いぬいあきらさん


11月3日
 某所掲示板より転載 74文字改行で12行

テーマ「とっておきのおやつを妹様に食べられた某夜想曲管理人に捧ぐ」


「沙雪、おまえ俺のチョコレート食べただろ!?」
「ん? あ、これお兄ちゃんのだったの?(ぱくっ)」
「あああっ言ってるそばから口に入れるなこのやろーっ!」
「へへーん、最後の一個でした。あーおいしい♪」
「楽しみにしてたのに……このやろっ、吐けっ、もどせ!」
「やーん苦しいっ!もう、ちょっとやめてお兄ちゃ――きゃあっ!?」
「うおっ!?(どてんごろん、ごちんっ☆)」
「いた……あっ……」
「あ………」
「………」
「……チョコの味……ふばっ!?」
「バカバカバカバカバカッ!お兄ちゃんなんて知らないッ!」  




久慈光樹より一言

 わりぃ、これ転載すんの忘れてた(笑)



10月18日
 日記より転載 74文字改行で66行

テーマ「姉」


「雄介ぇ、入るわよ〜?」
「うわっ! なななんだよ姉ちゃん入るわよってもう入ってんじゃん! いきなり開けんなよ」
「うるさいわねえ、なんか見られちゃマズイことでも……って、おやあ?」
「な……なんだよ」
「パンツ一丁でベッドの上にしゃがみ込むその不自然なポーズ。そして前に置かれる重ねられたティッシュペーパー……」
「姉ちゃんあんたもしかして今とんでもない想像をしてるだろ?」
「大丈夫見なかったことにしておいて上げるわよ。あんたも一応男なんだし興味があるのは仕方ないと思うけどでもまあほどほどにして置きなさいよ、あんまりしすぎるとバカになっちゃうからね?」
「だから違うってのに」
「それと母さん結構あんたの部屋入ってるからえっちな本は上手に隠すのよ?本棚の裏とか天井裏はマークされてるからね間違ってもお父さんの部屋にとか持ってったらだめだかんねあとそれと使った後のティッシュもそこのゴミ箱じゃなくて小さなビニール袋に入れて口を縛って台所のほうに直接入れなさいね臭いと色ですぐバレるらしいから」
「わ、わかった。ありがとう姉ちゃ……って違う!人の話を聞け!」
「何よー見てて欲しいの?変態」
「黙れこのエロ女子大生。――質問です、俺が片手に持っているこれはなんでしょうか?」
「……爪切り」
「正解。ではさらに質問です。足の爪を切るときに人はどんなポーズを取るでしょうか?」
「座る」
「ピンポンピンポンではラストクエスチョン。片手に爪切りをもってティッシュの上に片足をのせしゃがみ込んでいるあなたの弟は今いったい何をしていると思いますか?」
「……いやん(はあと)」
「いやんじゃねえ!どっからどーみても風呂上がりに足の爪切ってる姿にしか見えねえだろ!? ――ったく、こんな夜中に帰ってくるわいきなり人の部屋に入ってくるわやけに事後処理のノウハウに詳しいわ大学で一体なに勉強してんだか……ってもしもし? もしもしお姉様?」
「なによ」
「あの、な、なにをしておられるんですか……?」
「何をって、みりゃ解るでしょ。あーもう雄介ハンガー取ってハンガー。このまま置いておいたらしわになっちゃう高かったんだからこのスーツ」
「堂々と着替えるな! ……あ、わかった、姉ちゃんさては酔ってるな?」
「ハ・ン・ガー!」
「あんたの部屋はあっち!ハンガー貸してやるから帰れってああああああああああそんな大胆にブラウスをはだけてスカートまでそんな無造作に今日は意外にも白!?」
「あー見たなこのスケベ。ダメよ姉ちゃんの裸今夜のネタにしちゃ。まぁこのナイスバディだし気持ちは分かるけどでもそれは人として許されない最後の一線なのよ?」
「するか! 大体姉ちゃんの裸なんて見飽きるぐらい見てるから今更なんとも感じねえよ。だからほらさっさと出てった出てった!」
「あふう……もーだめ、限界。寝る。お休み」
「おいって、ねーちゃん、ねーちゃん! 俺のベッドで寝るなよー!!」
「うっさいなあ雄はーお姉ちゃん眠いんだから静かにしなさい」
「だからここは俺の部屋でこれは俺のベッうぶっ!」
「わかったわかった今日は一緒に寝たげるから騒がない騒がない……」
「はっ離せ姉ちゃん苦し……胸に……胸が……はぶっ」
「すー、ぴー」
「気持ちよさそうに寝てんなっ、手ぇ離せ! こんなとこ母ちゃんに見られたら……」
「(ガラッ)――うるさいわねえ、あんたたち今何時だと思」
「………」
「………」
「………」
「………」
「……か、かあちゃ……」
「アナターッ!! あなたっあなたちょっときてえーッ!」ドタドタドタッ
「(階下から)なんだ母さんまで騒々しい」
「うちの子がっ、うちの子がああああっ!」
「姉ちゃあああん!起きろこの馬鹿あああああ!」



久慈光樹より一言

 またしても年上だし…… どうした、いぬっち。




10月15日
 日記より転載 74文字改行で86行

テーマ「幼馴染」


「やっぱりここにいたぁ……おーい、生きてる?」
「………」
「だいぶ死んでるみたいね、こりゃ。――まったくう、最初に見つけたのが私だったからよかったようなものの、この世の終わりみたいな顔して防波堤の先っちょに座り込んでるのおまわりさんに見られたら自殺志願者と間違われて連行されちゃうよ?」
「………るさいな。何しに来たんだよ」
「何しに来た?! ずいぶんなごあいさつねー。告白して、自爆して、悲しみのどん底に沈んでるあんたが心配で部活も放り出してやってきた健気で可憐な幼なじみに向かって、それが最初に言う言葉?」
「おま……なんでそのことっ!」
「礼子センパイが自分でしゃべってたもん。今頃もう学校中の噂よ?」
「嘘だろ……」
「うっふふー。明日はヒーローねあんた。登校時間に紙吹雪が舞うかもよ?」
「くっ……そんな生き恥晒すぐらいならいっそこの場で……」
「あんたねえ、このシチュエーションでそんなこと言われてもギャグに聞こえないわよ? ――嘘よ、全部ウソ!」
「はっ?」
「礼子センパイそんなことしないよ。誰にもしゃべってない。あんたの様子が心配だったから様子見てきてくれって、あたしにだけ話してくれたの」
「………」
「あんたさあ、自分が好きになった人のことぐらい、もっと信用しなさいよ」
「だからって、なんでお前に……」
「私もそう思うわ……なんか、バカみたいだよねあたし……」
「? なんのことだ?」
「あっ、ううん、こっちの話。――ねえ、隣座っていい?」
「ダメだ」
「あっ……まさかあんた泣いてんの?」
「泣くか! ここは狭いんだ。ふたりも並んで座れるか」
「怪しいなー。じつはもう顔面ぐちゃぐちゃだったりして、うふふ。まーいっか。武士の情けじゃ、今回の所は許してつかわそう。そのかわり――」
「お、おい」
「背中貸してねー。……あー良い風!青い空!白い雲! 昼寝にはもってこいね…」
「寝るな! 重い! 落ちる!!」
「失礼ね、そんなに重くないわよ。――ねえ」
「なんだよ」
「なんかさ、昔もこんなことなかった? あたしたちがもっと小さかった頃のこと。やっぱり場所はここでさ、今と同じようにあんた海の方向いて座ってて――泣いてるの泣いてないのって言い張りあって」
「………」
「あんたってさ、いつもここだよね。なんか悲しいこととか辛いことあったとき、姿が見えないなーとおもったらほとんどここに来てる。思い出すだけでも、知恵ちゃんが転校した日でしょ、ゲンが死んだ時でしょ、教育実習の沢原先生のさよなら会の後でしょ、そんで中学の時岡本さんにフられた時でしょ、そして……今回。あはははは、なんかオンナがらみばっかりねー。あんた一度お祓いしてもらったら?」
「うるせ。大体ゲンはオスだったぞ。それにあんときはお前も泣いてたじゃねーか」
「ま、ね――まあそれはともかく、ほーんと、いつもよねえ」
「……何が言いたいんだよ」
「お互い進歩が無いわねってこと。いっつもここで泣いてるあんたと、それをいっつも探しに来るあたし。幼稚園の頃から全然成長してないじゃない。――本当、いつまで続くのかしらねーこんな関係…」
「探しに、こなけりゃいいじゃねーか」
「………」
「別に、俺はもう一人でも平気だからさ。俺なんかにいつまでもかまってないで、お前はお前の世界を広げろよ」
「あんた……それマジで言ってんの?」
「マジさ。すまなかったな、いつもお前に甘えちまって。自分でも思うよ。俺は本当にあのころのまんま、お前の言う通り全然進歩してないガキのまんまさ。回りの迷惑も考えずに無茶なことして、心配かけて――」
「あっあのあたしそういう意味で言ったんじゃ…」
「――俺は、いつまでも続けばいいなと思ってた」
「……!」
「どんな悲しいことがあっても、ここにじいっと座って海を見てたら、風が吹いて、波が寄せて、鳥が飛んで、そのうちおまえが俺の悩みなんかしったこっちゃなさそうな脳天気なこと言いながらやってきて、俺もそれに文句ぶつぶつ言いながらだんだん元気になっていってさ……そんな関係、でもやっぱ、もう終わりにしないといけないのかな」
「……なことない」
「え?」
「そんなこと無いよ。そんなこと言わないでよ……迷惑なんてしてないからさ……」
「お、おい――」
「そんなこと……言わないでよおおっ……!」
「な、泣くなよっ。お前が言い出したんだろ?」
「こっち見ないでよバカあ! 泣いてなんか無いわよお…!」
「どうしろってんだよ……ったく。ま、いいか。たまには逆でもさ」
「逆ってなによお!」
「お前が泣きやむまで、側にいてやるってことさ。――まったく、今日失恋したのは本当は俺だぜ? なんで俺が慰めないといけないのかさっぱりだけどな!」
「ホントよね……うふふ、ぐすっ」
「あーもー、泣くか笑うかどちらかにしろ! ――あーまったくいい天気だ。おい、背中借りるぞ」
「あっ、ちょっとまっ、重っ……きゃあっ!」




久慈光樹より一言

 いぬっちらしくねぇな…… (口リじゃねーし)