★kannon♪

That's right!

Happy X'mas for the only one all over the World!

こんな気持ちの良い日曜日<Vol.5>


 

 


 ピンポンパンポーン。

 あら、また来たのね。とりあえず、お知らせだけしておくわね。

 今日はこんな北国まで遠路はるばるありがとう♪。
 これから始まるお話は、作者の独断と偏見と趣味と娯楽と悦楽によって構成されたブチ切れギャグです。

 作品、キャラクター等に強い思い入れがある方。精神科医に止められている方。過去八時間以内にアルコールを摂取した方。心臓の弱い方。保護者同伴でない小学生の方。などなどのお客様はご遠慮ください。不測の事態が起こった場合、奇跡は起きないので気をつけてね。

 それでもいいという方は、ぞんぶんにお楽しみください♪

 奇跡は起こらないから『奇跡』って言うのよ。 By 美坂香里














 俺の名前は相沢祐一。

 愛と青春に苦悩する高校二年の男子だ。言い替えるならさしずめ「愛を運ぶ郵便局員」in北の国から!などとたわけたセリフが言えちゃうくらいに青春を満喫している。
 無論ウソだ。

 だが苦悩しているというのは、まあ本当といえば本当だ。

「祐一、もうすぐクリスマスだね」

 名雪だ。なんちゅーか唐突な出現だが、俺はいっさい気にしない。何故ならここは名雪の家――正確に言えば名雪の母親である秋子さんの家だからである。予想する通り俺はこの美人母娘の住む家に居候しているのだが、このことに対して「羨ましい」などとほざく奴がいるとしたら俺はバスジャックを敢行するかもしれん。何故なら俺も悩める17才だからな。

 まあそんなことはどうでもいい。この母娘、一癖二癖どころかむしろ既にウォーズマンも真っ青な母娘であることに誰が気付くだろう。俺としてはむしろ佐祐理さんや舞と……いや、止めておこう。こちらがウォーズマンだとしたら、あっちはバッファローマンだからな。

 紹介が長くなったが、要するに名雪は同じ屋根の下に住んでいる特権を生かして俺の部屋に不法侵入してきた訳だ。プライバシーとかそういう概念は居候には適用されないらしい。当然俺が名雪の部屋に入ろうモノなら、そしてそれがもしあと二人の居候に知れたら、後々面倒この上ない事になるのは自明の理だ。一体俺が何をした?

「……さっきから祐一何言ってるの?」

 おっと、ついうっかり口に出してしまっていたようだな。危ない危ない、驚かせちゃったよ。これでは俺はまさしくアレに思われてしまう。電波は違う作品だからな。

「なんでもない」

 とりあえず無難(無愛想)なところで返事を返す。ここでうっかり「キミの瞳に見惚れていたのさ」などと言えば俺のキャラが原子崩壊しかねないからな。だが既に俺のキャラは壊れているらしい。ふっ……所詮男のキャラの扱いなど、この程度さ……全国の恵まれない男達に乾杯。

「ねえ祐一。もうすぐクリスマスだね」

 名雪が俺に禁断のネタを振ってくる。これはいかん。

「そうか名雪はクリスチャンか。残念ながら俺は仏教である為にクリスマスを祝う風習がないのだ」
「うそだよ。昔は一緒にお祝いしていたじゃない」
「その後俺は改宗したからな。名雪も仏教徒になることを勧めるぞ。そうすれば結婚式も仏式で行えるぞ」
「仏式の結婚式なんて嫌だよ」
「何故だ? 日本人は神式と教会ではやるのに何故仏式でやりたがらんのだ。指輪の交換もなんと数珠の交換で済むんだぞ? あの神秘的な108つの音が俺の煩悩を消してくれる。これで明日はホームランだ」
「祐一意地悪だね」

 名雪がプッと頬を膨らませる。ふっ……なんとか話を逸らせる事が出来そうだな。
 安心しつつ、部屋に持ち込んでいた俺の宝物であるポットから急須にお湯を注ぎ、お茶を淹れる。俺は秋子さんがわざわざ静岡から取り寄せている高級なお茶を口に含む。

「でも、私が祐一と結婚する時はちゃんと教会で結婚式挙げてもらうからね」

 ぶーっ!!

「げほげほげほげほっ!」
「きたないよ祐一」
「お前がすんごいこと言うからだ!」

 凄い論理の飛躍だ。侮れん……

「だって今度のクリスマスパーティーは私と祐一の婚約披露パーティーなんだよ?」
「勝手に決めるな!」

 冗談ではない。まだ高校生の身でそんなモン決められてたまるか。

 まあ確かに……その……名雪とは色々あって、なんちゅーか、イクところまでイッちゃったというのはあるが、それは他の面子にも言えることで……だーっ! そうじゃなくて!

「楽しみだね祐一」
「楽しみじゃない!」
「皆の悔しがる顔が目に浮かぶよ」

 そう言う名雪がニヤソと笑った。

 …………あまりの悪人面に、見なかったことにした。

 ふっ……賢いぜ、ビバ俺様。

「あ、名雪。俺そう言えば出かける予定があったんだ。そんじゃな!」
「あ、祐一待ってよ」

 相変わらずとろとろと立ち上がろうとする名雪を置いて俺はさっさと部屋を出て玄関に向かう。これ以上関わっては貞操が危ないかもしれん。無論俺のが……

 ちょうど玄関で靴を履いている時、キッチンから顔を出した秋子さんに呼びとめられた。

「あら、祐一さんお出かけですか?」
「ええ。ちょっとそこまで」

 事実である。今後の対策の為に、少々相談をするためだ。

「そうですか。どうですか、クリスマスの準備は?」

 秋子さんの不穏な一言に、俺はクリンと首を巡らして秋子さんを振り返る。
 そこにあるのは秋子さんのいつもの柔和な笑みのみ。

 ……知っている。この人は知っていて楽しんでるよ……

「ギャフン……」

 思わず呟いてしまった。

「皆期待してるようですから、頑張ってくださいね。特に名雪に……」
「ははは……それでは」

 そう言って俺は玄関を出る。
 ふっ……背中が煤けてるぜ。俺のがな……












 ああ……悩む。

 何を悩んでいるのか。ふっ……簡単な事だ。

 クリスマスプレゼントを買わなくてはいけないのだ。

 ま、普通にいったらそんなことはたいしたこがないのだが、問題は相手がなんと7人もいる事だな。

 名雪、あゆ、栞、舞、佐祐理さん、真琴、天野。
 本来なら恋人の一人にあげればいいものだが、俺は情けないことにこの中の誰も選んでもいない。皆が皆俺に好意を向けてきているというのにだ。

 だからこそ、こいつら全員今度のクリスマスを勝負!と考えているらしい。イヴに水瀬家で行われるクリスマスパーティーで「誰が祐一からプレゼントを貰えるか」で互い牽制し合いまくりなのだ。

 名雪は同じ家に住んでいる為にアプローチが「祐一、背中流そうか?」と言ってはバスタオルで風呂場に乱入してきたり、「これどうかな?」などと男物のYシャツ一枚だとかするし。オイシイぞ名雪。もっとやれ。

 あゆは…………鯛焼きを奢ってくれた……なんちゅーか、そこまで来ると哀し過ぎて逆に印象深いものがあるぞ……ほのぼの出来て俺的にはOKなのだがな。

 栞は妹キャラ全開でアプローチ掛けてくるし。「お兄ちゃん」などと言われたら俺は死ぬ。

 舞と佐祐理さんも凄い。なんちゅーか、二人まとめてってとこが美味しい。はにかみ屋な舞と天然な佐祐理さん。ダブルで巫女服を着てこられた時には理性が飛びかかった……

 二人と言えば真琴と天野がまた良い味出してたな。物知らずな真琴が時折見せるあの縋るような瞳。どうも天野が演出してるようなのが少々気になるが……

 そんな訳で、世間様から見ればまさに「ウハウハハーレム状態」のようだが、本人からしてみれば大変なのだ。幸せの価値基準が俺に哲学を教えてくれる。ビバソクラテス。俺はギリシア人になれそうだよ。パチモンだけどな。

 そんな訳で、誰がクリスマスプレゼントを貰えるかで水面下どころか堂々と路上で暗闘が繰り広げられているのだ。
 だが当の当事者からしてみれば、下手に誰かに渡してみろ。他の全員から刺されかねない。故に俺は角が立たないように全員にプレゼントを買おうと画策しているのだ。

「ま、自業自得よね。諦めて買えば?」

 香里が言った。

 その相談として、俺は一番頼りになりそうな香里に相談にきたのだ。だが開口一番このセリフ。ダメかもしれん……

「だから、そのプレゼントを買う金がないのだ」
「解かり易い悩みね。羨ましいわ、そーいうの」

 香里が言う。むぅ……何故この女は一言多いのだろう?

 栞が「奇跡的」に治って以来、地が出てきた。属性は邪悪。武技言語は「奇跡は起きないから『奇跡』って言うのよ」。だが最近では「相沢君の周りは奇跡で一杯ね。そのうち拝まれるわよ。商売にしてあげるから分け前は私が8で相沢君が2ね」などとほざいている。

 俺は内心の憤慨を抑えて、極力普通に言う。

「ほら、俺って居候だろ? まさかプレゼント買う金を秋子さんに出してもらうわけにはいかないだろう」
「そりゃそうね」
「ただでさえ秋子さんには日々の『必要経費』を賄ってもらっているのに……」
「もっともな言い方をしてるけど、そーいうの『お小遣い』って言わない? はぁ……いいわね働かない男は。まさにヒモ? 間違っても栞とだけは結婚しないでよ。あの子にそんな苦労を強いられたくはないわ。相沢君は奇跡だけを頼って生きていればいいのよこのゲス野郎。この世紀末にハルマゲドンだけは起こさないでよね」

 エライ言われようである。涙がチョチョ切れそうだ。いなかっぺ大将も真っ青な鼻の垂れ方だ。

 だが挫けない。宇宙怪獣の襲来はもうすぐだ! コーチ、俺はやるぜ!


 奇跡は起きます! 起こして見せます!


「そうね。相沢君なら宇宙怪獣とも戦えそうね。そしてもう地球には帰ってこないでね」

 どこまでも辛辣な女である。別に俺が嫌いなわけではないらしい。これが地のようだ。
 なるほど、まさに栞の姉だな。

「それはともかく、どうすれば良いと思う?」
「バイトでもすれば?」
「今からか?」
「なんなら私が紹介してあげても良いわよ?」
「なに、本当か!?」

 おおっ!? なんでも相談してみるものだな。持つべきものは香里様。今までのは帳消しにしてやっても良いぜ。

「その代わり、紹介料として私にもプレゼントを買うこと。いいわね」
「なぬっ!?」

 すわっ!? 八人目かい!?
 帳消しどころか倍返し!?(ギャフン)

 だが、微かに頬を赤らめる香里に俺は思い直した。ま、仕方ないか。

「分かったよ」
「嬉しいわ。それじゃあ早速明日からバイトよ。夜には電話するわ」
「ああ、待ってるよ。んじゃな」

 そう言って俺が席を立つ。

 次の日から、俺のハードの毎日が始まったのだ。













「んで香里、今日のバイトはなんだよ?」
「今日は『まぐろ拾い』」
「まぐろ拾い? なんだよそれ」

 とりあえず香里に付いてきた先は、中○線の線路の上。
 ここが北の国だという設定は軽やかに無視。いっそのこと支給された交通費で○央線に来たと思え。

「おー、来たか香里ちゃん」

 作業着を着たおっちゃんが香里に気さくに話しかけた。顔見知りかい。

「今日はこの人がお世話になりますので」
「なんだ。香里ちゃんのイイ人かい?」
「ち、違いますよ!」

 おっちゃんのセリフに、珍しく赤くなって否定する香里。なんか新鮮だな。

「兄ちゃん霊とかお化けとか大丈夫かい?」

 おっちゃんが聞いてくる。

「ええまあ」

 まさか生霊と暮らしていたとはとても言えない。

「なら大丈夫だな。早速仕事すっか」
「よろしくおねがいします」

 頭を下げて、作業着を受け取る。

「頑張ってね」

 励ましてくる香里の笑顔がやけに眩しい。

 俺はこの時気付くべきだった。
 この笑顔が、死神だということに……






 線路の上で茫然と佇む俺。
 周りには鮮やかなが散っていた。例えるなら大輪の薔薇のように。俺もデュエリストになろうかな。
 だが手には剣ではなく万能箸。そしてそれが挟むのは……

「…………腕だよ…………」

 ガッカリな気分だ。

 毎日のように飛び込み自殺で止まるJR中○線。それが通勤ラッシュだったりしたら、世のお父さん達は非常に迷惑である。だが実際に飛び込む人があとを絶たないのは事実だ。

 飛び込む人がいれば片付ける人がいる。当然だ。だがまさか自分がなるとは思わなかった……

「さっさと片付けてよ。まだあと二件あるんだから」
「お前そこで何やってるんだコラァッ!」

 思わず怒鳴る俺。向こうでトマトジュースを飲みながらサングラスをかけてベンチに優雅に座っている香里は手伝いもしない。

「ああ……なんか左肩が妙に重いなぁ……寒いよパトラッシュ……」

 なんか花畑が見えて……ああ、なんかあゆが手を振ってるよ……ってあゆ!?

「あれ、祐一君もバイト?」

 俺の視線に気付いたあゆが振り返った。
 小首を傾げる仕草は「こんちくしょー!」なほど可愛らしいが、手にした箸で掴んでいる赤いヒールを履いたままの女人の足が異様に怖い。
 作業着の上になぜか背負っているいつものカバンから生えた羽が、なんぞシャレになってないぞ!?

「あ、あああ、あゆあゆ! お前こんなところで何やってんだ!?」
「なにって、バイトだよ」

 心外とばかりに頬を膨らませる。

「何もこんなバイトせんでもいいだろ!」

 人の気も知らないで!

「ええ〜、これって結構バイト代良いのに。それに少し前までボクも同じような状態だったから免疫あるんだ」
「……同じような状態って?」
「え? ほら、祐一君の肩にいる女の人だよ」
「ぎゃあああああっ!?」

 あゆのなんでもないようなセリフに、俺は七転八倒して転げまわった。なまじマジっぽいのがなお怖い。あやうくちびるところだった。侮りがたし、月宮あゆ……

「でもホラ。彼女だってやってるよ?」
「なぬ!?」

 他にもいるのか?

 振り返る俺。視界に入る知り合いの影。その姿は――

「栞かい!?」
「あ、祐一さんもこのバイトですか?」
「なんでもなさそうに言うな!」

 一番いそうにない人間がいたよ……さては香里の奴知ってたな!?

「そういえばお姉ちゃんが一人新しい人連れてくるって言ってましたけど、祐一さんだったんですね」

 むぅ……作業着に血糊を水玉のように付けて微笑む栞。なんか泣きたくなった……

「……だけど栞。いいのかこんなバイトで? 病気とか悪化しないか?」

 いくら治ったとはいえ、こんな『まぐろ』だらけなところでバイトしてたら良くなりそうにないし……

 だが栞は俺の心配などどこ吹く風で、とんでもないことを言いやがった。

「え、そんなことないですよ。このバイトをしてると元気になるんです」

 怖過ぎることを言う栞。

「だって祐一さん。こうして自縛霊になった人達の生気を吸うと、なんだか元気になってくるんです」

 はにかみながら栞は、ふよふよと空気中を漂う半透明の白っぽいエクトプラズムを口から吸い込む。


 怖いです――!?


「そ、そうか……ほどほどにな……」

 そう言ってもはや笑う事しか出来ない俺。作業に戻ろうと振り返る俺の視界の端で、栞が女の人の形を取るエクトプラズムをスポンと吸い込んでいた。

 とりあえず俺はその場で空を仰ぎ、田舎のばあちゃんへに俺を守ってくれと祈ってみる。まだばあちゃん死んでないけど……






「ふっ……死ぬかと思ったぜ。本気でな……」
「情けないわね。栞もあゆちゃんもやってるっていうのに」
「アレは特別だろ!?」

 イヤ過ぎる妹である。

「……んで、次の仕事は?」
「次は比較的まともよ」

 その「比較的まとも」という言葉がやけに気になる最近の年頃。何故俺はこんな女に従っているのだろう?

「えっと、『ウェイトレス』ね」
「ウェイトレス?」

 う〜む。ウェイトレスと一緒に働くという事だろうか?
 とりあえず行ってみるか。









「ふえ? 祐一さんがバイトするんですか?」

 香里に連れられて駅前の瀟洒な喫茶店に連れていかれた俺。だがそこで待っていたのは、なんと舞と佐祐理さんだった。

「佐祐理さん、なんでまたバイトなんてしてるんですか?」

 思わず聞いてみる俺。
 佐祐理さんはいつもの天真爛漫と言うか、一歩手前というか素敵過ぎる笑顔で答える。

「佐祐理は舞と一緒に生活費を稼いでます」
「生活費って、佐祐理さんの家って確か……」

 そうだ。佐祐理さんは相当裕福な家柄の生まれで、生活費を稼ぐ必要なんてまるでないはずだ。
 居候(家なき子)な俺とは全く違う。所詮世の中平等なんてあるわけない。明日こそ明治維新だ!

 などとくだらないことを考えている俺の心など知る由もない佐祐理さん。

「せっかく舞と二人で暮らし始めたんですから、自分達の生活くらい自分達で面倒みたいです」

 物凄く偉いことを言う佐祐理さん。この人のこういう所が尊敬できる。

「祐一さんもアルバイトをするんでしたら、佐祐理たちと一緒に暮らしませんか? きっと毎日色んなことがありますよ?」

 美味しすぎる提案をする佐祐理さん。
 イスラム世界では一夫多妻制だというが、何故この国ではそうでないのか? 俺様は断固として国会に申し入れたい。

 隣では舞がコクコクと頷いている。

「舞、ちゃんと仕事しているか?」
「はちみつクマさん」

 よしよし。

 俺は垂れそうになる鼻血に気を配りながら、舞と佐祐理さんを交互に観察する。

 何がどうなっているのか、こじんまりした喫茶店には二人以外に従業員がいない。どうも出来過ぎているような気がするのは気のせいだろうか?
 だがそんなことは関係ない。っていうかもしこの二人と一緒に働いている男がいたら、俺はきっと鬼になるだろう。それもエルクゥだ。それくらい今の二人は可愛い。

 メイド服万歳!

 誰がどうデザインしたのか知らないが、二人が着ているユニフォーム(と思しき服装)はどこから見てもメイド服だった。
 紺色の長袖・ロングスカートのワンピースに、襟元、手首、スカートの裾では白いレースでまとめられており、これまた白いレースのエプロンと髪飾り。
 舞なぞいつもの剣の代わりにモップなんぞ持っていたりしているところがマニアな俺のツボをジャストヒット。あの無表情がまたいいぞ。ああ感無量……

 ウェイトレス万歳!

 俺はクルリと振り返り、香里の両肩に両手を乗せる。

「な、なによ?」
「ありがとう香里」
「は、は?」
「こんな素晴らしい仕事を持ってきてくれて。俺は今までお前を誤解していた」
「……どんな風に?」
「例えるならキシリア・ザビとか」

 香里が珍しく満面の笑顔を浮かべた。

 ドガァッ!

「ぬああああああっ! 頭蓋骨が陥没したあああああっ!?」
「ふざけたこと言ってると殴るわよ!」

 これがそうでないとなぜ言える?

 そんなこんなで仕事が始まる訳だが……









「…………」
「わあ、祐一さんよく似合ってますよ♪」

 ありがとう佐祐理さん。貴女の見立ては最高ですよ。ええそうですとも。

「祐一……ペアルック」

 頬を軽く赤く染めて呟く舞。言っていることは嬉しいのだが俺的には全然嬉しくない。

「…………変態?」
「黙れこのアマァッ!」

 香里に向かって叫ぶ俺。
 だが香里はカウンターに頬杖をついて面白そうに俺を見る。

「だってさ。相沢君がそんな趣味があったとはね」

 ニヤリと笑った。
 知っていた!? この女またもや知っていた!?

 俺は『メイド服』姿で佐祐理さんに詰め寄った。

「佐祐理さん! 普通の制服はないんですか!?」
「あははー。ウチのお店女の子だけのお店だから男の人の制服なんてないんですよ」

 悪気のかけらもない笑顔でそう言うさゆりん。

「女の子だけ!? 店長もですか!?」
「店長は佐祐理ですから」

 身も蓋もなくそう言う佐祐理さん。ギャフン…………

「家を出る時持ち出したお金で、舞と喫茶店を開いたんですよ」

 コクコクと頷く舞。

「なるほど……」

 さすがに資産家の娘だが、それを平気で実行する佐祐理さんがまた凄い。

 佐祐理さんはツツと俺の横に並ぶと、背伸びをして俺に耳打ちする。

「それにこのお店は佐祐理と舞で、祐一さんのためだけに作ったんですよ?」

 それは初耳。

「佐祐理と、舞と、祐一さんの三人で喫茶店を切り盛りする。佐祐理の夢だったんですよね」

 表情に桜色を散らして小声で言う佐祐理さん。う、嬉しいことを言ってくれる。

 ちょっとばかり心がグラッと傾く。

「それに……」

 更に耳打ちする佐祐理さん。

「制服は祐一さんの好きなメイド服ですよ。店が終わった後は佐祐理と舞の二人で、祐一さんだけにご奉仕しますよ?」

 嬉しいことを言ってくれる!

 シーソーのように勢いよく心が傾く俺様。

「そそそ、それって!?」
「もちろん舞も承諾済みですし」

 グオンと擬音がしそうな勢いで首を回すと、ピッタリ舞と目が合った。
 俺達の会話が聞こえていたのか、首まで真っ赤に染めて俯く舞。


 萌えろ俺様!


 梃子のようにスコーンと飛ばされる俺の心。既に成層圏に届きそうだ。

 そんな俺に佐祐理さんがとどめを刺した。

「いいですよね。ご・主・人・様♪」

 大気圏で萌え尽きる俺の心。

 ヤッテシマエ!

 心の声に従い、欲望全開。

「もちろんです佐祐理さあべしっ!」

 物凄い一撃で後頭部を強打された。ラピッドパンチだよ……

「くだらない事を言ってないで仕事しなさい!」

 香里が両手を腰に当てて、床に這いつくばった俺の前で仁王立ちする。SEをつけるなら『ム〜ン』といったところか。ミニスカートな為にちょっと中身の方が……


 ドガアッ!


「何をしようとしたのかしら?」

 にこやかに言う香里様。オーラが全開だったりする。もはやハイパー化は目の前だ。キシリアではなくジェリルだったとは我ながら誤算だ。

「ふ〜ん、ハイパーオーラ斬りで死んでみる?」

 滅相もない。ブルブルと首を横に振る俺。既に彼我の戦闘力の差は歴然だ。ここは援軍を頼むべく佐祐理さんに……

 怒ってる――!?

「祐一さん。佐祐理たちというものがありながら香里さんのスカートの中身を覗くなんてどうしてですか?」
「祐一許さない」

 舞さんまで――!?

 ジェリルに援軍が現われた。分かりやすく言うとシーラ王女とエレ王女がいっぺんに敵に回ったようなものだ。例え俺が聖戦士に覚醒してもこれでは勝ち目がない。

「せっかく祐一さんの為にメイド服を用意したんですけど。どうしますか、舞」
「お仕置き」
「ままま、待ってくれ佐祐理さん、舞!」
「あははー、祐一さん。仏の顔も三度までですよ?」

 まだ一度目です――!

「祐一……斬る」

 イヤイヤと首を振る俺。だがそんな俺に舞はお構いなし。

「ぎゃあああああっ!」

 その日、俺は星になった……









「…………死ぬかと思ったぜ」
「自業自得よ。っていうか相沢君、アレで何で生きてるのよ?」

 香里が不思議そうに聞いてきたが、無論俺は無視。

 香里は唇を尖らせていたが、すぐに元の無表情に戻って手帳を取り出す。
 もはやお馴染みとなった動作だ。

「チャッチャと次の仕事行くわよ」
「休憩とかないのか……?」
「ページがかさんでるからさっさと終わらせたいのよ」

 そりゃ俺のセリフだ。これ以上アレな文章が続いたら死ぬかもしれん……

「という訳で、最後の仕事はここよ」

 といって香里が指差したのは、俺もよく知っているところだった。









 ああ……愛が痛い……


 などとくだらんことで悩んでいても目の前の大量の洗濯物が消える訳でもない。ふっ……五代君になった気分だぜ……無論『ここ』にいるのは『管理人さん』のような可愛い人ではないがな……

「可愛くなくて悪かったわね。突っ立ってないでさっさと洗濯物洗ってよね」
「わあってるわ!」

 俺が怒鳴る。すると真琴は「やってらんないわ。これだからシロウトは……」などと肩を竦めながら表へと出ていく。ぬぅ……この娘に言われると百万の罵倒よりも腹が立つのは何故だ?

 俺は香里の紹介で保育所にバイトにきている。やはりというかなんというか、真琴のいる保育所だった。いっそこの御都合主義にケリをつけてやりたいが、まだ俺にはやることがある。
 だってバイトしてクリスマスプレゼントを買わなくては俺の生命が危ない。切実に……

「なぁばいと、おれたちとあそべよ」

 生意気なクソガキ(愛すべきお子様)が洗濯機に向かって哀愁を漂わす俺の足に蹴りをくれた。くっ……我慢だ俺。負けるな俺。っていうか平仮名で喋るな!

「わかったから少し待ってろよ? もちっとだからな」

 俺は鋼鉄の意志で笑顔を作ると、言外に「消えろ小僧」とばかりに足でぺっと放り出す。小僧は「はやくしろよ」などと傲岸不遜なセリフを残すとすぐに表の遊技場へと駆けていった。
 真琴に言わすと慕われているらしいが、なんちゅーか、あまりに嬉しくない。ふっ……良かったぜ、俺がロリコンじゃないことが分かっただけでも……

 表に回ると、真琴と何故か同じくバイトをしている天野が子供達の相手をしていた。

 真琴は意外にも子供達からかなりの支持を得ている。きっと精神年齢が一緒だからだろう。だが不思議と似合うんだよなぁ。
 天野はというと、こちらも中々人気があるらしい。だが子供達を相手にしてもその無表情を崩すことはない。ある意味怖いぞ……
 だがどうやら本人も子供好きなようで、子供の方もそれを敏感に察しているのだろう。天野の無表情を怖がらずに接している。今も無表情でブランコに乗る子供を後ろから押してやっている。

 そして俺はというと――

 俺の姿に気がついたのか、天野が俺にとろけるような甘い微笑を送ってくれた。この娘は普段滅多に笑わないだけに、ふとした事で見せる微笑がひどく印象的に見えるのだ。

「あ、相沢さんお疲れ様です」

 その様子を見ていた真琴がとてとてと俺の所に小走りでやってくる。

「祐一遅いよ。もう少し早く仕事してくれないと真琴に皺寄せが来るんだから。ヤダよね〜、無能な新人の世話は」

 最後に「ふぅ」とため息をつく真琴。


 ぬぅ……犯してぇ……


 心底殺意を覚えたりした。
 そんな俺の心底を知ってか知らずか、真琴は相変わらずガキどもにまとわりつかれながらも俺様の近くにいる。それを考えるとどうにも憎めないんだよなぁ。なんちゅーか、こういうところが真琴の可愛いところだな。

 だがそんな俺と真琴のラブラブな関係が気に入らない人がいる。

 まこぴーファンクラブ(仮称)のガキどもである。
 さすがに子供だけあって、動物的に人の心情を読み取る能力がある。その内で、先ほど俺にケリをくれてとっとと逃げていった少年とその仲間達が、ノロイを見るような目で俺を睨みつけていた。海でも渡るが良い。

「おいおまえ、まこちゃんはわたさないぞ」

 少年が精一杯胸を張って言った。俺はその姿が可笑しくて、しゃがみこんで少年と同じ目線になると、ピンと少年のおでこを指で弾く。

「な、なにすんだよ!」
「お子様のくせに色気付きやがって」
「なんだと! おまえなんかにまこちゃんをやれるか! まこちゃんはおれのおよめさんにするんだ!」
「ほう」

 こういう威勢のいい、一途な少年は嫌いじゃない。

「なんだよこうちゃんぬけがけかよ!」
「ずるいぞ!」
「まこちゃんはぼくとけっこんするんだぞ! まこちゃんとステッキーなしょやをたいけんするんだ!」
「なんだよ! まこちゃんはぼくとふかくあいしあうんだぞ! ぼくのどーてーはまこちゃんにあげるんだ!」

 などと初っ端から仲間割れを始めるのがまたいとおかし。しかし内容が妙に際どく聞こえるのは俺の気のせいか?
 俺は仲間割れを始めた少年達をほっぽっといて、立ち上がって真琴に話し掛ける。

「もてるな真琴」
「なによぅ!」

 どうやらお冠のようだ。ま、わからんでもないが……

 ふと下を見ると、今の今まで仲間割れをしていた少年達を前に、膝を抱えて屈んだ天野が何やら少年達と円陣を組んで話している。

 一体何を話しているのか気になった俺と真琴は、聞き耳をそばだたせて天野の声を聞きとる。

「……という訳で、真琴が祐一さんに取られる心配はありません」
「なるほど、あのにいちゃんゲスやろうなんだね」
「そういうことです。でも大丈夫です。ちゃんと私と結婚してくれる約束をしてくれましたから」
「そっかー、あまのせんせいがこのげすやろうとけっこんするのか」
「う〜ん、あまのせんせいもおとこをみるめがないね」
「そうですね。私も悪い男に騙されてしまいました。でもきっと一生祐一さんに付いて行くと思います」
「あまのせんせいけなげ〜」

 あまりの展開に絶句する俺。何を言ってるんだ一体……

 真琴はというと、天野の話の内容が気に入らないらしく突っかかっていっている。

「ちょっと美汐! 真琴をおいて祐一と結婚なんて許さないわよ」
「真琴はここに沢山好いてくれる人がいるじゃないですか。まさに選り取りみどり」
「真琴はショタじゃないわよぉ!」
「外道な祐一さんは私に任せて、真琴はここで子供達が成長するのを末永く見守っていてくださいね。名付けて『源氏物語 ゛逆゛紫の上大作戦』です」
「なによそれぇ! 美汐こそそのおばさんくさい行動と言動を止めないと、祐一となんて釣り合わないんだから!」
「……言いましたね真琴」
「なによぉ! やる気!?」

 風雲を纏って対峙する二人の女性。そのオーラに慄いた一同が遊技場の隅でびびっている。
 ふと俺の隣でびびりながら二人を見ている先ほどの少年がいるのに気が付いた。

 少年も俺に気が付いたのだろう。一瞬俺達に友情という名の風が吹いた。
 同時にため息をつく。

『はぁ』
「おんなってこわいよね……」
「全くだ……」

 思わず頷く俺。そしてもう一度ため息をついた。嵐はまだ収まりそうになかった。

























『メリークリスマス!』

 という一声で始まった水瀬家主催クリスマスパーティー。

 恐るべき事に参加者は俺以外全て男であり、彼女達は今朝から準備の為に水瀬家で作業をしていた。
 参加者は俺の他には、名雪・秋子さん・真琴・あゆの同居人に加え、美坂姉妹、舞と佐祐理さん、天野というそうそうたるメンツだ。

 俺にとって今までクリスマスパーティーというと、ダチと集まって飲めもしない酒に管を巻いて、街に繰り出してはイチャつく恋人達に嫌がらせの限りを尽くすという、まるで黒ミサのようなイベントだった。

「何故見たこともない人間の誕生分を祝う!?」だの、
「バブルが弾けてサンタクロースだって不況かもしれないだろ! それでもクリスマスなどと祝うか!?」だの、
「夷狄の祭りなどにうつつをぬかしおって! 貴様それでも帝国軍人か!?」だの、
「さあ諸君! 時は来た! 吉良屋敷に討ち入るぞ!」

 などといった数限りない嫌がらせを繰り返してきたもんだ……

 だのに一年たって今の状況は一体何だ!? いいのかこんなに幸せで!?

 もし今昔の俺のような輩が乱入してきたとしたら、俺はたとえ泣いて命乞いをしても止めないかもしれん。
 うう……ごめんよ今まで俺によって最悪のクリスマスを迎えた恋人達……無論今年もやるがな、それも北川を巻き込んで(ニヤリ)。

 それはさておき。

 宴もたけなわで、みんな良い感じに騒いでいる。

 名雪は相変わらずイチゴ関係のミニケーキに手を出しており、あゆはたいやきを齧っている。他のないのか二人とも……?
 真琴はタンドリーチキンを頬張っており、それを天野が世話をしている。なんかほのぼのするなぁ。
 年上組――舞と佐祐理さんは秋子さんと一緒にアルコールを飲んでおり、話が盛り上っている様だ。さっきから見てると随分な量を飲んでいるが、一向に顔色一つ変えない。酒豪?
 美坂姉妹はというと、名雪を含んで雑談に興じているようだ。少し酒量が入っているのか、ほんのり顔を赤くして、いつもより陽気な栞がなかなか新鮮で良い。香里は変わらずにいるが、ちびちびと飲んではいるようだ。

 皆ドレスアップしていていつも以上に可愛い。生きてて良かった。

「祐一。私からプレゼントがあるの」

 しばらくして名雪が言い出した。それを機に、みんなが俺の所へとプレゼントを持ち寄ってくれた。

「私からはこれ。目覚し時計だよ」
「もはやコレクションだな、名雪」
「恥ずかしいからみんなのいない所で聞いてね♪」

 などと言っている。どうやら声を吹き込むタイプのようだが、一体何を吹き込んだんだろう……? 猛烈に不安だ。

「祐一君、私からはこれだよ」

 そう言ってあゆが渡してきたのは、小さなオルゴールだった。
 開けてみると、俺がよく知るメロディーが流れ出す。

「『鳥の詩』か」
「うん。いつでも祐一君と同じ空の下にいるよ」
「さんきゅ、あゆ」

 俺がそう言うと、あゆはいつも通り「うぐぅ」と言って小さくなっていた。

「真琴からはこれ。美汐と一緒に選んだんだよ」
「ほう。懐中時計か」
「はい。私達もお揃いのを買ってしまいましたけど。いつでも同じ時間を紡いでいられるように、と」

 美汐が頬を薔薇色に染めて微笑んだ。恥ずかしいが嬉しいぞ。

「私達からはこれよ」

 そう言って香里と栞が差し出したのは、蒼い包みだった。渡された時に気付くが、ふんわりと柔らかい。中を開けてみると、一揃いの手袋とマフラーだった。

「私と栞の手編みよ」
「私がマフラーで、お姉ちゃんが手袋を編みました。気に入ってくれましたか?」
「もちろんだよ、栞。ありがとう香里」
「どうしたしまして」

 珍しく上気した顔で言う栞と、赤い顔でそっぽをむく香里。なんかいいぞ二人とも。花マルを上げよう。

「あははー、真打登場ですね♪ 佐祐理と舞はちょっと凄いですよ」

 佐祐理さんが胸を張って言う。胸元が大きく開いたドレスだけに、思わず吸い寄せられそうになる俺。だが名雪と栞が両脇からがっちり俺の腕を掴んでいる。行動早過ぎ……

「佐祐理からはこれです★」
「なんですかこれ?」

 渡されたのは一冊のアルバムだった。中を開けてみると、どうやら高校の時のアルバムのようだ。中はほとんどが佐祐理さんと舞の写真だ。どれも基本的に二人で写っているが、途中からは俺も含めた三人の写真も増えてきた。

「佐祐理さん、これ……」
「佐祐理と舞の思い出です。そして、祐一さんとの思い出。これからも祐一さんと一緒に思い出を紡いでいきたいです★」

 珍しく真面目な表情で佐祐理さんが言った。その心遣いが、俺には凄く嬉しかった。

「……ありがとう佐祐理さん。大事にするよ」
「祐一、私からはこれ」

 舞がずいと前に出て、俺に細長い棒を押しつけた。どこかで見たことあるが……

「……舞、これ……」

 包みを開けて驚いた。舞がずっと愛用してきた剣だった。見事な意匠を施された鞘に収まった細身の剣は、殺気をその中に収めてひっそりとそこに佇んでいる。
 舞はいつもの無表情のままだが、目元が僅かに赤くなっているのを俺は見逃さなかった。

「……もう必要ないから。これからは、祐一が私を守って」
「……分かった。これからは俺が舞を守ってやる」

 そう言って俺は舞を抱き締める。素直に俺の腕の中に収まる舞だが、周りがそれを許さない。

「舞さん抜け駆けはダメですよ!」
「そうよぉ!」

 栞と真琴の手によってあっさり引き剥がされる俺と舞。舞は一瞬恨めしそうな目で二人を見たが、軽くため息を吐いただけで特に何も言わなかった。

「さて――」

 一息ついた所で、香里が絶妙なタイミングで俺に話を振る。

「相沢君は何を――いえ、『誰に』プレゼントをくれるのかしら?」

 その一言に、場の空気が一気に張り詰めた。
 事情を知っている香里はニヤニヤと俺を見ている。他のメンツはそれぞれ人も睨み殺せそうな気迫で俺を見ている。ちびりそうだよ……

「ああ、俺も色々考えたけど、やっぱりまだ誰も選べないよ」

 正直にそう言った。それを聞いて、みんなはそれぞれ失望やらほっとしたやらといった表情に変わる。
 仕方がないのだ。それが俺の出した結論なんだから。

「けどみんなにはプレゼントを用意してきたよ」

 そう言って俺は一人一人にプレゼントを渡していった。

「祐一、これ……」
「ん……」

 香里の問いに、俺は猛烈な照れ臭さでそっぽを向いてしまった。

 俺がみんなに渡したのは、それぞれに合うと思った『指輪』だった。

「祐一さん……」

 栞が潤んだ瞳で俺を見つめてくる。

 名雪にはサファイア。あゆにはムーンストーン。真琴にはトパーズ。美汐にはレッドスピネル。栞にはパール。香里にはグリーンガーネット。舞にはルビー。そして佐祐理さんはアメジスト。

「これが精一杯の気持ちだよ。みんなのイメージを色にして選んだんだ。俺はまあ、外道だし、甲斐性なしだし、みんなに愛想尽かされるかもしれないけど。俺にとってみんな同じくらい大事だから……」
「私、祐一さんのこと好きになって良かったです……」

 栞が言った。目に涙を溜めている。
 他のみんなも俺の優しい瞳を向けてくれている。

 良かった……これで修羅場を見ないですみそうだ。

 安堵しかける俺。だが香里はそんな俺の考えをしっかりと見抜いていた。

「ありがとう相沢君。せっかくだから私達からもお礼してもいいかしら?」
「へ? いや別に俺は……」
「そうねぇ。相沢君がこんな高価な者を買う為に一生懸命頑張ってくれたのは事実だけど、誰も選べなかったというのも事実なのよね」

 凄いことを言う香里。おいまさか……

 見ると他のみんなも何故か表情が変わっている。
 喩えるなら、ネズミを見つけたネコというか……

「お礼も兼ねて、今夜一晩サービスしてあげるわ」
「そ、それは嬉しいが、まさか……」
「もちろん全員でね」

 香里の言葉に、他のメンツが「うんうん」と頷く。

 俺は血が引けていくのを感じた。この人数をですか!?

 さすがに蒼くなって助けを乞おうとただ一人常識人っぽい秋子さんを振り返り――

「了承★」
「なんでやねん!?」

 望みは絶たれた。がっくりとその場に膝をつく俺に、秋子さんはいつもの偽善過ぎるスマイルでこう言った。

「上意ですよ♪」

 何のだ――っ!?

「諦めなさい」
「ひっ!」

 肩を掴まれ、女性軍の中に放り込まれる俺。円になって俺を見下ろす一同。

「あははー、良かったですね祐一さん、ハーレムですよ」

 イヤイヤと首を振る俺。無論そんなものが通用する連中ではない。

「それでは――」

 香里の音頭取りで、一斉に俺に飛びかかったきた。

『観念しなさい!』
「いやあぁぁぁぁあああぁぁぁ―――っ!!」



 混濁する意識の中で、俺は秋子さんの声を聞いた気がした。

「若いって良いわね〜」

 その夜、すんごいことになったことだけここに追記しておく――





〜Fin……っていうか終われ



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――後書き……いらなそ―!?――


 ふっ……エライ代物を書いてしまった……

 どうも初めまして、泉蓬寺悠です。うう……初めましてなのにこんなブチ切れギャグを書くなんて〜(よよよ……)。
 こちらの「くじうぃんぐ」では色々お世話になっているので、お礼の意味も兼ねて泉蓬寺初のkannonSSに挑戦してみたのですが、出来あがったのはなんちゅーか、こう、とんでもないモンになってしまいましたです。うぐぅ……

 多分に含むところがある方もいるかと思いますが、そこは寛大な心で許してやってくださいませ★

 今回は最後まで読んでいただきありがとうございました! マヂで……



00/12/16公開
感想などは[泉蓬寺悠]まで。