KISSの味ってどんな味? 5

Prezented By 東方不敗








「朝〜、朝だぞ〜」

……誰かがしゃべってるよ……

「朝御飯とたいやき食べて学校行くぞ〜」

「……ボク学校行ってないもん……」

「……寝ながらつっこみ入れるとは器用な奴だな……」

……そんなことないもん……

「とにかく、起きろあゆっ、朝だぞっ、おてんとさまも頑張ってるいい天気だぞっ、おいあゆあゆっ、起きろっ!」

「……ボク、あゆあゆじゃないもん……」

あゆだもん……

「いいからさっさと起きんかいっ!」

ばさっ!

「うぐっ!?」

ごろん、ごろごろっ!

「うぐぅ……痛いよぉ……」

痛む頭を押さえて目を開けると、シーツを持ってボクの事を見下ろしてる祐一くんの姿が目に入った。

「……あれ? 祐一くん、なんでボクの部屋にいるの……?」

「お前を起こしに来ただけだ」

「うぐ……?」

まだぼおっとする頭をきょろきょろと動かすと、そこは見なれたボクの部屋でなんでかボクは床の上で寝てる。

「……なんでボク床の上で寝てるの……?」

「そいつはきっと寝相が悪いからだ」

「そんなことないもん……。それに、頭痛いよ……」

「それはきっと二日酔いだ」

「ボクお酒飲んでないよ……」

「いいからさっさと起きろっ、ほらさっさと着替えるっ!」

言うなり祐一くんがボクのパジャマのすそをつかんでくる。わっ、なにするんだよっ。

「い、いいよ祐一くんっ! ボク子供じゃないもんっ、一人で脱げるよっ」

「……わかったから、さっさと着替えろよ」

「は〜い」

声をあげて、パジャマのすそに手をかける。

…………

「あのさ、祐一くん」

「おう、なんだ?」

「目の前で見られてると着替えられないんだけど……」

「大丈夫だ、俺は気にしないから」

「ボクは気にするよ……」

「それにあゆの裸なんて何回も見てるから」

「うぐぅ、恥かしい事言わないでよ……」

「いいからさっさと起きて来い」

「わかってるよ」

「それじゃな……と。その前に」

「え……? ん……ふぁ……」

いきなりキスされた。

「……おはようのキス。おはよ、あゆあゆ」

「……ボク、あゆあゆじゃないもん……」

「朝はおはようだぞ」

「……おはよう……」

顔を伏せながら上目使いに言う。うぐぅ、なんだか恥かしいよ……

「ああ、おはよ」

「わっ」

くしゃっと祐一くんがボクの頭をなでてくる。くすぐったい。

「祐一くん、くすぐったいよっ」

「……なんかこうやってるとあゆが余計子供に見えるから不思議だ」

「うぐぅ、ボク子供じゃないもんっ」

こう見えても祐一くんと同い年だもんっ。

「そうだったな。すっかり忘れてた」

「うぐぅ、忘れないでよ……」

「冗談だ。そんじゃ、二度寝するなよ」

「わかってるよ」

「わかってても名雪はするぞ」

「ボク名雪さんみたいに寝起き悪くないよっ」

「そんじゃ、先リビングに行ってるから」

ぱたんっ。

「あ、もう……。祐一くん、いいたいことだけ言って逃げるんだから、ズルイよ」

ぶつぶついいながらパジャマを脱いでいつもの格好に着替える。

しゃっ。

「わ……」

カーテンを開けるとまぶしい光がボクの体一杯に当たった。思わず目を細めちゃう。

……いい天気みたい……

空を見上げると、雲一つない青い空が一杯に広がっていた。










さくっさくって雪を踏みしめながら祐一くんと一緒に商店街を歩いていく。

「それで、祐一くん、どこ連れてってくれるの?」

「いいところだ」

横を歩きながら祐一くんが意地悪っぽく言って来る。

「もうちょっと具体的に言ってよっ」

「とってもいいところだ」

「うぐぅ、全然具体的じゃないよっ」

「行くまでお楽しみだ」

「……でも、気になるよ」

「じゃあ気にしてろ」

「うぐぅ……」

「うぐぅ」

「うぐぅ、真似しないで……」

「うぐぅ」

「うぐぅ、意地悪……」

「うぐぅうぐぅうるさいぞ、あゆ」

「誰のせいだよっ!」

「さあ?」

「もうっ、いいもんっ、祐一くん嫌い」

ぷいっとそっぽを向いてやる。ふんだっ。

きゅっ。

きゅっと右手を握られた振り向くと祐一くんが笑いながらボクの事を見てる。

「ゆ、祐一、くん……?」

「あゆ、俺のこと嫌いか?」

「き……嫌いだもんっ」

祐一くん、意地悪だもんっ。

「そうか、俺は好きなんだけどな」

「……うぐぅ……」

顔が熱くなるのを感じて思わず顔を伏せちゃう。

「今も、これからも、ずっとあゆの事好きでいられたらいいなって俺は思ってるぞ」

「うぐぅ……祐一くん恥かしい事言ってるよ……

「うっせい」

照れちゃったのか、ぷいっとそっぽを向いちゃう。その背中に、ぎゅっと抱きつく。

「……あゆ?」

「ボクも……そう思ってるよ」

「は?」

「今も、これからも、祐一くんの事、ずっと好きでいられたらいいなって、いつも思ってるよ……」

「恥かしい事言ってるな」

「先に言ったのは祐一くんだもん」

「くわっ……しまった」

「祐一くん、ボクね、祐一くんがボクの事ずっと好きでいてくれたら、ボクもずっと祐一くんの事好きでいられると思うよ」

「じゃあ一生そうなるな」

「うわっ、すごい恥かしい事言ってる……」

でも……

ちょっと嬉しいよ……

「いいんだよ、別に。ホントのことなんだから」

「……え?」

くしゃっ。

「わっ……痛いよ祐一くん」

頭を押さえながら言う。

「……行くぞ、あゆ」

「……うん」

祐一くんと手を繋いで歩き出す。

「ねえ祐一くん?」

「ん?」

「さっき言った事、ホント?」

「何の事だ?」

「とぼけないでよ」

「とぼけてなんかないぞ」

「祐一くん、ボクの事ずっと好きでいるって約束できる?」

「……多分、な」

「多分じゃダメだよっ」

ぴょんっと祐一くんの背中に飛び乗る。

「重いぞこら、やめろあゆっ」

「ちゃんと約束してくれたら降りるよっ」

「そんな恥かしい事公衆の面前で言えるかっ」

「さっきは言ったもんっ!」

「あれはその場の雰囲気だっ!」

「じゃあもう一回その場の雰囲気で言ってよっ!」

「い・や・だっ!」

二人でわいわい騒ぎながら商店街をゆっくりと歩いていく。

「……祐一くん」

「……なんだよあゆ。できればさっさと降りて欲しいんだけど……」

「……ボクは、本気だからね。ずっと一緒に祐一くんと一緒にいたいと思ってるからね……」

ずっと、一緒に……

ボクは、祐一くんといたいよ……

「……あゆ」

ちゅっ。

「わ……」

「俺もだよ」

ボクにちょっとだけキスをしてから、祐一くんが笑いながら言った。

「俺も、あゆとずっと一緒にいたいと思ってるよ」

「……えへへ……」

「ほらっ、さっさと降りろ」

「……うん、ボク、一緒にいるからね、ずっと、祐一くんのそばにいるからね」

「……ばあか」

祐一くんが嬉しそうに笑いながらそう言う。そして、

ちゅっ。

ちっちゃくボクのほっぺにキスしてきた。










その後もいろんなところを回った。ちょっと大きめなレストランで食事をして、噴水公園で少しの間ぼおっとして、ちょっとの間そこでお昼寝して……

「あゆ、ちょっと待っててくれ」

夕暮れ時の商店街。そろそろ帰ろうか、て話になったとき、祐一くんがボクの手をつかんで呼びとめた。

「……なに?」

「いいから。ちょっと、ここで待っててくれないか?」

「? うん……いいけど」

ボクがうなづくと祐一くんはすぐ近くにあったお店の中に入っていってしまった。

「……?」

ぽけっとして、その祐一くんが入っていったお店を見る。

少し高そうな雰囲気のある服屋さん。ショーウインドウにはパーティー用のドレスとかウエディングドレスとか黒のフォーマルスーツとかが飾られていて、『オーダーメイド承ります』て書かれた立て看板もある。

「……?」

もうしばらく、ぽけっとお店の閉まった自動ドアを眺めてると……

祐一くんがお店の中から出てきた。

「祐一くん、なにしてたの?」

「いや、わりい、ちょっといいからこっち来てくれ」

言うなりボクの腕をつかんでお店の中にひっぱっていこうとする。

「え? ちょ……祐一くん?」

「いいから」

「う、うん……」

なんだかよくわからないけど、祐一くんに引っ張られるような感じにボクはそのお店の中に入っていった。










「…………」

ぽけっと、ボクは目の前にあるそれを見ていた。

あのお店の中に入ってから、なんでか奥の小さな個室の中にいきなり通された。

そして、祐一くんに言われて閉じてた目をやっと開く(なんでか知らないけど『目を閉じてくれ』て言われた)と……

「……これ、ウエディングドレス……」

ボクは目の前に飾られたその真っ白なドレスを見ながらつぶやいた。

「ああ、お前のな」

「……ボクの?」

ぽけっとしながら、ボクが振り返ると祐一くんが照れくさそうに笑いながら言った。

「世界で一個だけ。お前のサイズに合わせたオーダーメイド品だよ」

「……触っていい?」

「ああ」

言われて、ボクはその目の前にあるドレスのすそをそっと手の上に載せた。

さらさらとした感触。

「……あゆ」

「……なに……?」

ぼおっと、祐一くんに視線を移しながらつぶやく。

「……高校卒業したらさ……結婚しないか?」

ゆっくりと。

本当に自然な声で、祐一くんが言ってくる。

「今すぐ二人っきりの生活ってのはできないけどさ……。しばらく、秋子さんのとこで一緒にお世話になって……。その後、二人だけで、アパートでも借りて、一緒にいよう……。二人っきりで、笑って……。泣いて……。たまに、喧嘩して……。でも、すぐ仲直りして……。それで、ずっと一緒に……」

「……祐一、くん……」

「……俺は、ずっと、お前の事、好きでいられるぞ……」

「祐一くんっ……!」

ぎゅっと。

祐一くんに、思いっきり抱きつく。

幸せの涙を流しながら。

「うれしい……嬉しいよっ、祐一くん……っ」

しゃっくり上げながら。

でも必死に思いを伝えようとして。

がんばって声にする。

「うっ……ひっくっ……。祐一くん……。祐一くん、ゆういちくんっ……!」

「……あゆ……」

くしゃっと。

誰かがボクの髪を優しくなでる。

「……まだ、指輪わたしてないぞ」

「……だって……だって、うれしいん、だもんっ……!」

「……そうだな」

すっと。

祐一くんの手が、ボクの背中に回る。

「俺も嬉しいぞ」

「……うんっ……!」

涙でにじんだ視界の中で。

祐一くんが、優しく笑ってるのが見えた。

そして。

「あゆ……」

「……うん……」

すっと、優しいキスをする。

いくら伝えても足りない想いを伝えあうように。

優しく。

長い、キスをした。










「……空、綺麗だね」

「……ま、そうかもな」

「そうだよ」

ボクは同じように星空を見上げてた祐一くんに視線を移すとにっこりとほほ笑んだ。

夕御飯を食べ終わった夜。

ちょっと祐一くんの部屋に行ったらベランダに通された。

空は雲一つなく、星と、月がきれいに輝いている。

「……指輪、ちゃんとサイズ合ってたみたいだな」

祐一くんがボクの左手を見ながら言う。ボクもつられて左手の薬指に視線を移す。

ボクの薬指には、小さな指輪がはめられている。

小さな銀色の指輪。真ん中には、ガーネットの宝石が埋め込まれて光っている。

「ちょっと大きいけどね」

「でも、内緒にしながらサイズ調べんの大変だったんだぞ」

「でも、ボクは嬉しかったよ」

「……そりゃよかった」

ぼやいて、祐一くんがまた星空に視線を移す。

綺麗な星空が、どこまでも続いている。

「……祐一くん」

祐一くんの肩にそっとよりそいながら言う。

「……なんだ?」

「……ずっと、一緒にいようね……」

どんな時間がたっても……

何回季節が巡っても……

何回春が来て、夏が来て、秋が来て、そして、またこの冬がやってきても……

「ずっと、そばにいようね……」

「……当たり前だ」

「……うん……」

にっこりと、最高の笑顔で笑って、

月明かりの下で、そっとキスをした。

ほんのり甘い、

大好きな人の、

幸せなキスの味がした。









……大好きだよ、祐一くん……













<FIN>









やっと終わりました、『Kissの味ってどんな味?』。『連載モノを書こう!』と心に決めてろくなプロットも考えずに書き始めてしまったこの作品。なんちゅうか、ものすごく書くのに苦労しました。

それと、全ヒロイン出すっぽいこと最初の後書きで述べたんですけど……

出たヒロインは結局名雪とあゆだけ。他真琴なんか一緒にすんでる設定なのに顔すら出てこない。いや最初は書くつもりだったんですけど、物語を考えてるうちにだんだん出る場面がなくなっちゃって……

結論、できないことは言うのはやめましょう。て感じですね。

とりあえず、少し長くなりましたが、この連載モノも終了です。今度はどんな物を書こうと考えてますけど、またちまちまと短編でも書くんじゃないかと思ってます。長編はちゃんと中身考えてから書きます、はい。

それでは、またお会いしましょう。

Written By 東方不敗