学食うぉーず<相互リンク記念SS>

神風

 

 

 

 

<裕一のクラス>

キンコーンカンコーン。

四時間目終了のチャイムと同時に、相沢裕一は立ち上がった。

「おっしゃ、メシだ、メシ! 名雪、メシ食おーぜ!

「裕一、お弁当あるの?

「いや、学食」

「「「「「「「「「えええええええええええええええええ!!!」」」」」」」」」

クラス全員から発せられる悲鳴のような叫び。

「なっ、なんだよ。一体?」

大粒の汗を後頭部に浮べ、引く裕一。

そんな裕一の肩にポンと置かれる手。

「相沢、俺も付いていってやるよ。ド素人一人じゃ心もとないからな」

「はあ? 北川、お前何を……?」

「さすがだわ、相沢君。やっぱり名雪と血が繋がっているのね」

見れば、香里も北川と同じように、裕一を見直したような態度を取る。

「おい、香里も一体何を言って……?」

「裕一!!」

「うおっ! 名雪までなんなんだよ!?」

いきなり同居人の名を叫んで、がしぃっと裕一の手を握る名雪。

「がんばろ、そしてイチゴプリン、げっとだよ!」

その時、名雪の瞳は星飛馬バリに燃えていた。それはもう、ぼうぼうと。

この状態の名雪に何を言っても無駄だ……ということを裕一は知っていた。

「おっ、おう……」

先ほどまで叫んでいた腹の虫もこの異常な事態になりを潜めている。

(なんか学食行きたくなくなってきた……)

とは思いつつも、三人に付いていってしまう根(だけ、というウワサもある)は善人の裕一だった。

 

 

 

 

<学食前の廊下>

「それじゃ、コレあげるわ」

「おう……てこれはじゅうではありませんかかおりさん?」

「平仮名で喋らないでよ……対化物戦闘用13mm拳銃、通称「ジャッカル」よ。全長39cm、重量16kg、装弾数はカートリッジ式で十五発。 ジャムが少ないよう工夫されているから、ド素人の貴方でも扱いこなせるはず」

といいつつ、肩に背負ったマシンガンの標準を再調整する香里。

窓から見えるトンビは自分に銃口が向けられていることを知ることなく、呑気に飛んでいた。

「あのう……かおりさんがもっているのはなに?」

「これ? ドイツ製のVX−13Cサブマシンガンよ。 ほらここ見て、相沢君! レボルバー式になっていて自動冷却が働くの♪ 秒間1000発の栞特製調合弾”冬に食べるバニラ味”が吐き出されるのよ(はぁと)。 ちなみに”雪降る中で食べる抹茶味”とか”凍った噴水の前で食べるストロベリー味”もあるけど、使う?」

「いえ、けっこうです(大汗) うおっ、重いい!!」

ジャッカルを手渡されただけで取り落としそうになる、裕一。

当然である。全長39cm、重量16kgの拳銃を扱いこなせるヤツなんて人類ではない。

その姿を見て、ため息混じりに言う北川。

「情けないなあ、お前ホントに秋子さんの血い引いてんの?」

「北川……そのえらくゴツそうな大砲、何?」

裕一は北川の持つ天井に届きそうな大砲を見て言った。

ちなみに「秋子さん」という単語は意識的に無視。

なんかヤバイ方向に話が進みそうだったから。

「こいつか? 30mm対化物戦用砲『ハルネルコン』だよ。 弾は劣化ウラン弾と爆裂徹鋼焼夷弾の二種類があって、主力戦車を除くすべての地上・航空兵器を撃破できるんだけど、それと換えるか?」

ジャッカルを見ながら話す北川。

「……いや、まだこっちの方がマシ(爆汗)。……ってなんで学食行くのにこんな物騒なモン持ってないといけないんだよ!!??」

「裕一、どなっちゃダメだよ。見つかるよ?」

名雪はこの異常極まる四人組の中、唯一まともに見える「ケロピー」のヌイグルミを抱いてそう言った。

(実際は学校でヌイグルミも異常なのだが、今の裕一の脳味噌は度重なる非常識でイイ具合に発酵しているようで、それにも気づかない)

だが裕一にとって平和な日常のシンボルにも見える『ケロピー』は残りの二人に激しい衝撃を与えた。

「名雪、まさか『ケロピー』を!? 今回は本気ね……?」

「うん。 裕一もいるからね……今度こそは負けないよ」

「おお、こんどこそ奴らにギャフン(死語)と言わせてやろーぜ!!」

「「「えい、えい、おー!!!」」」

がっちり円陣組んで、士気を高める三人。

それを見ると、裕一はなんかどっと疲れたそうな。

 

 

 

 

<学生食堂>

がががががががががががががががががががががが!!

ドカーーーーーーーーーーーーーン!!!!

生徒A「保健委員!! 流れ弾に当たった生徒がいる!! 手当てを!!」

保健委員「はっはい、ええと消毒にはオキシドールを!!」

シュッ

傷病生徒B「ぎやあああああああああ!!」

生徒A「どうした!! コッ、コレは塩酸じゃないかああああああ!!」

保健委員「すっ、すみませ〜〜〜〜〜〜ん!!!」

ばばばばばばばばばばばばばばばばっっ!!

サッカー部員A「おらああああああ、死ねや、野球部!! いつもいつもグラウンド占領しやがってえ!!」

バキューンッ! バキューンッ!

野球部員B「ふざけんなああああああああ!! テメーらサッカー部の方が邪魔なんだよおおおおおおおお!!」

バリバリバリバリバリバリ!!!

ソフトボール部員C「どっちもあんたら邪魔!! 死ね!!」

ヒョイ……コロコロコロ……ドカーーーーーーーーーーーーン!!!!

「ここは一体どこの紛争地域なんだあああああああああああああああああ!!!!」

「何言ってるの、相沢君。 ここはウチの高校の学食よ」

テーブルを盾にしつつ、科学部の放つ特製爆薬を爆発する前に打ち落としている香里。

ちなみに裕一は丸くなって伏せていた。

 裕一の前には科学部特製焼夷弾を浴びて、イイ感じに焦げてひっくりかえってる生徒がいたり、銃弾の雨から逃げるために死の舞踏をしているバレエ部女生徒もいた。

「どこの高校に血沸き肉踊る(文字通り)、学食があるかあああああああああああああ!!」

「ふっ……相沢君、学食は戦場なのよ」

「そのセリフだな!! そのセリフがすべての元凶なんだな!? そうだろ、作者!!」

ギクッ(バイ作者)

「何言ってるの? それより相沢君、手伝ってよ。科学部のヤツら特殊コーティングされたテーブルバリケートで食券販売機を囲んでいるから、手が出せないのよ」

「俺がぶっぱなそうか?」

『ハルネルコン』を誇示しつつ言う北川。

「ダメよ、それだと販売機ごと吹き飛ばすわ……だから『ジャッカル』で突破口を開いて、それから私が援護するから、北川君と名雪と相沢君の三人が一点突破を試みて」

「香里……大丈夫?」

名雪が『ケロピー』を抱えつつ、心配そうに香里に問う。

「大丈夫よ。その代わりCランチ+バニラアイスをよろしくね、名雪」

「うん、わかったよ。 イチゴサンデーにかけて必ず、だよ」

「名雪……」

「香里……」

お互いの手をがっしりと掴んで固く誓い合う二人。

「ええ、話や……なっ、裕一?」

「……そうか?」

そんな二人の様子を生で見て思わず滝のような貰い泣きする北川。

裕一は顔にま○子バリの縦線引いて、この状況に呆れていた。

(俺はもしかしてとんでもない高校に転入してしまったのかもしれん……)

両親にくっついて外国行ったほうがマシだった。

どこの紛争地域に行こうともココよりはマシなハズ。

と今更嘆いても状況は変わらない。

「裕一、ふぁいと、だよ!」

「相沢、任せたぜ!」

「相沢君、頼むわよ!」

という三人の有難くもない激励の言葉を聞いて、裕一はやや自棄気味で叫ぶ。

「ああ!! もう自棄だ!! やってやる!!」

見よう見真似で「ジャッカル」を構え、標準を見定める、裕一。

狙うはバリケートの継ぎ目。

爆発力重視のサブマシンガンでは破壊できないガードでも、貫通力重視の「ジャッカル」なら確実にダメージを与えられる。

「裕一、さっきのセリフだけど『や』を『殺』に変換し忘れているよ」

「だーってろ(黙ってろ)!! ……いけえ!!」

どんっ!!

およそ普通の拳銃ではありえない発射音、そしてその反動でまるで銃が生き物のように跳ねる。

「くう!!」

裕一は銃を取り落としそうになったが、なんとかこらえる。

弾丸は吸いこまれるように継ぎ目を破壊し、それでも飽き足らず数枚のバリケートを蹴散らした。

「今よ、名雪!!」

「うん! 行けえ!『ケロピー』、だよ!!」

ぽーーーーんと綺麗な放物線を描いて、間抜けな笑顔を見せる『ケロピー』が科学部の築いたバリケートの中に入っていく。

瞬間、

ぴかっ、どおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーーーーんんんんんんんんん!!!

白光。爆音。きのこ雲。

後に、Y・A君はこう証言する。

「いや、何? 原子爆弾のことを昔の人がピカドンって言ったのはあながち間違いじゃないっていうのを身を以って知った瞬間でした。なんで生きているのか不思議でありませんね。あれからしばらくカエルを見ると発作が起きましたよ、いやマジで」

閑話休題。

「あら〜、全滅ね。計算よりも威力あったじゃない?」

「うん、この日のためにお母さんから習ったからね。これくらいは、だよ」

テーブルを全部吹き飛ばし、何故か一人として死人のいない爆心地を見やりながら話す二人。

同様に何故か天井の蛍光灯は一つとして割れておらず、先ほど舞い上がったきのこ雲ですすけていただけだった。

「じゃあ、少々計画が狂ったけど、みんな一緒に行きましょうか?」

「うん」

「おう」

「ちょおおおおおおおおおおおと待てええええええええ!!! 名雪、今のは何だ!?」

えらくあっさりしている三人を尻目に動揺しまくって見苦しい裕一。

教訓、理性を最後まで持つと苦労する。

「え? ただの三重水素と三重水素が融合してヘリウムになっただけ、だよ」

「核融合だろが、それわ!! 原子爆弾じゃねえか!!」

「違うよ、裕一。 正確には水素爆弾、だよ」

「そうそう、それに校内は治外法権、治外法権。アメリカもフランスも何も言ってこやしいって」

「もういやだ!! こんなのおおおおおおおおおおおお!!」

お空のお星様に向かって叫ぶが、お星様は煌くだけで、勇気も希望もお金もなんにも与えてはくれなかった。

「相沢君、さっさと行くわよ。 ラスボスが控えてるんだから」

「はあ? ラスボス? ここはどこなんだよ!? 地下のダンジョンか!? 魔王のお城か!?」

「さっきも言ったけど、ここはウチの高校の学食。 さあ、キリキリ歩く!」

「あうあうあうあうあうあう……神様、僕が何かしましたか?」

さめざめと涙を流しつつ、三人にトボトボついて行く、裕一。

その姿は荷馬車に連れられていく子牛を連想させた。

歌ってみよう。

あ〜れはてた〜が〜くしょくでぇ〜、ゆういちがぁ〜とぼぉ〜とぼぉ〜……(うゆきゅう様、すいません)

「うるせえ!!」

ばしゅっ!!(作者の眉間にばしゅっと撃ち込まれる弾丸の音。作者、昏倒)

「裕一、何してるの?」

「うおおおおおおおおおおおおおお!!もう俺はマジでキレたぞ!! ドラゴンでも魔王でもかかって来いってんだ!!」

「さすがは相沢君! 食券販売機の前に立ちふさがる……あの二人こそラスボスよ!」

びしぃと香里は人差し指を二人組に向ける。

ムッツリ無表情の剣を持った黒髪の女生徒と、対照的に春の花のような笑顔をこちらに向ける女生徒。

どちらにも裕一は見覚えのある姿だった。

「舞に佐祐理さん……!! どうして!?」

舞は相変わらずの無表情に僅かな憐憫を乗せて、佐祐理は裕一を含めたみんなに申し訳なさそうな表情で、

「裕一……ここは、通さない」

すちゃっと刀を構え、裕一の目を見据える舞。

「すみません、裕一さん。 此方にも引くに引けない事情があるんです」

ずらあっとコミケ「ティー○イ東京」企業ブースで発売された「かのん」トレーディング・プレイングカード(早い話がカノンのトランプ)を並べ、佐祐理も油断なくこちらを見据える。

(裕一、舞さんは『舞踏剣士(ソードダンサー)』と謳われるくらい素早い、よ。佐祐理さんは『審判の占い師(ジャッチメント・フォーチュンテラー)』と呼ばれていて、あのトランプは鋼鉄さえ豆腐のように切り裂くよ、気をつけて)

(作者めええええ!! 久慈さんの”異能者”の影響うけすぎだあああああああああああ!!)

(さっきから裕一、変)

(相沢君が変なのは前からだと思うけど?)

(それを差し引いても変なんだよ、香里)

(なるほど! つまり相沢は大変態……!!)

ばしゅっ

「あう」

作者に続き、北川、昏倒。

「聞こえてるぞ、北川」

いままでおっかなびっくり使っていた拳銃を手の延長のように扱う裕一。(主役の意地か?)

その淀みない流れるような動きに、ラスボス二人(?)は誉める。

「さすがは、裕一さんですねえ。『ジャッカル』をそこまで扱いこなすなんて」

「……裕一、手加減しない」

舞の殺気が数倍に膨れ上がる……いや分裂し、それが自らの殺気を増幅させたのだ。

「……我流、化神剣舞(けしんけんぶ)……」

そう呟くと、舞の周りに発生した(分裂した)殺気の魔物が裕一に襲い掛かる。

ある者は一直線に、ある者は裕一の右側面から、左側面から、あるいは頭上から。

「そこだああああああ!!!」

殺気そのものを超濃縮した”魔物”。しかしキレた裕一には手に取るように動きが読める。

ばしゅっ、ばしゅっ!!

対化物戦闘用拳銃の名は伊達ではない。

正面と頭上の”魔物”を打ち落とし、続けて来る右と左の”魔物”を後ろに大きくバックジャンプする事によってかわす、裕一。

「裕一、すごいよ!」

「さすがは、相沢君!その調子で頼むわよ!」

二人は前後左右から生き物のように襲いかかるトランプを避けつつ、佐祐理本人に”冬に食べるバニラ味”を叩きつけるが、佐祐理を覆うように舞っているトランプがその銃弾を阻む。

「ただのトランプじゃないのね!」

香里は舌打ちしながら弾の切れたサブマシンガンを捨てる。

「そうなんですよ。 一応、法儀式を施した神聖銀を使ってますから〜」

本人はのほほんとした表情で、こちらに微笑む。

「それじゃあ、そろそろ本気でいきますよお」

武装的に丸裸にさせられた二人は、歯噛みしながらそのセリフを聞いていたが、次に響いてきた音によって双方とも動きを止めた。

 

 

 

 

「うをっ!! 」

「……これで終わり……裕一」

刃を首筋に当てられて、身動きできない裕一。

最初こそ善戦していた裕一だったが、魔物はともかく舞に直接銃口を向けられない裕一の敗北は確定的だった。

『ジャッカル』を切断され、反撃する手段すらなくなった裕一。

「……裕一、裕一の差し入れ、嬉しかった。 裕一があの時の約束を憶えていてくれた事、本当に嬉しかった……」

「待て待て待てえええええええ!! 過去形で話すなあああああああ!!」

「……決して裕一のこと忘れない……それが私と裕一の新しい、そして最後の……約束」

「”最後”は余計だあああああああああああああああ!! タンマ、ストップ、ギブア〜〜プ!!」

「じゃ、さよなら……」

すっと今まさに、剣に力が込められて……。

キンコーンカンコーン。

その音を聞いた途端に、舞は剣をしまう。

「……昼休み終了のチャイム……じゃ」

「あははー、それじゃ裕一さん、また今度一緒に御飯食べましょうね」

すたすたすたと自分の教室に帰る二人。

「はあ……何だったんだ?」

「裕一、次体育でしょ? 早くしないと遅刻しちゃうよ?」

いつものスローモーなテンポで話し掛ける名雪。

「へ?へ?へ?ここは硝煙の燻る戦場じゃなかったけ?」

「相沢君、ボケているの? ここはウチの高校の学食……北川君なんてもう着替えて校庭にいるわよ」

「裕一、体育の先生厳しいよ。遅刻したら校庭十周、だよ」

「なんなんだよおおおおおおおおおおお!! これわああああああああああああああああああああ!! 」

 

 

 

 

<裕一のクラス>

キンコーンカンコーン。

「はっ!!」

がばっとチャイムと共に起き出す裕一。

時刻は十二時二十分。 今からが昼休みだ。

「なんだ、夢かよ……そうだよなあ。はわあああ」

欠伸混じりで一息つく、裕一。

そんな裕一に寄って来る人影が一つ。 名雪である。

「裕一、今日のお昼、どうする?」

「うん、学食……」

「「「「「「「「「「「えええええええええええええええええ!!!」」」」」」」」」」

…………文頭に続く。

 

 

 

後書

ゲーム中の香里のセリフ……それだけでこんな妄想劇ができてしまいました。

hpを開いたから少々ハイになっているようです。

カノンSSは二作目……一作目はめちゃくちゃシリアスだったのに……何故こんなハチャメチャギャグになったのか……それは誰も知らないデス。

それと文中でうゆきゅう様に謝ってますが……どうしてかは、うゆきゅう王国にある「ドナドナな時間たち」をご参照ください。

相互リンク記念のSSがこんなんでいいのか不安ですが……まあそんなことを気にするヒトは大海原に出て、なんとなく浮かんでみましょう。 そーゆー永遠の世界では、このSSがどんなにクソでも、ちっぽけな事だと錯覚するハズ。
それでわ、アデュー!!

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