KISSの味ってどんな味? 5

Prezented By 東方不敗








「ぁ……」

そっとやわらかい感触の残った唇を放すと祐一くんがじっとボクの事を見てた。

「……あゆの唇って、やわらかいよな」

意地悪そうに唇を押さえながら祐一くんが言う。うっ、そ、そんなことないよ……

「なんだかたいやきの味がするし」

「そ、そんなことないもん……」

ぷいっとそっぽを向きながら言う。うぐぅ、顔熱い……

「いーや、味がしたぞ。しかもこしあんだ。きっと朝御飯にでも盗って来たんだな」

「祐一くん、人聞き悪いよっ! それにボクたいやき盗ったりなんかしないもんっ!」

もらったりはするけど……

「HAHAHA、なに言ってるんだあゆ、もしそうだったら俺達は出会う事はなかったじゃないか」

「うぐぅ、あの時は、お金がなかっただけだもん……。それに、そんなアメリカンテイストに言わないでよ……」

「……こいつはびっくり」

「うぐ?」

「あゆがアメリカンテイストなんて言葉を知ってるなんて」

「……もしかしてバカにしてない?」

「いや、驚きを素直に表現しただけだ」

「うぐぅ、祐一くん意地悪だよぉ!」

涙目になって叫んでやる。うぐぅ、どうせボクはバカだもん、食い逃げ少女だもん、あゆあゆだもん。

「あー、ちょっと言いすぎたな、悪かったあゆあゆ」

「……本気で思ってるの?」

「ああ、心の底から思ってる」

「……じゃあ、今回だけ、許してあげるよ」

「ありがとうあゆあゆ」

「うぐぅ、あゆあゆじゃないもん……」

「じゃあ新しいあだ名でも考えようか」

「考えなくていいよっ!」

「そうだな、食い逃げ魔人うぐぅブラウンなんてどうだ?」

「ボクうぐぅでもないし食い逃げ魔人でもないもんっ! だいたいなんだよ最後のブラウンって!?」

「茶色を英語で言う言葉」

「なんで茶色が出てくるの?」

「……なんでって……」

祐一くんがボクの頭に手を伸ばしてくしゃっと髪をなでてきた。くすぐったいけど、ちょっと気持ちいい。

「お前の髪の色、茶色だろ?」

「……そういうこと……。でも……そんなあだ名やだからね」

「わがままだぞあゆ」

「そんなことないよっ、祐一くんがムチャクチャなんだよっ」

「はいはい」

祐一くんが笑いながら言って、ボクの頭からそっと手を離す。

「さて、そんじゃ俺は授業に戻るか」

「え……行っちゃうの?」

言ってから、あわてて口をふさぐ。でも遅かったみたいで祐一くんが人の悪そうな笑みを浮かべながらボクを見ている。

「なんだ、一緒にいて欲しいのか?」

「そ、そんなこと、ない、もんっ……」

「はっはっはっ、恥かしがるなあゆ。顔真っ赤でそんなこと言っても説得力ないから」

「うぐぅ……」

うつむきがちになりながらうぐぅ、って祐一くんの顔を見る。祐一くん、やっぱり意地悪だよ……

ぽふっと祐一くんがボクの隣に腰を下ろした。

「祐一くん?」

「ま、わざわざ戻るのもバカらしいしな。授業終わるまでここにいるか」

あ、顔赤い。てれてるみたい。

ふふっ、変な祐一くん。

「……うんっ、そうだね」

「……っと、あゆ。そろそろミルクぬるくなってきたんじゃないのか? ほれ」

「うんっ」

祐一くんが出したカップを受け取り口をつける。ずずっと口をつける。

「……あったかい……」

「そっか、よかったな」

「うん……」

時々ふ〜って息をかけてミルクを冷ましながら、ゆっくりと口をつけていく。

「……おいしいよ、祐一くん」

「そいつは良かったな」

そう言って、ぐいっとボクの肩に手をやって引き寄せてくる。

「わっ……ゆ、祐一くん……んっ」

驚いて祐一くんの顔を見た瞬間キスされた。

ちょっとの間キスをしてから、祐一くんが唇を放す。そしてにこっと笑うと、

「ミルクの味だ」

「当たり前だよ……」

「ついでにあゆの味がする」

「ボクの?」

「ああ」

「うぐぅ、なんか恥かしいよそれ……」

ちょっとうつむきがちになりながら言う。でも、なんか嬉しい。

なんだか眠くなってきちゃった。体があったまったからなのかもしんないし、ちょっとつかれたのかもしんない。

「……ねえ、祐一くん」

「ん?」

「……このまま、寝ちゃっていいかな……」

祐一くんの肩に頭をよせながら、ちょっと甘えるみたいに言う。あ、祐一くん顔赤いや……

でもきっと、ボクの顔も真っ赤になってるんだろうな……

「寝たら変な事するぞ」

「うぐぅ……しちゃやだよ……」

「ついでに額に『肉』って落書きする」

「祐一くん、それじゃ子供だよ……」

「何を言う、おれはいつも子供だ」

「……でも、眠いから寝ちゃうね……」

とろんと目を閉じかけながら言う。

「……やれやれ」

ちゅっ。

「ぁ……」

唇に触れるくらいのキス。祐一くんはそっと唇を放すと、笑いながら、

「おやすみ、あゆ」

「うん……おやすみ、祐一くん」

暖かな木漏れ日と――

一番大好きな人の笑顔に包まれながら――

そっと目を閉じる。

なんだかとってもいい夢を見たような気がした。











「うぐぅ、祐一くんのバカッ!」

夕暮れの商店街を歩きながら横を歩いている祐一くんをにらみつける。

「俺そんな悪い事したか?」

「ホントに書くなんて酷いよっ! 名雪さんが言ってくれなきゃボク絶対笑われてたよっ!」

あの後、祐一くんに起こされて保健室を出てから名雪さんと会って、一緒に帰る事になった。

それで、その時に名雪さんがボクの顔に落書きがしてあるって言ってくれたんだけど、名雪さんが言ってくれなきゃ全然気づかないで商店街を歩くハメになってた。

「祐一が悪いよ。女の子は、そういうことすごく気にするんだからね」

祐一くんの隣を歩いてた名雪さんがちょっと怒った風に言う。

「いやでも、すぐそばで幸せそうに寝てる奴がいたらそういうことしたくなるだろ?」

「……今度からわたし祐一の前じゃ寝ないようにするよ」

「それは無理だな」

「ボクもそう思うよ」

「二人とも即答するなんてひどいよ〜」

「やかましい。お前にそんなことできたらこのうぐぅだって空を飛ぶ事が出きるぞ」

「うぐぅ、ボクうぐぅじゃないもん……」

「……祐一、あゆちゃんいじめたらダメだよっ」

「いや、からかってるだけだ」

「うぐぅ……」

「でも、ダメなんだよっ」

「わかったわかった。悪かったってあゆ」

「……たい焼き」

「イチゴサンデー」

「お前は関係ないだろうが」

ぴしっと名雪さんの頭を祐一くんがデコピンする。

「祐一、痛い……」

「うるさいだまれ。……ところであゆ、今金無いんで勘弁してくれないか?」

祐一くんが申し訳なさそうに拝むようなポーズをする。

「なんで?」

秋子さんからお小遣いもらったばっかりなのに……

「いやちょっと買いたい物があるから」

「……じゃあ」

「キスってのはどうだ?」

ぽんっとボクの肩に手を置きながらにまーっと笑って言う。

「ゆ、祐一くんっ」

顔が熱くなるのを感じながら言う。だいたい、保健室で、その、キスしたばっかだよっ。

「ダメか?」

「ダメだよっ」

「じゃあわたしにキスしてくれる? 祐一?」

「おう、別に良いぞ」

「もっとダメだよっ! 祐一くんも了解しないでよっ!」

「あゆちゃん、けちだよ」

「けちじゃないよ……。それに、祐一くんは、その、ボクの……こ、恋人だもん」

「わたしは別にそれでも全然OKだよ♪」

「ボクはOKじゃないよっ!」

「あゆ、さっきから叫びっぱなしでつかれないのか?」

「誰のせいだよッ!?」

「さあ?」

「誰だろうね?」

「うぐぅ……。でも、祐一くんは……その、ボクのだもん。だから……だ、ダメなんだよ」

ぐいっと祐一くんの腕にしがみつきながら言う。

「なああゆ、言ってて恥かしくない?」

「……恥かしいに、決まってるよ」

でも……こうでもしないと名雪さん絶対引き下がってくれないもんっ。

「うー……、でも、わたしあきらめないよ。絶対祐一を取り戻すんだから」

「取りもどすって……人聞き悪いよ名雪さん」

「別にそんなことないよ」

そんなことあると思うけど……

「でも……ダメだもん、祐一くんは、ボクのだからねっ」

「俺は物か、コラ」

「それに、ボクは、祐一くんの事、大好きだから……」

「わたしだって、大好きだよ」

「うぐぅ」

「あゆ、押しが弱いぞ」

「うぐぅ、だって、他に言える事なんかないよ……」

「何言ってんだ。『世界で一番愛してる』とか『なんだってされていい』とか、いろいろあるだろうが」

「そんな恥かしい事言えないよっ!」

顔が熱くなるのを感じながら叫ぶ。だいたい、『なんだってされていい』なんていったらホントにナニされるかわかったもんじゃないよっ!

「と、とにかく、祐一くんはあげないからねっ!」

ぎゅっと祐一くんの腕に抱きついて名雪さんに言う。

「いやでももらうからいいよ」

「どうでもいいけど俺の選択権はないのか?」

「だって選択権なんかあげちゃったら絶対祐一くんあゆちゃんの方選ぶでしょ?」

「いやそりゃまあ」

「だから、ダメなんだよ」

「どういう理屈だそりゃ……」

「……祐一くん、浮気なんかしたら許さないからね……」

「いやしかし、そんな貧相な体じゃ浮気したくなるかも」

「おっきくなったもんっ!」

「ちょっとだけな」

「うぐぅ……」

結局その日はたい焼き屋さんにもよらないで家に帰った。

でもなんだかすごく疲れた。

なんだか日記でもつけたくなる一日だった気がする。











とんとん。

「あ、はいっ」

ノックの音に机から顔を放すと祐一くんがひょっこりと顔を出した。

「まだ起きてたか?」

「うん、起きてたけど……どしたの?」

「いやちょっとな……って。なんだ、なんか書いてたのか?」

祐一くんが机の上のノートを見つめながら言う。ボクはうんってうなづくと、

「日記つけてたんだ」

「三日坊主だな」

「うぐぅ、即答……」

「お前に日記なんて無理だ」

「やってみなくっちゃわからないよ」

「……いやそりゃそうなんだが……。まあいいか」

「そうだよ。……で、何の用?」

「ああ、明日さ、学校ないだろ? だからどっか行こうと思って」

「え? なんで?」

だって今日は金曜日……

「あのなあ、明日は祝日だろうが」

「へ? そうだっけ?」

「建国記念日で休みだ」

「あ、そうなんだ……。で、どっか行くって……」

「ああ」

「……二人っきり?」

「もち」

「じゃ、行くよ!」

「ああ。じゃ、明日メシ食ったら二人で行くから」

「うん……。どこ行くの?」

「秘密。そっちの方が楽しみだろ?」

「……そうかな」

「ああ、そうだ」

そう言うと祐一くんはボクの頬をそっとつかんだ。そして、

「ん……うっ……」

優しいキスをした。

「それじゃ、お休み、あゆ」

「うん……お休み、祐一くん」

ちょっと顔を赤くしながら、お休みの挨拶をする。

明日……デートかあ……

一人っきりになった部屋の中でにへら〜っと笑う。

うぐぅ、明日が待ち遠しいよ……











<続く>

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みなさんお久しぶり第5話です〜。

微妙にネタにつまり始めたりしてます(笑)。でも頑張ります。眠いですけど。

さて、明日のデートは一体どこにいくんでしょう? それは次のお話で……

それでは〜

Written By 東方不敗――