The answer

Now is more important than the past

<中>

Written by マウントアイアン


 久流夢は彼女の家に向かって車を走らせていた。

 三日前に行った墓参り以降、彼女と、鳴子と会っていない。

 

『……久流夢、私とは結婚できないの?』

 

 この言葉が久流夢の頭から離れないでいた。

 墓参りからの三日間、久流夢は一人悩んでいた。

 鳴子の事、自分の事、そして母の事を……。

 

 鳴子の事は好きだし、結婚もしたい。

 母が死んだ時、鳴子がいなかったら久流夢も死んでいたであろう。

 母が死んでからの久流夢は鳴子が全てだったであろう。

 

 しかし、久流夢は母の事を忘れられないでいた。

 愛してしまった母を忘れる事なんて出来なかった。

 

 そんな考えが頭の中で回っていた三日間で、久流夢は答えを出した。

 悩みに悩んだ答え。

 

 その答えを言う為に、久流夢は鳴子の家に向かって車を走らせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、鳴子は自分の部屋にいた。

 

 鳴子も墓参りから帰ってからずっと悩んでいる。

 久流夢の事、自分の事、久流夢の母の事……。

 そしてあの時、なぜ久流夢にあんな事を言ってしまったのかを鳴子は考えている。

 考えているが、答えが有るのか無いのかすら分かっていない。

 

 そして、鳴子の考えて出る答えは何度考えても一つしか出ない。

 

『久流夢の答えに任せよう』

 

 である。

 鳴子は久流夢の事が好きだし、結婚もしたい。

 しかし、自分自身よりも久流夢の事を先に考えてしまう自分が嫌いではなかった。

 

 そんな鳴子だが、久流夢に聞きたい事が前から有った。

 

 久流夢は私と結婚したいのか?

 本当に私の事が好きなのか?

 死んだ久流夢の母の事を忘れて、私だけの久流夢になってくれるのか? 

 

 そして墓参りの時、鳴子は久流夢に聞いてしまったのだ。

 

『……久流夢、私とは結婚できないの?』

 

 その時は感情が高ぶっていた為に言ってしまったが、冷静になって考えると胸が痛い。

 

 しかし、後悔しているわけではなかった。

 中途半端な関係の状態で結婚するなら、ハッキリした方が良いと思っていたからだ。

 だから、久流夢にはゆっくり考えてほしい。

 

 そんな鳴子だったが、今すぐにでも久流夢の元に行きたがっている鳴子がいる。

 今すぐに久流夢に答えを聞きに行きたい鳴子がいる。

 

「あれから、一度も会ってないから……電話でもしてみようかな?」 

 

 鳴子が自分の部屋にある、子機を持って久流夢家の電話番号を押した。

 

 しかし、誰も出なかった。

 少し心が悲しかった。

 嫌な考えも頭に浮かんだ。

 

 私を嫌いになってしまったんじゃないか。

 もう会えないんじゃないか。

 

 もう一度、久流夢家に再ダイヤルしようとした時、家のチャイムが鳴った。

 

「はーい、どなたですか〜?」

 

 鳴子は自分の部屋を出て、玄関に向かう。

 

「今、開けます」

 

 玄関ドアを開けると、そこには久流夢がいた。

 

<続く>

 

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