(注)このSSは「痕」の千鶴END後を想定して書かれてます。できればゲームをクリアしてからお読みいただけるとよりお楽しみ頂けます。 尚、このHPに寄稿した「悲しいすれ違い」の続編にあたりますのでぜひそちらを先にお読みください。 苦情、抗議、剃刀等危険物は管理人さんでなく作者まで。

 

 

『悲しいすれ違い-step5-』

 

 

耕一「はっはっは、ハクション!! ずびびびいい(鼻をかむ音)」

 うう……風邪ひいてしまった……。

 柏木家からこっちに戻ってきて、ちょうど10日目。

 最初はいよいよ俺も花粉症になったかなと思ったのだが……。

 

耕一「よりによって、こっちに帰ってきてからひかなくてもなあ」

 

 むこうでひいてりゃ、従姉妹達が看病してくれたろうに。

 なんて運が悪いんだろうなあ……。

 

 一人暮しの最大の難点。

 病気になると何もできないというもの悲しさ。

 うう、俺何か悪い事したっけかなあ。

 しかも、前にできた傷が治りきってないからかなりつらい。

 

耕一「そうか、考えてみれば、怪我のせいで体力落ちてたから病気になったんだな(棒読み)」

 人、それをご都合主義といふ。

 

 ま、それはともかく……。

耕一「おかゆでも作るか」

 両手は動くし、米は隆山から送ってもらった。

 しばらくは問題ない。

耕一「鍋に水を入れてと、米を入れて」

 ぐつぐつと煮込む事しばらく……。

耕一「普通のご飯になってしまった……」

 しかも固め。

 炊飯器で炊くべきだった……。

耕一「まあ、いい。とりあえず食うか」

 その時、ふと気づいた。

耕一「おかずになるものがないなあ」

 そう、米はあるし、金もあるのだが……。

耕一「前の状態から何も買ってなかったな」

 仕方ないので禁断の秘技! ソースかけご飯!!

耕一「と思ったらソースも無いや」

 冷蔵庫を漁ると賞味期限のきれたバターを発見。

耕一「バター醤油ご飯だな」

 ご飯を皿に盛って、バターを一欠のせて、醤油を上からかける。

 うむ、これだけなのに、なんと深い味わいを見せる事か!!

耕一「おかわりはマヨネーズご飯にするか」

 これも単純、マヨネーズをご飯にかけるだけ。

 少々癖のある味ではあるが、それなりにいける。

 マヨネーズが好きな人ならたぶん問題無い。

 というより、ほんの少し前まで水のみで暮らしていたのだ。

 贅沢をしては罰が当たると言うもの。

耕一「白い飯が食えるだけでありがたいと思わねば」

 手を合わせて拝んだりしてみたり。

 

 ピンポーン

 

耕一「あれ? 誰か来たのかな? は〜い、今出ます」

 

 ガチャ

 

楓「耕一さん……」

耕一「楓ちゃんじゃないか、どうしたんだい?」

楓「なんとなく、耕一さんに会いたくなって、つい来てしまったんです(ポッ)」

耕一「え、本当に?」

楓「隆山から、一昼夜通して走ってきました」

耕一「はい?」

楓「どうしても会いたかったから……」

耕一「ちなみに、誰かに、ここに来るって言った?」

楓「いいえ、言ったら千鶴姉さんが絶対邪魔しますから」

 う〜む……後で血の雨を見そうだが……

楓「きっと耕一さん、ろくなもの食べてないだろうから、栄養のある物作って上げようと思って」

 うん、全くもってそのとうり。

耕一「ありがたいなあ、楓ちゃんの手料理か」

楓「待っててくださいね、今日の夕食は美味しい物作りますから」

 そう言って、楓ちゃんは材料を買いに行った。

 う〜む、ありがたい。

 と思ったら、5分と経たない内に戸が開く。

耕一「あれ、何か忘れ物でも……」

梓「よう、元気? 飯作りに来て上げたよ」

 あずさ?

耕一「もしかして、一昼夜走って来たのか?」

梓「そうだけど……どうかした?」

耕一「一応聞くが、誰かにここに来るって言ったか?」

梓「言ったら千鶴姉が邪魔するだろうから言ってないけど」

耕一「だろうな」

 後で、血の雨が降ることは確定したな。

耕一「実はな、梓、ちょうど、5分ほど前……」

 カチャ

楓「耕一さんが何食べたいか聞くの忘れてました、何に……梓姉さん?」

梓「楓……あんたいったい……」

 ややこしい事になってきた。

 きっと争いになるに違いない。

 すでに二人とも闘気を出し合ってるし……。

 今日の夕食は、まあともかくとして……。

 俺の部屋大丈夫かな?

楓「梓姉さん! 今日は、私が耕一さんに夕食を作るんですから邪魔しないで!!」

梓「楓!あんたこそ、じゃまするんじゃないよ!!」

楓「……決着をつける必要が……」

梓「……あるみたいだね……」

楓・梓「「はああああああああああ」」

 あ、熱出てきたかも。

 頭がクラクラしてきた……。

楓「はあああああああああああ!」

 どごーん!

梓「うおおおおおおおおおおお!」

 どかーん!!

 視界がぼやけてきた……。

 もうダメかな……。

  

 

 その頃……。

 数km先に……。

千鶴「ふんふんふん♪ 耕一さん、待っててくださいね、美味しい料理をお届けしますから」

 

 果たして、俺は生き延びる事ができるか?

 生き延びた方が地獄のような気はするな……。

(続くはず)