(注)このSSは「痕」の千鶴END後を想定して書かれてますので、できればゲームをクリアしてからお読みいただけるとよりお楽しみ頂けます。
尚、このHPに寄稿した「悲しいすれ違い」の続編にあたりますのでぜひそちらを先にお読みください。
苦情、抗議、剃刀等危険物は管理人さんでなく作者まで。

 

 

『悲しいすれ違い-step6-』

 

 

 

 

耕一「思えば、長かったよなあ……」

 お袋が死んでから一人。

 大学生として長年暮らしてきたアパート……。

耕一「いろんなことがあったっけ……」

 つらいこともあったし、悲しいこともあった。

 しかし、それだけじゃなかった。

 いろいろな思い出が、頭の中を駆け巡ってゆく。

 

大家さん「で、賠償のことなんだがね、事故という事でなんとか保険が下りそうだから気にしないでおくれ」

耕一「申し訳ありません……」

大家さん「事故なんだから仕方ないでしょう、そんなに頭を下げなくても……」

 

 事故じゃないんですぅ。

 よっぽど言いたかったが、言うわけにもいかなかった。

 

楓「耕一さん、ごめんなさい」

梓「ごめんなさい」

千鶴「まったく、あなたたちは、耕一さんの事をよく考えて行動しないと……」

 千鶴さん、前に病室を破壊した事をすっかり忘れてませんか?

耕一「まあ、二人とも悪気があったわけじゃ無し、しょうがないさ」

楓「耕一さん……」

梓「耕一……」

千鶴「まったく、耕一さんはこの子たちに甘いんですから」

初音「それで、お姉ちゃん達はどうして、ここにいるの?」

 

千鶴&梓&楓「は、初音」

耕一「あれ、初音ちゃん、どうしてここに」

初音「お姉ちゃん達がみんな居ないから、きっと耕一お兄ちゃんの所に行ったんだろうって」

耕一「そうか、それで追いかけてきたんだ」

初音「うん♪」

 そうだよな、この娘は淋しがり屋だからな。

 意識的に右手に持ってるものは無視する事にした。

千鶴「初音、ダメよ、あなたが包丁なんて持ってると、いろんな所から文句が来るんだから」

初音「あっ、そうだね、お玉にしなきゃいけないよね」

 そうだよね、やっぱり初音ちゃんときたらお玉を持ってないとね。

 俺は、右手に持ってるものの色は意識的に無視した。

梓「初音、だめだろ!! 人の血は洗ってもなかなか落ちないんだから、拳で殺っておかなきゃ」

初音「あっ、そうか、包丁がもったいないもんね、ごめんなさい」

 俺は、会話自体を意識的に無視する事にした。

 そう、右手に血のように赤く染まった包丁があるのは気のせいだ。

楓「初音、ちゃんととどめは刺して来た?」

初音「大丈夫、動脈を刺してきたし、鬼の力も使ってるから、何があったか覚えてないよきっと」

 俺は、会話自体を意識的に無視してるんだ。

 何も聞いちゃいないぞ。

 早く話題を変えなくちゃ。

耕一「そういやさ、みんなお腹すかないか?」

千鶴「それでしたら、私が作って……」

耕一「ごめん、部屋が壊れちゃったから、作ってもらうわけにも行かないんだ」

 部屋が壊れてて良かった。

 俺は生き延びた事を感謝した。

耕一「そうだね、どこかの食堂にでも行こうか」

楓「耕一さん」

耕一「え、何かな」

楓「耕一さんの行ってる大学の、学食に行ってみたいんですけど」

 学食か……。

耕一「どうして?」

楓「大学が、どういう所なのか見たくて……」

 なるほど……楓ちゃんも、もうすぐ受験生になるわけだしな。

梓「あ、あたしも見たい」

初音「行きたいっ!!」

千鶴「もう、あなた達は……耕一さんを困らせちゃダメでしょ」

耕一「いや、いいよ。どうせ、大学に行く用事もあるし」

 そう、不動産がらみの情報を集めておかないとな。

 明日からは、しばらく友達の家にでもお世話になるとしますかね。

 

 そんなわけで、大学の学食についた。

楓「結構綺麗ですね」

 まあ、そうかな。

 うちの大学の学食は、2箇所。

 今日来た方は、カフェテリアみたいになっていて、女の子に人気がある。

 いつもなら、こっちには来ないのだが、今日は女の子がいっしょだし。

千鶴「女性の方も多いんですね」

耕一「文系の学部が多いからね」

 向こうに行った方が良かったかもしれない。

初音「どんなメニューがあるの?」

耕一「色々あるけど……とりあえず、食券を買おうか」

 ここは食券制なのだ。

梓「へ〜、結構種類があるもんなんだね」

耕一「後は、向こうのミニコーナーみたいな所で、サラダバーとかサンドイッチバーもやってたかな?」

 とりあえず、『カレーライス』を大盛りで注文する事にした。

 野菜を食べないと、何か言われそうなので『サラダバー』の券も買っておく。

 みんなもパスタ等のメニューを頼んで、一緒のテーブルに向かう。

 そうだ、ついでに水も持ってこようかな……。

由美子「あれ、柏木君、こっちくるなんて珍しいね」

耕一「あれ、由美子さん」

 ふと、後ろの方から殺気が立ち上ったような気がした。

由美子「柏木君、最近つきあい悪いぞ。みんな文句言ってたよ」

耕一「ははっ、最近は色々と忙しくて」

 頼むからこれ以上余計な事を喋らないでくれ。

由美子「特に男の子がね、君が居ないと女性の集まりが悪いから大変だって」

耕一「……ははは」

 冷や汗が浮かぶ。

 俺の後方は殺意と冷気が渦を巻いていた。

由美子「私もあんまり話してると、君のファンに付け狙われるかもしれないから怖いんだけどね」

 由美子さんが言ってるのは、おそらく冗談のつもりなんだろうな。

 俺の中の鬼は今すぐここから逃げ出せと警告する。

由美子「それじゃあね、ゼミにはちゃんと来なさいよ。前みたいに女の子とデートしてサボったりしたらだめだからね」

耕一「うん、それじゃあ」

 笑って手を振っただけでも……全ての精神力を使いきったような気がした。

 みんなの待つ席へ……。

楓「耕一さん……もてるんですね」

 楓ちゃん、頼むからそんな目で俺を見ないでくれ。

初音「お兄ちゃん……人気あるんだね」

 初音ちゃん、日頃の愛らしさはどこへいったのさ。

梓「……」

 梓、睨むだけじゃなくて一言ぐらい何か言ってくれって。

千鶴「耕一さん……信じてますから(にっこり)」

 千鶴さん、目が笑ってないよ……。

 

 俺は、どうして従兄弟達を大学に連れて来てしまったんだろう……。

 後悔ばかりがグルグルと頭の中を駆け巡っていた。

 明日の日は拝めるのかな……。

(続く)