このSSは「月姫」琥珀シナリオのバッドエンド後を想定して書いております。
ネタばれ激しいので……というより見てないとたぶん分からないのでゲームをおやりになって、
できれば琥珀シナリオで秋葉を仕留めてからお読み下さい。
また、このSSは一応七夕記念SSです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『The Blood Way』

〜モトメタモノ〜

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 明日……いや、もう今日か……。

 今日は7月7日。

 七夕。

 空で離れていた恋人が出会う時。

 

 

 

 俺の手は視界と同じように赤く染まっていた。

 

 

 

「今日も……やっぱりいない……か」

 

 

 

 秋葉の命を断った時から、視界は赤一色になっていた。

 人を見れば赤。

 星を見れば赤。

 月を見れば赤。

 道路を見れば赤。

 建物を見れば赤。

 空を見れば赤。

 血を見れば赤。

 死体を見れば赤。

 秋葉の死体も赤。

 琥珀さんの死体も赤。

 流れる血は赤。

 首だけの秋葉も赤。

 動かない琥珀さんも赤。

 手のナイフも赤。

 廊下に流れる血も赤。

 秋葉の血で濡れた靴も赤。

 返り血を浴びた服も赤。

 赤。

 赤。

 赤。

 血に染まる皮膚が赤。

 だらしなく広がる髪の毛が赤。

 首の無い体が赤。

 濡れた着物が赤。

 赤。

 赤。

 赤。

 今日、殺した男が赤。

 昨日、殺した女が赤。

 一昨日殺した子供が赤。

 一昨昨日殺した誰かが赤。

 赤。

 赤。

 あか。

 アカ。

 あか。

 アカ。

 赤。

 あか。

 アカ。

 赤。

 あか。

 アカ。

 人を見れば赤。

 星を見れば赤。

 月を見れば赤。

 道路を見れば赤。

 建物を見れば赤。

 空を見れば赤。

 血を見れば赤。

 死体を見れば赤。

 秋葉の死体も赤。

 琥珀さんの死体も赤。

 流れる血は赤。

 首だけの秋葉も赤。

 動かない琥珀さんも赤。

 手のナイフも赤。

 廊下に流れる血も赤。

 秋葉の血で濡れた靴も赤。

 返り血を浴びた服も赤。

 赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あかい、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤い、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あかい、アカ、赤、あか、アカイ、赤、あか、アカ、赤、あかい、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカイ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ……。 

 

 

 手にしたナイフは赤いものがこびりつき、足元にまで赤いものが広がる。

 

 

赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あかい、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤い、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あかい、アカ、赤、あか、アカイ、赤、あか、アカ、赤、あかい、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカイ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ……。 

 

 

昨日も赤、一昨日も赤、一週間前も赤、一月前も赤、あか、アカ。

 

 

 

赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あかい、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤い、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あかい、アカ、赤、あか、アカイ、赤、あか、アカ、赤、あかい、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカイ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ……。 

 

 

 

今日も赤、明日も赤、明後日も赤、一週間後も赤、一月後も赤、あか、アカ。

 

 

 

赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あかい、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤い、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あかい、アカ、赤、あか、アカイ、赤、あか、アカ、赤、あかい、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカイ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ、赤、あか、アカ……。 

 

 

 

視界はどこまでも赤だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「見つからない……」

 

 探しつづけていた。

 存在しないと分かっているものを。

 

「今日も……いない」

 

 何時までも探しつづけていた。

 何処にもいないあの人を……。

 

「いない……」

 

 誰を探しているのかも分からなくなってきた。

 俺が探しているのは琥珀さんなんだろうか?

 それとも秋葉なんだろうか?

 

「ここにも……いない」

 

 誰を探しているのかも分からなくなってきた。

 俺が探しているのは笑顔でいて欲しかった人なんだろうか?

 それとも自分で殺した妹なんだろうか?

 

「やっぱり……いない」

 

 何を探しているのかも分からなくなってきた。

 俺が探しているのは守りたかった人なんだろうか?

 それとも秋葉を殺した時の強烈な快感なんだろうか?

 

「コレじゃない……」

 

 何を探しているのかも分からなくなってきた。

 俺が探しているのは失いたくなかった人なんだろうか?

 それとも最高の獲物を狩った時の興奮なんだろうか?

 

「コレでもない……」

 

 何を求めていたんだろうか?

 

 

 

 

 感情は二つに分裂し、理性はすでに機能しない。

 肉体は火照りつづけ、貪欲に赤いものを求める。

 

 

 

 あの人に再び会いたいのだろうか?

 

 ただただ、血を求めるだけなのだろうか?

 

 

 

 赤く染まる月は、何も答えを与えてはくれない。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「志貴様……いつまでこんな事を繰り返すおつもりですか?」

「翡翠……どうしてこんな所に?」

 

 行く当てもなくふらふらと路地裏をさまよっていた時……翡翠がそこにいた。

 何時いらいだろう? 翡翠が目の前にいる事がとても懐かしい気がする

 悲しそうな顔を浮かべていた。

 どうしてだろう? その悲しそうな顔があの人にダブって見えるのは……。

 

「そんな状態の手と足で……いつまで続けるおつもりですか?」

「……分からない……いつまでも続くのかもしれないし、すぐに終わるのかもしれない……」

 

 探しているものを見つけたいのかもしれない。

 それとも見つけたくないのだろうか?

 理性と感情が別の物を求めているようだ。

 肉体と精神は乖離して遠野志貴という人間がバラバラになったような気がする。

 それとも前の遠野志貴が消えて本来の七夜志貴が戻ってきただけなのだろうか?

 それとも七夜をとおりこして唯の殺人貴として目覚めただけなのだろうか?

 

「姉さんも秋葉様もいなくなってしまいました……志貴様もこのまま私の前から消えてしまいそうで……」

「……」

「もう……こんな事はお止め下さい」

 

 そうだ、こんな事止めてしまえば良い。

 遠野志貴の残った理性の欠片が言う。

 ダメだ、今止めてはいけない。

 感情はそれを否定する。

 理性と感情は乖離していた。

 

 感情の赴くままに、あの人を求める。

 

 ……あの人?

 

 あの人の言葉を聞くまで続けるんだ。

 

 あの人の……言葉?

 

 

 

 

 怒っている琥珀の姿が目に浮かぶ。

 まるで子供を叱る母親のように怒る彼女。

 そこから出てくる言葉は決まって……。

 

 

 

「……そうか、俺は止めて欲しかったのかもしれないな……」

「志貴様?」

 

 ダメですよ志貴さん、そんなことしたら。

 

 そう言って止めて欲しかったんだ。

 誰かに言って欲しくて……いや、あの人に言ってほしくて……。

 

 

 

 二度と聞くことの無い言葉を聞きたかったんだ……。

 

 

「志貴様……?」

「なんで……泣いてるんだろうな……俺は」

 

 

 

 そう、たった一言聞きたかった。

 あの人のその言葉を……。

 それが分かるまでこんなに遠回りしてしまった。

 いくつもの命を殺してきた。

 

 二度と手に入らないと分かっていたのに……。

 

 

 

 いったい何をしていたんだろう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 翡翠とはその場で別れ、一人街を歩く。

 正気に戻ったとはいえ、いや、戻ったからこそ翡翠と共に歩くわけにはいかなかった。

 あの世界に戻れるとは思えなかった。

 手が血の色に染まっている。

 

 ……血に染まったから戻れないという訳ではない。

 そんな風に血に染まった人間は、遠野の家でも七夜の家でも大量にいたはずだ。

 

 そこに琥珀がいない。

 琥珀のいない遠野家なんて考えたくなかった……いや、考えられなかった。

 まだ、戻れない。

 

 いつか心の中でけじめがつく日がくるのだろうか?

 それとも俺は、いつまでたっても生きる意味を見付ける事はできないまま死んで行くのだろうか?

 やっと感じ始めた片足の重みを抱えながら歩きつづける。

 どこまで行っても、琥珀がいるわけでもないのに……。

 それでも……歩きつづけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 視界はどこまでも赤だった。

 天の川の星々も赤く染まって見えて、ミルクの流れというより血の流れに見える。

 

 

「あっ……笹……」

 

 

 ふと目に入った一軒の家で、ベランダに短冊を吊り下げた笹があった。   

 

 そういえば今日は七夕だったのか……。

 

 

 

 七夕。

 空で離れていた恋人が出会う時。

 一年に一度だけ会う事ができる日……。

 

 俺は、二度と会う事の出来ない想い人を思い、何度目になったか分からない涙を流した……。

(END)