異能者
<第十四章>
−死を司るもの−
2000/12/09 久慈光樹
あゆが目覚めたとき、既にあたりは夜の帳に包まれていた。
「あっ……」
「ん、起きたのか? あゆ」
焚き火を挟んで正面に、祐一が樹に寄りかかり座っていた。
「祐一くん……」
「腹減っただろ? ほれ、食え」
「わっ」
祐一の投げてよこした物を、慌てて受け止める。
干し肉だった。
「焚き火であぶって食うんだ。携帯食だから味気ないのは我慢してくれ」
「あ、ありがとう」
しばらくは二人とも無言で干し肉をかじる。
「あ、あのっ!」
「ん? どうした。 ああ、水ならそこの水筒に……」
「そうじゃなくて……」
あゆは不安だったのだ。
祐一と出会う前、彼女は自分の持つ異能力を白眼視される経験を嫌というほどしてきた。
昔に比べればまだ“まし”になったとはいえ、未だ異能力は畏怖と蔑視の対象であったのだ。
化け物と罵られ、石を投げられるような境遇。
ONEの折原浩平が蜂起した際、当時としては無謀とも思えるその計画に賛同する異能者が多かったのは、そういった時代背景があったからこそなのである。
「ごめんなさい、隠してて」
「何をだ?」
「何をってその……」
「異能力のことか?」
ずばり核心を突かれ、俯くあゆ。
「……うん」
そんなあゆを痛ましそうに祐一は見やった。
同情や哀れみからではない。
祐一自身、幾度と無く自分に問い掛けてきたことだったからだ。
何の為の力か?
人を殺し、その人生全てを奪う為の力。
あゆも迷っている。自分の持つ力の存在意義を見失っている。
彼女は、祐一だった。
過去の、そして今の、祐一自身だった。
「なああゆ、その力、嫌いか?」
「……好きじゃない、と思う」
「そっか」
「でも」
「ん?」
「でも、さっきだってこの力が無ければ大変な事になってた」
あゆの言う通り、先ほど野犬に襲われた際にたった2人で切りぬけられたのは、紛れもなく異能力のおかげだった。
「今までも、この力が無かったら多分ボクは今まで生きてこれなかったと思う」
「……」
この時代を一人だけで生き抜いていくには、必要な力。生きていく上で、必要な力。
そしてその力を嫌うという矛盾。
「どうして、こんな力があるのかな」
あゆのその問いは、正に祐一がずっと考えてきた問い、そのものだった。
それ故に、祐一は答えることができない。
それっきり俯いて無言になるあゆを、同じく無言のまま見つめる。
「あ、あはは、ごめんね、祐一くん。変なこと言っちゃったね」
やがて顔を上げたあゆは、そう言って笑う。
その笑みは、痛々しかった。
「あのな、あゆ」
その笑みを見て、祐一は思わず声をかけた。
「ん? なに?」
「あのな、その……」
「?」
「さっきのあゆ、綺麗だったぞ」
「え?」
「光に包まれて、翼をはためかせて。まるで本当の天使みたいだった」
「……」
「あ、あれ? 何言ってんだろうな、俺。あは、あははは」
既に自分が何を言っているのかも分からなかった。
ただ、痛々しい笑みのあゆを見て、何か言わなければと思った。そして思っていた事が口をついただけだったのだ。
「……ありがとう」
「はは…… え?」
「ありがとう。本当に…… ありがとう」
「あゆ……」
祐一の応えは、答えではなかった。
だが、あゆにはその応えだけで充分だった。
祐一が自分の力を見ても嫌悪せずに受け入れてくれる。祐一ならば受け入れてくれる。
それだけ分かったのなら、充分だった。
少なくとも、今は。
「なんだか眠くなってきちゃった、ボクもう寝るね」
「ああ、明日は早いぞ」
「うん、じゃあおやすみなさい」
翌日。
「ここが『美坂家』の街なんだね」
「ああ、そのようだな」
朝早く出発した甲斐あって、昼前には目的地に到着した。
「なんか、お祭りみたいだよ」
「そうだなぁ」
さほど大きな街ではなかったが、そこかしこに露店が出ており、こころなし街全体の雰囲気も高揚している印象を受ける。
やや季節はずれだが、この街では丁度祭りの時期なのだろう。
「あ、祐一くん、お好み焼きだよ。 あ、わたあめ売ってる」
あゆは大はしゃぎだ。
完全に目的を見失っている。
「きっと神社かどっかに行けばもっとお店出てるよ、早く行こう、祐一くん」
苦笑する祐一。小さな子を祭りに連れてきた父親の心境である。
「おいあゆ、そんなに走ると危な……」
ドン
「わっ!」
「きゃっ!」
いわんこっちゃない。ため息をつく祐一。
前を良く見ないで早足で歩いていたあゆが、正面衝突したのである。
「うぐぅ、痛いよー」
「前を見て歩かないからだ。 ごめんな、大丈夫か?」
あゆの頭を小突き、ぶつかった相手に謝る。
ぶつかった相手は祐一よりも若干年下らしい少女だった。
「あ、はい」
しばらくは何が起こったのか分からなかったようで呆然と座りこんでいた少女だったが、祐一が声をかけるとそう返事を返した。
ぶつかった弾みにずり下がってしまったストールを羽織りなおし、立ちあがる。
「うぐぅ、ごめんなさい」
「大丈夫ですから」
そう言って少女は微笑む。
儚げな笑みだった。
不躾にならない程度に、祐一はその少女を観察する。
なかなか整った顔立ち。まず美少女と言っていいであろう。
小柄で、身長はあゆと同じくらいだ。
顔色の悪さが気になった、蒼白といっていいほどの白さである。だが服から覗く手足を見るに、元から色白なだけなのかもしれない。
「あの……」
少女の声で我に返る。
知らず魅入ってしまったようだ。
「ああ、悪い」
「いえ」
「本当にごめんね」
「いえ、いいんです。私も前をよく見てませんでしたから」
「ボクはあゆ。月宮あゆだよ。こっちは祐一くん」
「相沢祐一だ」
祐一の名を聞いた少女は、若干驚いたようだ。
「あなたはKanonの……」
「ああ」
「そうですか。私は栞です。 ……美坂、栞です」
「美坂?」
今度は祐一が驚く番だった。
目の前のこの少女は、美坂家に連なる者なのだ。
「じゃあ美坂家の?」
「……はい、一応」
少女の様子からは、その事に触れて欲しくないという事がありありと読み取れた。
常の祐一であればそれを察してあえて触れなかったろう、だが今はそうしなかった。祐一がこの街に来た目的は、美坂家との接触にあるのだから。
「済まないが美坂家当主と会わせて貰えないだろうか」
「……」
「『死神』美坂香里と」
「会って、どうするのですか?」
「Kanonは、彼女に、そして美坂家に助力を仰ぎたい」
「……あの人は、きっと拒否すると思いますよ」
「そんなこと会ってみないとわからない」
しばらく両者とも無言で視線を交わす。
やがて栞と名乗った少女は、ため息をつくと頷いて了承する旨を告げた。
案内されたのは、その街の中心に位置する大きな神社だった。
祭りの最中ということもあり、人々で賑わうその神社の奥まった社こそ、美坂家の中枢なのだという。
「あゆ、ここでしばらく別れよう」
「え、でも……」
「これは俺の仕事だからな、あゆは祭りでも見て周っていてくれ」
「う、うん」
「そうだな、1時間くらいしたらそこの鳥居に集合ってことでどうだ?」
「うん、わかった。じゃあ栞ちゃん、一緒にお祭り見ようよ」
「え?」
まさか誘われるとは思わなかったのだろう。栞は心底意外そうにあゆを見た。
「いいんですか? ご一緒して」
「当たり前だよ。あ、栞ちゃんがよかったら、だけど」
「私は構いませんよ」
「じゃあ決まり!」
そんな二人を目を細めて見ていた祐一だったが、二人と別れ、社に近づくにつれ一転して表情を引き締める。
「ここから先は一般の者立ち入る事適わぬ。立ち去られるがよい」
門番とおぼしき屈強な男が、祐一の行く手を阻む。
「Kanonの相沢祐一だ。美坂家当主にお目通りを願いたい」
「……! 『紅の』相沢祐一!? し、少々お待ち下さい」
慌てふためいて社に駆け込む門番を、内心の苦笑と共に見送る祐一。
名声だか悪名だか分からないが、随分と有名になったものだ。
待つ事しばし、社より出てきた門番は先ほどとはうってかわって腰の低い態度で「当主がお会いになるそうです」と告げた。
「初めまして、私が美坂家当主、美坂香里です」
初めて見る当主が女性である事は既に知っていたことだった。
自分と同じくらいの年齢であることも、異能者が総じて第二世代であることを考えれば驚くに値しない。
祐一が驚いたのは、香里と名乗った当主が見知った人間に似た雰囲気を持っていたからだった。
先ほど知り合いになったばかりの少女――確か美坂栞といった――と雰囲気が似ているのだ。
「こちらこそ初めまして、Kanonの相沢祐一といいます」
「『紅の』相沢祐一の勇名は聞き及んでおります、随分とご活躍のようですわね」
内心の驚きを少しも表面に出す事なく名乗る祐一に、香里の微量に嘲りを含んだ言葉がかけられる。
「貴女ほどではありませんよ、『死神』美坂香里さん」
「あら、そうかしら?」
流石はこの若さで当主を張るだけのことはある。祐一の軽い挑発など、歯牙にもかけない。
一筋縄ではいかない相手のようであった。
『厄介だな』
この場では、立場的に対等ではないのだ。
祐一からすれば、助力を仰ぐという立場であり、Kanonと美坂家の戦力差が拮抗している以上、武力を背景にした恫喝も通じないだろう。
「それで、その『紅』が今日は何の用向きで?」
恐らく察しはついているだろうに、わざわざそう問うてくる『死神』。
だが門前払いされなかった以上、脈がまるっきり無しというわけではないだろう。
祐一は考えた末、正面からぶつかることにした。元々こういった水面下の策略には向いていないのだ。
「単刀直入に言おう、Kanonはあんたたち『美坂家』に助力を仰ぎたい」
表面上の礼儀をすら無視して、普段と同じように言い放つ祐一。
対する香里も、恐らくは普段通りであろう砕けた口調になって返した。
「それはまた唐突ね」
「唐突でもないだろう。Kanonとしては当然の選択だ」
「そうね、“Kanonとしては”ね」
「どういう意味だ」
「言葉通りよ」
「……で、どうなんだ? 協力してくれるのか、くれないのか」
微かな苛立ちが声に篭るのを感じる。
「ふふ、急かす男は嫌われるわよ」
「生憎とそっち方面は俺も経験不足なんでね」
「あら、『紅の』相沢祐一ともなれば言い寄ってくる女性の一人や二人いるでしょうに」
「話をはぐらかすのはやめてもらおうか」
やや声を荒げる祐一。
その言葉からは、今やはっきりと苛立ちが感じられた。
掌で踊らされている感が拭えない。そこからくる苛立ちであった。
「俺が聞きたいのはそんなことじゃない。協力してくれるのか、くれないのか、どっちなんだ」
「本当に性急ね」
「ふん、そういうタチなんでな」
吐き捨てるように、祐一。
「私たち『美坂家』は、古来より“死”を司る一族」
突然話を変える香里。
祐一は黙ってその話を聞く。
「“死”は万人に平等よ。どんな人間でも、いえ、どんな生物でも“死”から逃れる事はできない」
厳かにそう言う香里からは、まるで聖職者のような趣すら感じられた。
「だからこそ、その“死”というものを司る私たちは、表舞台に立ってはならないの」
「……」
「私たちが古来より中立の立場を貫いているのはそういう理由からよ」
「だが、この先も中立を保てる保証はないだろう」
祐一のその言葉に、香里は無言で応じる。
「『永遠の』折原浩平は自分に従わない異能者には容赦しない。それはあんたも知っているだろう」
「そうね」
「潰されるぞ」
「心配してくれるのは嬉しいけれど、それとあなたがたの組織に協力するのとは、また別問題だわ」
「それはそうだが……」
「何にせよ、おいそれと決められることではないわね。 幸い今この街は祭りの最中よ、結論を出すまでの間、楽しんでいって頂戴」
香里のその言葉に、祐一は意外の念を禁じえなかった。
今までの話の流れから、けんもほろろに拒絶されるものだと覚悟していたのだ。だがそうはならず、しばらく考える時間が欲しいという。
何かしらの策謀を巡らせているのであろうか。
「ああ、それは構わない。しばらくはこの街に滞在しようと思っているから、結論が出たら知らせてくれ」
しかし祐一とて疑念を表面に出すほど愚かではない。表面上は好意的に、そう伝える。
「ええ、わかったわ。 ……ではこれで会見は終了とします。相沢祐一さん、ご足労をお掛けしました」
うって変わって格式ばった言い回しになり、美坂香里は会見の終了を告げた。
格が違う。そんなことを思う。
こと謀略策略面に関しては、流石この若さで当主を張るだけのことはある。どちらかといえばそういった方面には疎い祐一では、はなから勝負にならなかった。
しかしどちらにせよ、サイは投げられた。後はこの若き当主がどういう判断を下すのか、祐一はただ待つ事しかできないのだ。
「それでは失礼致しますわ」
そう言って退室しかけた香里に、ふと祐一は声をかける。
「そういえば、ここまで栞って女の子に案内をしてもらったんだが、知っているかい?」
その言葉に、深い意味はなかった。
ただ、香里を一目見たときに感じた既視感をふと思い出し、聞いてみただけだった。
だがその言葉は、祐一自身思いもよらないほどの効果を、『死神』と称される女性にもたらした。
「……あの子に、会ったのね」
背を向けたまま、独白するように香里は呟く。
「あ、ああ」
「それで、あの子の様子はどうだった?」
「様子? ……いや、別におかしなところはなかったが」
「そう……」
それっきり、退室するでもなく、ただ立ち尽くす香里。
その様子に戸惑いながらも、カマをかけるように語を接ぐ祐一。
「随分と雰囲気が似ているんだな。妹かなにかかい?」
その言葉を聞いた途端、勢いよく香里は振り返る。何かを叫ぶように口を開き。
そしてその動きはそこで止まった。
「……いえ、私に妹は…… 居ないわ」
口から漏れたのは、ただその言葉だけであった。
「……そうか、悪かったな、変なこと聞いて」
「別に」
「じゃあそろそろ俺もお暇させてもらう」
「……今夜は、満月かしらね」
立ち去りかけた祐一の耳に、そんな香里の独白めいた言葉が届く。
だが祐一が振りかえったときには、既にそこに香里の姿はなかった。
「やめてくださいっ!」
祭りに賑わう街に、その少女の声は響いた。
「あの声は……」
あゆとの待ち合わせ場所に向かう途中だった祐一は、その声に聞き覚えがあった。
あゆと一緒に祭りを周っているであろう栞という少女の声ではなかったか。
「そんなに邪険にするこたぁねぇじゃねぇかよ」
「ヒヒヒヒ」
典型的な、ごろつきどもであった。その数は4人。
背にあゆを庇うように立つ栞に、下卑た笑いを投げかけながら、取り囲む。
「今日は祭りなんだからよう、俺たちと楽しもうぜ」
「け、けっこうです!」
毅然とした態度の栞だったが、膝が震えるのはどうしようもない。
その様子を見て取った男たちは、ますます調子ずく。
「野郎……」
その様子を見た祐一が激昂し、飛び出そうとした時だった。
「おいおい、しつこい男は嫌われるぜ、兄さんたち」
妙に間延びした声が、男たちの横合いから掛けられる。
「なっ! あいつは!」
祐一の足は、凍りついたように止まった。
「んだとぉ!」
「引っ込んでろっ!」
ドスを効かせて声を掛けてきた男に対す、ごろつきたち。
その声は暴力性を帯び、善良な一般人ならば震え上がってしまうだろう。
「んー、ナンパはもっとスマートにやらないとなぁ」
だが男はいっこうに堪えた様子も無く、相変わらず緊張感の無い口調でおどけるように続けた。
「だいたいあんたら、鏡見た事ある? とてもナンパに成功するようなご面相じゃないぜ?」
その小バカにするような口調に、元々量の少ないごろつきたちの忍耐力はすぐに蒸発した。
「てめぇ!」
「ぶち殺してやる!」
4人のごろつきたちは各々懐から獲物を取り出す。
それはナイフであったり、殴打用の“ブラックジャック”と呼ばれる道具であったり。
流石に街中で銃器を取り出すほど愚かではないようだ。
周囲で悲鳴が上がり、たちまち周りにいた人間が避難する。
「あらら」
だが男はその様子を見ても動じない。
「や、やめてよぉ!」
あゆの叫びも空しく、ごろつきたちは男の周囲を取り囲んだ。
「死ねやぁ!」
切りつけられたナイフを、軽々と避け、その持ち主の鳩尾に膝蹴りを叩き込む。
さほど力を込めた一撃にも見えなかったが、ごろつきは口から吐捨物を撒き散らしながら、地に沈んだ。
「あーあー、汚ねぇな、街を汚すなよ」
「野郎っ!」
背後からブラックジャックで頭部を狙った一人を、腕を掴んで投げ飛ばす。
相手を庇う為の引き手は無い。
ごろつきは信じられないほど宙を飛び、地面に叩きつけられた。
受身どころではない、両腕を骨折し、顔面を強打してそのまま失神する。
同時に切りつけてきた一人は、男の振り向きざまの裏拳一発で沈んでいた。
男はそのまま風のような速度で最後の一人に接近し、正面から右手で顔面を鷲づかみにした。
「ひぃっ!」
そのままギリギリと力を込める。
苦悶の声をあげるごろつき。
男は、氷のような笑みを浮かべていた。
・・・
「殺すか」
ただ、それだけ。
子供が、捕まえた虫の手足をもいで遊ぶ時のような、そんな口調。
男の両眼は、漆黒に輝いているように見えた。
ごろつきが、恐怖と苦痛のあまり意識を失う寸前、その声は掛けられた。
「その辺にしとくんだな」
ごろつきの顔面を掴む男は、まるでその声がかかることを知っていたかのように、口元を歪めた。
そして掴んでいた手を離す。
「お前、運がよかったな」
「ひぃぃぃっ!」
ごろつきはそのまま転がるように逃げていった。
それに目も向けず、男は声を掛けてきた人物に向き直る、そして笑みを浮かべながら言った。
「久しぶりだな、祐一」
男に声をかけたのは祐一だった。
その表情は硬い。
止めなければ、恐らくこの男は何の躊躇いもなく殺していただろう。
「祐一くん!」
「あゆ、無事か」
「うん、栞ちゃんが庇ってくれたから」
「祐一さん」
「悪かったな、栞」
「い、いいえ、あゆさんも無事でよかったです」
2人に声を掛け、祐一は男に向き直る。
「どうしてあんたがここにいるんだ? 『永遠の』折原浩平」
『紅』と『永遠』
約2月ぶりに、2人は相対したのだった。