Nightmare

〜The dream on the second night of the New Year〜

Written by マウントアイアン


 

 

 私に妹なんていない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私の家族は・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 優しいお父さんと

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 元気な母さん

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして私

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 妹なんていない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は一人っ子

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お姉ちゃん……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何も聞こえない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 すべてを否定して生きていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お姉ちゃん……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 聞こえない……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お姉ちゃん……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これは幻聴よ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 この家には私と両親だけ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 妹なんて……妹なんていない

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ねぇ、お姉ちゃん……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうよ、いないのよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は夢を見てるのよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お姉ちゃん……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうだ、何処か遠くに行こう

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうすれば、夢が覚めるかもしれないわ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お姉ちゃん、ここにいて』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 嫌よ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は今から遠くに行くの

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悪夢を覚ます為に行くの

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今、ここに入られないの

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お姉ちゃん、何処にも行かないで』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 無理よ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は、私の中から……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私の中から、あなたを……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あなたを……妹のあなたを……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 抹消したのだから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お姉ちゃん……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だから……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『本当に抹消したの?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……え?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『抹消したんだね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ええ、そうよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私は、私の中から妹を、栞を抹消したの

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『だったら私は誰なの?』 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それは……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お姉ちゃん、誰なの?私は誰なの?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 分からないわ

 

 

 

 

 

 そう、分からないの

 

 

 

 

 

 私には分からないの。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『嘘つき……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 嘘?

 

 

 

 

 

 嘘なんかじゃない

 

 

 

 

 

 私は嘘なんか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お姉ちゃん……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やだ、なんで私、泣いてるの

 

 

 

 

 

 どうして涙が出てくるの

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お姉ちゃん……もう良いよ。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 え?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『もう良いの。お姉ちゃんがこれ以上悲しまなくても』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 嘘……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『もう、悲しまないで……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本当に良いの?

 

 

 

 

 

 私はもう、悲しまなくて良いの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お姉ちゃんの悲しい顔見るの、辛いよ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうして、あなたが辛いの?

 

 

 

 

 

 あなたと私は他人同士なのよ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『だから、ごめんね。お姉ちゃん』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうして謝るの?

 

 

 

 

 

 他人同士なのに……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ううん、お姉ちゃんじゃなかったね』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そう、他人同士……

 

 

 

 

 

 だけど、涙が出てくるのは何故? 

 

 

 

 

 

 やっぱり私には消せないの?

 

 

 

 

 

 あなたの存在を…… 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『でも、お姉ちゃんって呼んで良い?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やっぱりあなたは……

 

 

 

 

 

 あなたは私の中に生きている

 

 

 

 

 

 抹消なんて出来なかったのね

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『良いよね?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 えぇ……

 

 

 

 

 

 あなたは私の妹なんだから

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『……え?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 栞は私の妹よ

 

 

 

 

 

 ごめんね、栞……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『良いの?私、お姉ちゃんの……お姉ちゃんの妹で良いの?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 えぇ、当たり前じゃない……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お姉ちゃん……泣かないで……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 栞は……

 

 

 

 

 

 栞は私の妹よ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『お姉ちゃん』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 栞……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今日も夢を見た

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夢の中での自分……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最後には素直になる自分……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 での現実では無理なの……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ごめんね、栞……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 やっぱり、私には……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 私には妹なんていないの

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 こうして、私の朝は、栞がいる限り永遠と繰り返される

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 それが初夢であっても、この夢は繰り返される

 

 

<Fin>