KISSの味ってどんな味?

Prezented By 東方不敗








「よおあゆ、随分早く着たじゃないか」

そんな声がボクの後ろから聞こえた。

「……今何時だと思ってるの」

振り返る。と、そこには制服姿の祐一くんと名雪さんの姿があった。

「あーわるい俺は時計を持たない主義なんだ」

「……そこに時計台があるでしょ」

と、すぐ近くにある細い円柱に時計を挿し込んだような時計台を指差す。

「わるい、このごろ目が悪くなったんだ」

「じゃあボクの時計を見せてあげるよ、ほらっ!」

ぐいいっと祐一くんの目の前に僕の腕時計を押しつけてやる。

「あー、ちょっと急に辺りがまっくらになったぞ。ていうかそんな近づけたら普通見えんぞ」

「じゃあボクが言ってあげようかっ、4時15分だよっ!」

「そうか、約束は4時じゃなかったっけ?」

「3時30分っ! なんでこんなに遅れたんだよっ!?」

「いやそもそもこれには深い訳があってな」

「どんなっ!?」

「ああ、ちょっと帰ろうとしたとたんそこのだおーに連行されてな」

「大げさだよ祐一、掃除当番だっただけでしょ〜」

名雪さんがぴょこって出てきて声をあげる。

「一日ぐらい見逃してくれたっていいだろうがっ」

「だめだよっ、そんなこと言ってたら誰もやってくれないよ。それにだおーってなんだよ」

「まあとにかくそういうわけでだ」

「う〜、無視……」

「……それなら電話くらいしてくれたっていいじゃない。せっかく電話買ったんだから」

ついこの前祐一くんと一緒に買った携帯電話を取り出す。ちなみに名雪さんも一緒に買ったから確か三人一緒に同じ機種にしたはずだ。

「あー、それなら家にあるまんまだ」

「なんでだよ」

「規則で禁止されてるからね」

「……でも」

「だめだよあゆちゃん、規則はちゃんと守らなきゃいけないんだから」

「まああゆあゆには関係ないだろうが」

「あゆあゆじゃないよっ!」

「碁石じゃないクッキーが作れるようになったらあゆって言ってやるよ」

「うぐぅ……」

祐一くんまだボクがクッキー作れないの知ってるくせに……

「祐一くん意地悪だよっ」

「そうだよ祐一極悪だよっ」

「おいちょっと待てなんで名雪まであゆの味方してるんだ」

「そう言う事は女の子はすっごく気にするんだから、いっちゃだめなんだよっ」

「そうだよっ!」

二人で祐一くんに文句を浴びせ掛ける。珍しく祐一くんたじたじしてる。

「だいたい祐一はエッチすぎるんだよっ、ベッドのしたにあーいう本がいっぱいあるのあたしだって知ってるんだからねっ、そんで夜になったら一人でこっそり――」

「おいこら待て公衆の面前でんなことを叫ぶなっ!」

「祐一くん、そんなことしてたの……」

「あゆも何もかも信じてんじゃないっ!」

「え、そうだったの……」

あー、でも……今度ベッドの下調べてみようかな……

もちろんあったら処分するよ。

なんてったって、ボクは祐一くんの……

こ、恋人なんだか、ら……

うぐぅ、なんだか顔が熱くなってきたよ……

考えるだけでこうなるなんて、いつになったらまともにいえるんだろ……

「とにかく、名雪もいい加減にしろっ! あゆー? おーい、何顔真っ赤にしてもじもじしてるんだー?」

「…………はっ!?」

祐一くんの声に我に帰る。見ると不思議そうな目でボクの事を見てる祐一くんと名雪さん。

「あ、な、なんでもないっ、なんでもないよっ、あはははは」

「……あゆちゃん、顔が真っ赤だよ……」

「だ、だからこれは、その、そうっ! 今日暑いからだよっ!」

「今日の最高気温氷点下だよ」

「うむ、真冬の真っ只中だからな」

「だ、だから、その、あ、ぅ……」

わたわたと手を振る。ど、どうしたらいいんだよ……

「……あゆ、なんかエッチな事でも考えてたのか?」

ぼっ!

もしかしたらそのときのボクの顔からは湯気が出てたかもしれない。

『祐一(くん)のエッチっ!』

ばきっ!

次の瞬間ボクと名雪さんと一緒に繰り出した右ストレートが祐一くんの顔面に直撃してた。









その後ボク達はとりあえず気絶した祐一くんをひっぱって百花屋に行った。

「うーん、うーん、おじいさんがぁ……おじいさんが川の向こうで、ランバダをおばあさんとぉ……」

「なんか祐一くん危ない寝言言ってるね……」

抹茶パフェを食べながら横でうなされてる祐一くんを見やる。

「大丈夫だよ、祐一はいつも危ないし」

向かいの席で名雪さんがイチゴサンデーをぱくつきながらあきれたようにコメントする。

「いやまあ、それはそうだけど……」

「誰が危ないんだ誰が」

「あ、おはよ祐一くん」

むっくりと祐一くんが起き上がる。

「お前ら少しは手加減しようとか思わないのか? 本当にお花畑が見えて川の向こうに渡りそうになったんだぞ」

「だって祐一くんだし」

「そうだよねぇ、だって祐一だもん」

「お前等なぁ……。あ、すいませんブレンドコーヒー一つ」

祐一くんが通りかかったウエイトレスさんに注文する。

「ときに名雪」

「へ?」

スプーンをくわえたまま名雪さんが顔を上げる。

「なんでお前はここにいるんだ?」

「なんで……って?」

「いや、俺とあゆはデートしようと思ってるんだが、デートってのは二人っきりでするもんなんだぞ?」

「ああ、大丈夫だよ。これ食べたら帰るから」

「ちょ、ちょっと祐一くん」

くいくいっと祐一くんの袖を引っ張る。ちょっと言い過ぎだよ。あれじゃ……

「言い過ぎだよ。あれじゃ名雪さん傷ついちゃうよ」

声を潜めて言う。

「大丈夫だって、名雪は強いしな」

「で、でもっ……」

名雪さんも、本当は祐一くんの事好きだから……

「ごちそうさま、それじゃ、あたしは先に家に帰るね」

席を立つ名雪さん。

「あっ、なゆ――」

「でもね、あゆちゃん、祐一」

くるりと振り返ると、名雪さんは意地悪っぽい笑みを浮かべていった。

「あたし、まだ祐一の事あきらめたつもりじゃないから」

「は?」

「絶対あゆちゃんから祐一の事奪ってみせるから、待っててね、祐一♪」

そうとだけ言うと名雪さんは店を出ていった。

「……どういうことだろ」

「……そのまんまの意味だろ。ま、安心しろって」

くしゃっとボクの頭を祐一くんがなでる。

「わっ」

「俺が本当に好きなのは、お前だけだから」

「……うん」

か〜っと顔が熱くなっちゃってうつむいちゃう。うう、祐一くんすっごく恥ずかしいこといってるよ……

と、祐一くんが急に僕の肩に手をやると、その、ぎゅって抱きしめてきた。

「ゆ、ゆゆ祐一くんっ!?」

は、恥ずかしいよ……

顔を真っ赤にして祐一くんの胸に顔を埋める。心臓がすっごくどきどき言ってる。祐一くんに聞こえちゃうんじゃないかってくらい。

「あゆ、なんかすごくどきどき言ってるな」

「ゆ、祐一くんのせいだよ……」

「そうか……ところであゆ」

「な、なに……?」

「俺はもうお前を抱きしめてる手を離してるんだけど」

「えっ?」

驚いて顔を上げる。すると……

ちゅっ。

祐一くんがキスをしてきた。

「う・そ」

「ゆ、祐一くんっ! や、やめてよほんとにっ!」

うう、なんか顔がトマトみたいになってそう……

「はっはっは、あゆはかわいいなあ」

「…………」

「ん、なんだあゆ、その手は? なんか俺に向かってきてるような――」

ぎゅ〜〜〜〜〜っ。

「ひへへへへへへっ!?」

「祐一くんのばかぁっ!」

そう言ってからぷいっとそっぽを向いてやる。

「あー、ごめんあゆ、わるかった、俺が謝るから」

「知らないよ、祐一くんのばか」

できるだけ不機嫌そうに言う。実際ちょっと機嫌が悪い。

「……たい焼き奢ってやろうか」

ぴくり。

た、たい焼き……

「た、食べ物になんかつられないよ」

「食べ放題もつけるぞ」

「うん、許すよ」

うう、やっぱりたい焼きの魅力には勝てないんだよ。

「あ、祐一くん抹茶パフェ奢ってね♪」

「なに、ここもか」

「乙女心をもてあそんだ罪は重いんだよっ」

「誤解を招くような事をいうなっ!」

あ、怒ったかな?

でも、事実だよ。

本当に、7年間もずっと待たされたんだからっ。









外に出てみたら雪が降り始めていた。街を少しづつまた白く染めていっている。

「あちゃ……降ってきちまったな」

「ボク別に雪は好きだけど?」

祐一くんがあきれたような顔でボクの事を見つめてきた。ちょっと後ずさり。

「な、なに? ボクなんか変なこと言った?」

「お前は何もわかっちゃいない」

そこでは〜っとため息一つ。そして重々しい声で、

「雪が降ってる中でわざわざ屋台がやってるはずないだろうが」

ぴしっ。

そんな音がしたような気がした。

「そ、そんな……。そんなことないよっ、あのおじさん根性あるんだから、きっとやってるよっ」

「こんな中であの屋台探す気にはならん」

がーんっ。そ、そんなこというなんて、祐一くん……

「更に言うと目の前で今店をたたんでる屋台、みょーに見覚えがある」

「あっ、ホントだっ、じゃあ今急げば……」

「売り切れの文字が見える」

ふらっ。

気付いたらボクは仰向けに雪の上に倒れていた。

「……まさかこれくらいで卒倒するとは思わなかったな」

「……ダメだよ祐一くん、ボクもう笑えないよ……」

「しっかりしろあゆっ、キャラが違うぞっ」

「うっうっ、ダメだよ祐一くん、ボクにはもう自分の部屋で一人虚しく『泳げたいやきくん』のテーマを聞きながら妄想に吹けるくらいしか出来ないんだよ……」

「いやそれくらいできれば十分な気がするんだが」

「とにかくっ、もうだめなんだよっ」

「いやんなこと言われてもな……」

「祐一、あゆちゃ〜ん……。って、何寝てるの」

名雪さんの声。気付くと傘を片手でさしながらボクの事を見下ろしてる。

「あ、名雪さん」

とりあえず体を起こす。

「どしたんだ名雪、忘れ物?」

ぱんぱんとボクの背中についた雪を払い落としてくれながら祐一くんが聞く。

「ううん、家に帰ったらちょうど雪が降ってきて、それでお母さんにも言われたから傘届けに来たの」

よく見ると名雪さんは片手にもう一本傘を持ってきている。

「おお、それは機転が聞くな。さすが名雪」

「うん、ありがとう名雪さん」

「どういたしまして、はい傘」

そう言ってボクに片手に下げていた方の傘を渡す。……って。

「……ねえ名雪さん?」

「な〜に?」

「なんで傘が二本しかないの?」

ボクは心なしかひきつった顔でそう聞いた。

そう。

名雪さんが持ってきたのは名雪さん自身がさしてきた傘と、片手に下げてきた傘一つだけ。一本足りないよ。

「あ、大丈夫だよ、あたしと祐一は一緒の傘に入るから♪」

「……え”?」

そういったのは祐一くん。

「はいってくれるよね、祐一♪」

「え、えっと、そ、そうだな〜、できれば、その……」

ちらりと祐一くんがボクの方を見る。ボクはこっちの傘を指差してこっちに入るように促す。

「祐一、はいってくれないの?」

「あ、ああっと、その、できれば、遠慮したいな〜、なんて……」

「そう……。祐一、そんなに紅ショウガが好きだったなんて知らなかったよ」

「ちょっと待てどう言う意味だそれはっ!?」

「私と一緒の傘に入ってくれれば問題ないよ♪」

「祐一くん、はいっちゃダメだからねっ!」

念を押すように叫ぶ。

「祐一、私と一緒の傘ならお母さんのジャムが飛んで来たりしないよ?」

「え、ええっと……」

「祐一くん、ダ・メ・だからねっ!」

「そ、そうだな……ここはやっぱり、あゆの傘に……」

「そう……」

祐一くんがそう言うと名雪さんは肩を落とした。そして、

「祐一、お母さんこのごろ新作作ったんだって……」

「よし決めた名雪の傘に入るぞ」

「祐一くんっ!」

「すまんあゆ、俺も命は惜しいんだ。その代わり……」

ちゅっ。

「ぁ……」

祐一くんが唇を突き出すといきなりキスしてきた。

「これで許してくれ、今は、な」

にっこり笑う。

「う、うん……」

顔が赤くなるのがわかる。恥ずかしくて顔を伏せてしまった。

「祐一〜」

不機嫌そうな名雪さんの声。もしかして顔を膨らませて怒ってるかもしれない」

「な、なんだよ」

「酷いよ祐一〜、あたしが目の前にいるのにそんなことして〜」

「何を言う名雪。その代わりお前の傘にも入ってやってるぞ」

「でも、それお母さんのじゃむが怖いだけじゃ……」

「なんならお前が食うか? アレ」

「絶対いや」

「だろう? 俺も嫌だ。……ところで名雪、そんな寄られると歩きにくいんだが」

「えへへ〜、いいんだよ〜、暖かいから」

「俺は熱いくらいだ……」

「祐一暖かいよぉ、これもきっと愛の力なんだよ〜」

「名雪さん、そんなひっつくと祐一くんが迷惑だよ」

「そんなことないよ〜、ね、祐一?」

「ああ、俺としても胸の感触があって非常に――」

ぎゅ〜〜〜〜。

祐一くんのほっぺを思いっきり引っ張る。

「ひへへへへへっ!?」

「どうせボクはちっちゃいよっ!」

「いや俺はそんなこと別に一言もいってない――」

「目が言ってたよっ!」

「祐一……」

「なんだよ名雪までジト目で」

「女の子はそう言う事気にするんだよ。言っちゃダメなんだからっ」

「お前俺にどっちの味方してほしいんだよっ?」

「あたしだよっ。でも、あたしはあゆちゃんの味方なんだよっ」

「矛盾してないかオイ」

「してないよ」

「してるわあっ!」

「祐一くん声が大きいよ」

「お前も文句つけるなぁっ!」

そんなこんなでゆっくりとみんなで家に帰っていった。













<続く>

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どうも皆さん、東方不敗です。

まったりと書き始めてみました。連載物。

あゆEND後の祐一とあゆ。他のメインヒロイン達も出るんですけど全員祐一の事はあきらめてなくて――て内容の予定のこの作品。名雪を筆頭にどんな攻撃が待ち構えてるのやら。やっぱりスタイルいい軍団の攻撃か? これにはあゆあゆ勝てないぞ、愛の力で打ち破れるんでしょうか?

まあゆっくりと書いていきたいと思います。それでは、次回をお楽しみに。

Writen By 東方不敗――