このSSは『痕』のネタばれを一部含みます。なるべくゲームをしてからお読み下さい。

 

『選ぶという事』

byフカヒレ

 時々考えることがある。

 俺は、本当にこの場所に居ていいのか……とか。

 俺は、本当は違う場所に居るべきなんじゃないか……とか。

 

 何も悩む必要は無い。

 俺の中のもう一人の自分が囁く。

 そうさ、悩む必要なんて無いんだ。

 俺も、そう思いこむ。

 

 そうして、どれくらい経ったのだろう……。

 

 思いこまなければやってられない。

 そんな風に考える時も、無いわけじゃない。

 他の選択肢を選ぼうなんて、考えた事も無い。

 だいたい、それは彼女達に失礼だろう。

 考えた事なんて無いはずだ。

 俺は俺でしかない。

 柏木耕一。

 次郎衛門ではない。

 あの娘には、悪い事をしたかなと思わないでもない。

 でも俺が愛したのはこの人だった。

 

 選択肢……。

 数年前の俺には、無数の選択肢が広がっていたはずだ。

 どこかでそれを選んで、

 またどこかで選んで、

 そして今の俺がある。 

 選んだ道が違うなら、違う俺が居たのだろう。

 

 今の俺自身に、不満があるわけじゃない。

 今の選択肢を、後悔もしていない。

 今の状況が、嫌だと思うわけでもない。

 

 それでも時々思う。

 違う道があったんじゃないか。

 違う生き方があったんじゃないか。

 

 思いはつきない。

 

 それでも……。

 

耕一「悩む必要なんて無いな」

 俺は千鶴さんが好きだ。

 それについて後悔した事は無い。

 好きな人といること。

 それで幸せを感じられるなら、それでいいじゃないか。

 俺には大きな幸せは要らない。

 普通の幸せがどんなものかは人それぞれだと思う。

 おれにとっては、好きな人といられることが一番の幸せなんだから。

耕一「親父が生きてたら聞いてみたかったな……」

 きっと親父の答えも……。

 

 

 

 

千鶴「耕一さん、夕食ができましたよ♪」

 きたか……。

 俺は今日死ぬかもしれないが、今までの人生を後悔はしなかった。

 そう、俺は千鶴さんと一緒にいられただけで幸せなんだ。

 きっとそうだ。

 今日に限って梓達が居なかったのは非常につらいが……。

 そうだ、好きな人に看取られながら死んで行くというのも、ある意味理想的な死に方ではあるかもしれない。

千鶴「耕一さん、お誕生日おめでとうございます♪ 1日早いですけど」

 誰かに誕生日を祝ってもらえるのは嬉しい事だとは思う。

千鶴「プレゼントは私の手料理です♪」 

 好きな人が手料理で祝ってくれる。

 素晴らしい。

 そういうことで納得する事にした。

 

耕一「千鶴さん、味見した?」

千鶴「いえ、してないです」

 

 

 

久慈さん誕生日おめでとうございます!!

 

(終わり)