このSSは作者の体験談を元に作成されてはいますが、勿論の事、『WHITEALUBAM』の二次創作です。
ネタばれは無いに等しいですが、ゲームをやっていただいてからの方がよりお楽しみ頂ける事、間違い無しです。
尚、苦情、お問い合わせ、感想、叱咤、激励等は管理人さんでは無く作者まで。

 

 

 

 

 

 

 雪。

 白い、一欠片の雪。

 天使がくれた贈り物。

 雪。

 降り積もって枯れた木々に白い化粧を施す雪。

 そして、一点の曇りすらなく降り注ぎ、人の目を奪う。

 

 

 僕は願った、この雪のような心を持ちたい……と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ああ……排ガスで雪が真っ黒になってるよ」

「どうかしたの? 冬弥君」

「ああ、由綺か……いや……なんでもない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 大人になることは、純粋な心を置き去りにしていく事だ。

 そう言ったのは誰だったろうか……。

 まだ、大人と呼べる年齢ではなかったがすでに、僕の心はどす黒く汚れきっている。

 そう、この排ガスで汚れきった雪のように……。

 白く見える部分は僕の心にあるのだろうか……。

 

 

 

「少なくとも、受験中は無いな」

「どうかしたの?」

「いや、何でも無い……それにしても、なんでよりによって、試験日の前日に雪が降ってくるかな」

「しかたないよ……毎年この時期は雪が降るものなんだって……」

「なるほど……そうすると試験官は学生をあの手この手でいたぶってやろうとこの辺に入試を設定するわけか」

「そんな事も無いと思うけど」

 

 

 

 由綺が困ったなと言いながら笑っていた。

 この笑顔だけで、しばらくは退屈な試験も頑張れそうだ。

 

 

 

「まあ、頑張るしかないか」

「うん、6万人もの人がここを受験してるんだから頑張って勝たないとね」

「それは全部の学部合わせてだろ、僕達が相手にするのはせいぜい数千人」

「あっ、そうか」

「しかも明日は推薦入試だから数百人」

 

 そう、僕達は大学受験の推薦入試を受けに来ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 くじういんぐ!!60000Hit記念

『頑張れ受験生〜冬弥の場合〜』

〜まずは会場の下見から〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ええと、ここが工学部だから……」

「受験会場は文学部の教室だよね? あっちの建物かな……」

「そうみたいだな……」

 

 

 

 

 

 大学入試というのはおかしいと思う。

 1回だけの試験で能力が計れるとはとても思えない。

 大体において、高校で勉強する事がはたして大学で役に立つと言えるんだろうか。

 そんなふうに言うと、ほとんどの先生はこう言った物だ。

 

「勉強しておいて損は無いよ」

 

 数年後にはその言葉に納得できたが、高校のカリキュラムがおかしいという考えは今でも変わっていない。

 まして、今は受験の真っ最中で、とてもそんな事を考える余裕なんてあるわけがなかった。

 

 

 

 

 

「よし、文学部についたかな?」

「うん、あの建物がそうみたいだね」

「ま、これで下見は終わったし、ホテルに帰ろうか」

「えっ? 中に入ったりしなくて良いの?」

「別にいいんじゃない?」

「う〜ん……そうかな?」

「そうだろ」

「あと、他にもたくさん入口があったけど、見なくてもいいのかな……」

「う〜ん……いいと思うが……見た方がいいか?」

「う〜ん……良いよね」

 

 

 

 

 

 こうして、僕らは帰っていった。

 行くときと同じく電車で帰る。

 まあ、電車が動いていないという事は無いだろうし、別に他の道を考える必要も無いだろうと思ったからだ。

 この時、電車のダイヤを確認しておくべきだったと後から思う。

 

 

 

 

 ホテルでは特に何事もなく、そのまま当日になった。

 十分に時間の余裕を持って出たつもりだったのだが……。

 

 

「えっ? 一時間に一本しか出てないのか?」

「ど、どうしよう冬弥君」

 

 

 

 そう、休みの日に重なったり、利用者の少ない電車と言うのは、極端に時間が空く事が多い。

 しかも、試験時間が通勤ラッシュの時間帯から外れている事が多いため、良くある事なのだ。

 

 

 

「まずいな……次のじゃ間に合わない」

「あっ、バスが来た……冬弥君、あのバス大学まで行くみたい」

「よしっ、バスで行こう」

 

 

 そして、僕達はバスに乗り込んだ。

 だが、考えてみればこれは失敗だった。

 

 

「くっ……全然進まない」

 

 

 雪が降ると道路状況は極端に悪化する。

 そして、他の車に遮られることも重なって、バスはあまり早くは動けないのだ。

 

 

「タクシーの方が良かったのかな」

「同じだろ……雪が無かったらもっと早く着くんだろうけど……」

 

 

 

 結局、試験時間ギリギリになって、ようやく着いた。

 

 

「まずい、時間が無い」

「あっ、と、冬弥君、入口がっ!!」

 

 

 

 昨日は普通に入れた入口。

 そこにあったのは「受験生は正門からお入りください」という立て看板だった。

 そう……昨日は確認しなかった入口の一つだ。

 

 

 

「……早く、正門に行こう」

「うん」

 

 

 

 地図を見て急いで正門いへ行く。

 そして、そこから文学部の校舎へと……。

 

 

 

「くそ、なんだか、迷ったみたいだな」

「どうしよう、全然別な方に来ちゃったような……」

 

 

 

 

 辺りには受験生の誘導のための看板がたくさんあった。

 だが、あまりにも数が多くて却って分からなかった。

 

 

 

 

「仕方ない……正門に戻ってもう一度地図を確認しよう」

 

 

 

 

 こうして、時間だけが無駄に過ぎていった。

 そして、結局試験時間に間に合わず、僕達は二人とも不合格になってしまった。

 

 

 

「はあ……」

「ふう……」

 

 

 

 こうして、僕達の初受験は失敗に終わった。

 だが、その経験を活かし、次には見事合格した。

 結果良ければ全て良しという事だろうか?

 

 

 

 だが、あの時、その大学に入っていたら、また違う自分がそこに居ただろう。

 どっちが良かったのかは分からないが、自分自身でその可能性を摘み取ったのは確かだ。

 だから今はこう思う。

 

 

「やっぱり、大学入試を止めるべきなんだ」

「冬弥君……いくら卒業単位が足りないからって、受験のせいにしちゃだめだよ」

「ぐふぅ」

 

 

(終わり)

後書きに、詳しく受験時の下見を書きますので受験生の方は参考にしてくださいな