(注)このSSは「痕」の千鶴END後を想定して書かれてます。
   できればゲームをクリアしてからお読みいただけるとよりお楽しみ頂けます。
   尚、このHPに寄稿した「悲しいすれ違い」の続編にあたりますので
   ぜひそちらを先にお読みください。
   苦情、抗議、剃刀等危険物は管理人さんでなく作者まで。


「悲しいすれ違い-step2-」


 うう……体が……。


医者「これだけの怪我を負うとは……熊か何かに襲われでもしたんですか?」

千鶴「……いえ……その……」

医者「幸いにも致命傷はありませんのでしばらく入院すれば治るでしょう」

千鶴「そうですか……」


 千鶴さんがほっとした表情を浮かべてる。

 あんまり俺の怪我は深刻じゃ無いようだな……イテテ。


医者「まあ、このまま2ヶ月は絶対安静です」

千鶴「それでは、よろしくお願いします」


 深刻じゃん。

 イタタタ……聞いたら余計に痛みが……。



 バタン。

 戸を閉めて医者が帰って行く……。

 
千鶴「耕一さん……すいません」

 千鶴さん……。

千鶴「私のせいで……」

耕一「気にしないでよ、とりあえず無事だったし誤解も解けたし」

千鶴「でも……」

耕一「これから千鶴さんに看病してもらえると思えば却って嬉しいよ」

千鶴「そんな」

 千鶴さんが頬に手を当てて恥ずかしそうにうつむいてる。

 うう……。

 か、可愛い……。

 この可愛さは反則だって。

 くそ〜、体さえ無事なら思いっきり抱きしめてるのに……。



 俺の名は柏木耕一。

 鬼の血を引いてること以外は平々凡々な唯の大学生だ。

 つい先日ある勘違いから死にかけた……。

 くわしい事情は……思い出すのも嫌だから勘弁してくれ。

 誤解が解けた後、こっそり従姉妹達の住む隆山まで行き、
病院へ入院したと言うわけだ。
  
 下手に体を調べられるとまずい、という事情もあったわけで、
いわゆるコネのある病院に入院したわけだが……。

 ちょっとした不安はあるよなあ……。

千鶴「じゃあ、ちょっと着替えとか取りにいったん家のほうに行きますから」

耕一「あれ、着替えなんてあったかな」

千鶴「叔父さまの服とかがありますよ」

 体格もほとんど変わりませんから……そう言い残して千鶴さんは部屋を出て行く。

 親父の服か……嬉しいような悲しいような……。

 ガチャッ。

千鶴「そうそう、私が居ないからって浮気しちゃだめですよ♪」

耕一「も、もちろん、するはずないじゃないか」

 千鶴さん……目が笑ってないよ……。


 そう、心配事というのはこれが一つ。

 どういうわけか鬼の血に目覚めてからと言うもの、
女の子によくもてるようになってしまった。

 おそらくは鬼の生命力やなんかに惹かれてるのだろうとは思うが……。

耕一「千鶴さん嫉妬深そうだしなあ」

 まあ、あれだけの美人に一途に思われてるのだから、
贅沢な悩みと言えそうだが……。

看護婦「柏木さん、体、大丈夫ですか」

耕一「ええ、問題はありませんから」

看護婦「そうですか」

 千鶴さんが居ないと何人も看護婦さん達が集まってくる。

 考えてみれば俺って、この隆山では名家の坊ちゃんだからなあ、
この人達にしてみれば玉の輿……。

 いや、きっと純粋に患者の体を心配してるんだろう、そうに違いない。

看護婦「何かあったらすぐに呼んでくださいね、急いで来ますから」

耕一「はあ……ありがとうございます」

看護婦「お礼を言われるほどのことじゃないですよ」

 さて、今のお礼を1時間に五回も六回も言えるほどこの病院は暇なのだろうか。

 まあ、入院したことで少なくても餓死することだけは間違いなく免れたからなあ、
良しとするしかないんだろう……このときはそう思っていた。



楓「耕一さん……」

耕一「あれ、楓ちゃん、どうしたの、もう学校終わり?」

楓「今日は午前中で授業終わりだったんです、学校からこの病院近いので」

 美人四姉妹の三番目、楓ちゃんがお見舞いに来てくれる。

 楓ちゃんが来ただけで殺風景だった病室が、
急に色を取り戻したかのように、華やかになった気がする。

 部屋の温度まで急に暖かく感じられるから不思議だ。

 うう……やっぱり隆山に来て良かったよなあ。

楓「お花を買ってきたんですけど……花瓶はありませんか?」

耕一「あ、枕もとにあるけど」

楓「あ、はい」

 タッタッタ……。
 
楓「きゃっ!」

 ツルッ……ゴチ〜ン……。

耕一「(いつつ)大丈夫かい、楓ちゃん」

楓「(うう……)すみません……私……耕一さんに……こんな」

 楓ちゃんにもうっかりした所があるようだ。

 転んでしまった楓ちゃんと俺とで頭をぶつけ合ってしまった。

耕一「気にすることないよ……ちょっとびっくりしたけど」

 自由に動く右手で楓ちゃんの体を支えながら答える。

 う〜ん……楓ちゃんって良い匂いがする〜……。

 そんなことを考えていたときだった。

千鶴「こ、こ、こ、耕一さん!!」




(5分前)

千鶴「ふう……ちょっと時間かかったわねえ」

 ふだん家事を梓に任せっきりにしてたから、叔父様の服を探すのに手間取ってしまった。

千鶴「耕一さん待ってるかしら」

 けど、そのとき目に飛び込んできたのはとんでもない図だった。

 楓が……耕一さんと……重なって……まさかキス!!

楓「すみません……私……耕一さんに……こんな」

耕一「気にすることないよ……ちょっとびっくりしたけど」

 こ、こ、こ、耕一さん!!



(現在へ戻る)

千鶴「う、浮気は男の勲章とは言いますけど、いくらなんでもあんまりです!!」

耕一&楓「はいっ?」

千鶴「だ、だいたい、楓、あなたまだ高校生なのよ、そ、そんな不謹慎な」

耕一&楓「あの〜もしもし?」

千鶴「言い訳なんて聞きたくないです、見苦しいですよ!!」

耕一「いや、だから……」

千鶴「そうやって私のこと二人で笑ってたんですね、どうせ私は年増で胸無し寸胴ですよ!!」

 胸無しと言った瞬間、楓ちゃんの目が獲物を狙う猫のように細くなった。

 あの〜……もしもし?

楓「千鶴姉さんいいかげんにして!!」

千鶴「……楓」

楓「いくら実の姉でも許せない!!」

 か……楓ちゃんが……きれてる……。

楓「そうやって誤解するから、耕一さんがあんな大怪我したのよ、
もう姉さんなんかに任せて置けない!!」

 き、気温が……下がってゆく……。

楓「大体、年増のおばさんより若い私のほうが絶対いいに決まってるんだから!!」

 あの〜もしもし?

千鶴「か・え・で・ちゃ・ん・い・ま・な・ん・て・い・っ・た・の・か・し・ら・?」

楓「何度でも言ってやるわ、年増のおばさんは用済みって言ったの!!」

 聞いちゃいねえ(泣)

千鶴「殺ス!!」

楓「耕一さん、待っててください!! 今、千鶴姉さんからあなたを取り戻しますから(ポッ)」

 
 鬼が二人……闘いを始めてしまった。

 きっとそのうち俺も巻き込まれるだろう。

 前回は鬼の力で受身に徹したからなんとか生き延びれた……。

 しかし、身動きの取れない今の状態では……。


 俺は、「鬼でも蛇でもなんでも構わないから助けてくれ」とか願ったことを……
今、心から後悔していた。

耕一「親父、もうすぐ会えるかもな……」

千鶴「シャー!!」

楓「はあああああああ!!」


(続くかも)