晴子「しっかしホンマ、このカラスおかしいんちゃうか?」
  観鈴「カラスじゃないよ、“そら”だよ」
  晴子「ソラでもテンでもええがな」
  観鈴「よくないもん…」
  晴子「それはともかくとしてや。飛べないカラスなんて絶対変やで」
  観鈴「が、がぉ…」

   ボカッ!

  観鈴「イタタ…何で殴るかなぁ」
  晴子「その口癖やめぇ、って何回言わせんのや」
  観鈴「…ごめんなさい。…海、行って来るね」
  晴子「…そか。もう暗いから、気ィ付けて行くんやで」
  観鈴「うん…行って来ます」

◆◆ AIR 〜 この想い空に届け 〜 ◆◆

   …ザアァァ、ザザァアアァァ…

  美凪「………」
  観鈴「ねぇ。何で君、喋れないんだろうね」

   トコトコトコ…

  観鈴「ねえ、何で飛べないんだろうね」
  美凪「………」
  観鈴「あれっ? 遠野さん、いつからいたの?」
  美凪「………」
  観鈴「と、遠野さん…?」
  美凪「…おはこんばんちは」
  観鈴「え、あ…ここっ、これはどうもご丁寧にっ」

   ペコッ…

  美凪「…最初からいました」
  観鈴「え?」
  美凪「いつからいたかという質問の答え…」
  観鈴「あ、そ、そうなんだ…」
  美凪「………」
  観鈴(やっぱり、よく解らない人だなぁ…)
  美凪「………」
  観鈴「に、にはは…」
  美凪「………」
  観鈴(どうしよう…会話が繋がらない…そ、そうだ!)

   スクッ…

  観鈴「あのね、この子“そら”っていうんだけどねっ」
  美凪「………」
  観鈴「空を飛びたいのに、飛べないのっ」
  美凪「………」
  観鈴「でね、私も空を飛びたいから、よくこうして――」

   …バッ!

  観鈴「両手を広げるんだけど――だけど、飛べないの」
  美凪「………」
  観鈴「こうしたって飛べる訳じゃないけど…でもねっ」
  美凪「………」
  観鈴「こうしていれば、いつか本当に飛べる気がして――ううん」
  美凪「………」
  観鈴「飛べなくてもいい…ただ、空をさまよっているあの子…」
  美凪「えっ?」

   チラッ…

  観鈴「少しでも、その子の悲しみを取り除けたら…いいな、って…」
  美凪「………」
  観鈴「や、やっぱりおかしいよね…」
  美凪「………」
  観鈴「に、にはは…」
  美凪「………」

   …ザアァァ、ザザァアアァァ…

  観鈴「ゴメンね。変な話に付き合わせちゃって」
  美凪「………」
  観鈴「そら、もう帰ろっか」
  美凪「………」
  観鈴「じゃあね、遠野さん」
  美凪「…………です」
  観鈴「え?」

   ピタッ…

  美凪「おかしくないです」
  観鈴「遠野…さん…?」
  美凪「おかしくなんか…ないですっ」

   ポロ…ポロポロッ…

  観鈴「あれ…遠野さん、泣いてる?」
  美凪「神尾さんは、自分のこと…嫌いなんですか?」
  観鈴「…自分の、こと…?」
  美凪「自分に…自信が、ないんですかっ!?」
  観鈴「え…あると、思う…好きだと、思う…」
  美凪「…本当に?」
  観鈴「に、にはは…よく、解らない…」

   …ザアァァ、ザザァアアァァ…

  観鈴「潮風、気持ちいいね…」
  美凪「そう…ですね…」
  観鈴「それに、きれいな月…」
  美凪「…神尾さんは、すごい人です…」
  観鈴「え? ぜ、全然すごくないよっ」
  美凪「すごいですよ」
  観鈴「だって、観鈴ちん…馬鹿、だから…」
  美凪「そういうことではないです…」

   トコトコトコ…

  美凪「その想いは、空の子には届いたんですか」
  観鈴「…え? その話、信じてくれるのっ?」
  美凪「はい、信じますよ」
  観鈴「…う、うん。もう少しで届きそう…」
  美凪「やっぱり、神尾さんはすごいです」
  観鈴「そ…そそっ、そうかなぁ…」
  美凪「はい、その通りです。だって…」
  観鈴「だって?」
  美凪「…やっぱり、何でもないです」
  観鈴「にはは…」

   …ザァァ…

  観鈴「あ…風、止んだね」
  美凪「…そうですね」
  観鈴「まさしく“美凪”だね」
  美凪「…私?」
  観鈴「うん。だって、ほら…こんなにきれいだよ」
  美凪「――…あ」
  観鈴「穏やかな海に光を灯す月――遠野さんそっくりだと思うな」
  美凪「…神尾さん…詩人?」
  観鈴「そんなことないよ、思ったことを言っただけだから」
  美凪「…ぽ」
  観鈴「?」

   ゴソゴソゴソ…

  美凪「詩人の神尾さんに、お米券を進呈…パチパチパチ」
  観鈴「? あ、ありがとう…」
  美凪「頑張って下さい…私も応援していますから」
  観鈴「……え?」
  美凪「空の女の子に、想いが届きますように」
  観鈴「――うんっ!」

    だって、私は……届けられなかったのだから

  観鈴「遠野さんも、頑張ってね」
  美凪「え?」
  観鈴「何があったのかは知らないけど――遠野さんは、自分を殺してる」
  美凪「――…っ!」
  観鈴「…そんな気がする。だから、遠野さんこそ自分を好きになって」
  美凪「…う、ぐっ…」
  観鈴「と、遠野さん…大丈夫?」
  美凪「は、はい…へちゃらへー、です…」
  観鈴「そう…よかった〜」

   …ザアァァ、ザザァアアァァ…

  観鈴「あ、また波が出てきたね」
  美凪「それでは、今日はこの辺で」
  観鈴「うん。あ、あの…また、逢えるかな?」
  美凪「…学校で逢えます」
  観鈴「ううん。そうじゃなくて…近いうちに」
  美凪「いえ…私、天文部の部長さんですから」
  観鈴「部長さんっ?」
  美凪「えっへん」
  観鈴「わあ、遊びに行ってもいい?」
  美凪「でも…部員は私と国崎さんの二名です」
  観鈴「往人さんも? だったら私も入りたいっ」

   トコトコトコ…

  美凪「では、入部を許可します」
  観鈴「うん。じゃあ、明日から…」
  美凪「今日からでもいいですよ?」
  観鈴「だったら、今すぐ行きたい」
  美凪「それでは、天文部に一名様をご招待…」
  観鈴「そらも来る?」

   トコ…、トテトテトテッ…

  美凪「では、二名様をご招待…」
  観鈴「早く行こうよ」
  美凪「あ、待ってください」
  観鈴「遠野…ううん、美凪さん」
  美凪「…何ですか? 神尾…観鈴さん」
  観鈴「お互い、頑張ろうねっ!」
  美凪「――…はいっ!」

   トテトテトテッ…

  観鈴(この子が空の使者だったら…想いが届くのにな)

   トテトテトテッ…

  観鈴(ダメダメ、これは私の役目なんだから…頑張らなくちゃっ)

    飛べない翼に、意味はあるのでしょうか。そして……

       ……こんな私でも、許されますか……?

    ――この想い、空に届け……いつの日か、きっと――


                                 FIN

【あとがき】

   AIRのSSとしては処女作です。
   そして何を隠そう、隠す必要もない、こんなに
  短いのも初めてです。(いつも長いからねぇ…)
   普段とは違う文体で、展開系ではなく暖か系で
  書きましたが、いかがでしたでしょうか?
   Kanon栞編を書くはずだったのが、何故に
  こんなのを書いているかというと……。
   済みません、栞編に着手してないだけです。(核爆
   栞編は資料を読んでゆっくりと書きたいもので。

   このSSは本当、唐突に話が浮かびました。
   こんなシリアスものを書くつもりはなかったん
  ですけど……いつの間にかこうなってた、と。(核爆
   前作の『GagDEカノエア』第五崩壊の執筆
  最中、どうしてもシリアスな展開に持っていかれ
  そうになり、致し方なくといった感じです。
   こうでもしないと、一発ギャグにならなかった
  ので……例の、美凪の残酷な台詞。(滝汗
   って、一発ギャグでもないか。アレは。(自爆

   次こそ栞編……と行きたいですが、状況次第で
  本当にどうなるか解りませんで、未定♪(マテ
   そんなところで、ほなら。

                      柳葉勇樹

 

 

<戻る>