The answer

Now is more important than the past

<前>

Written by マウントアイアン


 町外れにある寺に、若い男女が墓参りに来ていた。

 

 男の名前は『木村 久流夢(きむら くるむ)』

 歳は21歳だが、見た目は高校生でも通じる程若く見える。

 

 お墓には、久流夢の愛した女性が眠っている。

 久流夢は悔やんでいた。

 自分の愛した女を守れなかった事を……。

 自分の愛した女に気持ちを言えなかった事を……。

 自分の実の母を死なせてしまった事を……。

 そして今、彼女と結婚を一週間前に控えた日になっても忘れられないでいる事を……。

 

 彼女の名前は『佐藤 鳴子(さとう なるこ)』

 まだ、名字は変わっていない。

 歳は男より2歳年上の23歳。

 見た目は、歳よりも上に見える。

 多分、30歳と言っても通じるだろう。

 

 鳴子も悔やんでいた。

 傷ついた彼を未だに救えない事に……。

 傷ついた彼につけ込んで結婚しようとしている事に……。

 傷ついた彼が私に何も言ってくれない事に……。

 

 悔やみ続ける久流夢と鳴子はお寺から歩いて5分位の所にある墓に着いていた。

 しかし、二人とも何もしない。

 何も話さない。

 ただただ、お墓を見つめていた。

 

 重い沈黙。

 時間だけが進んでいった。

 

 お墓に到着してから10分が過ぎようとしていた。

 沈黙を破ったのは久流夢だった。

 

「母さん、俺、こいつと、鳴子と……」

 

 言葉がぎこちない。

 

「鳴子と結婚します……」

 

 久流夢は泣いていた。

 まだ母の事を忘れられないのであろう。

 

「久流夢、もう泣かないで。私じゃ……私じゃダメなの?」 

 

 鳴子も泣いている。

 

「私じゃ久流夢のお母さんに勝てないの?」

 

 久流夢はお墓の前で泣き崩れていた。

 

「……久流夢、私とは結婚できないの?」

 

 その言葉に久流夢は何も答えられなかった。

 

「今じゃなくて良い、今じゃなくて良いから、久流夢の答えを教えて。」

 

 言い終えてから、鳴子は何かに追われる様に走って行った。

 久流夢は鳴子の背中を見送るだけ。

 ただただ、お墓の前で泣き続けるだけだった。 

 

 

<続く>

 

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