KISSの味ってどんな味? 2
Prezented By 東方不敗
家にやっと帰って来れたときにはもう夜のとばりが降りていた。
「うぐぅ……びしょびしょだよ……」
これじゃ名雪さんが来ても来なくてもいっしょだった気がするよ……
自分の部屋で着替えの服を探しながらつぶやく。
結局あの後傘(とゆーか祐一くん)の取り合いを名雪さんとするはめになって家につくころにはびしょびしょになっていた。でも、ちょっと、楽しかったな……
『うにゅー、祐一ー、あったかいんだよー』
『俺は暑いぐらいだ……って、あゆも何やってんだっ!』
『うぐぅ……ボクだって、寒いもん』
『だからって両手に張りつくなっ!』
『そ、それは……ほら、祐一くん、両手に花だよっ!』
『関係ねえっ!』
『うにゅー、祐一ぃー』
『お前はネコかぁ!』
『えへへー、ネコだよー、ネコさんなんだよー』
『祐一くん、ボクはあったかいよっ!』
『俺は暑くて死にそうだぁっ!』
「……あははっ」
不意に笑い声が漏れる。そういえば結局祐一くんも名雪さんもびしょびしょになっちゃってたもんね。
でも、楽しい……こんな生活が、心から……
騒がしくて。
あったかくて。
一日一日が、本当に新鮮に見えて。
幸せで。
ずっと、ずっとこんな幸せが続けばいいって、思えて。
「えへへ……」
急に視界がぼやけてきた。片手でごしごしと目をこする。
こんこん。
ノックの音。誰だろ?
「あ、はいっ」
『あゆちゃん、私だけど……』
秋子さんの声。
ボクは目を覚ましてから祐一くんの家でお世話になっている。それが今年の春から。今冬だから、そろそろ一年ぐらい経っていた。
「あ、秋子さん。なに?」
『お風呂、沸いたから、言おうと思ってきたの。随分濡れてたみたいだから、風邪引かないうちに入っちゃってね』
「はーい」
『それじゃ』
遠ざかってく足音。
へくちっ。
くしゃみがでる。
「うぐぅ……風邪引いちゃいそうだよ……」
鼻をさすりながら着替えの服と下着をつかんで部屋を出る。とたとたとリビングまで歩いてって(そういえばボクの部屋だけなんでか一階にある。てゆーかこんな部屋いつ出来たんだろう? 前に泊まったときは気付かなかったのに)、お風呂場に向かう。
へくちっ。
「うぐぅ……。寒いよ」
服と下着をぽいっと洗濯機に放りこんでガラス窓を開けて、お風呂場にはいる。
とりあえず湯船につかる。ひのきの香りがする。……なんでだろうね?
「うぐぅ……生きかえるよ〜……」
「お前案外じじくさいな」
「わっ。そんなことないよっ」
横で手ぬぐいを頭にのっけてる祐一くんをにらむ。それに、頭の上に手ぬぐいのっけてる祐一くんに言われたくないよっ。
「生きかえるよ〜とか言ってる時点で充分じじくさいわ。あゆあゆからじじあゆに昇格させてやろうか」
「うぐぅ、そんなことないもんっ! 祐一くんだってきっと―――」
……え?
今気付く。
なんで、祐一くんがここにいるの?
幻覚?
もしかして今日の朝謎ジャム食べたから?
ああそういえばアレ食べたとき一瞬意識が飛びかけてたもんね……ってそれはいいんだよっ!
思わず変な事を思い出しそうになった自分をしかる。
じ〜〜っ。
目をぱちくりさせながら、隣でボクとおんなじように湯船につかってる祐一くんをじ〜っと見る。
ぺたぺた。
触ってみる。感触がある。
「…………うぐ?」
「どうしたあゆあゆ」
相変わらずな口調で祐一くん(だと思うんだけど)が言って来る。
「うぐぅ……あゆあゆじゃないもん……」
「そうか、ところでお前、驚かないんだな」
「……え?」
「いや、普通『きゃー』とか『うわー』とか叫ぶだろ。あ、お前なら『うわー』か」
「うぐぅ……ボク男の子じゃないもん……。ちっちゃくたって女の子だもん」
「確かにそうだな。胸とか」
そういうなり祐一くんが手を伸ばしてくる。って、手の向かう方向が変だよっ。
「な、なにするんだよっ」
胸を両手でかばいながらじりじり後退する。だ、ダメなんだからねっ。
「きにするな。ただの身体検査だ」
「だ、だめだよ祐一くん……んうっ?」
いきなりキスされた。その隙に祐一くんが手を伸ばしてくる。うぐぅ、だ、ダメ……
むにゅっ。
「ひゃっ!」
「……ん?」
むにゅむにゅっ。
「ひゃっ……。ぁ、だ、ダメ……だよ、ぁ、祐一くん……んううっ!」
「んー?」
むにゅむにゅむにゅっ。
「ん……うぁ……ひ、あっ……うぐぅ、ダメだよぉ、祐一くん……こ、こんなぁっ、……ふうあぁ、ひぅうっ……!」
「んー?」
むにゅむにゅむにゅむにゅっ。
「ひあぁ……ゆ、ゆうい、ち、くん……ふあ、うう」
「……あゆ、お前、もしかして……」
ぴたりと祐一くんが手を止める。
ふあぁ……、ゆ、祐一くん……。も、もっと……じゃ、なくてっ!
「ゆ、ゆ、祐一くんっ、なんでここにいるんだよっ!?」
ぴしっと指さす。てゆーかいつからいたんだよっ!?
「うわ。気付くの遅」
「うぐぅ……そんなことないもん……」
ちゃ、ちゃんと気付いてたもん……。ただなんでここにいるのか疑問に思わなかっただけで……
「いや遅い。きっと俺がそのまま出てっても気付かなかったんじゃないかてぐらい」
「うぐぅ……」
「ちなみに言っとくと、俺が来たんじゃなくてお前が入ってきたんだからな」
「へ?」
「だから、俺が風呂に入ってたところにお前が入ってきたんだ」
「……嘘?」
「嘘じゃない。その証拠にお前が入ってきてからの第一声だって言えるぞ。ところであゆ」
じ〜っとボクの事を見ながら祐一くん。
「?」
「お前さ、隠そうとかしないんだな」
「隠す……って?」
「前とか」
「うぐぅ?」
前?
そこで、初めて気付く。
ボクと祐一くんは、湯船の中で向かい合っておしゃべりしてる。
それで前とか隠してないから、当然胸とか丸見えなわけで……
…………
「っきゃああああぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
叫び声を上げて、急いでお風呂場から上がろうとする。と、そこで。
がしっ。
何かに手を捕まれる感触。
「うぐぅ?」
ぼっちゃ―――――――んっ!
気付いたらまたお湯の中にいた。うぐぅ、水が鼻に入ったぁ! 「げほげほっ! な、なにするんだよ祐一くんっ!?」
「まあ落ちつけって、あゆ」
祐一くんがボクの腕をつかみながら言う。わっわっ、どこ見てるんだよぉ!
「うぐぅっ、放してよっ祐一くんのエッチ! スケベ! 鬼畜! 変態! サディスト! マゾ! SMプレイ好き! うぐぅ〜〜〜〜〜〜っ!!」
思いつく限りの罵詈雑言を列挙してみる。ええと、他になにかあったかな……
「あ、そうだっ! ええと、ア――――」
「やめんかぁぁぁぁっ!」
「もぐっ!?」
口をふさがれる。うぐぅ、あとちょっとだったのに……
「全く、まさかここまで暴れるとは思わんかったな」
「ふふぉう、ほふへほひひはらははひへほぅ(うぐぅ、どうでもいいけど放してよぉ」 とりあえず言ってみる。通じるとは思わないけど……
「何を言う、あゆ。同じ屋根の下で住む者同士、裸の付き合いとは決して外せないスキンシップのとり方なんだぞ」
通じてた。……なんで? いや、そんなことより……
「ふぉんなはへはひほっ!(そんなわけないよっ!)」
「いや、俺はそう認識してる。それに真琴とだってしたことある」
「ふぉふへふーひひふんははっへにほふろひはひほーふぉひはんへほ(どうせ祐一くんが勝手にお風呂に入ろうとしたんでしょ」
……でも、真琴ちゃんと一緒に入ろうとしたんだよね……
……後でお仕置きしてやるもん。
「ぐぁ、なぜわかる」
「はんふんはもん(単純だもん)」
「……そんな事言う奴にはこうだ」
ぱっと手を放したかと思うとすぐにキスしてくる。しかも、長いキス。舌を絡めてくる。
「んっ……。ん、ふあぁ……だ、だめだよぉ祐一くん……」
とろんとした目で必死に言う。祐一くんは唇を放すと、
「だいじょぶだ。この風呂は防音だから。誰にも聞こえない」
「そ、そう言う事言ってるんじゃなくて……うぐぅ……」
それになんで防音なんだよ?
「ちなみにそうしたのは秋子さんだ。お前が家に養子に入るって決まったとき」
「…………」
……納得。なんか秋子さんならやりかねない気がするよ。
「とゆーわけで、やっても誰にも気付かれないぞ」
「そ、そういういみじゃないよっ!」 あわてて胸を隠すようにしてあとずさる。うぐぅ、祐一くん目が血走ってるよ……
「バリュエーションは大事だぞ、あゆあゆ」
「うぐぅ……祐一くん、エッチだよぉ」
「男は誰だってそうだ」
むにゅっ。
「ふぁっ」
「……もしかして、ちょっと感度よくなってない?」
な、なんてこと聞いて来るんだよっ。
そりゃぁ、その、ちょっとは、その、気持ちいいかな、なんて、思う、けど……
うう、顔が熱いよぉ……
「うぐぅ……そんなことないもん」
「あゆ」
ちゅっ。
「ぁ……。んっ、ふあぁ……ダメぇ」
祐一くんが舌をからめてくる。大人のキス。なんだかだんだん頭がぼやけてくる。
「それではいただきます」
「うぐぅ……いただかないでいいよっ!」
残ってる理性で必死に呼びかける。
「却下」
一秒だった。
「うぐぅ〜〜〜〜」
結局、その後は何分間も……じゃなくてっ! うぐぅ、もう腰が立たないよ……
うぐぅ、もう絶対祐一くんとお風呂なんか入らないもん。
どうも皆さん、東方不敗です。
むう、あゆしか出てません。てゆーかなんでこんな長くなったんでしょう? このシーンだけで。
まあ、気にしないでいきましょう。次は……夕飯ですね。ふふっ……
もちろんあの人が出てきますよ。
Writen By 東方不敗――