※ この作品は久慈光樹さんの『異能者』の三次創作です。これを読んで『異能者』本編の世界観が壊れても、作者 としては一切の責任をとりかねますので、その辺はご了承下さい。

   ちなみに、この作中に出てくるのはONE側のキャラのみです。設定は、とりあえず原作(異能者本編)に準じていますが、結構適当なので保証はしかねたりします。

   ここまで読んで、「読むの止めようかな」と思わなかった読者様のみ、先をお読み下さい(^^;。

   それでは、どうぞ。

 

 異能者 

三次創作

『浩平起きなさい!」

 よっ、久しぶり。俺おれ、えっ、誰か分からないだって? 住井君だよ、ちみちみ。んっ、思い出したかい! ONEでもなかなかのサブキャラぶり、もとい美少年ぶりを示していたこの俺だよ。

 ゲームでは影が薄く、『異能者』本編では出番すらないこの俺だが、三次創作ともなれば勝手が違うぜ(ちっちっ『指をふりながら』)。

 それじゃ、この俺のエスコートで物語『浩平起きなさい!』行ってみようかっ!

 

 

 

 それは朝始まる。

 ONE、彼らの朝は早い。特に指揮官クラスともなれば尚更である。

 しかし、その総指揮の立場にいる「折原 浩平」が側近の女性に毎朝起こしてもらっているというのは、組織内では有名だったりするが、一般には知られていない。

 組織内でも、そんな事が知られれば、内部の人間も彼に対して幻滅してしまいそうなものだが、

『え〜、そこが良いんですよぅ、また。朝に弱い、眠たそうな瞼、そして留美様に叩き殺されそうになりながら目覚める浩平様♪ あぁ、たまらない

 とは、組織内のとある女兵士の弁。何故か、言葉が悦に入っている。お前、やばくねーか? お前がたまらないのは、そもそも浩平なのか、それとも留美なのか?

 なんつーか、大丈夫か? 色んな意味で。 ONE、何か組織的に間違ってんじゃねーの? と突っ込みを入れたくなるが、その辺は置いておこう。

 また、こんな一説も、

『私が聞いた話だと〜、何でも毎朝、瑞佳様と目覚めのキスをしてるって話よ〜』

 そんな事ことは、ゲーム中だけにしてくれ。いや、ゲーム中だけでもこの俺としては許し難いのだがな。

『え〜、うっそ〜。アタシ、しょっく〜』

 全くだ、俺もショックでならん。無論、そんな事は信じんがな。

『え? あたしは、澪ちゃんが毎朝、『精神刺激』、サイコプリズンをして起こしてるって聞いたわよ』

 いや、いくら浩平でも死ぬだろそれは…。

『どっちが本当よ〜』

 どっちも嫌だぞ。

『あたしよ、あたし。だいたい、精神刺激してどうやって起こすのよ。サイコプリズン使っちゃったら逆に起きないわよ、永遠の眠りについちゃうわよ』

 なるほど、それで浩平は『永遠』に旅立つわけですな。「永遠はあるよ。ここにあるよ」ってか。

『何でも、夢の中で澪ちゃんが『起きなきゃ、駄目なの』とかって感じで起こすって』

 いや、それじゃ起きないだろ。あいつの寝起きの悪さは、『寝起きの悪さここに極まれり』って感じだからな。

『え〜、違うわよ。あたしが聞いた話だとね―』

 話は、まだまだ続くご様子。

 どうにも、ONEはそーいった話が横行しているようで。

 何だか、そんなんでちゃんと戦えるんかい? てな感じですが、真実の程はどんなものなのか。今回は、ONEの語らざる朝の真実に迫ってみよう。

 えっ、何!? 俺の出番ここまで! 嘘だろ、おい。チョット待て、無言で去っていくな、待て作者〜〜!!

 

では、住井の前書きっぽい語りは置いておいて、本編どうぞ(作者)

(やはり、住井はサブキャラだったようだ。三次創作でも前座扱いである)

 

 

ラウンド1『 「狂戦士」留美 VS 「水魔」茜 』 

別名:荒れ狂う乙女 対 水も滴るいい女

                   (「荒れ狂ってないっての!」(怒)↑ By『乙女』留美)

 コツン、コツン。

 ONE基地内の廊下に、静かに足音が響く。

 まだ日も昇っていない、朝とも呼べない時間である。

 歩いているのは、七瀬 留美。異名『狂戦士』という名を持つが、それについては本編を参照ということで(略)。

 束ねてある、二つにお下げが『ラブリー♪』な自称『乙女』である。

『まぁ、ラブリー♪、とか言ってる時点で俺は違うと思うんだけどな』

とは、浩平の談。ちなみに関係ないが、作者としては浩平の意見に賛成である。

 とまぁ関係ないことは置いておいて、話を戻そう。

 彼女は、一人廊下を歩いていた。腰には剣が差されており、何故か基地内にも関わらず左手は剣に添えられている。

「今日は、さすがに誰も起きてないわね。ふふん♪ いつもより45分も早起きしたんだからね、そりゃ誰も起きてないわよね♪」

 腰の剣に手を添えつつも、何故か鼻歌交じりだ。早起きした時間が、細かいのも気になるところである。実は結構細かい性格なのか。

 と、彼女の鼻歌が急に止まる。

「誰?」

 注意深く、辺りに気を配りながら、前方の廊下に静かに問い掛ける。

 間もなく、前方の廊下の曲がり角から、一人の少女が現れた。

 豊かな長い髪を、二つに分け三つ編みにしている少女。そんな少女で、留美が知っているのは唯一人だ。

「留美さん、今日はやたらと早起きですね」

 『水魔』里村 茜は、それだけ静かに言った。ちなみに、『水魔』は本編参照の事。

 言う声はどこか冷たい。

「茜こそ早いわね、どうしたの?」

 明後日の方向を向きながら、留美は言うが、声が上ずっている。

「少し見回りです」

 茜の返事。

「そう、それじゃ私は散歩だから、これで」

 笑顔を取り繕って、その場を去ろうとする留美。

「とぼけても駄目です」

 明らかに、行動不信だった。

「わ、私は何も…」

 視線が泳ぐ留美。

「そっちは基地の出口じゃないですよ」

 冷静な突っ込みを入れる茜。

「ぐあっ、あ、アレよ。基地内の散歩もたまにはいいかな〜って…」

 それでも、何とか誤魔化そうとする留美。

「白々し過ぎます。そっちは浩平の部屋ですよ」

 そう言って、目を細める茜。

「ふっ、バレたら仕方が無いわね」

 何だか、何か吹っ切れたようにいう留美。

 仕方ないも何も、はなっからバレバレだったことを、彼女は本気で気が付いていなかったのだろうか。

「素手のあなたに、武器をつかうのは気が進まないけど…今日はあたしが浩平を起こすわ!」

 そう言って、留美が剣を鞘から抜き放とうとしたとき。

「へ?」

自分の体の異変に気付いて、留美は剣を抜く手を止める。

 なんとも、間抜けな声をあげる留美。

「ちょっと、何で水があたしの足を縛りつけてんのよ! どこから湧き出てて来た、こいつ!」

 と、憎たらしそうに自分の足を戒める水に向かって怒鳴りつける。

 留美の足には、水がまるで意思をもつかのようにまとわりついていた。しかも、廊下の地面と張り付いているのか、力いっぱい放そうとしても離れない。

 いくら茜が水を操る力を持っているとはいえ、水を出す力までは無い筈である。何故、こんな基地内に水があるのか。いや、水はあるとは思うがこんな廊下に流れたりしているわけがない。

 一体何処から出てきたの?

 留美が疑問を浮かべると。

「ここからです」

 とは、茜の弁である。

 そう言って、傍らに持った、アク〇リアスの2リットルのペットボトルを見せる。

「あ〜、何そんな物、携帯してるのよ。あ、ちょっと、待ちなさいってば、ずるいわよ。力を使うなんて!」

 出会っていきなり剣を使おうとした、「物騒度レベル120」くらいの留美が言っても説得力は、皆無に等しかったりする。ちなみに、レベルの最高は100だ、留美はMAXを越えている。

 茜は、その言葉に一度振り返り、

「留美さん」

「解いてくれるのね、茜」

 瞳を輝かせる留美。

 そんなわけないでしょう、と突っ込みを入れたくなる茜。

 あえてその突っ込みは入れなかったが、かわりに、にっこりと笑って、茜は、

「朝日が昇るまで、ごゆっくり」

 首を斜めに傾げながら、茜は言った。そのスマイルはマクド〇ルドの店員もびっくり、の完璧なスマイルだった。

「解け〜! 待て、あかね〜!」

 対し声を張り上げる留美のその姿に、『乙女』らしさは微塵も無かった。

「ペットボトルも結構、便利です」

 そんな事を言いながら、茜はその場を後にする。

 

 どうやら、ラウンド1は里村 茜の戦術勝ちだったようである。

「やれやれ、茜も毎朝何やってるんだか…」

 溜息混じりに、一人の女性が茜の後姿を見送りながら呟く。

 そして、その場の留美が自分に気がつく前にそこを後にする。

「助けろどうこう、言われても困るからね私は」

(反対側でも、やってるのかな今日も?)

 そんな事を思いながら。

 

ラウンド2『 「心眼」川名 みさき VS 「沈黙の」上月 澪 』

別名:四次元の胃袋を持つ女 対 なのなの星人

               (ひどいよ〜、わたしそんなに食べないよ〜↑ By みさき) ←「みさきさん、本気で言ってるのか? By 浩平)

 

 一方、同じく浩平の部屋に続く廊下の、全く逆側。つまり、反対側のルートの廊下では、こんな戦いが繰り広げられていた。

『みさきさん、行かせないなの』

 そういって、『心眼』川名 みさきに掴みかかる、『沈黙の』上月 澪。その勢いは獅子奮迅のごとくだが、勢いに体がついていっていなかったりする。

 しつこいけど、『心眼』 『沈黙の』については本編(もしくは、設定資料集)を参照。

「ふふっ、それじゃ私を捕まえられないよ」

 微笑を浮かべながら、楽しそうにその攻撃(?)を軽々とみさきはかわす。

 どべしゃ。

 そんな擬音語が似合いそうな音を立てながら、勝手に勢い余ってずっこける澪。

 なんとも、滑稽である。

『う〜、痛いなの』

 ちなみに、澪が使える精神攻撃は、事実上みさきには無効なので、みさき相手では澪は文字通り唯の女の子だったりする。つまり、澪は当たらんであろう物理攻撃を繰り返すことしかできなかった。

 澪は果てしなく、みさきに対して相性が悪かったのだ。

『えいっ、このっ、なのっ』

 何度も掴みかかっていくが、その度に見事に澪はみさきに攻撃(?)をかわされる。

 何と言うか、一流の格闘家でも、まずみさきには指一本触れることができないというのだから、徒手空拳で澪が勝てるはずが無かったりするのだが、その辺は『女の意地』みたいなものだろうか。

 さすがに銃弾などは無理かもしれないが、その辺の少女のまともに腰も入っていないようなパンチやキックは、彼女の相手の動きを見切るという『超感覚』の前では全くの無意味なのだ。

 その絵はまるで、闘牛とそれに対峙する闘牛士である。

 なんとも、笑える闘牛と闘牛士であったりはするが。その辺は、あえて突っ込まないでおこう。

「澪ちゃん、息が上がってるよ」

『まだまだなのっ』

「しかし、澪ちゃんも浩平君が好きなんだね」

『ちっ、ちっ、違うなの。たまには澪も浩平さんを起こしてみたいだけなの』

「うふふ、赤くなっちゃって、澪ちゃんは可愛いな」

 澪をからかっていたみさきだったが、ここで澪の思わぬ反撃が入る。

『み、みさきさんほど浩平さんを好きじゃないなの』

「えっ、そ、そんな私だって違うよ〜」

 ドキッ『みさきに精神ダメージ30P』

 精神的ダメージを与える方法が、澪には『サイコプリズン』のほかにもあったとは作者的にも意外な展開である。

 照れくさいような、情けないような、そんな声をだすみさき。顔は朱色に染まっている。

 こんな、よく分からん戦いを繰り広げている二人が、ONEの精鋭とは思えなかった。いや、正しくは思いたくなかったのかも知れない。

(やれやれ…、平和な組織だなぁ、ここは…)

 そんな事を胸中で、二人の戦いを眺めながら一人呟く。若干、溜息交じりだったりする。

(私は、側近にならなくて正解だったみたい)

 結構、本気で思う。

 二人は、その女性の視線に気が付かないようで、一心不乱に戦っていた。

 主に動き回っていたのは、澪だけだったが。

「これじゃ、毎朝の行事ね…皆、朝から元気なんだから」

 苦笑しながら、その女性はその場から姿を消した。

 ちなみにこの戦いは、澪が疲れてきたところにみさきが足をかけてお終い。

『うぅ〜、痛いなの』

 澪は余程疲れたのか、肩で息をしながら床へと座り込んだまま、立ち上がらなかった。立ち上がらなかった、のではなく恐らくは立ち上がれなかったのであろうが。疲れが、足にきていたのだろう。

「ごめんね、澪ちゃん」

 二人の能力の相性による問題から、『心眼』川名 みさきの圧勝であった。

 

 

 

 そして、運命の第三ラウンド。各勝利者、『水魔』里村 茜 対 『心眼』川名 みさき。

 それはまるで、竜虎相打つときであった。どの辺が? という突っ込みはちなみに却下です。

「今日は、みさきさんですか」

「茜ちゃん、私も譲れないよ」

 真剣な茜に対し、みさきはどこか悪戯っぽい笑みを浮かべて見せた。どこか、この朝の出来事を楽しんでいる感さえ彼女にはある。

 ペットボトルを取り出す、茜。

 さっと、それに対し何となく身構えるみさき。

 二人の熱い戦いが始まった。

 飛び交ういくつもの水球を、紙一重でかわすみさき。そして、全く攻撃の手を緩めない茜。

「さすがですね、みさきさん」

「ふふっ、茜ちゃんこそ。また腕を上げたみたいだね。私も疲れてきたよ」

 言いながら、あまり息が切れていなかったりするみさき。彼女の動きには全くの無駄が無いために、疲れが少ないのだろう。

 この広いとは言い難い廊下の中で、攻撃をかわすみさきの体さばきは見事なものである。

 しかし、完全に攻撃を見切っているとはいえ、攻撃らしい攻撃手段をもたないみさきとしては明らかに不利である。

 みさきとしては、茜が疲れて攻撃をやめる時を待つしかない。

「あたしも、疲れてきました」

 言いながら、茜も息は全く切れていない。

 異能者である彼女達の場合、その疲労多くは精神的なものだ。

 なんだかんだと、かれこれ十分くらい戦っているが、その間力を使いっぱなしでも、その力が全く落ちないのは、さすがは『異能者狩り』のメンバーの二人というところであろうか。大した、集中力、精神力である。

 二人の戦いは、数十分に及んだのだが、彼女達には一つだけ大きな誤算があった。

 彼女達は、浩平の部屋の前で戦っていたわけでは無かった。行く途中の通路で出会って、そのまま戦い始めたのである。

 つまり、彼女達は誰かが浩平の部屋に行ったとしても、そのルート次第では誰かが行った事に気がつけないのである。

 朝日はもう、昇り始めていたりした。

「この、二人は気付いてないのかな? これじゃ、二人とも共倒れだと思うんだけど。もう一人いるのにねぇ、浩平の事好きな女の子」

 またまた、女性は傍から戦いを見物しつつ苦笑しながら言った。長い髪が、ふわりと揺れた。

 そして、同じようにその場から姿を消した。

 彼女達に半ばあきれながら。

 

 

ラウンド4『一人勝ち?』

『母なる』長森 瑞佳

別名:だよもん星人瑞佳

 

 未だに、茜とみさきが戦っていたころ。(戦い始めてから、おおよそ10数分後くらい)

 一人の女性は浩平の部屋に向かって歩いていた。

「もう〜、浩平ったら。もう時間なのに、他の皆も起こしに行ってないみたいだし…。結局、私が起こしに行く事になるんだから…」

 何やらブツクサと言いながらも、嬉しそうに廊下に歩くその女性は『母なる』長森 瑞佳であった。

 ちなみに『母なる』に関しては〜(←しつこい)参照。

「全く、一人じゃ何も出来ないんだから。はぁ〜、心配だよ。浩平の将来が」

 そんな事を言っているうちに、浩平の部屋の前につく。

 ここに来る途中、何やら遠くから茜やみさきの声が聞こえた気もするが、気のせいだろう。

 とりあえず、扉を開けて入る。

「やっぱり、寝てる〜」

 そこには、幸せそうに鼾をかきながら眠る、ONEのリーダー、折原 浩平の姿があった。

「これが、リーダーなんだからね。はぁ、先が思いやられるよ…」

 そう言って、瑞佳は溜息をつく。何だか、毎日浩平を見るたびに、溜息をついている気がしてならない。

「全く、浩平にはちゃんとした奥さんが必要だよ…」

 と、うな垂れる。言いながら、ふと思う。

 以前、これと同じ事を浩平に言ったとき、浩平はこんな事を言ったものだ。

『だったら、お前がなってくれよ瑞佳』

「……(カァ)」

 その時の、浩平のからかうような声と顔を思い出して、つい頬が熱くなる。

「そういえば…」

 と、また違う事も思い出す。

『どうせなら、たまにはおはようのキスでもして起こしてくれ。同じ起こしかたはあきるだろ、やっぱり?』

 そう言う時の、彼の表情と声は本気なのか冗談なのか、どっちとも取れないのだ。起こし方に飽きるも何も、あったものではないような気もするが、彼の場合本当に同じ起こし方ばかりだと飽きそうなので、あながち冗談でもないのかも知れない。

「そ、そんなことも…い、言ってたよね…」

 言う瑞佳は頬を真っ赤にして、胸の辺りで指をもじもじしている。

「誰も見てないし…、たまには…ね」

 何が、たまには…ね。なのか分からないが、回りを確認するように見渡してから言った。

 ベッドの上で幸せそうに寝息を立てている、浩平にゆっくりと顔を近づける。

「あらら、今日は瑞佳ちゃんの一人勝ちかな?」

 浩平の扉の前で、ぼそりと呟く女性。ちゃっかりと、隙間から覗いていたりする。

 やはり何だかんだ言いながらも、女は色恋沙汰が好きなのだろうか。

 しかし、『今日は』とか言ってる時点でこの組織は駄目駄目である。お前ら、やる気あんのか? 毎朝、仲間同士で戦うな。

「あっ、来たみたいだね」

 やっとか、という感じで話す女性。

 ま、さすがにそろそろ起きないとね。

 腕時計を見ながら、女性は思う。

 何人もの足音が廊下に響いていた。3〜4人くらいが走ってこちらに向かっているようだ。

「さて、ちょっとばかし席を外しますか」

 そう言って女性は、その場から姿を消した。

 さっきから、幾度となく現われては消えていく、そんな芸当ができる女性はONEにも一人しかいないが、あえてこの女性には触れないでおこう。本編を読んだ方には、丸解かりですが。

 そして、瑞佳がゆっくりと頬に口付けをしようとしたその時だった。

 

 

ラウンド5『抜け駆けはいけません』

「急がないと」

「いつの間にか、瑞佳ちゃんが浩平君の部屋に着いてるよ」

 浩平の部屋に向かっているのは、茜とみさき。それに、

「あたしも行くわよ」

 どうやって、茜の水の戒めを解いてきたのか留美。

「どうやって、あれを抜けてきたんですか?」

「無理やり、引きちぎってきたわ」

「無理やりって…、すごい筋力ですね」

 水の結合を、無理やりとかでなんとかなるものではないような気もしたが、留美ならできそうで怖い。

「さすが『狂戦士』だね」

 とは、みさき。

「あんたたち、もしかしてケンカ売ってる?」

『まさか、そんな事』

 とは、茜とみさきは薄く笑いながら言った。

『ケンカは駄目なの』

 どこから、いつから出てきたのか澪。

「ケンカなんかじゃないよ」

「ケンカじゃありません」

「まぁ、そういう事にしといてあげるわ」

 計、四人が浩平の部屋に向かっていた。

「あっ、急いだ方がいいかも」

 みさきが言う。彼女は『心眼』の力を用いて浩平の部屋の様子を覗いていた。

 その言葉を聞いて、一同の足に余計に力がこもる。

 一同共に、迂闊だった、と思う。

 一人忘れていた事に。

 というか、瑞佳は浩平が起きてこないから起こしに行ったわけで、誰かがさっさと浩平を起こしていれば良かったわけである。つまりそんな事は、単なる言いがかりに過ぎないのだが…。

「浩平〜!」

 バン!

 扉を蹴り開けたのは、留美であった。

 スゥー。

 それでも、寝息を立てて起きない浩平。

 そして、

「み、瑞佳! な、何してるの…」

「い、いや…。な、何にも。何にもしてないよ」

 慌てて、手を振って否定する瑞佳。しかし、その顔は真っ赤だ。

 誰がどうみても先ほどの瑞佳の態勢は、キスをしようとしていたとしか考えられなかった。

 浩平の顔のすぐ傍に自分の顔を寄せ、赤い顔。誰が見ても、結論は一つだった。

「瑞佳ちゃん、抜け駆けはひどいよ。一人だけキスだなんて」

 やたらと、『キス』を強調して話すのはみさき。

『キス!?』

「キスなの!?」

 瑞佳とみさき、その二人を除いた全ての人の声が重なった。

「な、ご、誤解だよ。みんな。ほら、浩平。朝だよ〜、起きなさいってば」

 そう言って、ぴしぴしと、浩平の頬を叩く瑞佳。 

 しかし、その姿はあまりにも白々しすぎた。

「瑞佳さん…」

「瑞佳さんなの…」

「瑞佳…」

「瑞佳ちゃん…」

 それぞれの視線と言葉が、瑞佳に集中する。

「や、や、やだな〜。誤解だってば、みんな」

 ちくちくと、居心地の悪さみたいなものが体に突き刺さる瑞佳。

 それでも、シラを切ろうとする瑞佳。代わりに、浩平を起こそうとする手に力が入る。

「ほら、起きなさいってば。布団をはいじゃうからね」

「ん〜、もう食えないってば。勘弁してくれ〜」

 何を食べているのか知らないが、幸せそうに言う浩平を無視して、瑞佳は布団を剥ぎ取った。

 ここは、彼に起きてもらって何とか事をうやむやにして、この場をしのぐしかない。

「えいっ! …って、キャッ! ちょ、ちょ…ちょっと、待ってよ…」

 そう言って、一旦剥ぎ取った布団を戻す。

 その顔は、当社比で二倍くらいに真っ赤にだった。水をかければ蒸気が上がりそうなくらいである。

 布団の下を一番身近で見た瑞佳は、かなり慌てていた。

「あっ、うっ、えっと…」

 言いながら、部屋の中をくるくると廻る。その姿はまるで犬だ。

 傍から見ると、かなり間抜けである。

「えっ、ちょ、ちょっとどうしたの?」

『……(カァッ)』

 どうにも、留美だけはその瞬間を見逃したようだったが、他の皆には見えたようだった。

「え、なに? だからどうしたのよ、ねぇみさきさん」

 留美に尋ねられて、みさきが答える。

「浩平君…だっだよ…」

 言う顔は朱に染まっている。

「なっ!」

 言われた留美は信じられないといった表情だ。

 裸と言うと、つまりは生まれたままの姿であり、一糸纏わぬ姿ということである。

 つい想像してしまい、留美の顔もタコのように真っ赤になる。

「ん〜」

 そんな中、当の浩平が寝返りをうちながら目を覚ましたようだった。

 その頃には、瑞佳も落ち着きを一応取り戻したのか、大きく深呼吸をしていた。

「ん?」

 そして、部屋にいる皆の方に向いて。

「皆おはよう…って、何か皆顔が赤いぞ、風邪か? だめだぞ、皆体調には気をつけないと…ん?」

 言いつつ、自分の布団の中を覗く。異変の原因に気が付いたようだ。

「ま…まさか留美! こんなことを!?」

 驚愕の表情を作りながら話す、浩平。

「アホか! っていうか、何でまず一番に私なのよ、そんな事するわけないでしょ!」

 言う留美の顔は真っ赤だ。この辺はいかに、『狂戦士』といえども、一介の婦女子というところか。

「それじゃあ、瑞佳…」

「ち、違うよ。あたしじゃないもん」

 手を振って否定する瑞佳。

「まさか、みさきさんだなんて…」

 何故か、がっくりとうな垂れる浩平。

「なっ、私じゃないよ〜。ひどいよ、浩平君」

「それじゃあ…澪か」

『ちっ、違うなの! あたしじゃないなの』

「ムキになるのが怪しいな〜。澪だな〜」

 何故か、顎に手をあてたりしながら言う浩平。その仕草が若干オヤジ臭かったりする。お前はセクハラ親父か、浩平。

『本当に違うなの。あたしじゃないなの』

 顔を真っ赤にしながら言う、澪。

「ははっ、冗談だよ。でも…だとすると…」

「私じゃありません」

 赤い顔で、そっぽを向きながら言う茜。

「ううっ…、まだ何も言ってないぞ茜」

「私がやったんじゃ、ないです」

 きっぱりと言い切る茜。

 言い切られて、困った顔をする浩平。

「…じゃあ、やっぱり留美しか」

「えーい! やたらと真面目な顔で言うな、真面目な顔で!」

「だって、この面子を見る限り実行しそうなのは留美だろう」

「どういう基準よ! そんなこと、するか! できるか! 脱がすか!

「おー、新三段活用」

「あたしじゃないっつーの!」

「だって、お前だけ何か武器とか持ってるしさ、寝込み襲う気満々だろ」

「こ、これは…」

 返答に困る留美。

「って…なんでアタシが寝込みを襲わなくちゃいけないのよ!」

 言いながら、剣を抜き放つ留美。

 その手は、怒りと恥ずかしさで震えている。

 そして何故か、彼女の周りから『異能力』が開放されていくのが感じられる。

「えっ、ちょっと留美ちゃん?」

「ちょ、ちょっと待て、留美。基地内で力を使うなって、な?」

 悪ふざけが過ぎたと思ったのか、浩平が素直に謝り始める。

 しかし、それは少しばかり遅かった。

「地の果てまで飛んでいけー!」

 留美が持てる力の全てを持って振り抜いた剣からは、目には見えない衝撃波が発生する。その衝撃波は真っ直ぐに浩平へと飛んでいった。

 部屋にある調度品、ベッド・タンス・絨毯、様々なものが吹き飛び舞い上がる。

 反射的に、展開される皆の精神バリア。

ガン、キィン! 

 激しくぶつかる音と、弾くような音。

「ふー、危ねぇなぁ留美。ベッド吹っ飛んだじゃないかよ。危うく、俺も死ぬところだったぜ」

 精神バリアで留美の攻撃を防いだのだろう。ベッドの木片やシーツが舞う中で、浩平の声が聞こえる。

 木片や、シーツの舞うのが終わった時、浩平はやはりというか何と言うか、やっぱりのままだった。

 素っ裸で、精神バリアを展開している姿も何とも言えないものである。

 そして、先ほどの留美の攻撃で布団は跡形もなく吹き飛んでしまい、颯爽、浩平の体を隠すものは何も無かった。

………

 ほんの、2〜3秒くらいだろうか、世界の時間が止まったような気がした。

 一拍おいて、

キャー!!

 甲高い女性の悲鳴が(総勢、五名)、ONE基地内に木霊した。

「お前は…、死んでしまえー!」

 大きな叫び声は、留美の声。

 また、何かがぶつかり合い、爆発するような大きな音が基地内に響く。

「だぁっ、やめろ留美。俺が悪かったってば」

「謝る前に、服を着ろ! 服を!」

 そんなやり取りが、部屋の外まで余裕で響いてくる。基地の外まで、聞こえてしまいそうな勢いである。

「毎朝、毎朝、何をやってんだか…」

 浩平の部屋の前で、扉に寄りかかりながら、一人の女性は大きく溜息をついた。

「やれやれ…。皆も、あんなやつのどこがいいんだか…。わっかんないなぁー」

 そう言うと、その女性はその場から文字通り姿を消した。彼女の行き先は知らない。彼女は『気まぐれ』で『神出鬼没』なのだから。

 いつもの日常。

 繰り返される、朝の風景。

 今日も、ONE内は概ね平和だった。

 

『やだな、ちょっとした冗談だろ。起きたら裸なんていうのはさ。な?』

By ONEリーダー 折原 浩平

 

 

お終い