思いでと一緒に

Prezented By 東方不敗











でーと、でーと、祐一くんとデートだあ♪

駅前の広場。空を見上げると今にも雪が降り出しそうだけどまだ降っていない。でも、出かけるとき天気予報で雪が降るっていってたから降るんだろうなあ……

ううん、でも雪が降ってるってのもロマンチックでいいよね。 そんでもって夜になったら祐一くんと二人っきりであんなことこんな事を……

ふふっ、すっごく楽しみだよ祐一くん……(じゅるり)。

ちらりと時計を見る。13時54分。待ち合わせは14時のはずだった。

「うぐぅ、遅い……」

ボクなんて11時から3時間もここで待ってるのに……

でもこれから祐一くんと会えると思うと自然とにへら〜っとなっちゃう。だってこのごろ祐一くんとは電話でしか話してないんだから。

昨日なんかあんまり寂しいんだから1時間も祐一くんと話してたよ。

にしても……うぐぅ、遅いよお……

「もしかして祐一くん忘れてるのかなあ……」

そんなだったら……許さないよ。

簀巻きにして川に放りこんでやるんだから。

もしくは一晩中ボクの相手してもらうよ、『忘れてたバツだからお願い一つだけ聞いてよ』とでも言って。祐一くん単純だからきっと大丈夫だよね、えへ、えへへへ……

「誰が単純だって? この変質者」

「うぐぅ!?」

心臓が飛び出るかと思った。

「ゆ、ゆ、祐一くんっ!? おどかさないでよっ!」

「やかましい、大体さっきからぶつぶつと怪しい事を……とうとう逝っちゃったかな〜、なんて本気で思っちまったぞ」

「へ? ぼ、ボクなんか言ってたかな……?」

「おう、俺が単純だとか一晩中相手をしてもらうとか簀巻きにして放りこむとか怪しい事をぶつぶつと。ちょっぴり話しかけるのに勇気を要したぞ」

「うっ……」

うぐぅ、どうりでみんなが変な目でボクの事見てると思ったよ……

「まいっか、で、どこ行くんだっけ?」

「あっ、そ、そうだよっ。えっと……」

「えっと?」

「えっと……」

「うんうん」

「…………」

…………

「…………なああゆ」

「う、うぐぅ、大丈夫だよっ! 別に行くところ考えてなかったとか祐一くんがきっといいとこ連れてってくれるとかそんなこと全然考えてなかったから大丈夫だよっ!」

「とどのつまり何も考えてないあげくに俺がどっか連れてってくれるだろうと思いこんでたわけだな?」

「うぐぅ……」

「やれやれ、しかたないか。……そんじゃいこっかあゆ?」

「う、うん……。って祐一くん、どこ行くつもりなの?」

なんか考えててくれてるみたいだけど……

「百花屋」

「え? それってあの……」

「そう、名雪の好物がある喫茶店だ」

「うん……」

「ほら行くぞ、それとも置いてって欲しいのか?」

「あ、待ってよ祐一くん!」

歩き出した祐一くんの後に続いてぎゅっと祐一くんの手を握るボク。

「なああゆ……」

「なに?」

「この手を握る行為に意味はあるのか?」

「ないよっ♪」

「じゃあ放してもいいか?」

「ダメだよっ♪」

「なんでだよ?」

「ボクと祐一くんが恋人同士だから♪」

「……お前言ってて恥ずかしくないのか?」

あきれたように祐一くん。あ、顔が赤くなってるよ。そういえばボクもちょっと顔が熱いな、ふふ……

「でも事実だよっ」

「ふ〜ん。……あ、あゆ、あれ名雪じゃないのか?」

「え?」

ボクが驚いて祐一君が指差した先を見る。すると――

ちゅっ。

急に祐一君がボクの唇に、その、ちゅって、キスをしてきた。

「う・そ♪」

「ゆ、祐一くんっ!」

「はっはっは、人を単純扱いしたバツだ」

「ひ、酷いよっ! 祐一くん極悪だよっ! 鬼畜だよっ! サディストだよっ! 人類の敵だよっ! 悪魔だよっ! 魔王だよっ! アルマゲドンだよっ!

「……たかがキス一つでなぜそこまで言われなきゃならんのだ?」

汗をたらんとたらしながら祐一くんが言う。

「だ、だって、は、恥ずかしいもん……」

ごにょごにょと指をつっつきながら上目使いに祐一くんを見る。いや、見ようとしたところで…… がばっ! と祐一くんに急に抱きしめられた。

「きゃっ!? う、ちょ、ちょっとゆ、祐一くんっ!? は、恥ずかしいよぉ……」

じたばたと暴れながら言う。うう、みんなこっち見てるよお……

「う〜ん、あゆはやっぱ可愛いなあ……」

「ば、バカっ……」

思わずか〜って顔が熱くなってぎゅっと祐一くんの肩に顔を埋める。そ、そんなことこんなところ

で言わないでよ……ばか……

「だれがバカだだれが」

「え、もしかしてボクまた喋ってた……? って、ううんっ!?」

顔を上げたとたんまた祐一くんにキスされた。

しかもすっごく長い奴だ。なかなか放してくれない。

「うっんっ……んっ、はあっ、ん、あうっんんっ……」

あ、なんだか頭がぼ〜っとしてきた……

だんだんと頭が真っ白になってきて、気付いたらボクは祐一くんの背中にすっと腕を回してぎゅっと抱きしめていた。

一度はこうやることをあきらめようとした。

もう二度と会っちゃ行けないと思っていた。

『ボクの事、忘れてください……』

祐一くん……

もう会えないと思ってた。

もうこうやって抱きしめてくれないと思ってた。

でも。

でも今こうやって。

ちゃんと一緒にいてくれるんだ。

ボクの、大好きな人……。ずっと、ずっと大好きな人……

しばらくして、やっと祐一くんが唇を放してくれた。

「んっ……はあ……」

「お楽しみは夜に……だな♪」

ぱちっとウインクするような動作をする祐一くん。

ボクはその頭をぽかっと叩いた。

「いてっ、何するんだよ」

「そ、そんな恥ずかしいセリフ言わないでよっ!」

ボクは顔を真っ赤にしながらそう言って、もう一度だけ顔を真っ赤にしながら祐一くんの頭をぽかっと叩いた。

















「というわけでなぜか俺はあゆにイチゴサンデーを奢るはめになっているのだ、うぐぅ」

「祐一くん、誰にむかって喋ってるのさ……?」

「ん、何かおれ言ってたか?」

「…………」

記憶にないの?

だとしたら……やばいよ、電波だよ……

まえまえからやばいと思ってたけど、ついにここまで言っちゃったんだね……

「なにをぶつぶつ言ってる、お前は?」

「な、なんでもないよっ」

笑顔を取り繕ってスプーンを取りなおす。

大丈夫だよ、たとえ祐一くんが壊れちゃってもボクは祐一くんのこと見捨てたりなんかしないからっ♪

ぱくっ。

「うんっ、おいしいっ♪」

この前一度名雪さんに勧められて食べた事があるけど……やっぱりおいしいよ〜♪

「そうかそいつは良かったな」

「祐一くんも食べる? ほらっ」

「いや、名雪にこの前いやって言う程食べさせられたから遠慮する」

「じゃ、ボクが全部食べる♪」

「ああ、そうしろ」

「うん♪」

ぱくぱく。

「ふふっ」

ぱくぱく。

「ふふふっ」

ぱくぱく。

「……ねえ祐一くん?」

「なんだあゆ」

「そのにたにたしながら人のこと見るのやめてくれない?」

「なんでだ? 俺はこんなに面白いのに」

「ボクは面白くないよ……」

「そっか。でもやめない♪」

「もう……」

頭をぽりぽりと掻いてから、もう一度食べ始める。

ぱくぱく。

「…………」

ぱくぱく。

「…………」

ぱくぱく。

「なあ、あゆ」

「なに?」

「今、幸せか?」

「え……?」

いきなり何言ってるの……?

祐一くんは相変わらずにこにこしながら僕のことを見てた。繰り返す。

「今、幸せか?」

「……うん」

ボクはちょっと戸惑いながら答えた。

ボクは、幸せだよ。

だって、願い事もかなって。好きな人と一緒にいられて。毎日がこんなに楽しいんだから。

「そっか……」

祐一くんは一度視線をそらすと、ボクをもう一回見つめなおした。にっこりとほほ笑んだままで、

「俺もだ」

…………

一瞬、ぼけっとしちゃった。

だって、祐一くんがこんな優しいこと言ってくれるなんて思ってなかったから。

「祐一くん、今の、ホント……?」

「ば、ばかっ、本気なわけあるか」

そう言ってぷいっと顔をそらす祐一くん。あっ、これって……

「祐一くん」

「ん?」

「ありがと、ボク、ホントに嬉しいよ」

祐一くんの、照れてるときのくせ。

ぷいっと顔を横にそらすくせ。

全然変わってないんだね、祐一くん。あの時と全然……

「な、何いってんだよっ」

「ふふっ、なんでもないよ♪」

そういって、ちゅっとテーブルを乗り出して祐一くんの唇にキスをしてあげる。

















百花屋を出てからボク達は商店街のいろんなところを歩き回った。ゲームセンターに行ってもぐらたたきの最高記録に挑戦したり(ちなみにボクが18点、祐一くんが54点だった。うぐぅ……)洋服屋さんに行っていろんな服をボクが着てみたり、屋台でたい焼き買ったりして――



「やっぱり、ここにきちゃったね……」

ボクがくるりと祐一くんに降りかえりながら言った。

「ああ、そうだな……」

祐一くんも、どこか懐かしむように遠い目をしながらボクのことを見ている。



ボク達はまたこの場所に来ていた。

二人で作った学校に――

いっぱい、いっぱい思いでが詰まってるこの場所に来た。

悲しい思いでも、楽しい思いでも、嬉しい思いでも……

いっぱい、ここには詰まってる。

「この木、切られちゃったんだよね……」

枯草と一緒にぽつんとたたずむ切り株にそっと腰をおろしながらボクがつぶやく。

「ん、そうだな……」

「寂しいね……」

「ああ……」

ボクと祐一くんの、思いでの固まりみたいなものだったのに――

「ま、いいんじゃねえのか?」

しばらくボクが黙ってたら、祐一くんが不意にそういった。

「思いでなんて、これから作っていけばいいだろう。俺とお前は、いつまでも一緒なんだから――」

「祐一くんすごく恥ずかしい事言ってるよ……」

「わるいか」

言って、ぷいっと顔をそらす祐一くん。

ふふっ、かわいいよ、祐一くん……

「ねっ、祐一くん、買ってきたたい焼き、まだ余ってるよね?」

「ああ、結構余ってるけど」

祐一くんが右手に持ってる紙袋を掲げて見せた。さっき買ってきたやつのあまりだ。

「それじゃ、食べよっか」

「……いいのか? 『名雪達に』ってお前が買ったのに」

「気が変わったんだよっ」

「……やれやれ」

そう言って、祐一くんははあっとため息をついた後に、ふふっと笑った。

「ま、ばれなきゃいいか。ほらよ、あゆっ」

そう言って、祐一くんが紙袋の中からたい焼きを一つ取り出してボクに向かって投げた。

「わわっ。とっ……とっ」

まだ暖かい。なんだかそれだけで無性に嬉しかった。








「なあ、あゆ……」

そろそろ食べ終わりそうになったときに祐一くんが声をかけてきた。

「ん、はあひ、ゆうひちひふん?」

「いや、口の中を飲みこんでから喋れ」

「うんっ……。ん、ん……」

ごっくん。

「ふうっ……。なに、祐一くん?」

「ああ、実はお前に渡したいものがある」

「渡したいもの?」

「ああ、とってもいいものだ」

「……もしかしてたいやき?」

「残念、ハズレ」

……ちぇ。

じゃあ、他には……う〜ん……

「……ん〜、わかんない」

「そっか。それじゃ、答え。ちょっと切り株に置くからどいてくれ。それと目つぶって」

「……変な事しない?」

「そういうことを言われるとしたくなっちゃうぞ」

「……わかったよ」

よいしょっと切り株からどいて、ぱちっと目をつぶる。

真っ暗な視界の中。ことりとボクの目の前に何かが置かれるような音、なんだろ……?

「もういいぞ」

「ん……」

うっすらと目を開ける。

「……なにこれ?」

切り株の上に、ちっちゃな手のひら大くらいの箱が置かれていた。きれいに赤いリボンでラッピングされている。

「誕生日プレゼント」

「……へ?」

「今日、お前の誕生日だろ?」

「……あっ」

そっか……

今日、1月7日……だったんだ……

「忘れてた……」

「……開けてみな」

「いいの?」

「ああ」

祐一くんが優しい目でボクの事見てる。なんだかちょっぴり恥ずかしいよ。

「それじゃ……開けるね」

かさかさと、包みを開けて、中にある箱を開く。

「…………」

一瞬、ボクの眼がおかしくなっちゃったのかとおもった。

そこには小さな銀色にくすんだ指輪があった。

「こ、これ……」

震える手でそれを指差す。祐一くんはすっとそれを取るときゅっとボクの薬指にはめた。

きゅっと、まるで体の一部みたいにぴったりに指を包んだ。

「あ……」

「あゆ……。俺、お前のこと好きだ……」

「……ゆ、祐一くん……」

「俺はまだがきだから……お前を幸せにできるとか……そんなのは約束できない……。でも……俺は、お前の事が好きなんだ……だから……」

「……祐一くん……ボクで……いいの……?」

「……ああ、もちろんだ」 その指輪をそっと見つめる。くすんだ色でそれはきらきらと光り輝いていた。

「……うっ、ぐすっ」

急に目の回りがぼやけてきた。

ぽたぽたと熱い雫が指輪の上に落ちていった。

「……あゆ?」

「……あ、ごめん……うれ、しいのに……ホントに、嬉しいのに……。なんで……? 涙が……とまんっ、ない……」

「あゆ……」

ぎゅっと。

祐一くんが、ボクの事を抱きしめてくれた。

「ずっと……一緒にいような……」

「……うっ、あっ、祐一くん……!」

暖かい、祐一くんの感触。

祐一くんがここにいる。

子供みたいに、ぎゅって、祐一くんの胸に顔を埋めて、ボクは泣いた。

でも、それは悲しい涙じゃない。

嬉しいときに流れる、幸せの証――











ずっと夢見ていた、ボクの夢……

やっと、かなったよ……


本当の、ずっと前に夢見た、三つ目の願い事……


あのときあきらめかけた、僕の本当の思い……


今も、これからもずっと、ずっと……


大好きだよ、祐一くんっ。










<おわり>








さあてさてさてお久しぶりです。皆さん、ちなみに私自体はぜんっぜん久しぶりじゃないです。なんていうか前回の作品書いてから1日でこれかいてるくらいですから。

まあそれはさておき、はっぴーえんどです。あゆあゆです。大好きです鼻血です(冗談です)。

ではでは、この辺で (短いなおい。すまんネタがないんだ)。次回はなゆなゆが多分出てきます。内容は不明だけどね。

ほんじゃ、またお会いしましょう。

Writen By 東方不敗――