KISSの味ってどんな味? 4

Prezented By 東方不敗








どたどたどたっ!

「う〜、わたしまだパジャマだよ〜!」

……声が聞こえるよ。

どたどたどたっ!

「鞄、空っぽだよ〜!」

「あらあら、だからもう少し早く起きなさいって言ったのに」

「努力はしてるよ……。う〜、制服ないよ〜!」

どたどたどたっ!

「お母さん、わたしの制服ないよっ!」

「……朝っぱらから一体なにやってんだ?」

「あっ、祐一、大変なんだよ、大変大変なんだよ、変態じゃないよ」

「……朝っぱらからそんなくだらないギャグを聞くために起こされたのか?」

「違うよっ、わたしの制服がないんだよっ」

「それなら昨日びしょびしょになったから洗濯してただろうが……」

「あっ……」

どたどたどたっ!

「あっ、あったあった、う〜、急がないと……」

「だあっ、名雪っ! こんなところで脱ぐな!」

「だってだって、もう練習始まっちゃってるよっ」

「わかったから自分の部屋で着替えろっ!」

「う〜、時間ないのに、時間ないのに〜」

どたどたどたっ!

「行ってきま〜すっ!」

がちゃんっ、ばたっ!

……そう言えば、名雪さん朝練だとかいってたね……

枕もとの目覚ましに手を伸ばすとまだ6時40分だった。

「うぐぅ……もうちょっと寝よ……」

ボクは改めて布団を頭からかぶりなおすとまた眠りについていった。

ぐぅ…………











次に起きたら8時50分だった。

「うぐぅ、寝坊したよ……」

パジャマ姿のままリビングに行くとやっぱりもう誰もいなかった。

「あら、あゆちゃん、おはよう」

と思ったらキッチンから秋子さんが出てきた。そう言えば秋子さんって仕事ないのかな……いつも家にいる気がするんだけど……

「うん、おはようございますっ」

テーブルにつきながら挨拶をする。

「今日は遅いのね、いつもはもうちょっと早いでしょう?」

「うぐぅ、寝坊したんだよ……」

「あらあら、昨日は大変そうだったものね」

頬に手をやりながら秋子さん。

ぼっ!

「あ、あ、秋子さんっ、な、な、なんで知ってるのっ!?」

顔が真っ赤になるのを感じながら叫ぶ。な、な、なんでそのこと……

「あら、やっぱりそうだったの?」

にこにこしながらボクの対面の席に座る。

「でもね、ちゃんとすることはした方がいいと思うの」

「す、することって……?」

秋子さんが出してくれたトーストに口をつけながら聞く。うぐぅ、顔が熱いよ……

「はい、これ」

そう言って秋子さんが差し出したものは……

「あ、あ、あ、あ、秋子さんっ!?」

顔を真っ赤にして叫ぶ。こ、これって、あ、う……

「あらあら。顔が真っ赤ね」

「い、いらないよこんなのっ!」

返そうとするけどやんわりとそれを止められる。

「ダメよ、ちゃんと取っておかなきゃ。あ、でも、祐一さんがパパになってもいいっていうんならいいかもね」

「うぐぅ……」

「とりあえず、ポケットにでも入れときなさい」

「わ、わかりました……」

言われるとおりキュロットのポケットに一応入れとく。で、でもこんなの、祐一君に持ってるのばれたら……

…………

うぐぅ、身の危険が増える気がするよ……

「ああ、それとね、あゆちゃん?」

「あっ、はいっ!?」

はっと我に帰る。秋子さんは相変わらずにこにこしたまま、

「今日は、バイトは休みなの?」

「え? え、えっと……。う、うん」

カレンダーを見てうなづく。ちなみにバイトはたい焼きやさんのお手伝い。いろいろ難しいけど面白いんだよっ。

「でも別に学校に行きたいんなら行っても良いのよ? それなのにわざわざ……」

心配そうに秋子さんが言う。ボクは肩をすぼめると、

「うぐぅ……で、でも、やっぱりお世話になりっぱなしじゃ悪いから……」

「あゆちゃん」

ボクの言葉をさえぎって秋子さんが声をあげる。

「子供はね、親にお世話になるのが普通なの。あゆちゃんはわたしの子供。わたしはあゆちゃんのお母さん、そう、昨日言ってくれたでしょ? 違う?」

「あ、う、うん……」

「だから、そういうことは気にしないで」

「うん……でも、ボク、今のお仕事、好きだから……」

「ええ、ならいいのよ」

秋子さんが笑う。つられるようにボクもにっこりと笑う。

「うんっ」

「あ、そうそう、それと……」

秋子さんがテーブルの上に二つの包みを取り出した。二つとも手のひら大ぐらいの大きさで、かわいらしい包みに包まれている。

「名雪がお弁当を昨日作ったみたいなんだけどね、あの子ったら忘れてっちゃったみたいなの。それで、届けてくれない?」

「うんっ、お易いご用だよっ」

「それじゃ、頼んだわね」

そんなこんなで、その日の朝御飯は終わりを告げた。











で、家をでたのはいいんだけど……

「うぐぅ」

すごい雪……てゆーかこれじゃ吹雪だよ……

1m手前も見えない状況でさくさくと進んでいく。うぐぅ、先が見えないし傘さしても雪が入ってくる……

リュックの中にお弁当箱をつめこんで来たのは良いけどこれじゃ学校に行く前に凍死しそうだった。

「でも……負けないもんっ」

愛する祐一くんの元に行くんだから、これぐらいへでもないんだよっ!

……多分。

そんなこんなでざくざくと雪に半分埋もれながら歩いてると……

ぷあ―――っ!

そんな音が左側から聞こえた。

気付くとトラックがボクに向かって走ってきた。

「うぐぅ〜〜〜〜〜っ!?」

びしゃんっ!











その後、祐一くんの教室の中で――

「……で、なんでそんな格好なんだ、あゆあゆ?」

びしょぬれになったボクを前にしてあきれたような目でボクの事を見ながら祐一くんが言う。

「うぐぅ……あゆあゆじゃないもん……へくちっ」

くしゃみが出る。うぐぅ、傘もなくしちゃったし雪がすごくなるしでホントに死にそうだったのに……

「だから……お弁当届けようとして家出たんだけど、トラックが気付いたらすぐ横に来てて、それで、避けたのはいいんだけど、雪の上にダイブするはめになって……うぐぅ……」

「大変だったんだね、あゆちゃん」

名雪さんがボクの頭の上の雪を払いながら言う。

「うぐぅ……大変だった」

「やれやれだな……。香里?」

祐一くんが遠巻きにボク達のことを見てた香里さんに話しかける。

「なに?」

「俺コイツ保健室連れてくから。先生には適当に言っといてくれ」

「わかったわよ。……でも、わざわざつきっきりになる必要はないんじゃない?」

「いや、必要がある。なんたって……」

「わっ」

ぐいっと祐一くんがボクの事を引っ張ってくる。香里さんと他の人多数が見てる目の前で、ボクの頭をぽんっと叩きながら、

「こいつは俺の恋人だからな」

え〜〜〜〜っ!?

香里さんと名雪さんを除く全員が大声を上げる。な、なんてこと言ってるんだよっ!?

「ゆ、ゆ、祐一くんっ!」

顔が熱くなるのを感じながら祐一くんの制服のそでを引っ張る。うぐぅ、なんかみんな見てる……

「なんだあゆあゆ、嫌だったのか?」

「うぐぅ……いやじゃない、けど……恥かしいよ」

ごにょごにょと顔を伏せながら言う。こ、こんな目の前で言うなんて……

「大丈夫だって。それだけ俺がお前の事を好きだって証拠なんだから」

「祐一くんすごく恥かしい事言ってるよ……」

「まあきにするな、というわけで」

香里さんに視線を戻す祐一くん。

「後頼むわ、香里」

「はいはいアツアツでいいわね、まったく、火傷しそうよ……」

あきれる香里さんを放っておいてずるずるとボクを引っ張ってく祐一くん。

名雪さんの視線がなんだかどす黒かった気がするけどそれはきっと気のせいだよね。

うんっ、きっと気のせいだよ。











「……とまあ、そういうわけでコイツになんか着替え用意して欲しいんですけど。あと風邪ひかないようになんかあったまる奴」

「そう言われてもね……、まあ、制服ぐらいならあるけど」

「じゃ、それでお願いします」

「そうね……。ええと、月宮さんだっけ? それじゃ、こっち来て」

「あっ、はい」

保健室の先生に連れられて隣の部屋に行く。

10分後――

「ほぉ……」

「うぐぅ……そんなじろじろ見ないで」

赤いリボンの制服に着替えたボクは顔を赤らめながら祐一くんに言った。

「いやなかなか、似合うじゃないか」

「え? そ、そう……?」

ぽりぽりと頭を掻きながら言う。えへへ、なんか恥かしいな……

「あらあら、仲がいいわね」

隣の部屋から湯気が上がる何かを持ってきた保健の先生がボク達の方を見ながら言う。

「ええ、なんたってこい――」

「わっ、ダメッ!」

何か言おうとした祐一くんの口を急いでふさぐ。

「……鯉?」

「な、なんでもないんです、だから気にしないで」

「……はあ、それより、ほら、これホットミルク。体はあったまるわよ」

「あ、ありがとうございます……」

ティーカップに入ったホットミルクを両手で受け取る。あったかそうな湯気が上がっている。

…………

「あら、飲まないの?」

「うぐぅ、猫舌……」

「あら……」

ボクがそういうと決まりが悪そうに肩をすくめた。

「うぐぅ、ごめんなさい……」

「いいのよ、それじゃ、冷めるまで待ってからゆっくりと飲むといいわよ」

そういうと先生は扉を開けた。外に出ようとするみたい。

「? どこか行くんですか?」

「ええ、ちょっと用事がね。それじゃごゆっくり」

「え? ちょ――」

ぱたんっ。

うぐぅ、行っちゃった……

ご、ごゆっくりって……そ、それって……

ちらりと横の祐一くんを見る。なんか人の悪そうな笑みを浮かべてる。

「……気、効かせてくれたんだろうな」

「そ、そうだねっ」

若干祐一くんから離れながら言う。

うぐぅ、なんか嫌な予感がするよ……

「あ、ゆ♪」

「だ、ダメだからねっ」

「キスぐらいいいだろ」

「だ、ダメだよ」

「あゆ、俺のこと嫌いか?」

「そ、それは……」

「あゆ」

ぐいっ。

「わっ」

急に祐一くんがボクの事を抱きしめてきた。くしゃっとボクの頭をなでてくる。

「ゆ、祐一くん……ボク、すごく恥かしいよ……」

「あゆ、俺は、お前の事が好きだぞ。大好きだ」

「……う、うん……」

「キスしていい?」

「……いやっていったら、しない?」

「お前がいやがることはしないよ」

「……祐一くん」

顔を上げると、祐一くんがほんのり顔を赤くしながら笑っていた。

「祐一くん、顔赤いよ……」

「お前なんて真っ赤だ」

「うぐぅ……意地悪……」

だって、しょうがないじゃん……

「だって、すごく恥かしいんだもん……」

ちょっと唇を尖らせるように言う。

でも……

「でもね……」

「ん?」

「ちょっと、嬉しいな……」

「……そっか」

「キス……ボクも、したいよ、祐一くん」

「……わかった」

祐一くんがほほ笑むと、そっと近づいてきた。ボクもそっと目を閉じていく。

とくん、とくん、て心臓の音が聞こえた。

静かだった。

そして。

触れ合うだけの、キスを、した。











<続く>

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ども、東方不敗です

なんか自分で書いててごろごろ転げまわりそうになりました。

う〜ん、なんかフラストレーションでもたまってるのかなぁ……

ああ、そういえばそろそろ2月14日……

ええいくそっ、チョコなど人類の敵だ。

Written By 東方不敗―――