このSSはKanonの2次創作です。
ネタばれはほとんど含まないはずですが、ゲームをやってから読む事をお薦め致します。
また、一部未成年者に不適当と思われる表現があったりしますので、そういう表現がおきにめさない方は読まないほうが宜しいかと。
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『最良の日』
〜奇跡の起きる瞬間〜
byフカヒレ
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祐一「やれやれ、今日はあと古典と体育か」
昼下がり。
昼飯を食べてしまうと、後の楽しみは体育だけになる。
祐一「今日こそは隣のクラスに勝ぁつ!!」
現在、男子の体育はバスケットボール。
隣のクラスと合同で行うため対抗戦となる。
北川「燃えているな、相沢」
祐一「おうっ……なんだ、妙に元気が無いな」
北川「今日から半そでだからなあ……」
祐一「なんだ? 半そでが嫌なのか?」
北川「女子の体育が見たかった……」
祐一「は? まあ、女子は陸上だからな、見れるわけ無いけど……」
しかし、陸上を見て、何が面白いのだろう。
例えばそれが、陸上の大会とかそういうものなら別にしても。
体育の授業レベルではねえ……。
祐一「何が面白いんだ?」
北川「相沢……お前には失望した」
祐一「何?」
北川「よく考えてみろ、俺達が半そで短パンなら女子の格好はなんだ?」
祐一「女子の格好?」
……
……
祐一「そうか……女子は今日から……」
北川「やっと分かったらしいな」
そうか、そうだったんだ。
祐一「すまん、北川。 俺はそんな重大な事実にも気がつかず浮かれていた」
北川「わかったくれたか、同士よ」
祐一「そうだ、女子の格好は……『ブルマ』なんだな……」
北川「そうだ、『ブルマ』なんだよ」
そう、女子の格好は半そでにブルマ。
しかも隣と合同なので二クラス分のブルマが校庭にあふれかえる。
ブルマが走り、ブルマが飛び、ブルマが……。
北川「しかも、もう一つの重要な事実がある」
祐一「何だ?」
北川「そう、女子の体操着の背中だ」
祐一「背中ねえ……あああああああああっ!!」
そう、今はおりしも夏。
そう、体操着の下の下着が……。
いや、下着などとごまかす必要もあるまい。
そう、体操着の下の『ブラジャー』……。
祐一「ばかなっ!! それでは我々は至宝とも呼ぶにふさわしい『ブルマ』と『ブラジャー』を見ることができないと言うのかっ!!」
北川「そうだっ!! やっとその事実に気づいたか、同士よっ!!」
祐一「なんてことだ、それではまるで、高校生活の楽しみを全て奪われたも同然では無いかっ!!」
北川「悔しい、悔しいぞ、天は我らを見捨てもうたかっ!!」
俺は、なんらかの奇跡が起きることを願った。
???「祐一君の願いはそれなんだね?」
祐一「ん? なんか言ったか北川」
北川「別に何も言ってないが?」
その時。
ざああああああああああ……。
北川「おっ、雨が降ってきたな」
祐一「まいったな、降るとは思っていなかったから傘なんて持ってきてないんだが……」
北川「はっ、相沢、どうやら天は我々を見捨ててはいなかったらしいぞ!!」
祐一「ん? はっ、そうか、雨が降ったと言う事は……」
北川「当然、女子の体育は、中に変更だっ!!」
祐一「ということは……」
北川「そう言う事だ」
俺は、もし神がいると言うなら、信じても良い気分になった。
まさに奇跡。
北川「奇跡って起きるもんなんだな」
祐一「そうだな」
???「うぐぅ、こんな願いで願いを使いきっちゃうなんてひどいよ」
祐一「北川、なんか聞こえなかったか?」
北川「いや、別に」
そして体育の時間。
いよいよ、待ちに待った体育の時間だ。
名雪「なんだか祐一、気合が入ってるね」
祐一「おお……」
名雪が……半そでとブルマだ……。
ああ、すらっとした足がブルマからのびて……。
半そでのおかげで、胸の形がはっきりと分かるよ……。
それに体操着の下からブラが薄くすけて……。
祐一「うおおおおおおおおおおおおお……」
名雪「気合入ってるねっ!!」
北川「相沢、どうだ」
祐一「北川、俺は今、生きていて良かったとしみじみ思ってるよ」
北川「うむ、まったく同感だ」
しかも、女子の体育が中になった為に思わぬ事態が生じていた。
先生「今日は男女合同でバスケにします」
汗が飛び散る。
胸がゆれる。
汗でますます下着が透ける。
北川「相沢……」
祐一「俺は今、生きていて良かったとしみじみ思ってるよ」
北川「うむ、まったくだ」
その時だ。
名雪「きゃっ!!」
祐一「どうしたっ、何があったんだ」
ちょうどシュート体勢に入ったときバランスを崩したらしい。
名雪「う、うん、ちょっと足をひねったみたい」
祐一「保健室に行くぞっ!! 背中に乗れ」
名雪「わっ、ちょっと祐一、歩けるよ」
祐一「いいから早くしろ」
名雪「は、恥ずかしいよ〜」
みんなに冷やかされながら保健室に向かう。
祐一「足、大丈夫か?」
名雪「うん」
しかし、これは……。
祐一「恥ずかしいよな」
名雪「そうだね」
まあ、確かに恥ずかしい。
しかし、それ以上に……。
名雪「でも、ありがとうね、祐一」
ぎゅっとしがみつかれた。
名雪「重くない?」
祐一「重い」
名雪「ひどいよ〜」
祐一「そんなには重くない」
重いとかそう言う問題ではなかった。
背中に、胸の感触がダイレクトに伝わってくる。
しかも手は、しっかり名雪のふとももを掴んでいる。
名雪の息が首筋に当たって……。
祐一「ああ……生きてて良かったって感じだ……」
名雪「祐一、何か言った?」
祐一「いや、何も」
雨はもう降り止んで、外は明るかった。
俺は、この時間が少しでも長く続けばいいのに……と思っていた。
名雪「雨、あがったね」
祐一「そうだな」
名雪「もうすぐ、保健室だね」
祐一「そうだな」
名雪「……祐一、聞いてる?」
祐一「そうだな」
名雪「陸上のマラソンと言えば?」
祐一「そうだな」
名雪「飲み物で何が一番好き?」
祐一「そうだな」
名雪「おっきな動物と言えば?」
祐一「そうだな」
名雪「……やっぱり聞いてないみたいだね」
祐一「そうだな」
名雪「祐一はお母さんのジャム食べたいんだよね」
祐一「そうだな」
名雪「私、祐一の事大好きだよ」
祐一「そうだな」
……おや?
祐一「今なんか言わなかったか?」
名雪「何も言ってないよ」
祐一「本当か?」
何か、大事な事を聞き流したような気がするんだが……。
名雪「今日は部活無いから、一緒に帰ろうね」
祐一「……ああ」
今日は最良の日だった。
明日もそんな日であったらいいな。
そう思った。