夏葵さん

 

1月16日 日記より転載 74文字改行で50行

タイトル「       」


「で、お前の初恋はいつなんだ?」
「あのねえ、女の子にそんなこと聞くなんて、失礼だと思わないの」
「別に。他の娘ならともかくお前なら思わない」
「うっわー、傷つく言い方するわねー」
「そうかな」
「そうよ!」
「だってほくろの位置だって知ってる間柄だし」
「ば…馬鹿!! 何てこと言いだすのよ!」
「いや、実際知ってるし」
「そっそんなの、忘れなさいー!」
「うお!」
「ちっ外れたか」
「あ…危ねえ…。おい、なにしやがんだ」
「ショック療法」
「いや、いいたいことはわかるが、療法じゃないぞ。カバンぶつけるのは」
「忘れてくれれば何だっていいのよ」
「ほくろをか?」
「むきー!」
「はいはい、どうどう」
「わたしは馬じゃない!」
「似た…いやなんでもない」
「はあー、疲れたわ。あんたの相手してると」
「それはそれは」
「こんなのが幼馴染だっていうんだから、私も男運ないよね」
「そうだな…って、失礼な奴だな。おい」
「あんたがいるから、私には男が寄って来ないのよねー。不幸だわ、私」
「それはどう考えても俺のせいじゃないだろう。みんながお前のことを良くわかってる証拠だ」
「どんな風に?」
「聞きたいか」
「聞きたくない。…ねえ、あんたの初恋の相手って…実は私じゃないでしょうね」
「……」
「なんで、いきなり黙るのよ」
「……」
「露骨に目を逸らしたわね」
「……」
「……なんで、そこで赤くなるかな」
「……」
「あの…その…」
「……」
「ね、ねえ…じょ冗談
――だよね」
「……」
「どうして下を向くの…」
「……」
「な…なに、なんでそんな怖い顔で睨むのよ…」
「……」
「あ! ちょっと、どこ行くの。待ってよ」
「……」
「ねえ、待ってってば!」

                 つづく



久慈光樹より一言

 個人的にちょっとトラウマを突かれた……(これに近いことあった)


 

1月12日 日記より転載 74文字改行で37行


「ねえ、初恋っていつだった?」
「えらく唐突に恥ずかしい話題だな」
「そうかな」
「なんでいきなり、初恋なんて言葉が出たんだ?」
「ん〜。ちょっと夢を見ちゃってね」
「もしかして、初夢か」
「そうねえ……うん、そうかも」
「懐かしい夢でも見たんだろう」
「うん」
「どんな夢だった?」
「そうねえ…って、言うわけないでしょ! 危うく引っかかるとこだったわ」
「ははは」
「人の話を聞きたいのなら、まず自分のほうから聞かせなさいよ」
「いや、別に聞きたくないし」
「へん! どうせ幼稚園の保母さんとかいうありがちな話なもんだから恥ずかしいんでしょう」
「良くわかったな」
「は? ほんとなの?」
「保母さんは間違いだが、幼稚園の頃と言うのは合ってる」
「それはまた、ませた子供ねー。じゃあ保母さんじゃないなら誰?」
「同い年の女の子」
「へ〜。始めて聞いたー。じゃあ、私たちと同じゆり組にいたんだ」
「そう」
「だれだれ? なっちゃん? それとも有希ちゃん?」
「どっちもお前の友達じゃないか」
「そりゃ、小中高と同じ学校に通ってるのあの子達しかいないもの。ほかの子なんてほとんど覚えてないし」
「それはそうだろうな」
「ねえ、だれなの?」
「聞きたいか」
「聞きたい」
「『人の話を聞きたいなら、まず自分のほうから』」
「は?」
「さっき、自分でそう言ったろ」
「え〜」
「さて、聞かせてもらおうか。お前の初恋はいつなんだ(笑」
「ええ〜!」

                     つづく



久慈光樹より一言

 「DE」と略すのはヨセ。


 

12月18日 日記より転載 74文字改行で49行


「あ、お兄ちゃん?」
「おお、どうした妹よ。こんな時間に」
「こんな時間って……まだ九時じゃない」
「知らないのか。こっちとそっちじゃ時差があるんだぞ」
「……」
「こっちはいま起きたところなんだ」
「……」
「ほら、会話に衛星中継みたいなタイムラグがあるだろう」
「そうね」
「おお、いっこく堂なみの腹話術をわかってくれるか!」
「見えないけどね」
「……お前ね、もう少しノリがいいと助かるんだけどなー」
「はいはい、そんなことはどうでもいいから」
「どうでも……」
「ねえ、聞いてくれる?」
「なんだよ」
「わたし…………ちゃって」
「はあ? なんて言った。聞こえないぞー」
「だからー、せい……ちょうになっちゃったの」
「せいちょう……なんだそりゃ? 胸が大きくなったとでも言いたいのか」
「だれが、そんなこと言ったのよ!」
「……あのな、いきなり叫ぶな! 鼓膜が破れるかと思ったぞ」
「聞こえもしない耳なら、さっさと破っちゃいなさい!」
「うお! お前、ちょっと小さい声でしゃべれ」
「ふん!」
「あうー、耳に響いてくるー」
「ねえお兄ちゃん、も一回だけ言うよ」
「……ああ」
「あのね、わたし生徒会長になっちゃった」
「……は?」
「まだ、言わせるの」
「……」
「ちょっと! お兄ちゃん。聞いてる?」
「……聞いてる」
「どう」
「いや、どうと言われても……」
「なんだか、冴えない反応ねー」
「う〜ん…お前そんなキャラクターだったかあ?」
「キャラって」
「いやほら、生徒会長ってこう頭がいいとかかっこいいとか、イメージがあるだろう」
「わたしは、頭が良くて可愛いわよ」
「うむ、時差のせいか聞こえんなー」
「さては、嘘だと思ってるんでしょう?」
「う〜ん」
「ふん! もういいわ。せっかく電話したのに馬鹿みたい」
「あのな……」
「お兄ちゃんのば〜か! ふん――」
「おい! ……ちっ、きりやがった。しかし――ほんとなのか? う〜む、謎だ」



久慈光樹より一言

>『日記 DE 創作』には入れないで〜

 断る。


 

12月17日 日記より転載 74文字改行で175行


「はい、お茶」
「うむ。やっぱり、実家はよいな」
「な〜にお茶をすすりながら、親父臭いこと言ってるのよ」
「いいだろ、天国にいる親父の代わりだ」
「たまにしか帰ってこないくせに、なに偉そうにいってんのよ」
「しゃーないだろ。こっちには仕事がないんだから」
「ただいま〜」
「おお、我が最愛の妹のお帰りか」
「あのね、わたしも妹なんですけど」
「あれ、お兄ちゃん。帰ってたんだー」
「うむ」
「いつの間に……お姉ちゃん、知ってたの?」
「え? ええ」
「それで、なにやってんの二人とも?」
「うむ、今後の人生設計についてだな……」
「兄ちゃんが親父臭いって話よ」
「お兄ちゃんが親父……たしかに」
「おい、露骨に目を逸らすな」
「いい若者がこんなところでうらぶれて、最後は……ああ!」
「わざとらしいんだよ、馬鹿」
「あー、馬鹿って言ったぁ! あーん、おねえさまー。よよよよ」
「おおー、よしよし」
「……やってろ」

「ところで、今年はほんとに珍しく早く帰ってきたわね」
「不況だからな。仕事も無いのさ」
「ふーん」
「じゃあ、お兄ちゃん。リストラされるのー?」
「ぶっっ!!」
「きゃー! 汚ーい!」
「げほげほげほ……!」
「わわ…お兄ちゃん、大丈夫?」
「わータオル取ってー!」
「はい、お姉ちゃん」
「ありがと……もう兄ちゃんなにすんのよ!」
「げふ…いや、変なこと言うからつい……」
「あーん、もう……拭いたぐらいじゃ駄目だー」
「着替えてきたらー、お姉ちゃん」
「うん、そうする。ぐすん」


「何落ち込んでんだ、あいつ?」
「お気に入りの服だったからだよー、たぶん」
「……お気に入りねえ」
「あの服、買ってもらった時すごく喜んでたもの」
「ほー、誰に買ってもらったんだ?」
「……」
「どうした?」
「……いいえ、なんでもありません」
「なんだか、棘のある視線なんだが……」
「やっぱり親父っぽいよ。お兄ちゃん」
「お前まで言うのかー」
「物忘れが激しいのは歳取った証拠」
「なにおー、俺はまだ四引いて四捨五入したらまだ二十歳だぞ!」
「……」
「……つっこんでくれ。悲しいから」


「ところでお前は、どこ行ってたんだ?」
「ぶかつー」
「部活ねえ……剣道だっけ?」
「うん」
「なんで、剣道なんか始めたんだ?」
「あんまり、意味はないけどー」
「いや、なんかきっかけってあるだろう?」
「うん、あるよー」
「なんだよ。教えろ」
「いや」
「……何もそんなに即答しなくても」
「いや」
「だからね……」
「いや」
「……わかったよ。もう聞かない」
「そうそう、聞いても忘れる人には教えませーん」
「なんだよそれ」
「ふーんだ。馬鹿」
「馬鹿って……お前も口悪くなったなあ」
「残念ながら……血が繋がってるからね」
「ははは、たしかに」
「……ふん」
「そういえば、俺も長らく竹刀を握ってないなあ」
「先生も顔見せろって言ってたよ」
「げっ!」
「お兄ちゃん、苦手だもんねー」
「笑うなよ……」
「ふふふ、じゃあわたしも着替えてこよー」
「はいはい」
「覗かないでねー」
「誰が覗くか! そんな貧相な体」
「ひどーい。これでも脱いだらすごいんだよー」
「言ってろ、馬鹿」
「ふふーんだ」


「あら、帰ってたの?」
「……それが、はるばる帰ってきた息子に言う言葉か」
「じゃあ、おかえり。それで、あの娘達に会った?」
「ああ」
「で、言ったの?」
「いや、まだだけど」
「早く言ってあげないと可哀想よ」
「……なんで?」
「複雑な乙女心よ」
「――わからんのだが……」
「いいわよ、別にわかんなくても」
「微妙に会話が成り立っていないような気がするんだが……」
「さてね」
「なんだかなあ」
「ちらっとは言っておいたけどね。自分でちゃんと話すのよ」
「……わかってるよ」


「お姉ちゃん、今日の番組なにか面白いのある?」
「んー、そうねえ。――特番ばかりであんまり……」
「妹たちよ」
「なによ」
「なにー」
「兄者はお前達に言っておくことがある。新聞を畳め」
「わはははは! 見てみて、紅白にあいつが出るんだってー」
「わ、ほんとだー。歌手でもないのにねー」
「……」
「大御所さまは何回出るつもりなのかなあー」
「死ぬまでじゃない」
「おい」
「わー、あの人もでるよ」
「わたしは、あんまり好きじゃないんだけどねー」

「聞け! こら!!!」

「聞いてますー」
「うるさいな、なによ」
「ごほん……いや、すまん」
「で、なんですか?」
「なにー?」
「うむ、今度我が輩は結婚することになった」

「「は?」」

「いや、だから結婚……」
「誰が?」
「俺が」
「誰と?」
「……いや、彼女と」
「彼女?」
「誰?」
「いや、こないだ話した奴だけど」
「ふーん」
「いや、ふーんてお前」
「エイプリルフールには早すぎるよー」
「いや、だから……」
「うん。あんまり、面白くないよ。その冗談」
「ほんとほんと」
「あのな……」
「さてと、部屋に戻ろうか」
「そうだね、お姉ちゃん」
「おい」
「んー、なんだか眠いわ。欠伸が出るなあ」
「ふわあー。ほんとわたしもー」
「ふわ……」
「ふ、ぐす……」
「あらら、欠伸のせいで涙が出てるわよ」
「……っ、……お姉ちゃんも……だよ」
「あれれ……っ」
「顔洗った方がいいかも」
「そうね」
「……おーい、お前ら人の話を……」

「「お兄ちゃん!!」」

「な、なんだよ……」
「言いたくないけど……おめでとう」
「おめ…でとう……」


「……お前ら……泣くなよ」




久慈光樹より一言

 長げぇって…… それから「妹」は規約じゃねぇ!