このSSはLeafの『まじかる☆アンティーク』を元に書かれた2次創作です。
 幾つかネタばれを含みますので、ゲームをやってからお読み下さい。
 くじういんぐの「30000Hit記念」加えて「七夕記念」のSSになっています。
 たとえ、掲載されたのがいつでも、深く気にしないで下さい。

 

 

 

 

 

 

『その手にあるもの』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「笹の葉さ〜らさら〜、軒間に揺れる〜」

 

 今日は七夕。

 祭りで買ってきた笹に、いろとりどりの短冊が付けられる。

 

「五色の短冊〜、私が書いた〜」

「もう、そんな季節になったんだなあ……」

「健太郎さん、そっちお願いします」

「ああ、これでいいかな」

「お父さん、お父さんは、何をお星様にお願いしたの?」

 

 柔らかい笑顔がそこにある。

 暖かい生活がそこにある。

 これを幸せと言うのだろう。

 

「お父さんはね、お父さんと、お母さんと、雅とがいつまでも仲良く暮らせますようにって」

「ふ〜ん」

「雅は何をお願いするのかな?」

「えへへ〜、内緒だよ〜」

「おいおい、ずるいなあ」

「えへへへ」

 

 その手につかんだ幸せ。

 これ以上の幸せなんて、考えたらばちが当たりそうな気がした。

 

 きっと……どこにでもあるような、平凡な幸せ。

 でも、それこそが一番の幸せ。

 

「あれ? お父さん、それなあに?」

「ん? ああ、それは天球儀と言ってね、星がどんな風に動くのかが書いてあるんだ」

「お星様の動き?」

「そう」

「見たい〜」

「……そうだな、じゃあ、後で屋根の上に上がろうか」

「うんっ!!」

 

 満点の星空。

 空が星で埋め尽くされて、夜の部分が消えたかのようだ。

 

「お父さん、あの星はなあに?」

「あれは、琴座のべガかな」

「それじゃ、あれは?」

「わし座のアルタイルだな」

「こっちのは?」

「白鳥座のデネブだな」

「三角形に見えるね、不思議〜」

「夏の大三角形って言ってね、凄く有名なんだよ」

「ふ〜ん……ねえ、お父さん」

「何だい?」

「織姫や彦星はどこにいるの?」

「さっきの琴座のべガが織姫で、わし座のアルタイルが彦星なんだ」

「ふ〜ん」

「その間に、たくさん星があるだろう?」

「うん、まるで川みたいだね」

「あれは天の川と言ってね、彦星が食べてはいけないと言われた、瓜から流れ出たんだよ」

「あ、お母さんに聞いたよ、今日はきっと、彦星が川を渡って、織姫に会いに行ってるんだね」

「そうだな……」

 

 ふと、既視感にとらわれた。

 昔、こんな風に屋根に登って、星の話を一晩中していたような気がする。

 いつだったろう……。

 誰とだったろう……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、織姫と彦星は、1年に1度だけ会うことを許されたんだ」

「ううっ、可愛そう」

「何だ、スフィー、涙なんか流して」

「その二人の事を想って、泣いてるのっ!!」

「……なんだ、お腹でも減らしたのかと思った」

「まったく、これだから乙女心を理解しない鈍感男は……」

「そんなに、鈍感かなあ」

「鈍感も、ここまで来ると犯罪というレベルね」

「そういうもんか?」

「そういうもんよ」

「でも、別に誰かに迷惑かけてるわけでもないし」

「……あたしには迷惑がかかってるんだけどな……」

「なんか言ったか?」

「別に〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お父さん、どうしたの? なんで泣いてるの?」

「えっ」

 

 気づいたら涙を流していた。

 それにしても、何で泣いてるんだ?

 

「なんだろう……何か思い出しかけたような気がしたんだけどな」

「そろそろ、中に入ろうよ」

「そうだな、そうしようか」

 

 

 柔らかい笑顔がそこにある。

 暖かい生活がそこにある。

 これを幸せと言うのだろう。

 

 しかし、ふと思うときがある。

 もし、他の道を選んでいたら。

 そこにはどんな自分がいただろうか?

 

 

 

 その時の自分は、幸せを手にしていたのだろうか? 

 その幸せとはなんだったのだろうか?

 

 

「お母さんっ!! お腹減った〜」

「はいはい、すぐご飯にしますからね」

「ビール冷えてるかな」

「さっき、冷蔵庫に入れておいたから、冷えてるはずですよ」

 

 

 きっと……どこにでもあるような、平凡な幸せ。

 でも、それこそが一番の幸せ。

 今、その手の中に幸せがある。

 

(終わり)