このSSは、久慈光樹様のSS「異能者」の三次創作です。

ですので、異能者本編を読んでからお読みください。

13章まで読んでいないと分からないと思います。

あと、KanonSSですので、Kanonをやってからお読みいただくと、より一層楽しめます。


異能者

〜三次創作〜

夢と現実の狭間で……

Written by マウントアイアン


 「はぁはぁはぁはぁ……」

 

  一人の少女が道を全力疾走していた。

  歳は10代前半位だろうか。

  背中には変な羽がついているリュックが背負われている。

  そして、大事そうに持っている袋。

  中身はタイヤキである。

  そんな少女が道を全力疾走している。

  道と言っても、きちんとした道ではない。

  争いで壊れ壊された道である。

 

 「またんかい、こら〜!!!!」

 

  叫びながら追いかけてるのがタイヤキ屋の主人。

  顔は怖いが性格も怖い。

  しかし、可愛い趣味の持ち主である。

  その証拠に、エプロンの柄には「タイヤキの絵」と「いらっしゃいませ」が描かれている。

  そんな主人、手には拳銃を持っている。

  もちろん、全力で逃げている少女を捕まえる為だ。

 

  先に言っておくが、この時代、人を殺しても罪にはならない。

  銃刀法なんて無いし、そもそも法律なんて物すら無くなっていた。

  いや、在るには在るが機能していないだけか。

 

 「はぁはぁ……待たんかい!!!はぁはぁ……待たな撃つぞ!!!」  

 

  主人はマシンガンを構える。

  狙いを定めて撃つ。

  乾いた射弾音が街中に響き渡った。

  銃弾は少女の脇を逸れて、どこか遠くへ飛んでいった。

  主人がわざと当てないでいるのか、それとも腕が悪いのかは分からない。

  そして、また追いかける。

 

 「うぐぅ……はぁはぁ……本当に撃つなんて、はぁはぁ…思わなかったよ」

 

  少女はビックリしながらも全力疾走をやめないでいる。

  息切れをしていたが捕まるまいと必死で逃げる。

 

 「はぁはぁ……待たんかい……こらっ……」

 

  主人も息切れしてきたらしく、言葉にも勢いが無い。

  

 「はぁはぁ……次を右に曲がったら…はぁはぁ…いつもの所……そこに隠れよ……」  

 

  少女は道を曲がり、そこにあるはずのドアに入ろうとした。

  しかし、そこにはドアなどは無く、壁が在るばかりであった。

  

 「どうしよう〜。曲がる所を間違えちゃったよ〜」

 

  そう言って少女はさっきの道に戻ろうとした。

  しかし、そこには主人が拳銃を構えて立っている。

  

 「はぁはぁ……もう逃げられへんで〜」

 「うぐぅ……」    

 

  少女もどうして良いか分からない。

  辺りを見回しても、在るのは壁だけ。

  人間も、主人以外はいない。

 

 「お前の運命も終わりやな。タイヤキの為に死ぬなんてな〜」

 

  この状況、どう考えても少女はもう死ぬしかなかった。 

  主人も少女もそう思っていたに違いない。

 

 「まぁ、タイヤキはあの世で食えや。それはワシがおごっといたるわ」

 

  主人は拳銃を少女に狙いを定めて撃った。

  またもや、街中に乾いた射弾音が響き渡る。

  さすがにこの至近距離、外す方が難しい。

  主人も少女に当たったと思っただろう。

  しかし、少女は無傷でピンピンしている。

 

 「あれ?ボク、まだ生きてる。それに、痛くない」 

 

  少女の前に主人が撃ったであろう弾丸が落ちている。

  

 「なんやなんや?どういうこっちゃ?」

  

  主人はかなり焦っていた。

  それはそうだろう。

  じぶんが少女に向かって撃った弾が、少女に当たらずに落ちているのだから……。

  しかし、その出来事を信じようとしなかったのだろう主人はもう一度少女に銃口を向けた。

  その時、少女に変化が現れた。 

  

 「あれ、ボク体が熱いよ〜」

 

  少女の体は少しだが、確実に光輝いている。

  その光は少しずつ大きくなっている。

  それ以外にも変化はあった

  背中の羽が少しずつ大きくなり、少しずつ浮遊していく。  

 

 「おぉ……すげ〜」

 

  主人は銃口を向けながらもその少女に見入っていた。

  まるで、天使でも見るような目で見ている。

  先ほどの行動が嘘のようである。

 

 「あぁ、もしかして……天使……」

 

  主人には少女が天使に見えたらしい。

  さっきまで少女に向けられていた銃口も下を向いている。

  その少女は祈るように手を胸の前で組み、目を閉じている。

  光がどんどん輝きを増していく。

  そして、光が最高潮に達した時

 

 『天使の涙』(エンジェルズティアー)

 

  少女の背中にある翼がより激しく光輝く。

  その光が主人に襲い掛かる。  

  まるでその光は生きているよう。

  

  主人の体を突き破り、串刺しにする。

  主人にとって、天使が一瞬にして悪魔に変わったのであろう。

  死顔は恐怖に満ち溢れていた。  

 

  すべてが終わった後、少女の目に主人が串刺しになって倒れている姿が写った。

 

  少女は悲しみに打たれていた。

  人を殺した事に…… 

 

 「ひっく……ボク…ひっく……人を殺し……殺しちゃったよ……」

 

  少女は傷ついていた。

  人を殺した事に……

 

 「ひっく……どうしよう……えぐっ……」

 

  戸惑っていた。

  人を殺した事に……

 

 「ひっく……どうして……ボク…ひっく…人を殺せたの……」

 

  疑問をもっていた。

  人を殺した事に……

 

 「あれは……ボクの力……?」

 

  不思議がっていた。

  自分の異能力に……

 

 

  

  この時、この少女は初めて自分が異能力者であることを知った。

  夢と現実の狭間で……

 

 

<Fin>