このSSは久慈光樹さんのSS「異能者」の3次創作パロディです。
先にそちらの方を読んでいただきますとより楽しめます。
なお、このSS自体は「ONE」や「Kanon」の設定を使用してますので、できればゲームをやってからお読み下さい。
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『異能者』遺伝……もとい異伝
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「Kanon」と「ONE」の戦いがあってから少し……。
相沢祐一は……いまだ名雪や真琴達の事を引きずっていた。
祐一「……くそ……ちくしょー……」
そして、近くまで敵が迫っている事に気づけなかった。
謎の覆面男「『重力の戒め(グラビティ・ホールド)』!!」
祐一「な、なんだ?」
声が響いた瞬間、祐一の体を強烈な圧力が包む。
祐一「くっ……動けない……」
謎の覆面男「無駄だ、俺の異能力は簡単には振りほどけやしない!!」
祐一「な……北川……?」
北川「北川ではない、謎のマスクマンだ」
北川は妖しげな覆面を被り、マントを身に着けていた。
祐一「ナレーションにも、思いっきり北川って言われてるぞ」
北川「……よくぞ、俺の正体を見破ったな……さすが相沢だ……」
祐一「……言ってて空しくないか?」
北川「気にするな……世の中なんてそんなもんさ」
ため息をひとつつくと、マントと覆面を脱ぎ去る。
北川「あらためて……俺が『重力使い(グラビティ・マスター)』北川だ」
どーん。
北川「なんで、上がやたらインパクト無い大きさなんだよ!!」
祐一「なんか、もう何を目にしても驚きゃしないが……これは何の真似だ?」
そう言って、自分の体を指差す祐一。
北川「上のほうのナレーションをもう1回読んでみろよ」
祐一「敵が近づいてるとか書いてあるねえ」
北川「分かったか?」
祐一「誰が敵なんだ?」
北川「俺だってば」
祐一「ほほう……理由ぐらいは聞いておいてもいいかな?」
北川「理由か……わかった、話しておこうか」
北川が天を仰ぐ。
北川「俺さ……このままだと『異能者』で出る事は無いんだよなあ……」
祐一「はあ?」
北川「せめてパロディでくらい存在感を出しておかないとな」
祐一「あのなあ……」
北川「覚悟を決めろ、相沢。おまえの力がそんなものなら……」
北川が手を天にかざすと、黒い塊が集まってくる。
北川「これ以上、彼女達を守れやしない」
祐一「え?」
北川「おまえには悩んでる暇なんて無いんだ。彼女達は傷ついた。だが、明日にも戦いは起こるかもしれない。
今、動けない彼女達を守れるのはお前しか居ないんだ。前のことをいつまでも引きずってたら……次に勝てる訳も無い」
祐一「分かってる……分かってるけどな……」
北川「分からないでもないけどな……」
祐一「え?」
北川「……お前の心はガラスのように繊細だからな……」
祐一「……間違っても好意に値するとか言い出すなよ……」
北川「うぐぅ」
祐一「それは俺の台詞だ」
あゆ「ボクの台詞だよ〜っ!!」
北川「……なんか聞こえたが気のせいかな?」
祐一「気のせいだろう」
北川「真面目な話に戻ろうか……お前の心は本当にガラスみたいなんだよ」
祐一「……」
北川「ガラスってさ、透き通って綺麗だよな。一点の曇りも無く、周りの連中を写し出して、輝かせる」
祐一「……」
北川「でもな……ガラス自体は脆くて壊れやすい。まるで今のお前みたいにな」
祐一「今の俺が……壊れたガラスだって言うのか?」
北川「……まだ、壊れてはいないと思ってたんだが、俺の気のせいだったらしいな……。
守るべき物を守れず、無様な今のお前は、唯の割れたガラス……」
祐一「割れたガラス……か……」
北川「……お喋りがすぎたようだ……そろそろ死んでもらおうか……『漆黒の剣(ダークネス・ブレード)』」
手にかざした黒い塊が一点に収束する。
北川「こいつは、言ってみれば小型サイズのブラックホールってとこかな?苦しまずに死ねるぜ」
祐一「……クッ」
北川「安心しろ……他の連中もすぐに同じ所へ送ってやるよ」
祐一「な、なんだとっ!!」
北川「……じゃあな……」
祐一(このままじゃみんなが……)
思い浮かぶ顔……秋子さん……真琴……名雪……。
Kanonで共に戦ってくれるみんな……。
走馬灯のように浮かぶ人達。
祐一「く……うおおおおおおおおおおおおお!!」
北川「くっ、まさか覚醒が!!」
祐一の力が自分を捕らえる力を退ける。
祐一「『黄昏の真紅(クリムゾン・トワイライト)』!!」
北川「しまった!!」
紅い光が走る。
一瞬の交錯のあとで立っていたのは祐一だった。
北川「そう……だ……ゴフッ、それで……いい」
祐一「北川……なんで最後に自分の力を消した! お前の方が早ければ倒れてたのは俺なんだぞ!!」
北川はボロボロの状態だった。
血を吐き、大地へと横たわる。
北川「俺……が……本当に……お前を倒すわけ無いだろ……」
祐一「な、まさか……お前」
北川「さっき言ったな……お前が……割れたガラスだって……。割れたガラスの破片は……鋭い凶器になる……俺は……
それを包む……綿の存在を……教えたかった……」
祐一「もういい、喋るな! 今、怪我を治せるところに連れてってやるから」
北川「ONEの連中が……何を考えてるのかは分からない。それでも……お前が自分と仲間を信じて戦えば……
どうにかなると俺は信じてる……ゴフッ」
祐一「北川、しっかりしろっ!!」
北川「もう……大丈夫だ……お前はこれで何があろうと……みんなを守れるはずだ……」
北川が微笑む。
祐一「北川、お前何言って……」
北川「遺言……かな……」
祐一「おい、馬鹿なこと言うなよ、すぐ治るってこんな怪我」
北川「さらばだ、相沢。おれはお前に会えて嬉しかった」
祐一「おい、バカな事言ってるんじゃないぞ、目をあけろよ、北川、北川〜〜っ!!」
ぐ〜〜……すぴ〜〜……。
祐一「……おい……まさか疲労が溜まって、眠っちまったって落ちじゃないだろうな?」
ぐ〜〜……zzz……zzz……すぴ〜。
祐一「『深紅の黄昏(クリムゾン・トワイライト)』!!」
その日、一人の男が星になった。
さらば、北川、君の事は忘れない!!
北川「あ……いしゃる……りた〜ん……ガクッ」
その頃……ONEの折原浩平の前に、二人の男が立ちはだかっていた。
浩平「何のつもりだ……南に住井……」
南「お前を倒して、茜さんを〜〜っ!!」
住井「いや、出番無いもんでさあ」