KISSの味ってどんな味?

Prezented By 東方不敗








パジャマに着替えて、夕御飯を食べて、部屋でゆっくりとする。

ごろんってベッドの上で横になってると誰かがこんこんって部屋をノックしてきた。

「はいっ」

『あゆ、俺だけど』

「開いてるよ」

がちゃっ。

「いらっしゃい、祐一くん」

「お前はどっかのすし屋の板前か」

「違うよっ」

「まあいっか。よっ……と」

ぽふっと祐一くんがベッドの縁に腰掛ける。ボクもその隣に移動する。

「にしても、相変わらずたい焼きだらけな部屋だよな」

部屋をぐるりと見まわしながら祐一くんが言って来る。

「そんなことないもんっ」

ぷく〜っと頬を膨らましながら言う。それに、それはそれで可愛いもん。

「ま、それはそれでいいとして」

「うぐぅ……そんなことないって言ってるのに……」

「わかったわかった。なあ、あゆ……」

「ん?」

祐一くんの顔を見る。でも、どこか思いつめてるみたいでなんだか言い出せなさそうにしてる。

「……祐一くん?」

「……その、だな……」

「……なにか、大切なことだったら、ボクでよかったら相談に乗るよ」

「……いや、確かに大切な事なんだが……」

「うんっ」

「……な、あゆ」

真剣な目で、祐一くんがボクの事を見る。なんだかこんな目の祐一くんを見るの初めてなような気がする。

「……もしかしたら、間違いかも、しれないけど……」

「……う、うん……」

ごくりとのどを鳴らす。

「……おまえさ……」

「……ぼ、ボク?」

「……ああ。もしかして……」

「……う、うん……」

「……胸、でかくなった?」

「………………」

ひゅるりら〜……

冷たい風が吹いたような気がした。

「いや、もしかしたら俺の気のせいかもしれないんだけどな。だってあゆの胸がでかくなるなんてな、そりゃ普通はないだろうけどさ。って、お〜いあゆ。なにベッドに突っ伏してるんだ?」

う、うぐぅ……大事な話だと思って緊張してたのに……

「祐一くんがそんな事言うからだよ……」

「俺がなにをした?」

「うぐぅ……だ、だって、なんだかすっごく意味ありげにいうんだもん……」

「何言ってんだあゆ。充分お前にとっては意味ありげじゃないかっ!」

「いや、そんなビックリマークつけられても……。だいたい、胸が大きくなったぐらいで……」

……え?

「え? え? え?」

「ど、どうしたあゆ?」

「え? む、胸が大きくなったって。ボクの?」

「他に誰がいるんだ」

うなずく祐一くん。

「…………」

じ〜っと自分のちっちゃな……訂正。もしかしたらちっちゃいかもしれない胸を見つめる。そういえば、このごろちょっとブラがきつくなってたような……

じ〜〜〜〜。

「…………」

じ〜〜〜〜。

「…………」

じ〜〜〜〜。

「…………」

じ〜〜〜〜。

「……うぐぅ、わかんない」

「そりゃそうだろうな。……そこで、これだ」

祐一くんがどこからかメジャーを取り出す。

「……それで、どうする気?」

「はっはっは。聞かなくてもわかるだろうあゆ。さあ脱げ」

「や、ヤダよっ!」

ばっと両胸を覆い隠すようにしてじりじりとあとずさる。うぐぅ、祐一くん目が怖いよ……

「いいからおとなしくしてろってあゆ。大丈夫。多分何もしないから」

「『多分』ってなんだよ『多分』って!」

「いやほら、大きくなってたら嬉しくて抱き着いちまうかもしれないじゃないか。それで『多分』って」

「嘘だよ! 絶対いやらしい事考えてる!」

「大丈夫だ。この星に誓ってもいいぞ!」

「祐一くん、星なんて見えないよ」

ごつんっ。

「うぐぅ……痛い」

「やかましい、いらんこと突っ込むなお前は。……さてと」

祐一くんがメジャーを構える。うぐぅ、そう言えばこの体制って、なんか祐一くんに押し倒されてるような……?

「うぐぅ……」

「ふっふっふ、よいではないかよいではないか」

「祐一くん言葉が変だよ」

「やかましい」

祐一くんの手がボクのパジャマのすそにかかる。ううっ、なんか盛大に嫌な予感がするよ……

「な、なんにもしない……? 祐一くん?」

「ああ、なんにもしない」

「……一応、信じて良いんだよね?」

「ああ、信じろ信じろ」

「じゃあ……わかったよ」

ひょこっと体を起こして祐一くんに背中を向ける。

「なんか意外と素直だな」

「だ、だって、ボクだって確かめたいもん」

「よし、それじゃ……」

するするっとパジャマが上がっていく。うう、恥かしいし嫌な予感でいっぱいだよ……

「おい、計るから両手ばんざいだ。あゆ」

「う、うん……」

言われる通りに両手を万歳するような感じに上げる。そして……

こんこん。

がちゃっ。

「あゆちゃん、洗濯物、乾いたから持ってきたんだけど……」

…………

嫌な予感は、してたよね。うん。

でも、この体勢はヤバすぎるよ……

「あらあら」

頬に手を当てて秋子さん。

「……え、ええっと、秋子さん。これは、別に。あの、その」

「若いですね」

「は、はい?」

「でも、ちゃんと気をつけることには気をつけてね」

気をつけることってなに?

「ちょ、ちょっと」

「洗濯物、ここに置いとくから、ごめんなさいね、邪魔して」

がちゃん、ぱたぱた。

…………

「ちょ、ちょっとまって秋子さん、ちがうよっ、ちがうんだよぉっ!」

うぐぅ、なんでこうなるんだよ……






「まあ、そうだったの」

リビングで秋子さんが頬に手を当てながらそう言った。

「わたしったら随分早とちりしてたみたいね」

「う、うん……。でも、あの、まあ、普通はあの体勢見たら誤解すると思うし……」

「それで……」

くるっと秋子さんが祐一くんに視線を向ける。

「どうだったんです? やっぱり大きくなってました?」

「いえ、まだ計ってないです」

「あらあら、それじゃ、わたしが計ってあげましょうか?」

「え、いいの?」

「ああ、そうしてもらえ。秋子さんだったからよかった物の名雪や真琴に今度見つかったら刺されかねないからな」

「あはは……」

たらんと汗が流れる、うぐぅ、確かになんだかありそうだし……

「それじゃ、脱衣所行きましょうか?」

「あ、うんっ」

とてとてと脱衣所に歩いていく。

「よし俺も」

「ついてこないで」

「うぐぅ」

「うぐぅ、真似しないで」

「うぐぅ」

「うぐぅ、意地悪……」

「わかったからさっさと行って来い」

「うんっ」

脱衣所の中に入って、扉を閉めて、秋子さんがボクの背中に回る。

「さて、それじゃ、計っちゃいましょうか」

「うんっ……」

両手をバンザイするように上げる。

うぐぅ、なんだかどきどきするよ……

「ええと、それじゃ……」

メジャーがボクの体にしゅっとまきつく。

「そういえば、あゆちゃんって何cmだったっけ?」

「……言わなきゃ、ダメ?」

「ええ。だって、言わなきゃわかんないでしょ?」

「うぐぅ……。えっと……は、80cm……」

うつむきがちに言う。うぐぅ、なんか顔が熱いよ……

「あら、それじゃ別にそんなに小さくないんじゃない?」

「う、うん……。でも、名雪さんは、もっとプロモーションいいし……」

「あら、そんなに変わらないわよ」

「で、でも……」

「だから、今はもうそんなに変わらないわよ」

「……え?」

ぽんって秋子さんがボクの背中をやさしく叩いてくれた。そして、

「82cm。2cmも大きくなってたのね。やっぱり育ち盛りなのよ」

「……ホント?」

「ええ」

にっこりとうなずく秋子さん。

「うぐぅ……」

な、なんだか恥かしい……

でも、嬉しいな……

「……ふふっ、なんだか、こうやってると、あゆちゃんが本当に私の娘みたいね……」

「……え?」

「ううん。なんでもないの」

泣き笑いみたいな表情をしてみせる秋子さん。

悲しい表情。

そんな顔見たくなかったからなのか。

ボクは気付いたらこう言っていた。

「……ボクも……」

「?」

「……ボクも、秋子さんの事、本当のお母さんだって、思ってるよ……」

「……あゆちゃん……」

ぽんっと、ボクの頭にあったかい手が置かれる。

「ありがとう……」

涙を目尻にためながら秋子さんが言う。

「うん……」

「ふふっ。それにしても、やっぱり大きくなったのは祐一さんのおかげかしらね?」

秋子さんがそんなことを耳打ちして言って来る。

ぼっ!

「あ、あ、秋子さんっ!」

パジャマのすそを治しながら叫ぶ。うぐぅ、顔が熱いよ……

「ふふっ、冗談よ」

笑いながらとたとたと脱衣所を出ていく。うぐぅ、冗談でもそんなこといわないでよっ!

「いよぉ、あゆ、どうだった?」

すれ違うようにひょっこりと祐一くんが顔を出す。

「で、大きくなってた? やっぱダメだったか? いやあ、そりゃあゆだもんな。大きくなってたってのもきっと俺の見間違いだと思うんだけど……」

祐一くんの言葉をほとんど聞かないで、じ〜っと上目使いに祐一くんの顔を見る。

……やっぱり祐一くんのおかげなのかな……

胸はもまれたら大きくなるって言うし……いやそんなことより……

うぐぅ……喜んで良いのか恨んで良いのか複雑だよ……

「で、どうだったんだ?」

多分ボクの心情なんて全然理解して無いだろう顔が目の前に映し出される。

「……2cm……」

「……2cm? それがどうかしたのか?」

「……2cm、大きくなってたよ……」

しばらく、祐一くんは無反応だった。

でも次の瞬間がばっ! とボクのことを抱きしめていた。

「ゆ、祐一くんっ!?」

「やったなあゆっ! 今日は赤飯だっ!」

「うぐぅ……なんかバカにされてる気がするよ……」

「何言ってんだお前の胸がでかくなるなんてっ! そんな事普通はあるわけないんだぞっ、だってあゆあゆなんだぞっ! それがでかくなるなんてっ! こいつぁもう酒でも飲まなきゃやってらんないぞ!」

「うぐぅ……ボク、あゆあゆじゃないもん……」

でも……えへへ……

おっきくなったのは……嬉しい、な……

「にしても」

「?」

「あゆの胸が大きくなるってのはやっぱ俺のおかげなのかな?」

「? なんで?」

「ほら、胸はもめばもむほどでかくなる――」

ぎゅ〜〜〜〜っ。

「ひへへへへっ!?」

「祐一くんのスケベっ!」

「……そうだな。俺はスケベだな。ああそうだ」

「……え?」

「でもな、あゆ、男の子はみんなスケベなんだ。わかるか?」

「……あ、あの祐一くん、なんで抱きしめてるの?」

「なんでって、さっき言ったじゃないか♪」

「な、何を……?」

「ほら、お前の部屋で、胸が大きくなってたら――って」

『いやほら、大きくなってたら嬉しくて抱き着いちまうかもしれないじゃないか。それで『多分』って』

「そ、それで……」

「あゆは、嬉しくないのか?」

「そ、そんなの……」

「素直じゃないと俺は嫌いだぞ」

「……う、嬉しいに、決まってるよ……」

「……そうだな。そうだよな……」

「ゆ、祐一くんっ、なんで、顔が、近づいてるのっ、ねえ?」

「……あゆ……大好きだよ」

「んっ……ふぁ……」

そっと、目を閉じて長い長いキスをする。

「……祐一くん……」

ぽふっと、祐一くんの胸に顔を埋めながら言う。

「ボクも、祐一くんの事、大好きだよ……。世界で一番、大好きだからね……」

それから……

うぐぅ、結局お風呂場と同じ目にあったよ……

でも、まあ……えへへ……

たまには、いいよね、こういうこともっ♪













<続く>

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どうも皆さん、東方不敗です。

あぅ、夕飯の場面書こうと思ったけど挫折しました。というわけで、夕飯後です。

ううん、でもこれ、いいのかなぁ。あゆの胸が大きくなるって……

そういえばマコピーが出てないです。あははー。

それでは、次回は学校です。お楽しみに。

Writen By 東方不敗――