名雪END後です。



「雨が降ってるね・・・」


「ああ、降ってるな・・・」





シャイな二人




空は曇っていて雨がふっている。


「どうして七夕って曇りや雨が多いんだろ、ね、祐一」


「さあな、なんでだろうな」


「うー、ちょっとは考えてよ〜」


「考えても無駄だからな。無駄なことはしないことにしている」


「でもでも〜」


「じゃあ、3時間くらい天気について熱く語ってやろうか?」


「それは、遠慮するよ〜」


祐一と名雪がリビングの庭へのガラス戸の前にに座っており、


雨が降っている空を見上げながら話をしている。


二人の横には短冊がついた笹がかざってある。




「ねえ、祐一」


「なんだ?」


「七夕の日って彦星と織姫が1年間で唯一会える日だったよね」


「ああ、そうだぞ」


「昔にね、七夕の日でも雨が降っている時はね、

二人が会えなくなるって聞いたことがあるんだけど。」


「たしか、天の川が氾濫するからだろ?」


普段通り話をしていた名雪が不意に顔を曇らせた。


「きっと会えるのを楽しみにしているのに可哀想だね」


「そうかな?」


「そうだよ〜」


「でも、ひょっとしたらな、名雪」


「ん、ひょっとしたら?」


祐一の切り返しに名雪は不思議そうな顔をした。


「最近は文明がかなり発達しているから、毎日電話したり、

メールをしてて、そんなに寂しくないんじゃないか?

な〜んてな。ははは・・・」


祐一は笑いながら言ったが、名雪は口をとんがらせ、


拗ねた表情になった。


「うぅぅ〜。祐一、夢がないよ〜。極悪だよ〜」


「ちょっとまて、どうして冗談でそこまで言われない

といけないんだ?」


「夢がない祐一が悪い!」


「おれか、おれが悪いのか!?」


「うん、だから祐一の明日の夕ご飯はキムチ」


「き、きむち?」


「茶碗にたくさんのきゅうりのキムチを、白菜の

キムチをおかずにして食べるの。お汁はキムチの

絞り汁」


「な、名雪。なんでもするからそれは勘弁してくれ」


たくさんのキムチを食べている自分を想像したのか、

祐一は真っ青になって名雪に許しを請うた。


「本当になんでもしてくれるの?」


「ああ、本当だ」


「本当の本当に?」


「本当の本当だ」


「本当の本当のほんと・・・」


「ああ、本当にだ! いちごサンデーでもなんでも

おごってやるから」


「じゃあね〜、夢のあることをいってくれたら許して

あげる」


「げ、おれが夢のあることをか!?」


「うん」


「そうだな・・・、最近は文明がすすんでいるから、ダムとか

堤防とかができていて、きっとめったに氾濫しないから二人は

雨が降っても会える」


「う〜、現実的だよ〜」


「まあ待てって名雪、まだ続きがあるんだから」


拗ねかける名雪をあわてて祐一はとめた。


「あまたの星が川なくらいだから、地球なんかよりきっと文明が

進んでいるんだ。」


「うん、それで?」


「だから、他の星の天候もあやつれるんだ」


祐一の話に名雪は興味を持ち始めたのか、結構真剣に聞いている。


「それでわざと地球や他の星を曇りや雨にしているんだ」


「なんで、わざとそんなことをするの?」


「彦星も織姫もシャイだから久しぶりの再会を見られるのが

恥ずかしい、だから曇らせることによって他の人には見せない、

ってのはどうだ?」


「うーん、夢がある話だとは思わないけど、祐一にしてみれば、

ロマンチックな話だからキムチは許してあげるよ」


「よし!」


「最後の「ってのはどうだ?」は余分だったけどね」


祐一は飛び上がるくらい喜び、名雪は少し残念そうにしたが、

祐一の喜びようを見てすぐに微笑んだ。



「祐一は」


「なんだ?」


「彦星みたいに1年に1回しか、わたしと会えなかったら

どうする?」


「どんなことをしても会いに行く。まあ、1年に1回しか

会えないなんて状態には絶対にしないけどな」


「わ、祐一がとっても恥ずかしいことを言ってるよ」


名雪は口調はいつも通りおっとりとしているが、

本当に恥ずかしいのか、顔が真っ赤でになった。


「じゃあ、名雪だったらどうする?」


「わたしも、どんなことをしても絶対に祐一に会いに行くよ。

それに、祐一とは絶対に離れないよ」


「名雪も恥ずかしいことをいってるぞ」


祐一は顔を背けながら言ったが、顔は真っ赤である。


「さっきの仕返しだよ〜」


仕返しと言っている名雪も真っ赤である。





「あらあら、我が家の彦星と織姫もシャイね」


2人の様子を後ろで見ていた秋子が暖かい眼差しで

つぶやいていた。



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