第71崩壊【カノエア】
雪が降っていた。
灰色に曇った空から、白い雪がヒラヒラと舞い降りてくる。
この街にとっては冬に雪が降ることなど珍しくも何ともない。
数年ぶりに訪れた街。
駅前の時計塔を見上げると、もう3時を示していた。
祐一「……遅い」
最初は物珍しかった雪も、いまはただ鬱陶しかった。
相変わらず人々を噴き出し続ける改札口を見、俺は深く溜め息を吐いた。
それもすぐ北風に流され、彼方へと消えてゆく。
俺はこんな場所で、いったい何をしているのだろう。
何を待ち続けているというのだろうか。
祐一「ラーメンセット、ひとつ」
祐一(……違う)
思考が一瞬、異世界へと飛んでしまったような気がする。
コートや鞄に積もった雪を振り払って、俺は居住まいを正した。
もう一度、溜め息。目で追った白の向こうに、ふと女の子が見えた。
少女「……雪、積もってるよ」
祐一「そりゃ、ずっと待ってたからな」
少女「もしかして、14時間も?」
祐一「そのギャグは使用済みだ!」
少女「わ、びっくり♪」
言葉とは違って、抑揚のないのんびりとした声。
確か、7年前もこうだった気がする。目の前の少女は。
少女「ねぇ、ひとつ訊いてもいい?」
祐一「あぁ」
少女「寒くない?」
祐一「正直言って、寒い」
少女「じゃあ、コレあげる……はいっ♪」
昔と変わらない笑顔で、飲み物を渡される。
それは暖かくも冷たくもない、生暖かな温度をした紙パックだった。
思わず、ラベルを見る。見ずにはいられなかった。
『 濃厚ドロリシリーズ −ピーチ味− 』
祐一「……」
少女「遅れたお詫びだよ」
祐一「………」
少女「それと、再会のお祝い」
祐一「…………」
祐一「7年ぶりの再会が、この仕打ちか?」
少女「そっか、もう7年も経つんだね」
聞く耳持たないのか、俺の文句が少女の意識に届くことはない。
完全に自分の世界に浸りながら、人懐っこい笑顔を俺に向けてくる。
少女「わたしの名前、まだ覚えてる?」
祐一「神尾晴子」<冗談
少女「――それ、お母さんの名前だよ〜っ!!」
祐一「ななな、何ですとぅっ!!?」
……翌日、その街に俺の姿はなかった……。<海外直行
第72崩壊【現実逃避】
あゆ「…約束、だよ」
祐一「あぁっ、約束だ!」
あゆ「………」
祐一「ほら、指を切らないと、指切りにならないだろっ!?」
あゆ「………」
祐一「指を切らないと、指切りに…ならない…」
あゆ「………」
祐一「あゆっ、あゆ…あゆーーーーーーっっ!!!」
…………
………
……
祐一「そうか、この大木は…きっと、伝説の『世界樹』なんだ!」
あゆ「………」
祐一「待ってろよ、いま世界樹の葉を…って、その前に冬だから散ってるし!!」
――第一、それ以前に高所恐怖症だし…。
第73崩壊【さらば北川】
祐一「そう言えばさぁ」
北川「何だ、相沢」
祐一「お前、アニメ最終回で“CLANNAD”のシャツ着てたろ」
北川「…ギクッ」
祐一「そんなに『スノハラ君』になりたいのか?」
北川「あ、あれは…ちょっと、宣伝を頼まれてな」
祐一「そっか。トレード決定♪」
北川「えっ…俺たち、親友だろ?」
祐一「そうだっけか?」
北川「天使の人形だって、俺が見つけ出したんじゃないか!」
祐一「出番の少ない親友よりか、悪友の方が重要度は高いよなぁ…」
例1: 折原 ○平 + 住○ 護
例2: 美坂 香里 + 水瀬 名雪
北川「うわ、ひでぇ…」
祐一「フッフッフ…勝ったな!」
北川「っつーか、美坂と水瀬ってどういうことだよ!!」
祐一「関係ない。お前は安心してアンテナ切って七三分けにしてろ」
北川「うわ、鬼だよコイツ…」
香里「ちょっと、説明してもらおうかしら?」
名雪「それによっては、謎ヂャムの餌食になってもらうよ」
祐一「あぁ、アレ提示したの北川だから♪」
北川「――やっぱ鬼だよ、アンタ!!」
香里「どうやらメリケンサックの味、試してみたいようね…」
名雪「お母さん直伝の殺人ヂャムの威力、ようやく発揮できるんだね!」<じ、直伝…
北川「ひぇああああああぁぁぁっっ!!!」
祐一「親友のよしみだ、助けてやろうか」
北川「えっ? 本当か、本当に助けてくれるのか!?」
祐一「何言ってんだ…“親友”だろ?」
北川「あいざわ〜〜〜っ!」
祐一「てなワケで…出番だぞ、栞ッ♪」
栞 「はいっ♪」
北川「――へっ?」
…バフッ!
祐一「おぉ…」
栞 「はい、北川さんは消えてしまいました〜っ♪」
祐一「永遠の世界で、いつまでも幸せにな」
栞 「祐一さんも入ってみます?」
祐一「いや、遠慮しておくよ」
栞 「そうですか…」
名雪「わ、栞ちゃんのストールって凄いんだね♪」
香里「おかしいなぁ、あたしが編んだときには正常だったのに…」
祐一「…何だ、退屈そうな顔して?」
栞 「あのぅ、やっぱり…お姉ちゃんの方が、閉じ込め甲斐があるなぁ…って…」
祐一「だそうだが…香里、また入ってみるか?」
香里「…そっ――」
『それだけは、イヤ〜〜〜ッッ!!!』<本気
第74崩壊【誰もが一度は想像】
祐一「よぉ、不審人物」
あゆ「遅い、遅すぎるよ!」
祐一「ハハハッ、悪い悪い♪」
あゆ「うぐぅ…それに、ボクは不審人物じゃないよっ」
祐一「どっからみても不審な人だぞ」
あゆ「そんなに変かな…この帽子って」
祐一「一体、どうしたんだ?」
あゆ「…笑わない?」
祐一「あぁっ、絶対に笑わない!」
あゆ「本当の本当に?」
祐一「コレでも約束は守る方だ」
あゆ「だったら――」
…スッ。帽子を取る。
祐一「………」
あゆ「…………」
祐一「………」
あゆ「…………」
…ポフッ。帽子を被せる。
祐一「サッカー選手になれるんじゃないか? あと、宣教師とか」
あゆ「…ぜ、絶対に言うと思ったよぉっ!」
祐一「大丈夫だって、約束通り笑ってないから…プフッ…」
あゆ「そんな、必死に堪えながら言っても、説得力ないよっ!!」
祐一「…もぅ、春なんだな…フッ…」
あゆ「爽やかな顔して誤魔化さないでっ!!!」
――あゆしんど…?
第75崩壊【ポケエア】
謎犬「ぴっこ、ぴっこ…」
往人「………」
謎犬「ぴこぴこっ、ぴ〜こ〜…」
往人「………」
謎犬「ぴこぴこ、ぴこぴ〜…」
往人「………」
ミ〜〜〜ンミンミンミンミン〜〜〜…
往人「…なぁ」
謎犬「ぴこ〜?」
往人「お前、実は着グルミだろ」
謎犬「ぴこぴ〜…」
往人「それで、中身は黄色い電気ネズミだろ」
謎犬「ぴこっ!!?」
往人「………」
ジ〜ワ〜ジ〜ワ〜ジ〜ワ〜ジ〜ワ〜…
往人「…いい。やっぱり、今のは忘れてくれ」
謎犬「ぴっこり♪」
第76崩壊【むしろ永眠】
あゆ「ねぇ、もしかしたら…だけど…」
祐一「あぁ、何だ?」
あゆ「祐一君のくれたカチューシャが、普通のじゃなくて、ウサギ耳のだったら…」
祐一「……は?」
あゆ「ボク、樹から落ちずに助かったんじゃないかなぁ!?」
祐一「…何故に?」
あゆ「舞さんみたく不思議なチカラが生まれて、それで…」
祐一「その代わり、再会が3年間も遅れる上に、最後は“自分自身”に斬られるぞ?」
あゆ「や…やっぱり、アレで良かったよ…」
祐一「だろ?」
あゆ「おかげで、いまでも幽体離脱が実行可能だしねっ♪」<真顔
祐一「――んなアホなぁぁぁぁぁぁっっ!!?」
第77崩壊【空の少女…?】
謎犬「ぴ〜こ〜ぴ〜こ〜」
往人「このヤロッ!」
謎犬「ぴこっ?」
…ドゲシィッ!<蹴
謎犬「ぴこぴこぴこぴこぉぉぉ…」
往人「おぉ、光る光る。これでしばらくは現れまい」
観鈴「どうしてそんな可哀想なことするかなぁ…」
往人「仕方ないだろ、地球外生物のくせして人間様を挑発してくるからだ」
観鈴「う〜〜〜ん…」
…しかし、1ヶ月ほど経ってもポテトは戻ってこなかった。
往人「あの毛玉生物、今頃どこでどうしてるのやら」
観鈴「そだね…」
往人「そう言や、背中の痛みは大丈夫なのか?」
観鈴「うん、すっかり無くなったよ」
往人「そうか…俺も、結局は空の少女を見つけられなかった」
観鈴「空の少女の夢も…すっかり見なくなったんだよ」
往人「…そうなのか?」
観鈴「うん…痛みが消えたのも、夢を見なくなったのも…」
観鈴「――ちょうど、1ヶ月前からなんだけどね♪」
往人「…………」
観鈴「ど、どうしたの往人さん」
往人「い、いや…そうか、あんな不思議生物にも、性別があったのか…」
観鈴「???」
――というワケで、ポテトはメスらしいです…。<空の小犬(爆)
第78崩壊【最後の願い】
祐一「本当に、これでお別れなのか」
あゆ「…うん」
祐一「ずっとこの街にいることはできないのか?」
あゆ「…うん」
祐一「そ、そうか」
あゆ「…うん」
祐一「だったら、せめて最後の願いを言ってからにしてくれ」
あゆ「…そうだね」
祐一「どんな願いでもいいからな」
あゆ「本当に、どんなお願いでもいいの?」
祐一「あぁ…」
あゆ「ホントの本当に?」
祐一「あぁ、いいよ」
あゆ「じゃあ…ボクの、最後のお願いですっ」
祐一「………」
あゆ「祐一君っ」
祐一「………」
あゆ「ボクの――」
あゆ「――ツケてた分のタイヤキ代、かわりに払ってくださいっ!!」
祐一「却下!」<0.18秒
あゆ「うぐぅっ!」
第79崩壊【謎よ永遠なれ…】
名雪「…おっ、お母さん!」
祐一「どうして家に居るんですか!」
秋子「あら…私が居てはいけないんですか?」
祐一「そっ、そういう意味じゃなくて」
名雪「お母さん、事故に遭って…昨日、病院に…」
秋子「あらあら、そんなコトもあったかしら?」
名雪「いいよ…わたしは、お母さんが居てくれるだけで…それでっ…」<嗚咽
秋子「なゆきぃ…」<抱擁
祐一「それにしても、よく無事でしたね」
秋子「――えぇ、事故に遭ったの、私の“影武者”でしたから…」
祐一「!!?」
名雪「ん…お母さん、いま何て言ったの?」
秋子「ううん、何でもないわよ」
祐一「…………」<滝汗
祐一(結局、秋子さんの職業って何なんだ…)
――気にするな、命が惜しくば…な…。<本気
第80崩壊【茶目っ気でGO!5−卒業編−】
祐一「卒業おめでとう、佐祐理さん」
佐祐理「ありがとうございます」
祐一「それにしても…可愛いな、その着物…」
佐祐理「あはは〜っ、何だか恥ずかしいです」
祐一「いや、よく似合ってる。さすがは本日の主役だよ」
佐祐理「ふぇ、佐祐理が主役ですか?」
祐一「あぁ…それじゃ行きますか、お姫様♪」
佐祐理「はいっ♪」
…ポカッ!
祐一「イテテテテッ!」
舞 「私だけ置いていこうとした…」
祐一「いや、ちょっとした冗談だっ――」
…タタンッ、タタタンッ!!<銃撃
祐一「…はいぃ?」
舞 「ぐっ…さ、さゆ…り…」
佐祐理「あはは〜っ♪」
祐一「さ、佐祐理さん! どうしてっ!!」
佐祐理「あはは…人の恋路を邪魔すんな、です〜っ♪」
――最近、佐祐理さんのク○ーク化傾向が強いです…。(核爆)