名雪DE嬉し恥ずかしエンドレス





 ふたりの始まりはいつもくちづけ。
 名雪が苦しそうにするぐらいに抱きしめて。俺たちは唇を重ねる。

 最初は触れるだけ。

 ほんの少しだけ開かれた唇から覗く舌。それがまるで俺を誘っているようで目を離
せない。
 少し触れ合っただけなのに、どうしようもないほど名雪の唇は柔らかった。
 俺の背中に回された名雪の指が、ぎゅっと俺の服を搾る。だけどもう、その指には
いつもの力は込められていない。

「ん……」

 ただの呼吸かそれとも吐息か、どちらかは分からない。だが、名雪のそんな小さな
声さえ、俺にとっては愛撫に等しい。腕の中にいる女の子が自分の行為に確かに反応
を返してくれる。それはやっぱり悦びだろう。

 俺は名雪の下唇を自らの唇で挟み込む。そうして固定して、先を尖らせた舌で二、
三度突く。温かいゼリーのような感触が楽しくて、俺はさらに名雪の唇を嬲る。今度
はゆっくりと下唇の形をなぞるように左右に。

「んんっ」

 だが、名雪はお気に召さなかったようだ。少しだけ不満そうな声を上げると首を捻
るようして俺が折角捕まえた唇を離してしまう。多少、力を込めようとも粘膜同士
だ。捕まえきれるものではない。
 俺の脇の下から回された名雪の両腕が、俺の背中から頭に移動する。
 少しだけ後ろから押された。

 その反動で、こつっ、と二人の額がくっつくと、

「ん」

 名雪が少しだけ顎を逸らした。
 どうやらお姫様はちゃんとしたキスがお望みのようだ。
 俺は少しだけ首を傾げると、本格的に名雪の中に侵入した。舌先で閉じられた唇を
開くと、名雪の前歯を軽くノックする。これは二人だけの合図。恥ずかしがり屋の名
雪の舌を引っ張り出すための合図だ。
 日によってはなかなか応じてくれない事もあるが、今日は存外に素直に応じてくれ
た。

 絡み合う互いの舌。

 まるで上手く手を握り合えないかのように、いや、よりしっかりと握り直すかのよ
うに互いを絡めとろうと動きあう。



 俺が始めて名雪をこういう関係になった時、何よりも驚いたのはその温度だった。
 俺だって健康な男だ。女の子を抱く想像なんて、それこそ数えられないくらい繰り
返してきた。

 触れたら柔らかいんだろうなぁ。
 気持ちいいんだろうな。
 どんな反応が返ってくるんだろう。
 どういう声を上げてくれるんだろう。

 その柔らかさや相手の反応を想って、自らを慰めたことだってある。

 だが。
 やっぱり本番は何もかもが違った。

 思っていた以上に柔らかかった部分もある。思っていたより固かった部分もある。
 そして何よりも違ったのは、いや、想像の中にまったく無かったのは、相手の体温
だった。考えてみれば、相手も人間なのだ。当然の如く体温があるに決まっている。
だけど俺の想像の中の女の子には体温が無かった。胸の柔らかさやどんな肢体をして
いるのかにばかり気を取られていた俺は、相手から伝わってくる体温の心地よさとい
うものを知らなかったのだ。



 そのたまらない体温がパジャマ越しに伝わってくる。
 名雪は体温が低い方だと言っていたが、今はもうびっくりするほど温かい。

 瑞々しい唇からは、穏やかな温かさ。舌に伝わってくる口内の温度。触れてもいな
いはずなのに、名雪の頬から放射される熱。そしてどんな暖房器具だってかなうはず
のない名雪の体のぬくもり。

 名雪の腕が首の後ろに回される。
 こうなるともう、名雪は暫くは放してくれない。しかし困ることなんて何もない。
俺だって放すつもりなんてないんだから。



 ぬろぬろと絡みあっていた舌が離れる。一端仕切り直しかと思ったが、名雪はすぐ
に俺の唇に噛み付いてきた。歯を使わない唇だけの柔らかな噛み付き。ちょうどさっ
きとは逆の状態だ。俺の下唇が名雪に咥えられている。

 つつー

 捕まってしまった下唇の上を名雪の舌が動く。まるでなめくじが這うようにゆっく
りと遊ぶように舌先が左右に振られる。
 ゾクッとした寒気が背中を走った。背中を通して首に回されている名雪の腕にその
震えが伝わったのだろう。目の前にある名雪の瞳が開かれると悪戯っぽく揺れる。
 首の後ろで組まれていたはずの腕が何時の間にか解かれていて、その手が俺の背中
を撫でる。悔しいくらいに寒気が走った場所と重なっていた。

 俺は自由になっている上唇を名雪の唇に被せていく。そうして俺の下唇を捉えてい
る名雪の唇の隙間に強引に舌をねじ込み、小ぶりな歯を突く。
 その合図に答えた名雪が、俺の唇を開放する。そしてまた絡み合う舌。
 俺は少しだけ深く侵入する。名雪の舌の裏側に入り込むように。

「んふっ」

 名雪が驚いたように舌を引っ込める。名雪自身は明言した事はないが、どうやら舌
の裏側を弄られるのには弱いようだ。それを俺は知っていた。

「あ、やっ」

 名雪の両手が俺の胸に添えられる。体重をかけまいと肘をついていた体勢だったか
ら、名雪の腕が俺を押し返そうと二人の間に入るのは簡単だった。
 俺は名雪の体温を敏感に感じている。今日はもう大丈夫だろう。初めから体重をか
けてしまう訳にはいかないが、ある程度盛り上がってくると名雪はむしろ重みを感じ
る事を悦ぶ。
 今までの経験からいって、大丈夫だろうと思わせるだけの熱を名雪の身体はすでに
持っていた。

 俺は体重をかける前に、少しだけ内股になって閉じられている名雪の膝を自らの膝
で割り開くことにした。
 女の子の自然な防御反応なのか、それとも名雪特有のものかはわからない。だが、
ちょっと強引にでも膝を割ってやり、内股に膝を侵入させてやると途端に名雪はおと
なしくなるのだ。
 名雪の上半身を抱きしめたまま膝を立てるのはちょっと苦しい。第三者から見れ
ば、俺だけ妙に腰を上げていて、みっともなく見えただろう。当然のことながらそん
なところを見ている人間はいないが。
 俺は手早く名雪の抵抗を取り去る為に、体を押し返そうとしている名雪の行動を利
用して少しだけ体を起こす。

 舌の裏側に深く入り込ませていたものを引き抜くと、滑らか過ぎる名雪の粘膜が脳
を刺激する。

 名雪が俺を押し返したのと、俺が名雪の足の間に膝を侵入させたのは同時だっただ
ろうか。
 反射的に閉じられる名雪の膝をものともせず、俺は膝を割り込ませる。俺の膝はす
でにベットに触れており、それこそ俺の体ごと完全に押しのけないと名雪はもう足を
閉じられない。むしろ俺の膝を挟むこむせいで、返ってがっちりと抜けなくなってし
まっている。
 俺はそれを確認すると、少々強引に膝を押し上げ始めた。
 上にあがる俺の膝に合わせて、名雪の体が上に逃げようとする。が、俺は名雪の腰
を押さえ込んで阻止することにした。

「やだよぉ」

 名雪のか細い声。俺の意図を察したのだろう。
 だけどここまでくれば、むしろ男を煽る声にしかならない。そしてついに俺の膝は
完全に上まであがった。そう、名雪の股間に押し付けられる格好だ。諦めたように、
名雪の太ももから力が抜ける。俺はその瞬間を逃さず、名雪の足の間に体ごと入り込
んだ。

「……強引だよ。祐一」

 名雪の拗ねた声。
 わき腹から腰にかけて名雪の太ももを感じながら俺は答えた。

「嫌なのか?」
「そーいう言い方ずるいよ」

 ふい。

 名雪が横を向く。暗闇の中でも映える白い肌。その肌が赤く染め上げられている。

 すっと、俺は手を伸ばし、名雪の首筋を撫でた。

「ひゃっ」

 びっくりしたように体を震わす名雪。

 それなりに出来上がっているようだ。
 今日は始める前のスキンシップが長かったせいもあって、名雪の進み具合が早い。
 元々首筋が弱い名雪だが、ここまで過敏に反応するところを見るとそう考えていい
だろう。俺はそこまで確認すると、徐々に体重をかけていく。強引に入った足の間か
ら名雪を抱きしめるように。
 強引に股を開かせたとはいえ、互いの敏感な部分が触れ合うほど深くは入り込んで
いない。

 丁度、名雪の胸が枕代わりだ。

「うー、また。わたしの胸、枕か何かだと思ってる?」

 そんな名雪の声に、つい笑ってしまう。
 まったく同じ事を考える事も無いだろうに。

 俺は名雪の胸に頬を押し付けると、その感触を堪能した。
 陸上をやっているせいか、贅肉の少ないスラリとしたスタイルの名雪。だが女の子
を象徴するその部分は、充分に柔らかかった。昔の俺が想像していたよりは固い感じ
がしたが、それは実が詰まっていて、という感じで特に不満はない。というか他に比
較対象を知らないから、女の子の胸っていうのはこういう感じが普通なのかどうか知
りようがない。

 トクトク
 トクトク

 そんな……少しだけ早い、軽い感じの名雪の鼓動。
 柔らかな、だけど確かな強さの弾力で押し返してくる名雪の胸は、そんな音を伝え
てくる。なんとなく落ち着いてしまうような感覚。
 だが、俺の腰を挟むような太もも。たまらない柔らかさを伝えてくる胸。まるで名
雪に包まれているかのように全身に伝わってくる体温。拗ねたような、だけどどうし
ようもないほど可愛らしい顔をした名雪。俺の体温は上がる一方だった。

「いいもん」

 名雪が何を口にすると、一瞬だけ太ももの感触が消え去った。だがすぐにぐっと腰
を押されるような感覚。多分、名雪が俺にしがみ付くように腰の後ろに足を回したの
だろう。確かめるべく後ろを振り返ろうとした瞬間。今度は頭を押さえ込まれた。

「うぷっ」

 突然、押さえつけられたものだから変な声が漏れた。

 うぐぅ。

 つい出てしまいそうになる、誰かさんの口癖。

「……あの、名雪さん」

 くぐもった声しか出ない。
 当然だ。俺は名雪に蟹バサミを喰らった挙句、胸に押し付けられるようにされてい
るのだから。

「わたしだって、いつまでも子供じゃないよ。男の子の方が先に我慢できなくなる
の、知ってるんだから」
「ふぁ?」
 俺は押さえ込まれたまま、名雪の方を見た。言われた事の意味がわからなかったの
だ。
 どうやらそれは名雪に伝わったらしく、言葉を付け足してきた。

「このまま、一時間でも二時間でもこうしていればわかるよ。ゆーいち、そこまで我
慢出来る?」

 う。

 仰る事が理解出来ました。

「悪かった。あやまる」

 好きな子の胸に顔を埋めたまま、肝心なところに刺激がない状態で一時間。それは
もう立派な拷問だろう。

 俺はすぐさま白旗を揚げた。

 もちろん、両手が自由なのだから、名雪のわき腹でもつつけばすぐに戒めを解くこ
とは出来るだろう。だが、そんなことはしない。する気も無いし、する必要もない。
 こんなバカなやり取りも、俺と名雪のスキンシップだからだ。

 そうして、

「もう少し優しくして」

 と、胸を押さえて瞳を閉じた名雪と改めてのくちづけを交わした。





 今度は本当に本格的なキスだった。

 今までで一番深く口内を犯し合う。唇をなぞり、歯を突付き、歯茎を刺激する。ま
るで力比べをするように舌を押し合い、そして唾液を絡ませあう。名雪も慣れて来た
のだろう。段々と舌の動きが活発になってくる。今までは俺の侵入を待っていること
はあっても、自分から舌を伸ばしてくることは無かったのに。

 改めて首に回された名雪の腕に力が入る。もう、放さないとばかりに。俺は酷く熱
を持っている頬を撫でる。本当は胸に手を伸ばしたいのだが、キスをしながらだとど
うしても散漫になってしまう。慣れていない事もあるのだろうが名雪の時間をかけた
キスが俺の脳を溶かしてしまうだろう。中途半端な酸欠に陥ってしまえば、もう頭な
ど回らない。

 ぴちゃぴちゃと音がするぐらいの唾液の交換。伝わる弾力。まろやかな体温。どれ
も俺の思考を奪うのには充分すぎる。

 攻守交代とばかりに俺の唇を押しのけて名雪の舌が入ってきた。迎え入れる俺はふ
と、いたずらを思いつく。
 二、三度重ね合うと、俺は逃げるように舌をひっこめた。慌てて、というほどでも
ないが、追うようにさらに名雪の舌が深くまで来る。
 俺はやんわりと名雪の舌を唇で挟む、そして。

「んんんっ!!」

 思い切り吸い込んだ。
 まるで、通りの悪いストローでジュースを吸い上げるようにかなりきつめに。
 逢瀬を重ねた結果だが、名雪はこの舌をひっぱられるというのに異常に弱い。これ
をやると名雪は思い切り肩に力を入れた後、完全に脱力してしまう。
 そんな名雪の反応を見ても、俺はそれほど気持ちいいものとも思えず、一度何が気
持ちいいんだと聞いた事があった。名雪は口で説明するより、と俺の舌を思い切り
吸った。
 痛みを覚えるぐらいに強く吸われると、舌の付け根がぴりぴりとしてやばいぐらい
に気持ちがいい。なんというか大事なものが引きずる出されるというのか、舌の根本
から咽喉元にかけてごっそりと持っていかれそうというか……上手く言えないが、か
なり効いたのは確かだった。

 俺の吸う力は名雪より強いだろう。

 だから、名雪が感じている感覚を想像して身震いしてしまう。いっその事、指を入
れて摘んでひっぱってやろうかとさえ思う。もっともそれでは幾らなんでも痛みが先
行してしまうだろうが。

「んんっんっ」

 鼻にかかった甘えたような声が、俺の耳朶を叩く。

 カリカリと背中に爪を立てられ、名雪の指が堪らないといった風情で動き回る。本
当に爪を立てるというものではなく、俺のパジャマをわざと引っかいている感じだ。

「ふぁっ」

 俺は名雪の舌を開放するとため息をついた。これは幾らなんでも長時間続けられる
ものでもない。

「ふあぁ、はぁはぁ」

 名雪も快感に強張った身体をほぐすように肩で息をしながら、ぽやんとした瞳でな
んとなくこちらを見ている。俺は邪魔になってきた毛布を足で後ろに押しやる。
 と、ごそごそと名雪も動いた。どうやら布団を押し退けるのを手伝ってくれるらし
い。足で蹴飛ばすようにして布団と毛布をベットの上から追い出す。

「ゆーいちぃ、もう一度〜」

 名雪が再度、キスをねだる。
 本当に名雪はキスに弱い。くちづけが好きだと言い換えてもいいだろう。正直な
話、俺のキスが上手いとは思えない。名雪がこれだけ感じでくれるのは何よりも本人
が好きなんだろうと思う。枕に頭を預けたままの名雪の視線がゆらゆらと俺の顔の
上、瞳と唇のあたりを行ったり来たりする。

「ほら」

 と、俺は左手の人差し指で名雪の首筋、頬、そして唇となぞる。宥めるつもりだっ
たのだが、名雪は予想外の行動に出た。俺が唇から指を離そうとした時、名雪がまる
で餌に飛びつく魚のように食いついてきたのだ。

 そのまま指先を吸い上げられる。

 ぬるっ、と指が吸い込まれていく。それは擬似的なフェラチオのようで酷く興奮さ
せられる光景だった。指が浸された唾液の海は温かく、ここに自分のモノが吸い込ま
れたらと思うと……。

 すると俺の考えを読んだ訳でもないだろうが、両手を重ねるように俺の手に添える
と、熱心に指に舌を絡めだした。指先というのは神経が集中している部分だ。それだ
けに敏感でもある。が、普段から何かに触れることになれている部分でもあるから、
刺激には強いとも言える。
 不意に、深く咥えられる。唇の内側の粘膜が、普段あまり触れられない指と指の間
を舐めていく。
 それはくすぐったいような気持ちいいような不思議な感覚。指の股を舐め上げられ
た時には、くすぐったくって震えてしまった。
 瞳を伏せて―――多分、目を合わせるのが恥ずかしいのだろう―――名雪がさらに
深く飲み込もうと咥えなおしてくる。

 一方的なままでは申し訳ない。なんとなくそう思い、俺は手を返す。手のひらが上
に向くように。しゃぶられていたのは人差し指一本だが、中指を追加する。一瞬驚い
たように目を開いた名雪だが、指が増えただけだと分かるとまた目を閉じた。
 今度は2本の指が飲み込まれていく。折り曲げられた薬指に唇がつくほど飲み込ま
れるのを確認すると、俺は指を躍らせた。

 前歯の裏側奥。上顎のあたりをすりすりと刺激する。あまり知られていないがこの
あたりはかなり敏感で、基本的にはくすぐったいのだが、それだけはない微妙な感覚
が堪らない。なんというかじっとしていられない刺激なのだ。
 そんなところを弄られるとは思わなかったのだろう。名雪が驚いて身をひく。と
いっても頭を枕に預けたままなのだから、逃げられるものではない。ばたばたと名雪
が身体を揺する。暴れているといってもいい。くすぐったくてしょうがないのだろ
う。
 だが、半分以上俺が圧し掛かっているような体勢ではどうにもならない。俺は存分
に名雪の口を犯す。上顎に指を這わせ、頬の内側を嬲り、そして舌と戯れる。

 俺は、空いた右手で名雪のパジャマに指をかけた。
 一列に並んだボタン。止めるのには両手が必要だが、外すだけなら右手一本です
む。胸元のボタンに触れた時に、名雪が気がついたようだが特に抵抗はない。人差し
指と中指―――ちょうどしゃぶられている指と同じだ―――をパジャマの隙間に滑り
込ませると、親指を立ててリズミカルに外していく。

 照明は落とされたままだが―――

 それでも嫌味なぐらいに白い肌が映えた。
 それこそ本当にシミ一つなく、滑らかな肌。磁石に吸い寄せられる砂鉄のように、
俺の瞳はその白から目が離せなかった。
 ブラジャーはつけていない。そのせいで、少しだけその膨らみも確認できる。
俺を魅了してやまない、柔らかな丘だ。

 もっと見たい。

 それは当然の欲求だった。

 が。
 名雪は、俺の手に添えられている腕を上手く使って、ずり落ちてしまいそうなパ
ジャマを見事に肘のあたりで押さえ込んでいた。



 何もそんなに器用なことしなくても。



 ついついそんなことを思ってしまう。
 女の子は時々、びっくりするぐらい器用な事をする。小学生の時、服を着たままで
見事に体操着や水着に着替えるという魔法みたいな事をしていた子の事を思い出し
た。



 恐らく俺の指を間違って噛まない為だろう、歯の根を合わさないように健気に口内
を広げている。
 両手を胸元に引き寄せ、ぴくぴくと身体を震わせている名雪は、

「……なんだか、おしゃぶりをしてる赤ちゃんみたいだな……痛っ」

 言った途端に噛まれた。
 もちろん、本気ではない。実際には痛みなどほとんど感じられないレベルだった。

 コンッ

 とりあえず報復。
 空いていた右手でげんこつを落とす。こっちも当たり前だが軽く、だ。

「う〜。どうして叩くの」
「お前がいきなり噛んだりするからだ」
「祐一が悪いんだよっ。おしゃぶりしてる赤ちゃんだなんて」

 俺は取り合わずに、名雪の唾液に濡れた指を自らの口元に持っていく。

「わ。わっ。ダメ。ダメだよっ。祐一っ」

 自らの唾液に濡れた指先を目の前でしゃぶられるという危機を敏感に察知すると、
名雪は飛び上がるように腕を伸ばし、押さえ込む。

「どうした?」
「わかってる癖に」

 もちろん、分っている。ついでにいうとそういう趣味はあんまりない。どうしてこ
んな事をしたのかというと当然……

「いい眺めだ」

 しみじみを言ってみる。
 暗い部屋の中とはいえ、もう随分と長い時間、暗闇の中にいるのだ。いい加減目も
慣れてくる。それにこの部屋は暗室でもなんでもない。普通の部屋だ。カーテン越し
にでも外の街灯は多少なりとも明かりを供給するし、目覚まし時計は蛍光塗料がぼん
やりと光っている。
 もちろん、どれも視界を完全に確保するようなものではない。が、今は充分だっ
た。

 前がはだけられたパジャマから覗く双丘は、はっきりと認識出来る。お椀を伏せた
ような実に理想的な形だ。ほんの少しだけ顔を覗かせている頂きは、小さめで、だけ
どツンと自己主張していた。
 女性が扇情的な裸体を晒している雑誌は、基本的に見てくれのいい女性ばかりだ。
だから、変なところで現実的なところのある俺は期待などしていなかったのだ。だ
が、初めて名雪の胸を目にした時、その認識を改めた。それこそ俺にとっては、これ
以上のものは無い、と思わず口走ってしまいそうなくらい魅力的な膨らみだった。
 当然の如く誰にも荒らされたことのない胸を、自分の好きに出来るのだと思うと我
慢など出来るものではない。

「え?」

 俺の呟きに反応したのだろう。名雪がなんだろうといった感じで言葉を返す。そし
て俺の視線を辿ると。

「わっ」

 朝もそのくらいで反応してくれたらなぁ、と思ってしまうような反応速度で自分の
身体を抱きしめてしまった。

「なんで隠すかな。今更だろうに」
「そういう問題じゃないよぉ」

 胸元をかき抱き、身体を捻って俺の視線から胸を隠す。

「もう反応してたな、先っぽ」

 別に名雪に話かけているわけじゃありませんよ、とばかりに一人呟く。

「う〜〜〜」

 威嚇されるし。

「ゆ、祐一だって、凄いことになってるもんっ」

 気の毒に頬どころか首筋まで赤く染めて、名雪が言ってくる。必死の反撃のつもり
なんだろう。が、そんなものは効かない。じっと見つめられたらさすがに照れるだろ
うが、言っている本人がやたらと照れてしまっていれば効果は無い。むしろもっと見
せ付けてやろうか、などとバカなことまで考えてしまう。

 ……そういう意味では名雪の反撃は反撃にはなっていなかったのだが、自分のモノ
に意識をやったのは失敗だった。

 自分でも驚くほど、凄いことになっていることに気がついてしまったから。
 ここまで固くなったことがあっただろうか、と思ってしまうぐらいに下着とパジャ
マのズボンを押し上げている。この分だと自らが吐き出した淫液で下着を汚してし
まっているだろう。

 びくんびくんと心臓の脈動にあわせて定期的に震えている。その度に窮屈な下着の
中で苦しげに身悶えるのだ。下腹から、かぁっと沸きあがってくるような衝動は苦し
いぐらいで、ペニスも痛みを覚えてしまいそうなほど勃起していた。

「……名雪」

 声がかすれる。
 俺の変化に気がついたのだろう。少しだけ名雪が身をひこうとする、が踏み止まっ
た。そこではっきりと引いてしまっては、俺が傷つくとでも思ったのかもしれない。
名雪は優しい奴だから。

 俺は必死に衝動を押さえて、ゆっくりと名雪に覆い被さっていく。半身を起こして
身体を捻っていた名雪は、素直にもう一度寝てくれた。
 もう胸を隠すこともない。全てのボタンを外されたパジャマは名雪の身体をほとん
ど隠していない。
 服のシワ? いや違う。はっきりと勃起した名雪の乳首に引っかかって辛うじて全
てを晒すのを防いでいるに過ぎなかった。

「名雪の、勃ってる」
「祐一のだって、だよ」

 台詞は前とほとんど変わらない。
 だが、その声色ははっきりと違っていて。何よりも込められた気持ちが違う。
 俺は何故か震えてしまった腕を叱咤しながらパジャマの上着をはだける。名雪が微
かに呻き、羞恥に肌を染めた。
 目は閉じない。ただ横を向き、そしてこちらをちらちらを窺う。

 やりにくいってば。

 そんな言葉を飲み込んで。
 ついでに俺は、そのふくらみの頂きを飲み込んだ。



「うんっ」

 鼻にかかった声。俺は名雪の両脇に手をついて胸を愛撫し始める。初めは大きめに
開いた口で吸い付くのだ。温かいプリンのような感触が唇から伝わってくる。決して
乳首には触れない。すでにはっきりと自己主張し始めているから多少強くても平気か
もしれないがモノには順序というものがある。自らの唾液で濡らした唇で乳首の周り
にだけ触れる。
 そしてゆっくりと乳首を目指して唇で作ったOの字を狭めていくのだ。

「祐一、体重かけちゃっていいよ」

 名雪の言葉。そして行動。
 彼女の右手は俺の手を求めて絡んでくる。俺たちは手を握りあう。街中ではけっし
てしない一本一本指を絡める繋ぎ方。これは恋人ごとに違うだろうが、舌先で歯を
ノックするのと同じような、俺と名雪のサインだった。



 これからはふざけないで、本気で―――



 そんな意味の。
 だから、俺たちは街中では指を絡めあうことはないのだ。

 きゅっ、と握り締めあう。決して強い力ではないのに、もう二度と手放せなくなる
ような錯覚を覚えてしまう。

 顎を左右に動かすように、俺は震える胸の頂きの包囲網を狭めていく。圧力をかけ
ればかけるだけ沈み込んでいってしまいそうな感覚に唇が蕩けそうだ。そのまま名雪
の胸と一体化してしまいたい。そんな妄想を名雪の体温が運んでくる。
 そんなはずないのに名雪の胸は甘かった。女の子の匂いなのか、名雪の匂いなの
か、それとも汗なのかそれはわからない。だが、男の理性を蕩かす媚薬には違いな
い。
 乳首ぎりぎりまで唇をすぼめさせると、先端に触れる事無く引き返していく。

「はぁ」

 もしかして息を詰めていたのか、名雪の吐息がかかる。俺も荒くなってしまった息
を乳房に吹きかけながら愛撫を続けた。ゆったりとまるでフォークダンスの環のよう
にその大きさを変化させながら、名雪の様子を窺う。

 名雪は俺と絡めあった指を落ち着きなさげに動かしている。まるで少しでも重なり
合いたいとばかりに、摺り寄せる。俺の手も名雪の手のひらも汗ばんでいて、普段な
ら不快にも感じるだろうに、今は返ってそれが心地よい。がっちり握り合ってもすぐ
動かして解けてしまい、さらに密度の高い握り方を模索する。

 名雪は体重をかけてもいいと言ったが、無遠慮に体重をかけるわけにもいかない。
名雪は特に小柄という訳ではないが女の子には違いないのだから。左手は指を絡めて
いる以上使えない。俺は右手の肘をついて体重を横に反らしながら、名雪に身体を預
けていった。

 名雪の右胸の乳首は俺の口の中にある以上どういう状態かは分らない。だがちらり
と横に目をやれば、恐らく同じような状態だろうもう片方の乳首が見える。切なそう
に震えて刺激を待っているのが手に取るようにわかってしまう。俺は再び唇の環を小
さくしていく。その丘の頂きを目指して。

 ゆっくりとゆっくりと。首を軽く振るようにして変化をつけながら。そして再び肌
の色が変わる境界線。乳輪あたりで唇の動きを止める。

 しばらくの停滞。その後、俺はまた唇を頂きから遠ざけ始める。安堵ともせつなさ
とも取れる名雪のため息が聞こえた。狙っていたのはその瞬間だった。
 口唇愛撫の最大の武器は何だ? そう舌だ。俺は名雪の乳房に吸い付いてから一度
も舌を使ってない。
 したことは単純だった。

 ただ、唐突に舌を突き出しただけ。

 触られるのを期待し、そして怖いと思ってもいるだろう乳首にギリギリまで近づい
た唇がその周りから離れた瞬間。まさに名雪が気を抜いた瞬間でもあっただろう。

 突き出された舌は、固くしこってしまっていた名雪の乳首を意地悪く押しつぶし
た。

「あっ!! ふあぁぁっ」

 予期せぬ刺激に名雪ははしたない声を上げる。上目遣いで見ると、空いていた左手
で必死に口元を押さえていた。
 自分が突然、声をあげてしまったことが恥ずかしかったのかもしれない。名雪は声
を出すことに殊更抵抗があるようで、よく口を押さえる。男の俺にはわからないが自
然に漏れるのならば気にしなくてもいいのに、と思う。いや、むしろ声を上げて欲し
いとすら思う。
 水瀬 名雪という愛しい少女の名を持つ楽器を心行くまで鳴かしてみたい。そんな
欲求が俺に不意打ちのような愛撫を選ばせたのだ。

 ふるふると震える身体。

 名雪の胸は実がみっちり詰まっているような感覚を与える。が、それはある程度以
上の力を加えた時の弾力だ。今のように唇を這わしているだけでは、それこそプリン
のように頼りないほどの柔らかい感触だけが返って来る。強くしすぎて痛がらせてし
まった経験から、内部に響くほど強い刺激が行かないようにしていた。どうもそのく
らいが丁度いいらしい。
 その証拠にもぞもぞと膝を擦り合わせたいような動作を繰り返していた。名雪の膝
の間には俺の身体があるからそれは無理だが、もし無かったら間違いなく内股でもじ
もじと擦り合わせていたと思わせる動きだった。

「ふ……う」

 別に意図している訳ではないだろう。
 だが、名雪その俺の腰を挟み込むような動きは確実にペニスに刺激を加えていた。
直接的なものではない。だが、すでに開放を望んでいるモノはそんな微妙な動きでも
敏感に捉えている。もう窮屈でしょうがない。
 俺は腰を上げて前に空間を作ると、膝を立てそれを前後にずらして身体を支えた。

「名雪……」
「?」
「前から言っているけど、声、出してもいいんだからな。別に恥ずかしいことじゃな
いぞ。むしろ声を出してくれると俺は嬉しい」
 しらふだったら絶対に言えないことも、ベットの上では言える。閨(ねや)では口
が軽くなるというのは本当だ、とつくづく思う。

「は、恥ずかしいんだよ、勝手に声が出ちゃうのって。男の子にはわからないかもし
れないけど」
「俺は気にしないし、からかったりしないけどな」
 俺は名雪の答えを待たず、また乳房に吸い付いた。もちろん右胸、同じところ。

「んぅ」

 切なそうな名雪の声。そう、そういう声でもいいんだ。わざと出す必要もないけ
ど、そうやって声を上げてくれる方が嬉しい。
 そんなバカなことを考えながら、俺はさらに愛撫を重ねていく。右胸だけを重点的
に。
 丸く開いた口でじわじわと頂きを目指す。寸前のところで引き返しそれをもう一
度、先ほどと同じ手順だ。
 二度の接近の後、名雪は期待しているはずだ。乳首に触れられることを。俺は必要
以上に焦らすつもりはない。だから期待には答える。
 ただし舌を突き出すのではなく、空いている右手で左胸の乳首を、だけど。

 きゅっ

 そんな擬音が聞こえてきそうな感じで、俺は今までほったらかしにしていた左胸の
乳首を摘んだ。

「っ!!」

 名雪が声にならない反応を示す。同じタイミングで刺激される事を予想は出来ただ
ろうが、場所が予想外だ。
 先ほどよりもさらに大きく身体を震わせて反応してくれる。その素直な反応が俺を
奮い立たせるのだ。
 こりこりと摘んだままの乳首をいじめる。
「あっあっ、やぁっ」
 短い断続的な悲鳴。乳首とかクリトリスとかはついつい摘んでしまいたくなる部分
だが、名雪は摘まれるのはあまり好きではないようで望んだような反応を引き出せな
い。
 もっともそれはわかっていた事だから落胆はない。

 コロコロと乳首を転がした後、俺は体内に押し込むようにじんわりと押しつぶして
いく。

「んーーーっ」

 息が詰まったような名雪の反応。
 だが、こういう事を名雪とするのは初めてではない。俺は名雪しか知らないが、逆
にいえばある程度なら名雪の身体のことをわかっているともいえるのだ。名雪は摘ま
れるのはダメ。かわりに押しつぶされるようにされるのに弱い。
 あまり強く押しつぶさないように、ゆっくりと。だけど確実に。
 名雪の乳首は自らの乳房の中に埋没していく。
 グミのような押し返しがある乳首はぷりぷりとしながら、苦しげにそして気持ちよ
さげに押しつぶされていく。
 暫く押し込めたままにして、そして開放してやる。ふよん、と反動で元に戻ると同
時に胸を握りなおす。

「ゆーいちぃ」

 甘えたような声。瞳は潤んでいて涙が溜まっているようにも見える。軽く開かれた
唇からは絶えず吐息が漏れていた。
 名雪は決して色気がある方ではない。だが、それでも桜色に染まった肌を晒して上
気した名雪は匂いたつような色気があった。

 もう遠慮は要らない。
 いや、ブレーキが利かない。

 俺は名雪のパジャマを脱がしにかかった。まずは上着。こちらの意図を察してくれ
たのか、右肩、左肩と順番に上げてくれて簡単に脱がすことが出来た。そして、ズボ
ン。大きめなサイズなのかぶかぶかで、だけどそれがまた可愛らしさを醸し出してい
る。裸になった上半身を恥ずかしそうに晒しながら、それでも名雪は抵抗する素振り
はまったくない。せいぜい腕で胸元を隠しているぐらいなものだ。
 両手を這わすようにおなかに乗せる。鍛えられ、だけど決して筋肉質ではないおな
かがひくひくと痙攣する。

 女の子のズボンやショーツを脱がす時には、お尻に引っかからないように、後ろに
伸ばすように……。

 いつか名雪が言っていたことを反芻しながら、腰を上げて協力してくれた名雪のパ
ジャマを脱がし、ベットの外に落とす。
 微かに差し込んでくる月明かりに照らされて、ショーツ一枚の名雪はなんだかすご
く神秘的に見えて。少しだけ触るのが怖くなる。が、俺ももう限界だ。
 とにかく一度出すものを出さないと落ち着くことも出来ない。体を起こし、自らの
ズボンに指をかけた時に、

「ね。祐一。私が脱がしてあげよっか?」

 さり気なく胸を隠しながら女の子座りをする名雪が、そんなことを言ってきたの
だ。

「脱がしてあげよっかって……」

 俺は戸惑った。今まで名雪がこんなことを言い出した事は無かったし、そもそも自
分の服は自分で脱ぐもんだと思っていたのだ。

「あはは。相手に脱がされるって思うとすっごく恥ずかしいでしょ」

 名雪がにこやかに言ってくる。
 た、確かに。そんなこと考えたことも無かったせいか、酷く恥ずかしい気がする。
 俺が固まっていた僅か数秒の間に、名雪はにじり寄ってきていた。人差し指がウエ
ストにかかる。

「ちょっと待て」

 慌てて止める。
 膝立ちになっていた俺とぺたんと女の子座りをしている名雪。

「あ、そっか。立ち上がってくれた方が脱がしやすいもんね」

 いや、そーじゃなくて。

 と、言いつつ立ち上がっている俺って……

 なんとなく自己嫌悪に陥りそうになりながらも、名雪がこういう事を言ってくれた
事が嬉しかった。
 何しろ、積極的に身体を寄せてくることはあってもそれ以上は無かったのだから。
やはり嬉しい。

「じゃ、脱がすね」

 俺が考え事に夢中になってしまっている間にも、名雪はズボンに指をかけていた。
名雪がわざわざ口にしたのは、やはりどこか緊張があったんだろう。ほんの少しだけ
だが、名雪の声が揺れていたような気がする。

 と、いうかパジャマごと持ち上がっているのを、名雪の鼻先につきつけているよう
な状態だったりした。

 名雪が落ち着かなさげだったのは無理もないかもしれない。俺だって、名雪の胸が
目の前にあったりしたら落ち着いてなどいられないだろう。

「って、痛たたたたっ」
「えっ、わ」

 突然痛みを訴えた俺の声に驚いて名雪が、パッっと手を放す。

「女の子を脱がす時はおしりの方に余裕を持ちながらじゃないとダメだよって、言っ
てたのはお前だろうが〜」

 名雪がパジャマのズボンをそのまま下ろそうとしたものだから、俺のモノがひっか
かったのだ。

「そっか。男の子は前の方に気をつけないといけないんだね」

 何故か感心したように名雪が頷く。

「……凄いこと言うな」
「わわわっ。今の無しっ、無しだからね祐一っ」

 ぶんぶんと手を振って、名雪が後ろに逃げる。

 その慌てが仕草が妙におかしくて。
 そして俺はなんだか、恥ずかしさが無くなった。

 壁際まで下がってしまった―――といっても最初から対して離れていたわけじゃな
いけど―――名雪の前に堂々と立つ。中途半端に脱がされたパジャマがペニスにひっ
かかるような感じになっているが気にしない。
 まるで弓矢で狙いをつけているように、名雪の鼻先に突きつける。距離は20セン
チほどしかない。

「脱がしてくれるんだろう?」

 俺は名雪を促した。
 名雪は無言で左右に視線を泳がせながら、それでもズボンに指をかけてきた。
 そして、手前に引っ張るようにしながら脱がしていく。ほんの少しだけ、名雪に脱
がしてもらうのもいいかもしれない。ふと、そんなことを思った。
 勃起してしまったモノを回避さえすれば、後は脱がすのは簡単だ。太もも、膝を
通って足首まで来る。あとは自分で足を引き抜いた。

「うう。なんか前が見れないよぉ」

 トランクスを激しく押し上げてしまっているのを目の前にして、名雪がそんな事を
呟く。考えてみれば、名雪の目の前で盛り上がった下着を晒したことはなかった気が
する。少なくとも目の前に突きつけるようなことはしたことがない。

「ありがと、名雪」

 俺は、縮こまってしまった名雪の側に膝をつくと、キスをする。鼻筋、おでこ、
頬、そして首筋。

 これでお互いパンツ一枚。ほぼ全裸に近い。

 名雪は近くにあった毛布をひっぱると胸元に引き寄せた。折角の綺麗な肌が隠れて
しまう。だが、わざわざそれを指摘することは無い。俺は肩を並べるように座ると、
腕を回し名雪を背後から抱きしめる。

「あ……」

 どこか安心したような声。
 すっぽりと腕の中に収まり俺の足の間に腰を下ろす名雪は、甘えるように体重を預
けてきた。
 俺は名雪の豊かな髪をまとめると前に垂らすと、それを待っていたのか名雪の背中
が俺の胸とくっつきあった。

 俺は髪の毛に鼻先を突っ込むようにしながら、首筋にひとつ、ふたつ、キスをす
る。
 一度目は軽く、二度目は強く。跡を残すように。

 いつも名雪が使っているシャンプー、名雪自身の体臭、そして石鹸の香り。それら
が一度に襲ってくる。

「ダメだよ。キスマーク残っちゃう」
「名雪の髪の毛は長いから、首の後ろなんて誰も見えやしないって。まぁ、明日一
日、誰かに見られるかもっ、とかドキドキしながら過ごせばいいだけだし」

 無責任な事を言いながら、もう一度。
 俺はさらに強く首筋に唇を寄せた。

 胸元まで引き上げていた毛布が、さらに肩口まで引き上げられた。前からなら一緒
に毛布に包まっているだけにしか見えないだろう。

「祐一いじ、んっ!!」

 一緒に包まった毛布の中で、俺の手が名雪の身体の上を這いまわる。
 背中、わき腹、おなか、そして胸。

 どこもかしこも、びっくりするほど熱を持っていた。

 わきの下から差し込んだ腕で、名雪の胸を揉む。もう触れるだけのようなことはし
ない。はっきりと形が変わるのが分かるぐらいに、好きに揉みしだく。

「あやぁっ、んんっ」

 名雪の胸の谷間はすでに汗で湿っていて、普段のさらっとした感触の肌とは違って
いた。
 思うままに双丘を弄んでいた俺の手に名雪の手が重なる。そして肩越しに見つめて
くる名雪。そのまま自然に互いの唇が重なる。

 俺は上の口で繋がったまま、ショーツに腕を伸ばした。

「きゃうっ」

 可愛い悲鳴。

 名雪の声が口の中で暴れるが、俺は頭を抱えるように逃がさない。反射的に閉じら
れた太ももに手が挟まれる。だが、最奥にすでにたどり着いている指先の動きを阻害
出来るものではない。

 指先に感じる僅かな湿り気。

 指先を立て、軽くひっかくような動作で名雪の形を感じる。下から上へ。
 声を殺して震える名雪。足も腕も肩も、体中を内側に向けるようにして丸くなって
いる。



 クチッ



 小さく、だけど確かに聞こえた淫音。
 俺は少しずつ、少しずつ名雪のおんなのコをくつろげていく。柔らかいというより
も頼りないとすらいえる感触の部分。足に挟まれてしまって大きくは動かせないが、
執拗に指先を上下させる。

 一本、指を増やす。

 いちいち反応を見るように、じっくりと人差し指と中指を滑らす。
 まるで父親の膝の上に座る幼子ような感じで俺に身体を預けていた名雪は、膝を抱
えるように丸くなりたがる。だが、俺はそれを阻止するように左腕で強引に名雪の身
体を起こす。膝を使って脚の間に割入った時の事でもわかるように、名雪は一度防御
を破られると実に脆い。
 逆に言えば、たとえ入り口をノックされていようとも身体を丸めていられる限り名
雪はなかなか崩れないのだ。だが、一度身体を外側に開かれるとそのまま一気に抵抗
力を失うのだ。

 腰に回した腕で身体を引き起こしてやると、案の定名雪の足から力が抜ける。
 鼻をつかって髪を掻き分け、耳に到達。耳たぶを唇で弄びながら、俺は右手を上へ
動かしていく。
 目的地は、おんなのこの一番敏感なところ。

「ひぐぅっ!!」

 下着の上からでも何となくわかる突起。そこを弄られた途端、名雪が悲鳴を上げ
る。まだ剥きあげてもいないというのに相変わらず敏感だった。
 人差し指で軽くリズミカルに、マウスホイールでも転がすような感覚で擦りあげ
る。
 膝がその度に跳ね上がり、太ももに力が入る。名雪は首を竦めて鋭すぎる刺激に耐
えているようだった。唇を噛み締め声を殺す。だが俺はそんな名雪を気にも止めず
に、ショーツのサイドから内側へ指を侵入させる。布一枚だが、外と内では別世界
だ。
 探す必要すらなく、ぬるりとした粘液が指先に纏わりつく。

「っ!!」

 下着の中に手を入れたせいか、名雪がびくりと身体を震わせて俺の手首を掴む。そ
れ以上侵入させまいとするかのように、かなりの力で。
 俺は構わず、名雪が吐き出した愛液を塗り広げていく。舌で耳を舐めまわし、左手
で乳房を弄び、そして右手の先で名雪のスリットに触れる。

「ふあっ」

 名雪の嬌声が無音の部屋に響く。夜とはいってもたいして遅い時間ではない。水瀬
家の夜は早いが、あまり大きな声を出すと誰かに聞きとがめられるかもしれない。
 だが、そんなことも気にならなくなっていた。

「もっと下着……汚したい?」

 はみはみ、と。
 耳たぶを唇と舌先で弄びながら囁く。



「……祐一……祐一」



 鳴くような名雪の声。
 肩越しに振り返った名雪の瞳は潤んでいて。俺は堪らず名雪の唇にかぶりついた。



 クチクチャ
 チュッ、クチョッ



 今までにないほど淫らな音をたてて中空で舌が絡みあう。近すぎるほど近くに互い
の顔があるのに俺も名雪も目を閉じることなく、見つめ合う。

 濡れた名雪の瞳はとても綺麗で。
 もっとしっかり見たくて顔を放す。

 が、名雪は毛布と俺の腕の中で器用に身体を回転させると俺の唇を追いかけてき
た。
 いや、唇だけじゃない。
 額や、頬、それこそ顔中にキスの雨が降って来る。

 スイッチが入った。
 という表現の仕方があるが、この時の俺と名雪はまさにそうだったのだろう。

 互いの歯が当たることすら気に止めず、深く深く舌を絡め、唾液を交換する。どち
らからともなく膝たちになると、互いに胸を合わせ顎を肩に乗せあう。
 そして双方の手が伸びる先は、唯一残った下着。

 名雪が俺のペニスを下着の上からやんわりと握ると、俺も名雪のショーツの底に指
を這わす。お互いの敏感な部分に触れられて、思わず腰がひいてしまう。だが、胸を
合わせることによって体重を預けあった俺たちは体勢を崩す事無く、性器に愛撫を施
しあう。

「……ゆーいちの凄いことになってる……」

 どこか感極まった名雪のうわ言のような言葉。
 それこそこんなに勃起したことがあっただろうかというぐらい限界まで膨張してい
るペニスの先が手のひらに包まれている。

「名雪だって」

 くにくに、と俺は名雪の底を弄る。小さなショーツの中に収まらなくなってきたの
だろう。染み出したオイルが俺の指先を汚す。
 細かく身体を痙攣させた名雪がさらに体重をかけてきた。負けずに押し返す。二人
の間で形のいい名雪の胸が変形していく。

「ゆーいちぃ」

 完全に蕩けきった名雪の声。
 名雪の左腕が首に回される。答えるように俺も左腕を名雪の腰に巻きつける。名雪
の想いに後押しされたのか、俺のペニスを包んでいる指の動きが少しずつ活発になっ
ていく。
 初めは硬さを確かめるように撫でるだけだった。だが俺のモノは名雪の柔らかな指
に包まれ、嬉しそうに首を振る。そんな俺の反応に名雪はさらに深く肉棒を握りこん
できた。

「ぬるぬるだよぉ」

 ずっと垂れ流しだっただろう先走りの液が、トランクスにシミを作っていたのだろ
う。下着ごしに名雪の手のひらに淫液を塗りたくっていく。俺は腰を突き出すように
さらなる愛撫を催促した。
 名雪の腰はというと、どうしてもクリトリスを刺激すると逃げ腰になってしまう。
だから俺は腰に回した腕で、名雪の腰を身体ごと引き寄せた。瞬間、駆け抜ける快
感。

 俺のペニスが、名雪のおへその下あたりに突き刺さっている。

 互いに膝立ちのまま体を摺り寄せると、大きく口を開けてキスをする。なりふり構
わぬくちづけ。場所なんてどこでもいい。犬が大好きな主人の顔を舐めるように、唇
だろうと頬だろうと顎だろうと押し付けていく。
 その間にも、俺は名雪のクリトリスや大陰唇を嬲る。名雪も今度は頑張って腰を引
かない。そして俺も引かせない。
 お返しとばかりに下着ごしに先端ばかりを弄っていた手が、ペニス全体を握り締め
てくる。そればかりか、ペニスを逆手に持ったまま敏感な先っぽを自らのおなかに擦
りつけように動かしだした。

「うっ」

 直接ではないだけ、刺激は一段緩やかだ。だが、すべすべとした名雪の下腹部の感
触は凶器そのもの。
 腰が砕けそうになりながら、俺はそれでも踏み止まった。腰を押さえて左手を
ショーツに引っ掛けると俺は下着を脱がしにかかった。
 互いの唇を貪り合いながら、名雪の指も俺の下着にかかる。腰を押し付けあうよう
にして脱がし合う。

 興奮しすぎて頭が痛い。

 名雪に脱がす時はおしりの方からと言われていたのに、そんなことは吹き飛んでい
た。それは名雪も同じだったようで、トランクスがこわばりに引っかかる。
 だが、そんなことは気にせずに強引に一気に引き下ろす。反動で跳ねた肉棒は透明
な吐液を名雪の下腹部に擦りつけた。

 下着を膝から抜くのももどかしく、俺は名雪の秘所に指を伸ばした。中指を上に向
けて、そして侵入する。



 つぷ



 本当にそんな音が聞こえてきそうな感じの名雪の膣。
 俺は遠慮なく、名雪の胎内に指を伸ばしていく。無粋な侵入者に行き場を無くした
愛液が押し出され、俺の手の甲を濡らしていく。

「名雪っ。好きだっ」
「うんっ、うんっ。わたしもっ」

 恥ずかしい台詞を臆する事無く吐き出しあう。
 一度火がついてしまえば、最後まで行かなければ二人とも止まれない。それだけは
確かだ。誰よりもお互いが知っている。

 名雪の指が、露出した陰茎を刺激する。相手の指紋の凹凸すら感知出来るほど敏感
な亀頭は、名雪に導かれて次々とカウパー腺液を漏らしていく。恥じることなどな
い。むしろ誇らしげに俺はペニスを押し付けていく。名雪の手や、おなかを幾らでも
汚したかった。
 
 名雪のおんなのこの中に入り込んだ中指を軽く鉤型に曲げると、手前―――お腹側
―――を探るように動かしていく。そして外側からは、その中指と環を作るように親
指がクリトリスを押しつぶしていく。

「ダメっ。ゆーいちっ」

 快楽よりも苦痛が勝った名雪の声。俺は指を引き抜くと、濡れた指でクリトリスを
転がす。
 フードを被ったままの、小指先ほどもない名雪の淫核。文字通りのおんなのこの泣
き所。名雪のスリットから滲み出すぬるぬるを、何度も何度も丹念に塗りこんでい
く。
 男の本能なのか、それとも身勝手さなのかそれはわからないが、どうしても俺はす
ぐにでも敏感な真珠を守る包皮を剥きたくなってしまう。だが、それは名雪には苦痛
をもたらすようで……

 いつだったか、名雪が言ったことがある。



 ―――間違って剥いちゃった時、おかしくなるかと思ったよ。



 ―――空気に触れただけで気絶しそうなんだもん。



 つまりそれだけ敏感な部分なのだ。

 俺の無骨な指では、痛みが先にたってしまうのだろう。だから名雪の粘液でコー
ティングするのだ。少しでもこれで辛さが和らぐのならば、俺は幾らだってやってや
る。
 そこが敏感すぎて辛いなんていうのは、男の俺には想像の外だが、だからって名雪
を泣かしていいことにはならない。

 女の子は幾ら鳴かしていいが、泣かしてはいけない。

 バカな言葉遊びを思い出し、苦笑する。



 俺のペニスを弄んでいたはずの名雪の手は、何時の間にか俺の右手を押さえるよう
になっていた。

「名雪、つらい?」

 ふるふるふる。

 俺の問いに健気に首を振って答える名雪。
 俺の乏しい知識では、膣で快楽を得るのにはそれ相応の経験が必要だ聞いたことが
あった。だからクリトリスを中心に責めようかと思っていたのだが、名雪はスリット
の方が好みらしい。

 俺は攻撃対象を変える事にした。
 正座をするかのように、膝を折ると、俺は名雪の胸を口に含む。さっきやったよう
な焦らすやり方じゃない。ずっと直接的な攻撃だ。

 乳首を唇で挟み、そして舌で弾く。

 それが堪らなかったのか、名雪は俺の頭を抱えるようにしがみ付いてきた。それば
かりかさらなる快楽を得ようとばかりに豊かな胸を押し付けてくる。

 この体勢だと名雪の指は俺のペニスには届かない。それは寂しくはあったが、あの
まま弄られていてはすぐに持たなくなっただろう。それに名雪が切ない吐息を吐きな
がら俺の髪の毛を弄りまわすのも悪くはない。

 しばらくそのまま胸をべたべたになるまで舐めまわした。ぼーっとした名雪は怒り
もしない。胸元を唾液でべたべたにされるのはあまり気分のよいものではないらし
く、盛り上がる前にやってしまうと唇を尖らすのだ。

「祐一、今度はわたしが」

 そんな声が降って来た。
 目元を赤く染め、とろんとした目つきの名雪。少しだけだらしない顔だが、それが
また俺を興奮させる。

 むにっ。

 突然つかまれる男の袋。
 名雪が俺と同じように座り込んで腕を伸ばしてきたのだ。

「お口でしてあげるから。嫌?」

 嫌なはずがない。
 だが……

「珍しいな。名雪がそんなこと言ってくれるなんて。今まで一度もしてくれたことな
かったじゃないか」
「わたしばっかりじゃ悪いもん」

 どこか拗ねたように言う名雪。

「……わたし、いつまでも赤ちゃんじゃないんだから。わたしだって出来るもん」

 微かに聞こえた呟き。
 どうやら先ほど赤ちゃんみたいだと言った事をまだ根に持っていたらしい。

「恥ずかしいからあんまり見ないでね」

 言うが早いが、名雪は何時の間にか落ちてしまっていた毛布を被ると、俺の腰にし
がみついた。
 名雪の押されて尻餅をついた形になった俺は、だが、結局そのまま動かなかった。



 ―――お口でしてあげる。



 その言葉の魅力に勝てなかったのだ。
 頭まですっぽり毛布を被ってしまった名雪は、髪の毛一つ見ることが出来ない。そ
れは寂しいが、もぞもぞと見えない布団の向こう側で動くのが妙にこう想像を掻き立
てる。

「……」

 だが、暫くたっても期待したような感触はやってこない。

 やはり、抵抗があるのだろう。断腸の思いで、それこそ血の涙を流しそうになりな
がら俺は名雪に声をかけようとした。してもらいたいのは当たり前だが嫌々させたく
はない。

 俺がそう考えた時だった。





 ぬろん





 身体ごと何かに咥えられたような錯覚。
 思わず腰が跳ね、息が詰まる。



 い、今のって……



 答えはわかっている。名雪はそれをする、と言ったのだから。
 だけど上手く思考が回転しない。



 ぬる……ぬる……



 パンパンに張り詰めたペニスに、何かがゆっくりと這い回る感触。
 根本を支えられている感覚。優しくて温かいものが、睾丸を包み込む。

 毛布の中は見えない。
 俺は腰まで毛布を引き上げたような状態で、その向こう側を想像するしかない。

「うあっ」

 ふにふにと陰嚢がいじられ、今にも破裂しそうなほど張り詰めた亀頭や、カリ首の
あたりを湿った何物かが通り過ぎていく。
 俺はどうにかして暴れる腰を押さえつけ、耐える。

 だが、今まで名雪の肌にずっと触れていたのだ。耐えるのにも限界がある。名雪の
舌はちろちろと、まるで男の形を確かめるようにゆっくりと周りをなぞっていく。
 裏筋を掃かれたかと思うと、先っぽを舐めあげられる。小さな切れ込み、鈴口に興
味を示したかと思うと、幹を這っていく。
 名雪がフェラチオに不慣れだったからいいようなものの、そうでなかったらとっく
に暴発していたかもしれない。
 いや、つつきまわされるだけでは最後の一線を越えることは出来ないだろうが、そ
う思わせるほど気持ちよかった。

 心臓が強く脈打っているのがわかる。あまりにも強く打つからうるさいぐらいだ。
ペニスに時折かかる名雪の吐息ですら、身体をかけあがり脳みそを蹴っ飛ばしてい
く。

 名雪の口撃は、ゆっくりと、だが確実俺を追い詰めていく。

「名雪ぃ、なゆきっ」

 もう、名前を呼ぶことしか出来ない。
 ビクビクと玉袋が引きつるのがわかる。もう、限界ギリギリだった。

 だが、丁寧すぎる名雪の愛撫では、最後の引き金をひけない。
 舌の動きが大人しすぎるのだ。



 ―――名雪、ちゃんと咥えてくれっ。



 口をついてそんな言葉が溢れそうになる。
 だが、声を出す余裕すらなかった。

 今まで根本を支えていただけの手が、ゆるゆると動き出したのだ。幹をしごくよう
に。

 白濁液がとば口まで競りあがってきているのがわかる。
 俺は毛布の上から名雪の頭と思われる部分を抱え込むしかなかった。

「んっ、ぷあっ」

 そんな声と共に、押さえつけていた毛布の下から名雪が顔を出す。そして蠱惑的な
笑顔で聞くのだ。

「どう……気持ちいい?」

 と。

 そして、にこっと改めて名雪が笑った。俺が完全に余裕を無くしているのを悟った
のだろう。

「えへへ」

 嬉しそうに、本当に嬉しそうに笑うのだ。
 親指の腹でペニスの先を擦りながら、言う。

「痛くしたら言ってね……それと好きな時でいいから」

 はにかみ、そしてまた毛布の中に潜り込んでしまった。
 そして襲い掛かってくる衝撃。

 温かく湿った洞窟に俺のこわばりは飲み込まれていった。その洞窟の中には柔らか
くて優しい生き物がいるのだ。不器用に、だけど丁寧に一生懸命その生き物――舌
が、幹を支えるように下に張り付いてくる。
 俺の指先と唇が、その柔らかさを知っている名雪の舌と口。その二つが、もっとも
敏感な器官にぺったりと纏わりついて、そしてずるりと動き出す。

 毛布の下から微かに聞こえる名雪の舌使いの音。それは耳が捉えたものではないだ
ろう。ペニスを這い上がり、身体を昇って脳までたどり着いた振動。
 そんな微細な事までがわかってしまう。自分の体がもうどうしようもなく敏感に
なっている。
 名雪の存在が、息遣いが、吐息が、香りが、体温が、身じろぎ一つが、すべて快楽
に繋がっている。
 股をくすぐる名雪のさらさらとした髪。それを毛布の上から掴む。撫でてやる余裕
なんてなかった。

 カリ首から根本へ、名雪の唇が被さっていく。針で突けば破裂しそうなほど勃起し
たペニスには湿った感触が心地よかった。世界で唯一、怒張したペニスを慰めてくれ
る存在だとすら感じてしまう。
 柔らかく閉じられた唇が、浮き上がった血管の出っ張りを優しくあやしていく。ペ
ニスのくびれに引っかかる様に止まり、たまらない疼きを残して、亀頭に戻ってい
く。そしてまた吸い込まれていくのだ。

 堪らない。
 本当に堪らない。

 名雪を無茶苦茶にしてやりたい衝動を抑え、俺は射精を我慢するのを止めた。快楽
に耐えるのではなく、そのまま受け入れる。流されたっていい。俺はすべてのことに
対して我慢するのを止める。
 腰の裏側あたりで渦巻いていた射精感が一気に高まる。このまま出してしまえば、
名雪の口を汚してしまうことになる。一瞬だけそんな事が脳裏を過ぎる。だが、俺は
名雪の行為を止めることなど出来なかった。
 ここまで来て我慢出来る男がいるはずもない。

 それに、



 ―――好きな時でいいから



 名雪はそう言った。
 実に丁度いい言い訳だった。

「な……ゆきっ、もうっ」

 俺に出来るギリギリの警告。
 名雪にはしっかりと届いたはずだった。だが、名雪は口を放すどころが逆に深く咥
えてきたのだ。

「くっ」

 亀頭が上顎を擦るのがとどめだった。
 睾丸がせりあがり、争うように白濁液が鈴口の殺到する。限界まで押し止め
ていたものが開放される。



 ビュッ、ビュルッ



 圧縮された精液が精輸管から尿道を内部から押し広げ、駆け抜けていく。
 俺は歯を食いしばりその衝撃に耐える。



 ビュッ、ドクッ、ドク、ドクッ



 三度、四度と脈動を繰り返した肉棒は、いまだ名雪のふっくらとした唇に囚われた
ままだった。

 名雪に精を受け止めてもらえる充足感。
 眩暈を起こしそうな快楽に、実際に身体が揺らぐ。

「……はぁはぁ」

 俺はため息をつきながら背中をベット際の壁に預ける。
 だが、一息入れるのは早かった。

 ペニスに電気でも流されたような刺激が走った。射精直後の敏感なペニスを名雪が
吸い上げたのだ。

「っ!!」

 鋭すぎる感覚に声も上げられない。
 俺が吐き出した精液を口の中に溜めたまま、名雪が亀頭を舐めまわす。



 ぬろ……ぬろ……



 それは確かにのんびりとしたテンポではあった。そして普段の状態ならば、むしろ
物足りないような刺激でしか無い。だが、この瞬間だけは違った。
 俺が女の子の身体に対して無知なように、名雪も俺の身体に対してそれほど知識が
ある訳がない。
 射精後の敏感なペニスを弄られるのは、快楽を通り越してむしろ苦痛に近いが、名
雪はそのことを知らないのだ。

 身体中が強張ってしまい、名雪に合図を送れない。まともに声もあげられない。俺
は奥歯をかみ締め、握りこぶしを作って耐えるしかなかった。
 まさに快楽の暴力。
 精を吐き出したばかりの肉棒には鋭すぎる刺激。
 名雪は、ペニスにこびり付いた精液をこそげ落とすように亀頭やカリを重点的に舐
めまわしてくる。



 ずっ……じゅるっ



 最後にひときわきつくペニスを吸い上げると、名雪はようやく開放してくれた。
 すぐに毛布をまくりあげ出てきた名雪は口元を押さえながら、窓際を指差した。最
初は何のことだかわからなかったが、俺はすぐに名雪が求めているものを理解して、
手を伸ばす。
 すっかり脱力してしまった身体に鞭打って、テッシュを取ると五、六枚まとめて渡
してやると、

「ん〜〜〜」

 と、形のいい眉を寄せながらテッシュに精液を吐き出した。

「う〜〜〜すごい匂いだよ〜」

 その声には嫌悪感は含まれていなかった。少しだけ困ったような、のほほんとした
いつもの顔だった。
 そんな名雪に安堵しながら、俺はあやまった。

「すまん、名雪。大丈夫か?」
「大丈夫。祐一、わたしの方こそごめんね」
「え?」
「その……ゆーいちの、飲んであげられなくて」
「い、いや、そんなことは気にしなくいいて」

 確かに出来れば飲んでもらいたい、それが本音だ。だが、どう考えてもおいしいも
のではないに決まっている。しかも名雪はフェラチオは初めてなのだ。無理強いでき
るものではない。

 折りたたんだテッシュで唇を拭うと名雪は、今度はがんばるね、なんて言って笑っ
た。
 なんだか、その言葉にじんと来てしまって、俺は名雪を押し倒す。

「わ」

 名雪の、とてもじゃないが驚いているとは思えない声。
 存外素直に転がった名雪だが、少しだけ声のトーンが下がる。

「お、男の子ってすぐには出来ないんでしょ。あんまり無理するとダメだよ」

 俺はつい苦笑してしまう。
 それはあまりにも今更なことだったからだ。この状況で一度で止まれるわけが無
い。

 俺は寝転がった名雪に半ば覆い被さるようになると、秘所に指を伸ばす。

「んあぁっ」

 途端に溢れ出す名雪の甘い声。
 すっかり愛液で濡れそぼってしまった恥毛をかき分けるようにして、指先を下げて
いく。

「あんんっ、ダメだよっゆ……いちっ。考えないようにしてたのにぃっ」

 名雪の声が脳を溶かす。
 俺はわざと音を立てるように指を動かす。

「ばか。こんなにしてるのに我慢するつもりだったのか?」

 くちゃくちゃと、おんなのこの蜜が音をたてる。それは名雪の身体の声無き訴えの
ようで。俺はもっとも刺激に弱い部分の包皮を剥く。
 それだけで息を呑む名雪。クリトリスに触れるたびに思う。本当に敏感なんだと。
 さわる、ではなくて、ふれる。そんな心持ちで指を伸ばす。それこそ触れるか触れ
ないか、そんな微妙な接触。
 それでも名雪は肩を震わせて唇を噛み締めてしまう。

「痛い?」

 みっともない質問だ。
 だが、聞かずにはいられなかった。

 ふるふると首をふる名雪。
 もう、完全に涙目でこちらを見上げてくる。

「でも、ゆーいちが……」

 まだこちらを気遣う言葉。
 だから、はっきりと言い切った。

「俺は、名雪が欲しい。思いっきり抱きたい。嫌だって言われたって、嫌われたって
名雪を自分のモノにしたいっ」



「……あ」



 惚けたように声をあげる名雪。

 そして、



「ゆーいちっ、ゆういちっ」

 俺の首に噛り付いてくるかのように抱きついてくる。名雪のスイッチはもう入って
いるのだ。ただ、それを忘れようと考えないようとしていただけ。

 頬を寄せ合い、互いの鼻をこすりつけ合う。俺はくちづけを交わそうと名雪の唇に
標準を合わせた時だった。

「キス……キスしたいのに、できないよぉ」

 突然泣き出しそうな声を名雪があげた。
 俺がいぶかしむまもなく理由は判明した。

「嫌だよね。自分のを受け止めたところとキスするなんて……」
「名雪」

 確かにそれは抵抗があることかもしれない。名雪の蜜ならばまったく問題ではない
が、自分の精液を舐めるのは気分の良いものではない。
 だが、別に直接自分が放出したものを口にするわけではないのだ。あくまで対象は
名雪の唇でしかない。

「……名雪」

 いいよ。無理しなくても。名雪の口がそんな言葉を刻む。

「わたしだって自分のは嫌だもん。祐一のだったら幾らで……」

 俺はそれ以上先を続けさせなかった。
 文字通りの目の前で見開かれる名雪の瞳。

 驚いて固まって。
 少しだけの抵抗。
 そして、おとなしくなる。

 そんな一連の反応すら愛しく、俺は名雪を抱きしめた。必要以上に深くキスを交わ
しながら。

 歯を歯茎を舌を、そして頬の肉を。
 それこそ何も考えないで舌を暴れさせ蹂躙する。自分の味? そんなものは関係が
ない。俺が味わっているのは名雪なのだから。

 互いの手が互いの頬に触れ合い。
 乱れた吐息が混ざり合い、いやらしい水音が耳をくすぐる。

 そこには技巧なんて何もない。
 ただ本能で互いの唇を貪りあう。つつきあい、なめまわし、そして時には噛み付き
すらする。だけど痛みなんてどこにもない。すべてが快楽。ただひたすらに心地い
い。
 どこを見ても、どこに手を伸ばそうと、意識をどこに振り向けようとそこには名雪
がいる。
 これが快感でなくて何が快感だというのだ。
 密着した肌が互いの温度を伝え合う。だがその肌すら疎ましい。これさえなかった
ら、もっと名雪と一つになれるのに。完全に溶け合い、混ざり合う夢想。それは少し
だけ怖くて、とても気持ちのいいことかもしれない。

「あああっっっ!!」

 愛しい人の歓喜の悲鳴。
 俺の指は乳房に食い込んでいる。痛いだけのはずなのに、それでも名雪は悦びの声
をあげる。
 名雪の手が俺の髪の毛をかき回す。何かに縋るように、呟く言葉。

「すきぃ、好きなのぉ、ゆーいちぃ、大好きだよぉお」

 荒れ狂う快楽に吹き飛ばされまいとするかのような名雪の抱擁。俺はそれをしっか
りと受け止める。背中に回された指が爪を立てようと気にもならない。

「きてえ。祐一、きてぇ。ゆーいちぃ」

 再燃した火は容易には消えない。
 俺はクリトリスを捻りあげた。

「ひぃぁぁぁああああっ!!」

 もう、どろどろで軽い力では摘めないのだ。
 俺は身体をずりさげると、名雪のそこに口をつけた。

 大陰唇も小陰唇もクリトリスも、もうべちょべちょで、何がなんだかわからない状
態になっている。滲み出ている愛液は潤沢で、準備は完璧といった様子だ。
 一度捲れあがってしまったフードは戻っておらずクリトリスは剥き出しで。俺はそ
こに容赦なく舌を這わす。

「ひいぃいっ!! も、もいいからっ、いいからぁっ」

 一度放出している俺とは違って、名雪にはまったく余裕がないのだろう。普段から
は考えられないような声をあげ、よがり狂う。
 両手を当て、名雪のスリットを広げる。ピンク色の複雑な形状のびらびらが震える
膣口から覗く。

 ひくひく、と。

 男を誘う名雪のおんなのコ。
 一瞬でも待ちきれないとばかりに、収縮を繰り返している。いびつなこの穴の中
に、自分のモノを埋め込んだらさぞかし心地よいだろう。天国にも勝るかもしれな
い。
 俺は中指を立てると挿入を開始した。
 待ちわびていた侵入者だったのだろう。あっという間に吸い付いてくる、舌の裏側
よりも滑らかな膣壁。そして絡み付いてくる襞。それら全てが俺の指を奥へ奥へと導
くかのように飲み込もうとしてくる。
 俺は存分に指を暴れさせた。
 あまりの興奮に名雪を思いやる余裕すらない。ガンガンと痛む頭を振って、さらに
名雪の身体に夢中になる。
 とてもペニスが入るとは思えないような狭い道。だけどここは確かに俺を受け止め
てくれる場所でもある。回数は少ない。だけど、確かに俺はここを貫いたのだ。

 不意に。
 髪の毛をひっぱられる。

 目をやれば。
 口をぱくぱくとさせた、名雪が哀願するような瞳を向けてくる。

「名雪」

 名を呼ぶ。

「祐一」

 俺の名を呼ぶ声が返って来る。かすれた声。だけどはっきりと聞こえた。俺は体を
起こすと、自らのペニスを握る。
 ぬるぬるになっている名雪のスリットは捉えづらく、何度かペニスが滑る。その度
に切なそうな声を上げる名雪。
 そしてついに、俺は名雪の胎内に入り込む。

 男のもっとも固くなった部分で、女の子のもっとも柔らかい部分を貫く。

 繋がった瞬間、二人はした事は。
 背筋を伸ばして、刺激に耐える事と。詰めていた息を吐き出すことだった。

 名雪の中は、もう思わず笑ってしまいそうになるほど、熱い。じっとしていればそ
れほどでもないが、少しでも動けばたちまち火傷を負いそうなほどの熱を感じる。
 これが名雪の想いだ。
 初めて名雪を抱いた時に驚いた、その熱さ。その再現だ。

 びくびくとおなかを痙攣させて、名雪が浅い呼吸を繰り返す。

 俺はそんな名雪を見下ろしながら、さらに奥へと進む。
 入り口付近のキツイ締め付けに根を上げそうになりながら、少しずつ。
 小指すら通りそうにない狭い部分を、絡みつき、亀頭を磨き上げる襞に負けずに進
んでいく。一ミリ進むごとに襲い掛かる気持ちよさ。みっちりした質感で食い詰めて
くる名雪の膣。入り口付近が一番きつく、中は少しだけ緩やかだ。
 そんな天国のような場所は、刺激を受け震える度に淫液を吹きかけ、そして締め上
げてくる快楽地獄へと変貌する。
 キュンキュンと、一歩進めば二回。二歩進めば三回と、その締め付けの回数が増え
てくる。それに耐え、俺は肉棒を全て名雪の身体に埋め込んだ。

「そこまで……来てくれたね。祐一」

 自分のお腹を撫でるように、手を置きながら名雪が微笑む。恐らくその辺りに俺の
モノが埋まっているのだろう。

 完全に乱れてしまった息を整えながら、俺と名雪は見つめ合う。

 今の想いを伝える術が思いつかない。だから俺は動いた。ただ想いを伝える為だけ
に。

 ずるりと引き抜かれる男根。
 そのペニスに出て行かないで、とばかりに引き止め絡みつく襞。

 進む時は。
 引き抜く時とは反対に、簡単には入らせない、とばかりにきつい摩擦で立ちはだか
る。

 張り出したカリ首が、名雪の柔肉を掻き出す度に上がる声。
 指を絡め繋がれた手。
 重ねあった肌。
 伝わる体温。
 痛いほどの動悸。
 ペニス、いや全身から入力される刺激。
 部屋全体に立ち込めている淫靡な匂い。

 その全てが俺たち二人が作り出したものだ。

 ピンク色のもやがかかりそうな頭を覚醒させてくれる、気持ちよさ。名雪の胸が無
遠慮に揺れるほど強く激しく突き上げる。強く強く手を握り返してくれる名雪の想い
に答えて、俺はさらに名雪の身体を貪っていく。

「あっあっあっあっ、んくっ、ふあっっ!!」

 揺れる身体に合わせて。
 浅い呼吸に合わせて、名雪が叫ぶ。

 どうしようもなく愛しくて。
 俺は、唇にかぶりつく。すぐさま答えてくれる名雪。

 上と下、同時に繋がるのは気が狂いそうなほどの快楽だ。

 舌を絡めあいながら、名雪のヴァギナに出入りする。
 お互いの粘膜が擦れあい、刺激しあう。その刺激が強すぎて魂がどこかに吹き飛ば
されてしまいそうな錯覚にさえ陥る。
 唇どころか舌にさえ歯を立てて、俺たちは互いを、快楽を味わっていく。
 そして名雪の膣がひときわきつく絞られる。

「うあっっ!」
「くぅうぅうぅっっっっ!!」

 歯を噛み締め、そこから漏れるような吐息が耳に届く。



 ぎゅうううううっ



 握りつぶされそうに膣圧があがり、そして、

「祐一っ、いっちゃううっっっ」

 名雪の魂の絶叫。

 ペニスが千切れそうなほど、食い詰められ、とっくに限界を超えている俺は、か
えって射精できない。

「あああああああっっ」
「ふあああぁぁぁっぁぁあああっ!!」

 ガクガクと暴れる名雪の身体。
 快楽の嵐に翻弄され、怯える名雪。しがみつくものは俺の身体しかない。怯えた赤
ん坊のようにしがみ付き、俺の肩を歯をたて、背中を爪で引っ掻きまわす。

 きつすぎる第一波が過ぎ去ると、今度が俺が高みに達する。一瞬緩んだ膣の中で白
い爆発。
 俺はありったけの精液を名雪の中に注ぎこむ。

「ひやぁああ。ひあああっ。熱いっ、熱いっおお」

 ドクドクと、なんどもしゃくりあげるペニス。容赦なく注ぎ込まれる熱さに、また
名雪が声をあげる。

 本能的に、だろうか?

 暴れる俺の腰を挟むように回された脚が、何かに耐えるように絞まる。射精中の俺
を逃がさないように、がっちりと押さえつけてくるのだ。
 首には腕を、腰には脚を回される事の感動。
 どうしても逃がさないとばかりに求められる嬉しさ。

 何かの発作でも起こしたかのようだった名雪が落ち着いてくる。それでも、少しで
も俺の肌と触れ合うと、可愛く痙攣を起こす。まるで定期的に電流でも流されている
かのように、数秒おきに名雪が身体を震わせていた。
 俺は、ペニスを名雪の中に埋めたまま、髪を撫でる。それは無意識の行動だったの
だが……

 暫くそうしていると、うっすらと目を開けた名雪が俺の手を見やり、



「ありがと」



 と、呟いた。
 恥ずかしそうに視線を背けて、小さく。

 乱れている時はそうでもなくても、熱が冷めれば少しずつ恥ずかしさがこみ上げて
くる。
 それは俺も名雪も同じで。

 自分が何を口走ったか、何をやったか思い出すことすら拒否したくなる。

「「あっ」」

 そんな時、萎えたペニスがずるりと名雪の中から押し出された。
 一瞬目が合い、慌てて反らしあう。



「う〜〜〜」

 名雪が唸る。
 と、突然、



 ポフッ



 何かで叩かれた。

「バカっ、バカっ、祐一のバカぁっ。なんてことするのっ。ああ、もう恥ずかしい
よぉ」

 ぽふぽふと、俺が枕代わりに使っているクッションで叩かれた。痛くもなんともな
い。まったくといっていいほど力が込められていないのだから当然だ。

 名雪は、ついさっきまでの自分の痴態を思い出して恥じているのだろう。

「いや、さすがに誰にも言わないし」
「あたりまえだよっ」
「それにしても、随分乱れてたなぁ、久しぶりだ」
「う〜う〜う〜」

 思いっきり叩きつけようとした名雪の指から、クッションが外れる。あさっての方
向に飛んで行くクッション。

「ほら。恥ずかしいのは俺だって同じなんだしさ」
「う〜。祐一嫌いっ。どうして毎回こんなに恥ずかしい思いをしないといけない
のぉ」

 恥ずかしさのあまり訳のわからないことを口走る名雪。

「あうっ」

 と、妙な声をあげる。

「どした?」
「……んと、その……祐一のが溢れてきちゃった」



 ……な、なんて事を口走りやがりますかね。この娘は。



「ティッシュ、ティッシュ」
「そのままにしておけばいいじゃんか」

 否定されるのをわかっていてそんな事を言う俺。

「嫌だよぉ。気持ち悪いもん。それにシーツ汚れちゃうし」
「シーツなんて汚したって……」
「だ、ダメだよっ。お洗濯するのお母さんなんだからっ」
「見せ付けてやるのもいいかも」

 ダメだ。
 俺も相当に脳みそが茹だっている。

「……そんなのわたしが恥ずかしいだけだよ」
「あはははははっ」

 訳のわからない笑い声を上げると、俺は名雪を抱きしめた。

「きゃっ」

 すっぽりと腕の中に収まる名雪の身体。
 娘を抱きしめる父親のように名雪を膝の上に乗せている感じだ。

「一緒にシャワー浴びるか?」
「恥ずかしいよ。それに祐一、ちょっと前まで風邪ひいてたでしょ。また熱が出ちゃ
うよ?」
「熱ならもうとっくに出てるって」
「ええっ」
「名雪が興奮させてくれたからな」
「もぉっ」

 ああ、と俺は手を打つ。

「そういえば、よくやり方なんて知ってたな?」
「何の?」
「フェラチオのやり方だよ」

 直接的すぎる聞き方だが、もう今更だった。



「えと。その……本とかで。あはは」



 照れる名雪。

「いつのまに、そんなにえっちになったんだか」
「ゆーいちのせいだよっ」
「なにいっ」

 おどけた声で俺は笑う。
 名雪の髪の毛をめちゃくちゃにかき回して。

「あん、髪の毛乱れちゃう」
「いまさらだってっ」

 そうして、ひとしきりバカな話をしたあと。
 名雪が聞いてきた。

「シャワー……一緒に浴びる? それとも……」

 名雪がお尻の辺りに当たる俺のモノを気にするように、少しだけはにかんで。





「もっかいする?」















 ―――結局、朝までエンドレス。








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