はいつしか、『死剣士』(ソードダンサー)と呼ばれ、死神のように恐れられる存在となっていた。

 

 

 

 

 

 

 『死剣士』川澄舞のもとに、一人の見知らぬ少女が訪ねてきたのは、そろそろ冬の足音が聞こえ始めたとある日の早朝だった。

 舞と同じように日本刀を携えたその少女は「七瀬留美」と名乗り、おもむろにこう言った。

 

「『死剣士』川澄舞。私と死合いなさい」

 

『狂戦士』七瀬留美。

 後に日本全土を支配することになる異能力集団「ONE」に、このとき彼女は既に属していた。

 だがこの時期、彼女の行動は謎めいていた。

 「ONE」に関係なく、集団、個人すらも問わず、「強い」と噂される異能者たちのもとを訪れ、そのすべてを完膚なきまでに叩き潰す。

 傍から見れば理不尽としか思えぬその行動に、いつしか人は彼女を『狂戦士』と呼び、恐れるようになった。

 どのような意図があるにせよ、巷で『死剣士』と呼ばれ、畏怖の対象となっていた舞のもとを訪れたのは、彼女にとって必然の行為だったのかもしれない。

 

 突然現れ、自分と殺し合えと迫る少女。普通の者であれば何を馬鹿なと笑うに違いない。

 だが舞はただ、無言で刀を鞘より抜き放った。

 

「さすがは『死剣士』 殺し合いはお手のもの、というわけね」

 

 自分から申し出たにも関わらず、留美は不機嫌そうにそう呟くと、自らも刀を鞘より抜き放つ。

 

「気に食わないわ、あんた」

 

 吐き捨てる留美。

 氷のような表情の舞。

 

 『狂戦士』、そして後の『剣聖』

 剣において後世に双璧と謳われるようになる二人の出会いは、殺し合いで幕を上げたのである。

 

 

 

 

 

 

 

 先に仕掛けたのは『狂戦士』だった。

 

「小手調べなんて必要無いわね」

 

 踏み込みと同時の正眼から大上段、そのまま振り下ろす。

 無造作な、だがそれでいて一分の隙もない完璧な上段斬り。並の者であれば反応すらできずに切り捨てられてもおかしくはない。

 だが舞は並ではなかった。

 

「……!」

 

 留美の上段斬りを刀で受ける。神速を誇る舞があえて避けず受けて見せたのは、相手の力量を少しでも探ろうとしてからかもしれない。

 完璧に受けきったにも関わらず、無表情であった舞が僅かに驚きを覗かせた。

 

「まだまだぁ!」

 

 左袈裟斬り、右袈裟斬り。

 続けて打ち込まれる斬撃をだが全て己が刀で弾く舞。

 一撃一撃が圧倒的な剣圧を伴い、まるで吹き荒れる暴風のようであった。

 

『狂戦士』七瀬留美。その剣質は「力」

 細身の身体の一体どこにそのような力が隠されているのか。常人には為し得ぬほどの膂力は、こうして受けているだけで腕が痺れてくるほどだ。

 

「……っ!」

 

 三撃目、横薙ぎに振るわれた留美の刀を垂直に受け、舞はそのまま吹き飛ばされるように後退する。

 その隙を逃さず、踏み込んで再び最上段からの斬撃。態勢を崩した舞には受けきれず、そのまま切り捨てられるかに見えた。

 が、そうはならなかった。

 

「えっ!」

 

 思わず驚きの声を上げる留美。斬撃は空を切った。

 今までそこにあった『死剣士』の身体がまるでかき消えたように消失したのだ。

 同時に、背後より殺気。

 

「くっ!」

 

 刀を肩越しに背にまわし、背後よりの斬撃を弾く。衝撃に身を泳がせたところで、左側より殺気。

 

「くぁっ!」

 

 辛うじて身を捻ってかわす。と、そこにまた前方より殺気。

 

「なめるなぁ!」

 

 姿を確認する余裕はない。殺気を感じた方向に、振り払うように横薙ぎの斬撃を叩きつけた。

 しかし刀は空を切る。

 留美が態勢を立て直したとき、舞の身体は五メートル以上先にあった。

 

 一瞬の攻防。ほぼ同時に三方から攻撃されてなお全てを受けきった留美を誉めるべきであろうか。

 

「ちょっと、なんなのよこの速度は!」

 

 抗議するように、思わず叫ぶ留美。

 噂には聞いていた。『死剣士』という神速の剣士がいるということも、その強さも。

 だが、実際には噂で聞いた強さなど遥かに超越している。殺気に反応することで辛うじて避ける事ができたが、とてもその姿を捉えるなどというレベルではない。

 正に神速。留美とてけっして速度が遅いわけではない、単に相手の速度が常軌を逸しているというだけのことだ。

 

「やるわね」

 

 留美の顔には笑みが浮かんでいた。まるで強者に出会えたことに歓喜するように。

 だがそれも一瞬だった。表情を引き締めた留美は、舞に向かい無造作に間合いを詰めた。

 舞が動く。再びその姿が消失する。

 

「バレバレなのよ!」

 

 殺気を察知するより前に、留美は後方に振り向く。移動を終え、正に斬りかからんとしていた舞を捉える。

 そしてそのまま間合いの外であるにも関わらず、刀を振りかぶった。

 

「食らえぇ!」

 

 刀を振り下ろした空間より、凄まじい衝撃派が放たれた。

『狂戦士』七瀬留美の異能力、『剣の暴君』(ソードタイラント)である。

 振り下ろした刀より放つ衝撃波による物理攻撃。

 この異能力はその威力もさることながら、発動までのタイムラグがほとんど存在しないという特徴がある。

 恐らく舞は、留美を力だけの剣士と見くびったのだろう。だからこそ二度目の奇襲も最初と同じく背後より行ったのだ。もし奇襲が察知されたとしても、間合いを詰められるより先に退避できると踏んだのだろう。

 だが留美は間合いが開いていても構わなかったのだ。溜めなしで放てる、一撃必殺の異能力があるのだから。

 

「やったか……?」

 

 一瞬、気が緩んだ。

 

「油断は大敵」

「……!」

 

 突然背後よりかけられた声に、飛び退る留美。

 そこに、舞がいた。

 髪が若干乱れているが、身体には目立った外傷はない。

 

「まさか…… 避けたというの、あの間合いから」

 

 唖然とする留美。そして今更ながら、声をかけられねば背後より斬り捨てられていたことを悟る。

 

「……何のつもり」

 

 帯電しているかのような、留美の問い。またしても甘く見られているのか。

 

「いまのは、見くびっていた謝罪」

「なに?」

「私は『狂戦士』を甘く見ていた。でも……」

 

 ぽつりぽつりと呟くような声でそれだけ言うと、舞は初めて刀を正眼に構える。

 

「次はない」

 

 舞の台詞に先ほどとは違った意味で唖然とする留美。

 やがて、留美はさも可笑しそうに笑い始めた。

 

「ふふふ。いいわ、あなた面白いわ」

 

 そして留美もまた、刀を正眼に構えなおした。

 

「『死剣士』川澄舞、私こそあなたを見くびっていたみたいね」

「……」

「いいわ、全力できなさい。私も全力であなたを倒す」

「できるかな?」

 

 互いにニヤリと笑い合い。

 そしてまた、戦いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

「このままじゃ埒があかないわね」

 

 間合いが離れ、再び睨み合いになった時、唐突に留美はそう呟いた。

 戦闘開始から既に一時間が過ぎ、さしもの両者も息が上がりつつある。

 舞の『神歩行』(ブリンクスルー)からの斬撃。留美の『剣の暴君』(ソードタイラント)を織り交ぜた斬撃。互いに譲らず、両者ともに消耗していた。

 『死剣士』と『狂戦士』、互いの戦闘力は拮抗していた。

 

 

 このまま千日手となることを嫌ったのだろう。またしても先に動いたのは、留美だった。

 

「いいわ、見せてあげる」

 

 厳しい声音でそう言うと、留美は構えを変えた。

 両手で握っていた刀を右手一本に持ち替え、空いた左手を開いて舞に向けかざす。

 かざした左手の親指と人差指の間に刀身の背を付け、そのまままるで弓を引き絞るかのように伸ばす。

 異様な構えだった。

 

「多分、避けた方がいいと思うわ」

 

 留美の異能力が、爆発的に高まる。

 

「もっとも……」

 

 異能力の圧力とはまた違った圧倒的な殺気と、言葉の内容とは裏腹に氷のように低く通るその声が、何よりも雄弁に留美の殺意を物語っていた。

 

「死にたいのなら、別だけど」

 

 数え切れぬほどの実戦を生き抜いてきた舞の生存本能が、その意思に拠らず本能的に回避の行動を取らせる。

 

 そしてそれは、放たれた。

 

「つぇぇいっ!!」

 

 裂帛の気合。

 足の運び、腰の捻り、肩と腕の回転。

 脚より発した螺旋は留美の身体を通って増幅され、刀に達する。

 

「『戦乙女の槍』(メイデンランサー)!」

 

 刀より放たれた螺旋の三角錐は、異能力特有の発光を伴って、舞に襲い掛かる。

 『狂戦士』七瀬留美のもう一つの異能力、『戦乙女の槍』(メイデンランサー)である。

 『剣の暴君』(ソードタイラント)が「斬」の異能力だとすれば、『戦乙女の槍』(メイデンランサー)は「突」の異能力と言えるだろう。前者が異能力を前方に半ば無秩序に放出するのに比べ、後者は一点に集中させる。広範囲への攻撃には適さないが、一対一であればその威力は遥かに勝る。

 体術によって付与される螺旋の捻りが、より貫通力を増大させていた。

 

「くっ!」

 

 『神歩行』(ブリンクスルー)を最大にして回避を試みる舞。だが完全には避けきれず、左の二の腕を掠める。服を裂き肉を裂いて、螺旋は宙へと消えていった。

 神速を誇る彼女だからこそ、完全とは言わぬまでも避けられたのかもしれない。常人であれば何が起こったのか分からぬうちに、風穴を開けられていただろう。

 『戦乙女の槍』(メイデンランサー)、恐るべき速度であった。

 北欧神話の戦乙女ヴァルキューレの持つとされる投槍は、放つと同時に敵を貫くと言われている。正にその投槍そのもののような速度は、いかに神速を駆る舞と言えど、容易にかわせるものではない。

 

 舞が体制を立て直し、再び留美と向かい合ったときには彼女はまた先ほどの体制に戻っていた。

 弓を引き絞るかのような異様な構え。いつでも『戦乙女の槍』(メイデンランサー)を放てる体制だ。

 その速度を考えると、迂闊には踏み込めない。先ほどは中距離であったために何とか避けられたが、近距離で放たれれば再び回避する自信は無かった。

 だが、接近戦に持ち込まぬ限り、舞に勝機はないのだ。

 

 八方塞りのこの状況。だが舞は、むしろ楽しんでいた。

 いや、楽しんでいたという言い方は語弊があるかもしれない。今までしてきたようなただ生き残るためだけの、相手を殺すためだけの戦いとは、明らかに違う高揚感を感じ始めていたのだ。

 

 

 

 

 舞は両親の顔を知らない。

 この荒廃した時代であれば珍しいことではないように思えるが、それは逆だ。

 なぜなら、両親の庇護を受けられぬ幼子が生き残れるほど、この世界は甘くない。弱き物は死に、強き者のみが生き残る。この世界はそういう世界だった。

 誰も頼る者はいなかった。誰も彼女を守ってはくれなかった。だから舞は強くなった。

 生きるために。生き残るために。

 

 生きるためにはどんなこともした。

 ひったくりをした、強盗をした、人を殺めた。

 女である彼女が身を売らなかったのは、単に対価を支払う取引よりも奪い取った方が効率がよいというだけのことだった。取引をするに足ると判断したのなら、何の躊躇も無く身も知らぬ男に身体を開いただろう。

 

 自分に、他の者には無いほど強力な異能力という「力」があることを知り、それを磨いた。剣の素質があることを知り、ただひたすらに我流で鍛えた。

 死にたくないから、生き延びたいから強くなろうとし、気が付けば誰よりも強くなっていた。

 

 自分自身を軽んじていた舞だったが、それでも死にたくはなかった。死にたくなかったからこそ、強さを求めた。

 

 だが……

 

 本当の「強さ」とは、何だろうか?

 本当の「強さ」とは、人を殺める技術が向上することなのだろうか?

 

 今までの自分はそうだった。

 誰よりも効率よく人を殺めることができるようになり、誰よりも強くなったと思っていた。

 だが果たしてそれが、「強くなった」ということなのだろうか?

 

 自分がいま戦っているこの少女。

 強い。

 過去に戦った誰よりも強い。

 異能力や剣さばきの豪快さに隠された、確かな技術。恐らく正規に学んだ剣術なのだろう。

 正規の剣術による正確さと、一見粗暴にも思える豪快さ。激情を戦いに持ち込み、それがむしろ良い方向に作用している。

 

 何もかも自分とは正反対の少女。

 だが、こいつは私と同じだ。

 貪欲に何かを求め続ける、もう一人の自分だ。

 この少女に勝つことができれば

 この少女に勝つことができれば、ひょっとして解るのかもしれない。

 

 本当の「強さ」とは何か?

 「強くなる」というのはどういうことか?

 

 勝ちたい。

 この少女に――『狂戦士』七瀬留美に勝ちたい。

 

 

 

 

「破ァ!」

 

 剣を交えてから初めて、舞が裂帛の気合を発した。高まる異能力。

 現状の不利な状況を打開する手段が無いわけではない。だがそれはあまりにも危険な賭けだった。

 未だ完成には至っていない異能力。用いれば、どのような反動が身体に跳ね返ってくるかもわからない。できれば使いたくなかった。

 だがそれ以上に勝ちたかった。勝って、答えを知りたかった。

 強くなるとはどういうことなのかという問い、その答えを。

 

 

 極限まで高めた異能力により、舞の身体が薄く発光を始める。

 危機感を覚えたのか。『狂戦士』より再び槍が放たれた。

 

「つぇぇい!」

 

 ゴゥン!

 

 唸りを上げて迫り来る、全てを貫く螺旋。

 いかな『死剣士』とはいえ、それに貫かれれば、死の橋を渡るより他に道は無い。

 

 だが、舞は避ける素振りすら見せなかった。

 迫り来る死の螺旋を前に、静かに立ち尽くしているだけ。傍から見ればまるで死を受け入れたかのようにも見える。

 だが、舞の瞳は勝負を捨てた者のそれではなかった。

 

 やがて着弾する螺旋の槍。

 だが……

 

「なっ!」

 

 『狂戦士』が上げる、驚愕の叫び。

 

 螺旋の槍は、立ち尽くす舞の身体をすり抜けた。

 まるで、幻影を貫いたかのように。

 

 

 

「全ては幻影、そして攻撃は実体」

 

 

 

 舞の身体は、徐々に輪郭を失いつつあった。

 いや、輪郭を失うというのは適切ではない、輪郭が、徐々にぶれつつあった。

 

「こ、これは……!」

 

 一体、二体、三体。

 

 舞の身体は、三体に分裂していた。

 

『五身魔創陣』(フィフスナイトメア)

 いや、『未完成 五身魔創陣』(プロト・フィフスナイトメア)と呼ぶべきであろうか。

 その名が示す通り、五体の分身を創り出す異能力。だが実際に舞は三体しかいない。異能力自体が未完成であるのだ。

 

「くっ! そんなこけおどし!」

 

 構えを正眼に戻し、間髪入れず振りかぶり、振り下ろす。

 暴風を伴い放たれる『剣の暴君』(ソードタイラント)

 三体に分裂した舞を全て巻き込み引き裂くはずの、凄まじい衝撃波。

 もうもうと立ち込める爆煙。

 

 そしてその煙を突き切るようにして、三体の舞が同時に留美に切りかかってきた。その姿には傷ついた跡は全く見られない。

 さすがに三方よりの鋭い剣撃を完全には避けきれず、左の二の腕を浅く切り裂かれて、留美は後退した。

 

 『未完成 五身魔創陣』(プロト・フィフスナイトメア)、未だ完成には至っていないとはいえ、その効果は異常なまでだ。舞が発した『全ては幻影、そして攻撃は実体』の言葉通り、その攻撃は全て実体を伴った攻撃であるにも関わらず、敵の攻撃は全て幻影のようにその身体を素通りするのだ。

 「分身」という表現は適切ではない。どれか一体が本体というわけではなく、三体全てが舞であり、三体全てが舞ではないのだ。

 

 『まずいわね……』

 

 留美は劣勢に歯噛みしていた。

 三体の舞にはあの神速は見る影も無い。恐らく『神歩行』(ブリンクスルー)との併用はできないのだろう。

 だが鋭い剣撃は健在だった。今のところは致命傷も受けずかわし続けているが、それも時間の問題だろう。

 そして先ほどから自分の動きが鈍くなってきていることを、留美は自覚していた。

 左から切りかかって来た舞の剣を、刀で弾き返す。それに呼応するように背後から放たれた突きを、身体を捻ることで回避した。

 

 ズキン

 

 また、腰の古傷が疼く。

 もう何年も前に痛めた腰。今になってなぜまた疼き始めたのか。原因はわかりきっていた。

 『戦乙女の槍』(メイデンランサー)

 二発が限界だった。

 体中を、それも腰の捻りをこそ重視するこの異能力は、過去に腰を痛めている留美にとっては鬼門だったのだ

 連発されることを舞は危惧していたが、実際問題としてそのような危惧は不要であったといえる。

 留美はこれ以上連発したくとも、できないのだから。

 

 ズキン

 

 もう四年以上前に痛めた腰。

 

『懐かしいわね……』

 

 このような時であるのに、留美は懐かしさに目を細めた。

 

 

 

 

 

 

 留美が初めて人を殺めたのは、彼女が十歳のときだ。

 

 彼女の剣の師匠は、父親だった。

 『大破壊』(カスタトロフィ)により兄や姉の全てを失い、血脈により保たれた流派は留美が受け継ぐしか道は無いという状況であったにも関わらず、師範である父は絶望してはいなかった。

 留美が類稀な剣術の才能を持っていたからだ。十歳になるころにはほぼ全ての修練を終え、皆伝手前の状態であったのだから、その才能がいかに類稀なものであったかが伺える。

 

 だが皆伝を目前に控えた修練のさなか、留美は事故で腰を痛めてしまったのだ。

 剣術に限らず、全ての武において腰は要所である。腰を痛めた留美に、剣士としての道は閉ざされた。

 

 師範であった父は怒り狂った。流派が自分の代で絶えてしまうことに耐えられなかったのだろう。

 罵倒され、殴られても、留美は耐えた。敬愛する父の期待に背いた自分自身をこそ、責めた。

 

 留美の父である師範は考えた。

 血脈により保たれる流派、唯一の血脈である娘は既に剣士としての先が無い。であればどうするか。

 簡単なことだ。

 

 自分と娘の間に子を成し、流派を継がせればよいのだ!

 

 さすれば血脈は保たれる。師範である自分の子と、類稀なる才能を持った娘の子だ、後継者とするに何の問題があろうか。

 

 

 既に留美の父は、狂気に犯されていたのかもしれない。

 

 十歳の誕生日、留美は敬愛する父に襲われた。

 その時、手元に使い慣れた刀があったのは、果たして幸運だったのか。

 服を裂かれ、貫かれる寸前。

 留美は父を切り殺した。

 

 

 

 一時は断念した剣術は、その後予想以上に治癒した腰と折り合いをつけることで何とか続けた。そして恐らくは父殺しのショックからだったろう。留美は異能力という「力」に目覚めた。

 正規に学んだ剣術と異能力を融合することで、留美の剣は飛躍的にその威力を増した。

 気が付けば彼女は『狂戦士』と呼ばれ、恐れられる存在となっていた。

 

 

 だが、心の飢えは満たせない。

 敬愛していた父に裏切られたばかりでなく、己が手で殺めたのだ。留美は狂ったように修練を積み、狂犬のように戦いを求め、その全てにおいて勝者となって今まで生き延びてきた。

 

 

 満たされない。満たされない。

 こんなものでは満たされない。

 どこかにもっと強い敵は居ないのか。

 

 そして今、自分は最強の敵と相対している。

 この少女の強さはどうだ。

 常軌を逸した速度、死神の鎌のような太刀筋。

 強い。今まで相対した誰よりも強い。

 恐らくは我流であろうがそれを感じさぬほど洗練された太刀筋、そして感情に流されることの無い冷静で冷酷な状況判断。

 

 何もかも自分とは正反対の少女。

 だが、こいつは私と同じだ。

 貪欲に何かを求め続ける、もう一人の自分だ。

 

 ひょっとしたら。

 この少女に勝つことができれば、自分は満たされるのではないか?

 幼女の頃より胸に抱いてきたこの飢餓感から開放されるのではないか?

 

 勝ちたい。

 この少女に――『死剣士』川澄舞に勝ちたい。

 

 

 

 

 

 川澄舞。

 未完成の異能力を繰る負担が、身体を蝕みつつある。

 限界は違い。

 それでも……

 

『勝ちたい』

 

 

 

 

 七瀬留美。

 三対一のこの状況、そして悲鳴を上げ続ける腰。

 限界は近い。

 それでも……

 

『勝ちたい』

 

 

 

 

 両者の想いは、このとき完全に一致していた。

 

 

 

 

 

 

 三度目も先に動いたのは留美だった。

 一体の舞が打ち込んできた剣を、力の限り弾き返す。『狂戦士』の全力を前に、舞は後方に弾き飛ばされた。

 すかさず自らも後方に間合いを広げる留美。だが残る二体の舞がその隙を見逃すはずも無い。

 一体の剣は弾いた、だが残りの一体の剣に脇腹を裂かれた。

 

「くっ!」

 

 だがそれは覚悟の上での行動であった。激痛を意志の力で押さえ込み、間合いを広げることに成功した留美は、その場でやや足を広げて大地を踏みしめる。

 左手を舞に向け、刀の背を人差指と親指の間につける。弓を引き絞るような姿勢。

『戦乙女の槍』(メイデンランサー)の体制だった。

 

 悲鳴を上げ続ける腰。もう一度打てば、最悪の場合もう二度と刀を振ることはできないかもしれない。

 

 だが

 

「そんなこと、知るもんですか」

 

 言い捨てる留美の顔には、笑みが浮かんでいた。

 

 

 

 

 対する舞も、限界が近かった。

 もうあと数分で、『未完成 五身魔創陣』(プロト・フィフスナイトメア)はその効力を失うだろう。

 三対一であるにも関わらず、仕留め切れない。どうしてもスピードを犠牲にせざるをえず、決め手に欠けるのだ。

 距離を開けられたのは痛かった。予想通り、先ほどの体制に移行する留美を見て、唇を噛む。

 このまま異能力を解き、スピードで勝負するか?

 いや、それではジリ貧だ。あの体制から放たれる異能力は、瞬間速度で自分を凌駕する。

 であればどうするか。

 答えは一つしかない。

 

 刀を構え直し、走り始める三体の舞。

 

 

 最後に仕掛けたのは、舞だった。

 

 

 

 留美が、槍の発射体制に入る。

 捻り込む動きに激痛を訴える腰。脇腹の傷口からは、新たな血が溢れ出した。

 

「はああああっ!」

 

 だがそれを無視するかのように、槍は放たれた。先ほどよりも数段大きく鋭い螺旋の刃が、唸りを上げて舞たちに襲いかかる。

 

「つああっ!」

 

 舞が上げる裂帛の気合。

 留美の目前まで迫っていた三体が、螺旋に貫かれて消失した。

 だが次の瞬間。

 

 技を放った体制の留美、その側面に四体目の舞が姿を現した。

 

「四体目ですって!」

 

 限界を超える異能力による負担からか、舞の額には無数の脂汗が浮かび、その顔色も蒼白だった。

 だが剣勢はいささかも衰えることなく、下手から留美に振り上げられる。

 

 右手で突き出したままの刀、その柄を左手で掴む留美。そのまま強引に身体を捻る。

 激痛を訴える腰、軋む身体、傷口より溢れ出る血。

 

「なめるなぁ!」

 

 雄叫びと共に、迫り繰る舞の刀に向けて己が刀を振り下ろした。

 渾身の力を込めて。

 

 ギイン!

 

 激しく激突し、火花を散らす両者の刀。

 だが力において、『狂戦士』のそれは『死剣士』を遥かに凌駕していた。

 

 ビキィィン!

 

 鋭い音を立てて折れ飛ぶ舞の刀。

 そしてそのまま留美の振り下ろした刀が、舞を真っ二つに切り裂いた。

 

 

 

 かに、見えた。

 

 

 

「なっ!」

 

 

 幻影

 

 すり抜ける刀

 

 留美の刀はそのまま地面に打ち下ろされ、突き刺さる。

 

 

 そして背後よりの声。

 

 

 

「勝つのは、私!」

 

 

 叫ぶ五体目の舞

 

 

『五身魔創陣』(フィフスナイトメア)

 

 

 

 

 得物は無い。残り少ない異能力の全てを、右腕に込めて。

 瞬間的に反応し、振り向こうとした留美の左脇腹に、掌底を放った。

 

「がはっ!」

 

 たまらず留美は吹き飛び、そしてそのまま意識を失う。

 そしてそれに続くようにして、全ての力を使い果たした舞もまた、倒れ付す。

 

 

 

 決着だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 舞が目を覚ましたのは、それから二時間あまりも経ってのことだった。

 

「くっ……」

 

 全身を激しい痛みが襲い、思わず声を上げる。

 未完成だった異能力を、限界を超えて使用したのだ。最悪そのまま命を落としていてもおかしくなかったことを思えば、多少の苦痛は甘受できた。

 痛みに耐え、あたりを見渡す。留美は一メートルあまり離れた場所に倒れていた。まだ目を覚ましてはいないが、肩がうっすらと上下している事から、生きているようだ。

 そして少し離れた場所に、折られた舞の刀が落ちていた。

 ふらつく身体を何とか支え刀のもとまで歩き、それを手に取る。

 

 折られた刀。

 いままで無敗だった舞にとって、刀を折られるのは初めての経験だった。

 

「負けた、か」

 

 横からのその声に振り向くと、留美が身体を起こしていた。

 

「違う、私の負け」

「はぁ?」

 

 意外だったのだろう、舞のその言葉に、留美は素っ頓狂な声をあげる。

 

「あんた馬鹿? どう見ても私の負けじゃないのよ」

「私は刀を折られた」

「でも最後まで立ってたのはあんたじゃない」

「あの後、すぐに私も倒れた」

「そういう問題じゃなくて……」

 

 尚も言い募ろうとした留美だったが、互いに負けたと主張して言い争っている自分たちの滑稽さに気付き、言葉を切る。

 そして一つため息をつくと、その場に大の字になって寝転んだ。それを見た舞も同じようにする。

 

「あんた、変なやつね」

「そっちこそ」

 

 早朝から続いた戦いは終わり、既に太陽は真上に上っている。

 二人してそれを眺めながら。なんとなく会話が途切れた。

 

「私は、強くなりたかった」

 

 空を眺めながらぽつりと、独り言のように舞はそう呟く。

 同じように空を眺めながら、留美は無言。

 

「そして、強くなったと思っていた」

「あんたは強かったわよ」

 

 留美が舞に顔を向け言葉を挟む。だが舞は空を見上げたまま、僅かに首を振って否定した。それを見た留美も、また空を見上げる。

 

「本当の強さとは何か、私は全然解っていなかった」

 

 チチチ……

 

 どこかで小鳥の鳴く声が聞こえる。

 

「で、いまは解ったの、それが」

「まだ、解らない」

「ふうん」

「でも、いつか解ることができる気がする。いまはまだ解らなくても、私は……」

「私は?」

 

 問い返す留美には応えず、舞は相変わらず空を眺める彼女に逆に問うた。

 

「あなたは、求めるものを得られたのか?」

 

 自分と同じく、留美が何かを求めて剣を振るい続けていたことは、戦いの中で気付いた。だから当たり前のようにそう聞いた。

 留美も驚きはせず、むしろ当たり前のようにこう返した。

 

「私は満たされたかった」

 

 舞は相槌を打つことはせず、また空を眺める。

 

「戦いの中でなら、満たされると思った」

「満たされた?」

 

 そう問う舞に、留美も首を振って否定した。

 

「最初から、求めるものが間違ってたんだ」

「……」

「私が求めていたものは、戦いの中で得られるものじゃなかったんだ。だって……」

「だって?」

 

 問い返す舞に、留美は応えない。

 舞も重ねて問う事はせず、そのまましばらく二人して空を眺め続けた。

 

 

 

「いたたた…… そう言えば私斬られてたんだっけ……」

 

 脇腹を押さえ、うめく留美。

 舞もまた思い出したように顔を顰める。

 

「私だって腕を斬られた」

「あんたなんてちょっとだけじゃないのよ! しかも腕だったら私も斬られてる!」

「痛い痛い」

「無表情でそんなこと言っても説得力ないわよ!」

「失礼な、本当に痛い」

「ああもういい! わたしゃ帰る!」

 

 そう言って留美は、立ちあがった。刀を鞘に収め、同じように立ちあがった舞に、背を向ける。

 そしてそのままの姿勢で、言った。

 

「次は、勝つわ」

 

 その言葉を聞いた舞も、即座に返す。

 

「私も次は、勝つ」

 

 肩を竦め、そのまま歩み去ろうとした留美に、舞が声をかけた。

 

 ・・
「留美!」

 

 ちょっと驚いたような顔をして振り向く留美。

 そして舞の顔を見た彼女は、更に驚いた顔をした。

 

 舞は、微笑んでいた。

 

「また」

 

 それだけ、告げた。

 

 そして、留美もこう返す。

 

        ・
「ええ、またね、舞!」

 

 

 

 

 

 

 

『狂戦士』七瀬留美。

 留美はこの戦い以降、以前のように狂犬のごとく戦いを求めることはしなくなった。だが生来の気性か、戦いを楽しむ性だけは抜けなかった。

 彼女は異能力集団「ONE」の側近筆頭として名を馳せ、リーダーである『永遠の』折原浩平の右腕と目されるようになる。

 その剣腕は益々冴え、『狂戦士』の名は畏怖の代名詞となった。

 

 

 

『死剣士』川澄舞

 敵対する者には相変わらず容赦無かったが、以前のように冷たい氷のような瞳をすることはなくなった。人が彼女を『剣聖』と呼ぶようになるのは、これよりしばらく後のことであった。

 この戦いより一年後、生涯の友である『自己無き』倉田佐祐理と出会い、そのまた一年後、『紅の』相沢祐一と出会う事になる。

 

 

 

 

 舞がその後、求めていた答えを知り得たかどうか。

 彼女だけが、知っている。

 

 

 

 

 

To be continued to “INOSYA”