異能者

<第一章>

−世界の破滅−

1999/10/27 久慈光樹


 

 

 

 西暦1999年8月。

 人類における一つの転機となった月だ。

 ノストラダムスという自称預言者が“予言”した世界の破滅の日はこの年の7月だった。

 大半の者は面白おかしくこの話題を扱い、5月を過ぎる頃にはマスメディアにより『世紀末予言』『世界の破滅する日』等といった軽薄な情報が世の中に氾濫した。

 誰も信じてなどいなかったのだ。絶対に起きないと分かっていたからこそ、一種の娯楽としてこの話題に興じていられたのである。

 そして実際、8月になっても世界が破滅することはなかった。煽り立てたマスコミはその事実によって何ら非難されることもなく、ダイオキシン問題やオゾン層破壊にこじつけて、皆一様に『世界が破滅するのも遠いことではないかもしれない』と締めくくった。

 

 そう、遠いことではなかったのだ。

 

 ノストラダムスという人物が偉大なる大預言者だったのか、それとも稀代のペテン師だったのか、今となっては誰にも分からない。

 しかし、一月ずれたとはいえ、1999年8月に世界は破滅したのである。

 

 それは突然の出来事だった。

 巨大隕石が地球に激突したわけでもなければ、大地震が世界を襲ったわけでもなかった。

 ただある日突然、世界の約7割の人間が“消滅”したのだ。

 

 生き残った人間は激しい耳鳴りと嘔吐感を感じたに過ぎなかったし、各地の観測所や観測衛星のデータは全て正常値を指し示していた。しかし何か見えない力が働き、約40億人以上の人間を消滅させたことは事実だったのだ。

 世紀末論者の言う通り、これが神による人類への審判であるとすれば、神は無慈悲で、そして万人に公平だった。

 老若男女、人種を問わず、全世界の人間全てに公平に“消滅”という審判は下されたのである。

 

 そして生き残った人間には、さらなる審判が待ちうけていた。

 世界人口の約7割が突然消滅するという事態に、全世界を未曾有の大混乱が襲ったのだ。

 各地で勃発する紛争。混乱という熱病に犯された愚かな人類は、自分たちが何の為に争っているかも理解しないままに、血みどろの争いを繰り広げた。

 そうしてようやく人類がその熱病から覚めたとき、世界人口はさらに約半数の10億人未満となっていたのである。

 

 生き残った人間達は、先の人間消滅から、それによってもたらされた大混乱までを『大破壊(カスタトロフィ)』と呼び、ようやくその原因追求に乗り出した。しかし大破壊により、国家という概念すら消滅してしまった状況下では、それは遅々として進まず、10年以上経っても原因となる事象を完全に把握することはできなかった。

 それでも研究により、人間の持つ特殊な能力、SF的に言えばPS(サイキック)能力が発見され、大破壊の原因にも『人間が無意識のうちに放っていたPSの波が、何百年も蓄積され、それが何かを引き金として弾けた』とあいまいながらも一応の理由づけがなされた。

 そして、精神的にPS能力に劣っていた人間がPSの波にのまれ何の痕跡も残さず消滅したのだという結論に達したのである。

 

 当初、生き残った人間達には何ら影響はないと思われたが、大破壊後に生まれた人間にはPS能力を持つ者が多く、これも大破壊の影響の一つと考えられた。そしてこの特殊なPS能力を持つ子供達を“第二世代”と呼称し、大破壊以前の人間(第一世代)と区別された。また、PS能力を持つ者は第一世代、第二世代に関係なく“異能者”と呼ばれるようになったのである。

 大破壊の忌まわしい記憶から異能者は現在、社会的に迫害される立場にあり、大部分の異能者は自分の異能力を隠して生活している。

 だが実際のところ、いかにPS能力に長けた第二世代とはいえ、大部分の人間は“手を触れずに物が動かせる”であるとか“他人よりも勘が鋭い”といった程度の微々たる能力であり、相手を殺傷できるほどの異能力を持つ者は全体の5%にも満たなかった。

 

 

 

 そして大破壊から16年の月日が流れる。

 

 

 

 未だに使用されつづけている西暦では2016年となり、一時は種の根絶の危機すらあった人類も全盛期には遠く及ばないものの、世界人口は約15億人にまで持ちなおしていた。

 各地では未だに混乱が続いていたが、一応は秩序と呼べるものが回復されつつあり、生き残った人間達はしだいに大破壊の傷痕を癒していった。

 

 こうした状況下、日本列島において500人程度の小規模な反乱が勃発した。

 平時なら問題にならない程度の反乱であったが、大破壊後、軍隊はおろか“国家”という概念すら消滅してしまった現在では、十分に脅威と言える規模であった。

 しかし、日本には未だ約400万人以上が生き残っており、単純な人口比率から見れば反乱鎮圧も時間の問題と思われた。

 

 

 しかし、当初の予測を裏切り、たった一年で日本列島は反乱を起こした組織の支配下に置かれてしまったのである。

 

 反乱を起こした組織は、『ONE』という組織名を名乗っていた。組織のリーダーは『折原浩平』という当時16歳の若者で、彼は『異能者による理想国家の設立』をスローガンに掲げ、大破壊以降社会的に迫害されつづけてきた異能者達の支持を急速に集めていった。

 『ONE』の構成要員のほぼ全員が第二世代の異能者であり、リーダーである折原浩平自身も凄まじい異能力を持っていた。そしてさらに彼の側近とも言える5人の女性たちも通常兵器すら通用しないほどの凄まじい異能力を持ち、当時日本の軍事における中核であった横須賀の軍事基地をたった一晩で壊滅させるという行為をやってのけた。

 そして、その日の晩には臨時政府に対して降伏勧告が突きつけられたのである。

 

 当時の臨時政府は明らかに無能ぞろいであった。マニュアル化された前例のないことには一切対処できない彼らは、利権漁りと権力闘争には慣れていたが反乱鎮圧や降伏勧告への対応は前例がなかった。

 この後に及んで何とかONEを鎮圧する方法を模索しようとした臨時政府は、降伏勧告を受け入れるとしてONEのリーダーである折原浩平を首相官邸におびき出し、抹殺するという計画を実行に移した。ONEはリーダーである折原浩平の強烈なカリスマによって支えられた集団であり、その求心力たる折原浩平の抹殺に成功すれば、残党は自然消滅すると考えたのである。

 要請に従い、降伏勧告受領のために一人首相官邸に赴いた浩平を迎えたものは、3ダースを超える銃口であった。

 

 臨席した臨時政府の面々は、そのとき勝利を確信したかもしれない。しかし、銃口が一斉に火を吹くと同時に、浩平は面白くなさそうな口調でこう呟いた。

 

『来い、永遠の世界(エターナルワールド)』  と。

 

 その瞬間、浩平を中心として漆黒の闇が広がった。その闇は首相官邸を飲みこむほどに広がると、発生時と同様に唐突に消えた。

 後に残っていたものは、クレーター状に抉り取られた地面と、その上に立ち相変わらず面白くなさそうな表情をした浩平ただ一人だけであった。

 こうして反乱からわずか一年で日本列島はONEの支配下に置かれたのである。

 

 

 

    そして西暦2018年

    物語は幕を開ける

 

 

 

 

「おおおおぉっ!!」

 

 体の左右に水平に広げられた両腕に精神を集中する。

 徐々に『力』が両手に集約されていくのが実感できる。

 その両手は紅い輝きを発していた。

 

「くらえっ!」

 

 限界まで引き上げた力をこめた両腕を体の前に突き出す。横に寝かせた左右の手首をぴったりとつけ、手のひらを相手に向けた格好だ。

 その状態で力を解放する。

 

「『深紅の黄昏』(クリムゾン・トワイライト)!!」

 

 その瞬間、両手から迸った紅い輝きが彼の前方にいた20人ほどの人影を包み込むと大爆発を起こす。

 

 

 ドグォオオオン!!

 

 

 もうもうと煙が立ちこめる。

 やがて煙が晴れると、そこに立っているのはその男だけだった。

 

「やったか……」

 

 18、9歳だろうか、そう呟く青年の横顔にはまだ少年のような雰囲気が残っている。

 

「これでここいら一帯はかたがついたな」

 

 彼は誰にともなく呟くと、足早にその場を立ち去ろうとしていた。

 その時。

 

「死ねぇぇっ!」

 

 青年以外には誰もいないと思われたが、先ほどの攻撃から逃れた生き残りがいたようだ。

 異能力で作り出されたカマイタチが青年を襲う。

 

「ふん」

 

 だが青年は、鼻で笑うと自分の周囲に球状の精神バリアを張り巡らせた。

 

 キン!

 

 澄んだ音を立ててカマイタチが弾かれる。

 

「無駄だな」

 

 

 さまざまな特殊能力を持つとはいえ、異能者は肉体的には通常の人間と大差ない。そのため大破壊以後、強力な異能者同士の戦闘では大半が両者の死をもって戦闘の決着となるケースが多かった。

 しかし自分の持つ異能力を球状に周囲に張り巡らせるという精神バリアの発達により、直接的に精神的、肉体的に損傷を受ける確立が減り、死亡率は激減した。実際問題として、精神バリアを張ることができるかどうかが、異能者として戦闘に耐えうるかの境目といえる。

 

 ただし無論精神バリアとて万能ではなく、直接的なダメージは軽減できるとはいえ、強力な異能力を防げばその分自分へのフィードバックも多くなり、悪くすれば精神バリアごと肉体や精神を破壊され死に至るということもある。張る者の異能力の強さにより、精神バリアの強度が左右されるのだ。

 

 先ほどの青年の攻撃を精神バリアで何とか耐え切ったその敵は、体のあちらこちらから流血していた。しかし青年は敵の攻撃にまったく傷つくことなく弾き返したのだ。根本的な異能力が段違いなのだろう。

 

「くっ、さすがは『紅の』相沢祐一……」

「お前等、ONEの異能力者狩り部隊だな?」

「我等のリーダーたる浩平様の理想を理解できない裏切り者達め」

「裏切り者だと?」

「おう! そうともよ! 貴様等『Kanon』は同じ異能者でありながら、浩平様の唱える理想国家設立を妨害する裏切り者だ!!」

「はんっ! 話にならねぇな。俺達は独裁者に飼いならされて家畜のような生活を送る気なんて、さらさらねぇんだよ」

「何をぉ!!」

「さあ、話は終わりだ。これでさよならだな」

 

 祐一の右手に、先ほどの紅い光が煌くと、その敵は精神バリアごと跡形もなく消し飛んでいた。

 

「やはりONEか」

 

 苦々しげにそう呟くと、廃墟と化したようなあたりの惨状を見渡す祐一。

 

 異能者開放を掲げ、自分に同調する異能者達を加えて、ONEは巨大化していった。

 しかしすべての異能者たちがその理想に賛同したわけではなく、日本だけでも大小様々な集団がレジスタンスとして活動している。

 

 ONEのリーダーたる『永遠の』折原浩平は、普段は気さくとも言える性格をしており、自分に従う異能者達に慕われているが一旦彼に敵対した異能者達に対しては苛烈な弾圧を加え、容赦無く叩き潰した。

 

 異能者狩り部隊は折原浩平の側近たる5人の女性たち直属の部隊で、その戦闘能力はまさに現時点では最強であった。

 

 この最強部隊に、抵抗者達は徐々に壊滅させられつつあった。そんな中、祐一の法的な保護者(現在“法”は形式だけになっているが)である水瀬秋子を中心とした集団『Kanon』は抵抗を続けていた。

 祐一の所属する集団、『Kanon』はONEに対抗するために水瀬秋子により設立された組織である。

 リーダーである『静かなる』水瀬秋子自身は異能力を一切持たない第一世代であるが、『眠り姫』水瀬名雪、『ビーストマスター』沢渡真琴、そして現時点ではKanon最強の異能者である『紅の』相沢祐一を抱え、数からいえばONEに遠く及ばないが、異能力者の質という点から見れば、現在ONEに対抗できるただ一つの集団である。

 だが、未だ50人程度の小集団であり、現在はレジスタンス的な行動を余儀なくされていた。

 

「異能者狩り部隊にしては歯ごたえのない連中だったな。こちらは囮か」

 

 祐一の脳裏に最悪の結論が浮かんだ。いかに祐一がKanon最強とはいえ、あまりにもあっけなかった。側近の女性達の姿も見えない。

 

「連中が俺をここで足止めして、その間に本隊が本部を襲撃するって訳か……」

 

 祐一はすでに走り出していた。

 

 なんと言うことだ、こんな単純な策に引っかかるとは。

 だが大丈夫だ、本部には名雪と真琴がいる。

 あいつらなら、俺が行くまで十分支えきれるはずだ!

 

 必死に不安を押さえ、走り続ける祐一。だが、いつのまにか振り出した冷たい雨は、彼のそんな思いをあざ笑うかのように、大地を濡らしていた。

 

 

 

 

「お母さん、祐一はまだ戻らないの!?」

 

 少女のやや取り乱した声が、司令室に響いた。

 Kanonリーダー水瀬秋子を『お母さん』と呼ぶ人間はただ一人、『眠り姫』水瀬名雪である。

 

「所在は確認してあります。名雪、後15分ほどで祐一さんが来てくれるわ。それまでなんとしても支えきるのよ」

 

 答える秋子の口調も固い。

 襲撃者の正体がONEの異能者狩り部隊であることは、斥候の報告から分かっている。

 しかも敵の中には、折原浩平の側近たる女性の存在も確認されていた。5人のうちの誰かまでは判別出来なかったが、脅威であることには何ら変わりはなかった。

 

「敵部隊の状況は?」

「現在Xポイントにて展開しています。攻撃は時間の問題です」

 

 オペレータの一人が答える。

 Kanon本部は、大破壊後に建設された数少ない建造物のうちの一つである。

 外観は普通の日本家屋(規模は段違いなのだが)であるが、その地下には最新の技術が集約されており、文字通りKanon最後の砦である。

 事実上この本部の陥落は、Kanon、しいては反ONE勢力の敗北を意味していた。

 

 この抵抗の最後の火を消してはならない。

 水瀬秋子は内心の決意を、表情を引き締めることで表しているかに見えた。

 

「敵の攻撃が始まりました!」

 

 オペレータの悲鳴にも似た叫び声が、司令室に響く。

 

「敵はおよそ50! 本部正門より進行してきます」

「さすがに時間を無駄にする愚は犯さないか、頼んだわよ真琴……」

 

 司令室の守りを固めるためとはいえ、ここを動けないことを苦々しく思いながら、名雪は戦友の無事を祈るのだった。

 

 

「うわーっ、何かうじゃうじゃといっぱいいるぅ」

 

 緊迫した場にそぐわない、無邪気な声があがる。

 その声を発した張本人である少女は、降りしきる雨の中、ぬれるに任せて一人たたずんでいた。

 

「まったくー、早く終わらせてお風呂に入りたいよぅ」

 

 不満げに呟く少女の前方から、12,3人の武装した集団が、駆け寄ってくる。

 彼等は一人立ち尽くす少女を発見するや、それぞれの異能力を開放した。

 それは光り輝く電光であったり、燃え盛る炎であったりと様々であったが、少女一人をこの世から消滅させるには、やや過剰とも言えた。

 

 だが立ち尽くす少女は動じない。

 

「ぜんぜん駄目ー」

 

 彼等の放った異能力は、少女の展開する精神バリアにすべて弾かれていた。

 動揺する男達。

 

「今度は真琴の番だね」

 

 真琴と名乗った少女は、むしろうれしげな声を上げると、今までジャケットのポケットに突っ込んでいた右手を引き抜くと、すっと真横に掲げる。

 

「おいで! ぴろ!!」

 

 少女の叫びに答えるかのように、右手に集まった光が、少女の前で徐々に形をなしていく。

 それは全身を光り輝かせた大型の肉食獣に見えた。

 額には真っ赤に輝く宝石がはまっている。瞳孔のない金色の瞳が、獲物を前にして歓喜に細められているように見えた。

 

『ビーストマスター』沢渡真琴が操る、聖獣『ぴろ』だ。

 聖獣といっても、完全なる一個の生命体ではない。沢渡真琴の持つ異能力が具現した、いわば異能力の固体化した姿である。

 異能力の固体化は、一定以上の能力を持つ異能者にはさほど難しいことではない、しかしその制御となると話は別で、実際一個の生命体の動きをさせることはすこぶる困難である。その固体化の制御を無意識の内に行うことができる能力を持つのは、現時点では世界中で沢渡真琴ただ一人だ。

 これが彼女が『ビーストマスター』の異名で恐れられる所以である。

 ちなみにこれは余談だが、その聖獣に『ぴろ』と命名したのは、祐一だった。聖獣の持つ恐るべき殺傷能力からすれば素晴らしく間の抜けた名前であるが、他ならぬ真琴本人がいたく気に入ってしまい、冗談のつもりだった祐一を慌てさせたものであった。

 

「ぴろ、やっちゃえ!」

 

 

グオオオォ!

 

 

 真琴の声に呼応するように一声吼えると、ぴろは男達に襲いかかった。

 男達の精神バリアを紙のように引き裂くと、その爪と牙でなぎ倒していく。あたり一面は瞬く間に血の海と化した。

 

 それを見守る真琴の顔からは、先ほどのいたずらっ子のような表情は消え、代わりに人形のような無表情があった。

 

 

 

 

「正門の敵は全て撃破しました!」

 

 オペレータのやや興奮気味の報告に、司令室は喚起に包まれた。

 水瀬秋子と名雪を除いては。

 

「真琴……」

 

 名雪は、真琴の心情を思い声を詰まらせた。

 名雪には直接的に相手を殺傷する異能力は備わっていない。スクリーンに映る血の海に一人立ち尽くす真琴の心情を思うと、言いようの無い後ろめたさが胸を押しつぶしそうになる。

 だが、そんな感傷も次のオペレータの声によりかき消された。

 

「続けて正面に敵!」

 

 喚起に包まれていた司令室の空気が、一転して緊迫したものに変わる。

 

「数は!」

「え?! ひ、一人だけです」

 

「ついに本命の登場か……。スクリーンに投影、急いで!」

 

 自らの指示によりスクリーンに映し出された姿を見て、秋子は息を飲んだ。

 

「『水魔』……」

 

 スクリーンには、ピンク色の傘をさした一人の女性が映し出されていた。

 二つの三つ編みにされた豊かな髪が、左右の肩から前に垂らされている。

 美しい女性だった。しかし、その顔はどこまでも無表情で、笑顔であればもっと美しいであろうその顔を無機質のような寒々しいものに見せている。

 

「この天候で真琴一人では荷が重いか……」

 

 秋子が一人呟く。

 

「私が出る!」

「だめよ、名雪。あなたがここを動いたら、敵の第二波に対応できなくなるわ」

「でも……」

「大丈夫、真琴を信じましょう。それにもう少し持ちこたえれば、祐一さんが来てくれるわ」

「……」

 

「敵の第二波来ました! 数は約100、裏門からです!!」

 

 オペレータの声が響く。

 

「100! やはり正門の敵は陽動か」

「お母さん!」

「ええ、お願い名雪」

「はい!」

「迎撃には名雪が出ます! 戦闘要員30名は名雪の指示に従い、迎撃の用意を!」

 

「私が行くまで絶対にこちらからは手出しをしないで。大丈夫! もう少し耐えれば祐一が来てくれるよ!」

 

 味方を激励しながら司令室を駆け出していく名雪。それを見ながら秋子は矢継ぎ早に指示を出す。

 

「裏門の迎撃に回る30名を除いた戦闘要員を、全て正門に回して!」

「了解!」

 

「頼んだわよ、名雪、真琴」

 

 

 秋子はスクリーンに映る空に視線を送りながら呟く。

 

 

 先ほどから振り続く冷たい雨は、未だ一向にやむ気配を見せなかった。

 

 

 

 

To Be Continued..