(注)このSSは「こみっくパーティー」の「彩シナリオ」クリア後を元に書いてますので、ネタばれを一部含みます。できればゲームをクリアしてからお読みください。なお、このSSの至らない点の全責任は作者にありますので、間違っても管理人さんに抗議のメール等をお送りになりませんよう、お願い致します。抗議、お叱り、感想等いつでも受け付けております。

 

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『Can You Feel My Heart?』

<序章>

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 私の心感じてください……。

 私の思い感じてください……。

 私の事を見てください……。

 

 

 あなたの心を私に感じさせて……。

 あなたの思いを私に感じさせて……。

 あなたを私に見させて……。

 

 

 もう離れたくは無いんです……。

 あなたと一緒に居たいんです……。

 

 もう一人は嫌なんです……。

 もう置いて行かれるのは嫌なんです……。

  

 

 

 

 

 

「彩ちゃん、今回はずいぶん淋しい話なのねえ」

「……はい……」

 南さんが読みながらため息をつく。

「でも、気持ちが、すごくこもってる感じでいいんじゃないかな。この話のヒロインとても良いと思うな」

 ふと、隣に目がゆく……。

 そこに和樹さんはいない……。

「そう言えば、和樹さんは、商業誌への持ちこみ用原稿書いてるんですってね」

「……はい……」

 今回はブラザー2のスペースは、このこみパには無い。

 和樹さんが今回はこみパに応募しなかったから……。

 だから……私は、久しぶりに一人で……。

「和樹さんのことだから、きっとすごいマンガ家になるわね、きっと」

「……そうですね……」

「なんだか嬉しいわね、知り合いが、プロのマンガ家になるかも知れないなんて」 

「……ええ……」

 そう、喜ぶべき事。

 和樹さんなら、きっとすごいマンガ家になるはず。

 そう……喜ぶべき事……。

 でも……。

「それじゃね、彩ちゃん……あらあら、ちょっと、由宇ちゃん」

「ん? なんや牧やん」

「これはダメですよ、ひどすぎます」

「ええやん、同人誌は売れてなんぼやもん、このマルチ本はオカズに最適、値段もお手ごろ」

 喜ぶべき事なのに……。

 どうして……。

 どうして……胸が痛いんだろう……。

 どうして……心が痛いんだろう……。

 どうして……私は……。

「過激過ぎるのはだめです、このマルチ本とピーチ本は発禁」

「そんな!! 牧やん横暴や、そんな殺生な〜」

「次のこみパに入れなくしちゃいますよ」

「げふう」

 どうして……私は……。

 

 

 

 

 

 

「俺さ、プロを目指そうかなって思ってるんだ」

「……プロに?……」

「うん、誘われてね、やってみないかって……」

「……頑張ってください、応援してますから」

「うん、ありがとう、頑張ってみるよ」

 

 こんな会話を交わしたのが2週間前。

 それから、2週間しか経っていない。

 それなのに……。

 

「すいません、スクリーントーンの61番はありますか?」

「……あ、はい、こちらです」

「すいません、この万年筆試し書きしたいんですが」

「……あ、はい、こちらでどうぞ」

 

 たった2週間なのに……。

 ずっと……離れているような……。

 

 

 淋しい……?

 

 

 私、淋しいのかもしれない……。 

 そうか、和樹さんがいなかったから淋しかったんだ。

 きっとそれだけだったんだ……。

 そうに違いない。

 だって……今度は別に置いていかれるわけじゃない……。

 置いていかれるわけじゃないから……。

 

「……帰りに和樹さんの所へ行こう……」

「すいません、色画用紙はどこですか?」

「あ、はい、こちらです」

 

 和樹さん、疲れてるだろうからハーブティーでも持っていこう。

 そうだ、ご飯を作ってる暇も無いだろうから、代わりに作ってあげたら喜んでくれるかもしれない。

 

 ……その時は考えもしなかった……。

 これから起こる事を……。

 でも……。 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何してんのよ、あんた、こんなとこで」

「なんだ瑞樹か」

「なんだとは何よ!原稿書いてるんじゃなかったの?」

 

 帰りがけに耳にしたのはこんな会話でした。

 

「ふっ、マンガの原稿ってのは、すきっ腹抱えて書けるほど甘くは無いんだ」

「和樹、あんた、もしかしてろくに食べてないとか……」

「その同情するような目付きをやめろ〜!!」

 

 和樹さん……楽しそう。

 瑞樹さん……楽しそう。

 

「あんた、親元から送られてきてる仕送りを何に使ってるのよ」

「大半は画材と参考資料で消えてるんだよなあ」

「まったく、どうしようも無いわねえ」

「そう言われてもなあ」

 

 どうして、私……悲しいんだろう……。

 どうして、私……淋しいんだろう……。

 

「しょうがないから、私が何か作ってあげようか?」

「うう、ありがとう、神様、仏様、瑞樹様」

「そういう時ばっかり調子いいんだから!」

 

 

 私もあんなふうに和樹さんと話したい。

 私もあんなふうに和樹さんと一緒にいたい。

 私もあんなふうに和樹さんと……。

 

 

 どうして、私……こんな気持ちになるの?

 どうして……私……不安なの?

 どうして……私……。

 

 気づいたときには涙が頬を伝っていた。

   

<続く>